あおげば空の、嵐かな (あおかな×エアギア) 作:EXTRA2販促おじさん
拙者エアギア5巻あたりの和気藹々チーム結成してる所大好き侍!
個人的嗜好によって、そんな感じの話を投稿致す!
「では質問です」
俺は努めて真面目腐った表情を作った。
「
「はいはいはーい、友達っ」
「いきなりコメントに困るのが来たな……違います。はい次ッ」
「
「間違っちゃいないがその前に必要なものがある。次ッ」
「
「何か言外にめっちゃハードル上げてないか、シャーロット? 違います。はいネクスツッ」
各務さん……もとい、
今後について話し合うべく、俺はメンバーをわが家へと招いていた。
ダイニングのテーブルをぐるりと囲み、各人の前には湯気を立てる紅茶のカップ。椅子は予備を出しても3つしかないので女性陣にお譲りし、俺と隼人は壁にもたれながらの会話だ。
ちなみに久奈島での住居だが、新興住宅地のエリアにあった大き目の一軒家を借りている。
イギリスの実家である豪邸に比べれば当然質素なものだろうが、俺とシャーロットのふたりでは広すぎるくらいだ。そもそも、前世での備品同然の扱いに比べれば大抵の環境は天国みたいなものだが……。
一通りハズレ回答が出揃ったところで、全員の視線が残る一名に向けられる。
当のリーダーこと葵(意外と近所住み。徒歩5分くらい)はといえば、少しめんどくさそうにこめかみを掻いて、視線を中空に彷徨わせた。
「――――金、か?」
「大正解。むねたいらに3000点!」
「誰が胸平らだ殺すぞ」
「つーか3000点って何?」
「さあ……」
高校生が知ってたら逆に謎な死語である。俺も前々世含めて生で観たことは無い。
なお、ハグしたときの感触は葵もシャーロットも大差なかったとだけ言っておこう。
「で、だ。必要なのはズバリお金。マネー。おわかり?」
「うぃーっす。おかわりー」
「意外と図々しいね君」
そう言いつつ、赤崎さん……おっと、
そういえば、今後はチームメンバー同士は下の名前で呼び合うことになった。まだちょっと慣れないが、いつまでも他人行儀じゃいいチームにはなれない。
見るからに人懐っこい珠美はもちろん、意外にもFC選手の2人もこれに賛成のようだった。
なんでもFCにおけるペア――選手とセコンド*1――はお互いのやり取りを迅速にするべくコミュニケーションを密にするようで、その筆頭が名前呼びらしい。
「
チームの証である"
「――あと細かいところでは、A・Tのメンテ用具とかかな。何かご質問は?」
全員を見回すと、隼人が恐る恐るといった風に手を挙げた。
「それって、もしかしなくても結構掛かるヤツだよな……?」
「まぁね。A・T代も考えたら一般的な小遣いやお年玉で足りるかっつーと微妙」
「貯めてたバイト代で大丈夫だといいんだが……」
「てゆーかセロくん、よくお年玉とか知ってるね」
「変なとこで感心してる場合か……。珠美、私もお前もバイトしてないだろ」
「に゛ゃふん」
痛い所を突かれ、せつない声を上げる珠美。
ご愁傷様だが、ここで問題なのは彼女でも、ましてや葵でもない。
俺はここまで、我関せずと澄ました表情でカップを傾けていた相手に目を向けた。
「シャーロット、俺達も他人事じゃないぞ」
「…………え゛?」
眉をひそめ、何を言われたか理解できていないかのような表情。
心苦しいが、ここはこいつのためを思えばこそ言わねばならない。
「俺やお前のチームでもあるんだから、当然実家から山ほど貰ってる仕送りや小遣いで済ませるような、つまらん真似はしないぞ。立ち上げくらいは額に汗して苦労を共有したほうがいい」
「たまには良いこと言うじゃないか」
葵にからかわれるが、"たまに"は余計だ。
そして渦中のシャーロットはというと、ものっそい憮然とした顔をしている。
「……………………ええ、わかった」
「そう渋るなよ、シャーロット用に良いのを見繕っといたからさ」
そんな風に宥めていると、珠美が次の疑問を投げ掛けた。
「ねえねえ、チームウェアって具体的にどんなん?」
「
「おぉー革ジャン! めっちゃそれっぽい!」
「ちょっと
「そうか? 俺はちょっとワクワクしてきたぞ」
言うまでもないが、小烏丸スタイルだ。一度でいいから着てみたかったんだよな。
