デート・ア・ライブ~真理亜デストラクション~ 作:Kyontyu
「少年と青」
マリアは目を開ける。
ここは……?
周りを見渡す。白い地面は地平線の果てまで延々と続き、空は清々しい青空が広がっていた。
「こんにちは、私」
マリアは振り返った。すると、そこには『マリア』が立っていた。
「なっ……お前は……」
「わたしはあなた、あなたはわたし。二つで一つの存在。それが存在であり非存在でもあるあの方のご意思」
「なぜだ? わたしは一つでは不完全だと……?」
「そう」もう一人の『マリア』は微笑む。
「わたしはエロス、『保存』する存在、あなたはタナトス、『破壊』する存在。この二つが合わさって初めて『マリア』になるの」
「違う! わたしはマリアだ!」マリアは手を横に薙ぐ。
「ううん、違うの。わたしとあなた、二人で『マリア』なの」
するとマリアは何かを思い出したかのように頭を抱える。
「その声……まさかあなたあいつに弱点を教えたな!」マリアは『マリア』を睨む。
「ええ、そうよ」『マリア』は純粋に笑う。
「ねぇ、わたしたち『女神』は実は夢を見ることが出来ないのよ。知ってた?」
「ゆ、夢……?」
『マリア』はマリアの周りを歩き始める。
「私たちの合成(シンスバイオ)脳は眠っている時は必要な部分以外を全部シャットダウンしちゃうの。だから、人間達のように夢を見ることが出来ない」
「じゃあ、わたしが見ているのは……?」
「ここはわたしが作った仮想空間(シム)よ。さぁ、そろそろ目覚めの時ね」
「おい、ちょっと待て――」
マリアはそこで姿を消した。
「『カズミタチバナ』……あなたは今どこに……?」
『マリア』は造られた空を見上げた。
マリアは再び目を開ける。見慣れない灰色の天井。そして両手には何か――手錠のようなもの――がはめられている感触。
「やぁ、目覚めたかね」
マリアが声の方向に視線を移すとくすんだアッシュブロンドの髪の男性がこちらに微笑みかけていた。
「気分はどうだい?」
「さいってーね。これが淑女(レディ)にすることなの?」マリアは電子錠をガチャつかせる。
「ああ、すまない。我々は『精霊』に対する学術的な記録が少ないのだよ。今外すから――」
「――いい。自分でやる」
マリアは自分の能力を使って電子錠のロックを解除した。そして手首を揉みながら男を見た。
「で? 何か用?」
「そうそう。忘れてしまう所だった」男は細かく頷いて立ちあがる。
「君、何か欲しい物は無いかね? 出来る範囲でならそれを用意しよう」
「ふーん。どうしたの、急に。私に何かして欲しいの?」
「そう。君の能力を使って『精霊』を、殲滅して欲しいんだ。もちろん、受けてくれるのならバックアップをしよう」
「へぇーえ。そんなに『精霊』って嫌われてるのね。まぁいいわ。ちょうど退屈してた所だし、やってあげるわ」
すると男の顔に一瞬黒い笑みが広がる。
「おお! そうか! で、何か我々に協力出来ることはあるかね?」
「うーん。そうねぇー」マリアは顎に手をあてて少し考えるふりをする。
「じゃあとびっきり美味しいアイスクリームをちょうだい!」
「この精霊は……助かるのか?」士道はわたしを見る。
「まぁ、なんとかなる。ここには設備も充実しているようだし、二日くれればなんとかなる」
〈フラクシナス〉に回収された私たちの目の前には心臓の鼓動のように一定周期で輝いている霊結晶(セフィラ)があった。
他の人は服装には問題ないのだがわたしだけ包帯でグルグル巻きにされてしまってミイラ状態になってしまっていた。
網膜にパターンマッチングをかけて見てみると、この物質は超高密度のqドットで作られているのが分かる。
「この結晶内部には元の身体情報を記録しているスペースがあるはずだ。そこにアクセスして、あんたたちの世界で言う顕現装置(リアライザ)を使って身体を再生成する。もっとも、確実に復活させる保障はないがな」
「じゃあ、大丈夫なんだな」
「ああ」わたしは頷く。
「でもまさか、本物の霊結晶(セフィラ)にお目にかかれるなんてね。考えても無かったわ」
赤いジャケットを羽織った琴里がいった。
「それじゃあ、サルベージを開始しますか――あ、重要な事を言い忘れてたけど、復活するかどうかは、本人の意思だ。だから『生きてるって最高!』って思わせる必要があるんだ。そこで我らが士道に同行してもらって、デートしてもらう。ついでに霊力も封印してもらって一石二鳥! っていう感じで行くぞ。ほら、士道、準備はいいか?」
わたしはqドットで作ったヘッドセットを無理やり士道に被せる。
「え? ど、どういう……」
「ほら行くぞ。321……ゴー!」ヘッドセットのスイッチを押す。
そして私たちの意識は暗闇に吸い込まれていった。
「うっ……ここは……?」士道は頭を抱えながらよろよろと立ちあがる。
急にどこかに飛ばされたせいで精神的な不協和がひどい。