皆にも割と好感触そうだったので、俺は内心胸を撫で下ろした。
「それと練習用にウィンドブレーカー。こっちもロゴ入り。後はボトムスとプロテクターかな」
「プロテクター?」
「最初の内はけっこうコケるから、安全のためにね。膝と肘、手首、あと頭。
つっても大量に出回ってるインラインスケート用のを使えるから、2000円そこらだけど」
「ふんふん……にせんえん、っと」
呟きながらスマホに打ち込む珠美。メモを取って総額を計算するつもりのようだ。
俺としても、その方が全員で認識を共有しやすいので有難い。
それに倣うようにスマホを取り出して調べていた隼人が、意外そうに言った。
「お、ロゴ入りの練習着ってネットに業者あるんだな」
「それこそ全国の部活とかで、学校名入れたウェアやらの需要があるんじゃないの」
「そういやウチのバレー部とかも何か着てたな、そういうの……」
シャーロットの推測の通り、一定以上の需要があるものは大体ネットで何とかなるものだ。
「隼人くん、お値段どんくらいだった?」
「服自体はウィンドブレーカー2000円のシャツ800円くらいだな。ロゴの印刷は全部ひっくるめて8000円弱」
「ありがと。じゃぁ2000円の……800円、っと。印刷費は5人で割って……1600円?」
「シャツは替えがあった方が良いんじゃないか」
「あ、そっか。んじゃ2枚足しとこ。革ジャンは?」
「……専門の業者に郵送して刺繍してもらうみたいね」
「え、マジ? ちょっと見せてシャーロットくん」
葵と珠美が揃ってシャーロットの手元を覗き込む。すっかり馴染んでいるようで何よりだ。
もう完全にミーティングというより調べ物をする流れになったので、俺も隼人の方に近づいて声を掛けた。
「調べてもらって助かったよ。具体的な予算の話もしたかったしね」
「俺も気になってたからいいって。なぁセロ、印刷する
「実はもうデザイナーの先生に依頼してある」
「マジか!」
目を見開く隼人。正直、費用という話ならここが一番かかるのだが、今回は俺が言い出しっぺだったこともあるしサービスしておいた。わざわざ恩着せがましく言ったりはしないけど。
「あんた、いつの間にそんな事してたの?」
話題が気を引いたのか、シャーロットが不思議そうに問いかけてきた。
「今日の昼休みにちょっとね。まぁ急な依頼だったから納期もそれなりだけど」
「何時ぐらいになるんだ?」
「3週間後。それを元に
葵に言った通り、今すぐチームとして活動開始とはいかない。
尤も、それまでに色々とすべき事や揃えるべきものがある以上、丁度いい猶予ができたと考えればいいだろう。
「……だが、そんな悠長にしてても良いのか?」
「と言うと?」
「例の暴風族だ。連中が私をターゲットしているというなら、1か月どころか明日にだって襲ってきてもおかしくない」
彼女の懸念も一理ある。
だが、それについては俺はさほど心配していなかった。
「これを見てくれ」
「……こないだ見せてくれたやつか。これがどうした?」
提示したのはスマホの画面。ライダー向けのSNSアプリが立ち上っており、先日ド派手な宣戦布告をしてくれた連中こと、Dランクチーム〈パルプ・フィクサー〉のページが開かれている。
「このアプリの主な用途はライダー同士の交流全般だけど、パーツ・ウォウのマッチングも出来るようになってる。単に果たし状を送り合えるってだけじゃなく……ほら、ここ見て」
「ん?」
指で示した箇所には、【
「交換会?」
「
A・Tパーツ交換から派生した賭け試合が源流なんだ」
「なるほどね……」
この辺は前世とも同じ経緯だ。こちらは俺達が発展を意図的に加速させた面こそあるが、まあ、人間のやる事はどこでも大差ないという事だろう。
「それで注目してほしいのは、ここ」
「……Eランク以上からのみ受付……と書かれてるが」
「そうだ。んで俺達みたいな結成直後のチームはFランク。つまり……」
「――今すぐでも戦るつもりがあるなら、こんな設定はしないということか」
その通り。
おそらく昨日のステッカーの件は、自分たちの存在をアピールがてらの挑発行為だろう。
ちなみに、ランクを上げるのもそう容易くはない。
昇級条件は同じランクのチームに3連勝するか、上のランクに1勝すること。
パッと見後者の方が簡単そうだが、むしろ逆だ。ランクが上の……つまり、より上位の種目で日常的に戦っているような連中との戦いにおいて、マグレ勝ちなんてことは万に一つも起きない。
「それって……」
「挑戦を受ける高ランク側に有利な材料しか無いようになってるんだ。
これに驚いたのか、横で聞いていた隼人が呆れたように言った。
「おいおい、じゃ格下なのにアウェーで、おまけに経験のない種目でやるってことか?」
「そういうことよ。FランクチームのEランクに対する勝率は1%そこらしかない」
「い、いっぱーせんとぉ!?」
シャーロットが補足を加えると、今度は珠美が素っ頓狂な声を上げる。
俺はひとつ頭を振り、続けた。
「……と、まぁシャーロットが言ってくれたが、そういうこった。EからDもだいたい似たようなもんだな」
「なら、私たちは同じFランク相手に3勝していくのか?」
「ところが、そうも行かないんだな」
俺は葵に目配せし、肩を竦める。
「実に切ない前提があるんだ……。そもそも四島はド田舎過ぎて、そんなにチームがない」
『あっ……』
そう言うと、何とも言えない微妙な表情になる地元民3名。
「しかも
「そりゃー、ねぇ……」
「……ひょっとして、ステッカーの連中もそれが動機だったりするのか?」
「かもね。同じ島でライダー仲間が欲しかっただけにしちゃ、ちょっとやり口が陰湿に過ぎる気もするけど」
俺の答えに、少し考え込むような顔をする葵。
だが今気にしたって仕方のないことなので、手をぱんぱんと叩いて皆に注目させた。
「そこはいずれ本人たちに聞けばいいさ。ところで、本腰入れて調べたんだが……
福留島は四島の中で最も再開発が進んだ島で、住人の数も多い。
グラシュで島どうしの移動が容易になった関係で、休日になると他の三島から一気に若者が集まるそうだ。そんな場所だから、
その上で方針を尋ねると、葵は意表を突かれたように片方の眉を上げた。
「どう、って」
「お前がリーダーだ。そして、俺達がEランクに上がって〈パルプ・フィクサー〉の連中に挑むためには、これまたEランクのチームに勝たなきゃならない」
その前に練習がてら、同じランク相手に1戦しておくか……
それともこれからの1か月を、フルに
選択を委ねられた葵は、意外なほどに悩むこともなく即答した。
「――前哨戦をやってから行こう」
「そのお心は?」
「この間お前らとやって分かったが、FCで培った勝負勘がA・T戦で必ずしも役立つわけじゃない。少なくともFC歴の長い隼人には、その辺の差をアジャストする機会が必要だ。経験のない珠美にしたって、本番を体感しておいて損はないだろう」
それは簡潔ながら、十分に納得のいく答えだった。
突然振った問にもかかわらず、これだけの理屈を用意できるあたり、彼女はリーダーとしても信頼が置けるようだ。
「――じゃ、決まりだな」
「ああ」
力強く頷いた葵が、「お前らもそれでいいな?」とシャーロット達の方へ振り向く。
俺もそれに倣うと――
「あーこれいい! めっちゃかっこ可愛い! 革ジャンこれにしよ。ね、シャーロットくん」
「ま、値段の割には及第点ってとこね」
「これ女物だよな? 俺とセロのは?」
「こっちのでいいんじゃない」
「いや何だよこの
ほとんど北斗の拳……えっ6万? こんな世紀末ジャケット6万もすんの!?」
そこには珠美のスマホを覗き込み、めっちゃ和気藹々としている3名の姿が。
仲が良いのは結構だが、とても今の話を聞いていたようには見えない。
「こいつら……」
頭痛を堪えるかのようにこめかみに手をやり、ため息をつく葵。
先ほどまでの凛々しさとのギャップに、俺は思わず笑ってしまった。
「あいつらもリーダーの決定なら嫌とは言わないさ。それより葵もジャケット見た方が良いんじゃないか」
少なくとも俺は見たい。世紀末ジャケット着て走るのは御免だしな。
そう言うと、葵も力が抜けたように微笑んだのだった。
高速で3次元的な動きをするFCでは上下感覚の喪失が起こりやすく、相手選手の位置を見失って一方的な展開になる事態が初期の試合で頻発したことから設けられた。