「天、宮市……なのか? ここは」
『そ。ここはわたしが作った仮想空間(シム)。町並みは殆ど天宮市と同じ。その気になれば人だって呼び出せるから、買物だって出来る』
士道の横には恵美が立っていた。しかし、その姿は半透明で、背景が透けて見える。
「お前、恵美か?」
『ああ、わたし? ごめんね。士道の計算ばっかやってたらわたしが実体化できなくなちゃって……でも気にすることはないわ』
「そ、そうか」
『ほら、女の子待たせない。目の前にいるでしょう?』
「え?」
士道が前を見ると、いつの間にかに緑色のフードを被った女の子が立っていた。左手にはコミカルな意匠が施されたパペットが着いている。
その少女がこちらを見たと思うと急に顔を輝かせて士道に抱きついてきた。
「士道さん……!」
『あら、知り合いだったとは』
「お、俺は……」
士道は戸惑う。なにせ知らない女の子に急に抱きつかれたのだ。喜びよりも早く驚きが脳内を充満する。
「なにやってんのよあのバカ……!」琴里は額に手をあてる。
目の前の大型ディスプレイには三人称視点で士道達が映っている。
すでに〈フラクシナス〉のシステムの大半は恵美によって改変、改良されており、恒常性随意領域(パーマネント・テリトリー)の性能や、AIの能力が向上していた。恵美が作り出した仮想空間(シム)の様子を映し出せるのも恵美のおかげである。
と、目の前のディスプレイにいくつかの選択肢が表示された。
「ん、早速来たわね」
その一、『ああ、待たせたな』と頭を撫でる。
その二、『待っててくれたんだな……!』とギュッと抱きしめる。
その三、『………』あえて何もしない
「え、何あの三、論外じゃない。全く、恵美の奴、肝心な所で手を抜いたわね……まぁいいわ、総員選択!」
集計結果が琴里のコンソールに表示される。
「……一と二で分かれたわね……ん?」
投票者がいないと思われていた三に一票だけ入っていた。
「一応聞いとくけど……三に投票したのは誰?」
「はっ、私であります!」と、後ろから神無月の声。
「……またあなたね……」
「ええ! 放置プレイというのも――」
そこまで言った所で琴里が指を鳴らす。すると神無月が立っていた所に穴が開き、そこに落ちて行った。
「しど――じゃなかった。恵美、一よ」
『了解。士道、司令さんから指令』恵美は士道の耳元で囁く。
「お、おう」と士道は小さく頷いて頭を撫でる。
「あ、ああ、ま、待たせたな」
すると少女は顔を上げ「はぁっ……!」とさらに顔を輝かせた。
『士道、今回の目的地は丘の上にある公園だ。無事に辿り着けよ』
士道は再び首肯する。
「よ、よし! ちょっと公園に行こう!」
「わ、分かりました!」
そして少女と士道は手を繋ぎながら歩き始めた。
それを見ていた恵美は一つの疑問が浮いた。
『なぁ、司令さん、士道はあの少女の名前を知ってるのか?』
「まぁ、知らないでしょうね。ってあんた、この仮想空間(シム)に何か入れた? 何故かASTの反応が――」
『愛の試練ってやつですよ。死んでも精霊の精神をスタート前にリストアしてやり直すから問題はありませんよ』
「そ、そう……」
と、再び選択肢が表示される。
その一、『確かきみの名前って……』と普通に訊ねる。
その二、『もう一度君の名前を俺に聞かせてくれ』と自然に訊ねる。
その三、『名前を言わないとおしりペンペンしちゃうぞー!』と強引に訊ねる。
「だからあの三って……総員選択!」
すぐさま結果が表示される。
「まぁ二が妥当かしらね……で? 三ってまたあなた? 神無月」
琴里は後ろに立っている何故か素っ裸の神無月に訊ねる。
「はっ、それ――」と、再び穴に落下した。
「恵美、分かってるわね」
『大丈夫、二ね』
そして再び士道に指令を伝える。
「も、もう一度君の名前を聞かせてくれないか」
士道の笑みは少々ひきつっていた。
「わ、私の名前は、四糸乃です……」
『よしのんもいるよー!』
「う、うわっ」士道は驚いて後ろに思わず後ずさる。
「び、びっくりした……」
『むふふ、士道クンがぼけっとしてるのが悪いんだよ~?』
「お、おう。ごめん」
と、銃弾が士道と四糸乃の間に着弾した。
「へ?」
『そこの少年、そこから離れなさい!』
何故か狐の面を被ったASTの隊員がこちらに銃を向けていた。
ちなみにマリアに取り込まれた精霊の救出方法はどうにかして入手した霊結晶(セフィラ)にアクセスして、士道が精霊をデレさせて封印、その後医療用顕現装置(メディカル・リアライザ)恵美改良版を使用して身体を再生成、という流れでいきます。
あと久しぶりにエウレカセブンを最終話まで見たんですけど、レントンとドミニク見てたら士道がなんとなく悲しく見えてきました。果たして士道君は一途になれるんでしょうかね……
『愛の試練』、というのもエウレカセブン見て思いつきました。
同時連載の方もどうか読んでください! 感想待ってます!