あおげば空の、嵐かな (あおかな×エアギア) 作:EXTRA2販促おじさん
EXTRA2最終話まで行きました。VSみなも最高に熱い!
次回作はZweiなのかifなのか分かりませんが、クオリティに関しては心配無用でしょうね……。
一言でも構いませんので、ご感想を頂けると幸いです。
(文章書きとして上達したいと思っているので、マイナス面の指摘や批評なども歓迎です)
日に日に陽ざしが強まっていくのを感じる4月下旬、日曜日。
「うぅーーーみぃーーーーーッ!!!1!」
「おいでませ
「島を出る喜びィィイーーーーッッ!! って、あいたっ!」
「静かにしろッ! 小学生かお前ら!?」
ご丁寧に隼人、俺、珠美の順で小突きつつ、葵が遺憾極まる様子で額に手をやった。
――そう、俺達は四島を出て船上の人となっていた。
片道一時間ちょっとのフェリーによる小旅行。軽快に海面を切って波飛沫を上げる白亜の船体が向かう先は、最寄りの都市である
ヘラヘラしながら小突かれた頭を掻き、珠美が元気な声を上げる。
「でもでもでも、だよ! 本島行くのなんていつ振りだって感じじゃない!?」
「俺、去年の修学旅行で通り過ぎて以来だわ。最近はだいたい福留島で用が済んじまうからなあ」
「わかりみー! わたしも多分そうかな!」
「でも葵は今月頭に来たばっかり――ぅわ危なっ」
葵が無言で放ってきた
こちらを見据える目はよどんでいる。「その話はするな」と何よりも表情が雄弁に語っていた。
それを見た珠美たちも気になってしょうがない素振りをしつつ、賢明にも聞かなかったことにするよう決めたようだった。
「ところでセロ、シャーロットはどこ行ったんだ?」
きょろきょろと周囲を見回す隼人。
俺は何も言うことなく、立てた親指で背後上方の一点を指し示した。
三階建ての船上建屋――その2階部分。
俺達の立つ甲板の上に展望デッキのようにせり出した場所で、どこから用意したんだかデッキチェアに優雅に寝そべる純白のワンピース姿を見付けた葵が「うぇっ」という感じの顔になる。
「何やってんだあいつ……」
「Oh……せれぶりてぃ……」
葵の隣で、珠美がぽかんと口を半開きにする。
小さなサイドテーブルからソーダフロートらしきドリンクを取りつつ、反対の手に持った文庫本のページを物憂げに捲るシャーロット。題を付けるなら「令嬢のバカンス:アンニュイな午後編」といったところだろうか。
これが海外のリゾートで個人所有のクルーザーなんかに乗ってやるなら大層ハマるのだろうが、大勢の乗客がいる一般のフェリーが背景ではいささか華美にすぎるスタイルかもしれない。
あいつの美貌が近寄りがたいものでも感じさせるのか、デッキに他の客が見当たらないのは安心材料と言っていいのだろうか。船員に注意とかされなければ良いが……。
「……パーツショップ、楽しみだな!」
隼人は見なかった事にして話を続ける気らしい。
俺もそれがいいと思う。
「まあな。えー、じゃあ今日の行動予定だけど。リーダー?」
話を振ると、葵は居住まいを正して咳払いした。
「ああ。向こうに着いたら、まずは市内で目星を付けておいたショップを2、3件回る。その後で中古パーツ屋に行って、足りないものがあれば最初のショップにもう一度行くつもりだ」
「ほーん……? ねぇあおちゃん、その順番って何か意味があるの?」
珠美の問いかけに、替わって俺が応える。
「A・Tはまずボディ……シューズ部分選びが大事なんだ。駆動方式とか内部の拡張性とかにダイレクトに影響するからね、ボディを決めなきゃ組み込むパーツだって決めようがない」
「くどーほーしき?」
「それってアレだよな。ホイールの数とかモーターの位置とか……」
「そうそれ」
首肯を返す。こういう時、ある程度の基礎知識がある隼人の存在は有難い。
さて、
もちろん靴としてのデザイン的な違いはある訳だが、性能にも関わる大きなポイントとしてはもう一つ……つまり、ホイールの形態が重要になってくる。
一般的なイメージに近い、前輪後輪の二つが付いた“ウィール”タイプ。
一つのホイールと、安定用の補助輪だけが付いた“ワンウィール”タイプ。
靴底に半ば埋まるように、無数の小さな球体型ローラーが仕込まれた“ボウローラー”タイプ。
他にも3つホイールを付けた“トライウィール”やら、〈小烏丸〉の
マイナー系やキワモノ系は交換部品のラインナップに乏しかったり値段も高くなりがちなので、故障させやすいビギナーの内は辞めておいた方が良いからだ。
咥えて“ウィール”のような二輪以上のホイールを持つタイプであれば、前後どちらのホイールにメイン動力となるモーターを仕込むかも自分で決めることができる。
A・Tで加速するにはモーターの入った方のホイールを強く踏み込む必要があるので、つま先を踏み込む人間の走行フォームの関係で前輪に仕込むのが一般的だが、走りのスタイルによっては後輪に持たせるケースだって無いではない。適正次第だ。
そしてモーターはともかく、ホイールのタイプやらサイズは当然ながらボディの形状によって決まる。走行感にダイレクトに影響してくる部分だし、上達速度にだって関わってくることが多い。
「――そう言う訳だから、皆には靴のボディ部分を先に選んで欲しい。で、流石に靴が中古はイヤだろ?」
「まぁ、ねぇ……」
「だから新品を扱ってる普通のショップが先。そこでボディを決めたら、組み込んでいくパーツを今日一日かけて見て回る」
そう説明を締めると、全員納得したようだった。
「でもこうして街に出てさ、あっちこっちで品物見て回るのってたのしーよねっ!
ウィンドウショッピング的な? 的な?」
「あんまり色気のある買い物でもないけどな」
「まーたあおちゃんはそんな事言ってぇ!
「――――タマミの言う通りよ、ハリネズミ女」
その声は、断固とした響きをもって俺達へと掛けられた。
「ド素人がスペックと睨めっこして幾ら唸った所で的外れなものが組みあがるだけ。
――――
いつの間に展望デッキから降りて来たのか、声の主……シャーロットが端的に言い切る。
いつも通りツンとした言葉遣いではあったが、そこには先達として新人ライダーの卵たちが迷わないようにする配慮のようなものが感じ取れた。
だが、俺達は――
((((なんだそのサングラス……))))
浮かれに浮かれまくったビビッドレッドのハート型フレーム。
ソーダフロートのグラスから伸びたストローを咥えながら仁王立ちするシャーロットを前に、
「そのグラサンどこで買ったん?」とか「意外とめっちゃエンジョイしてるな?」とか言いたいのを堪え、とりあえず神妙な顔をして頷くに留めるのだった。
#
そうして無事、永崎へ上陸した俺達。
一軒目の大型ショップに到着後、さっそく客向けに解放された組み立てスペースの一角を借りて今日持ち込んできたパーツ類を確認することにした。
「まず隼人……は、手持ちパーツ無くてイチから買ってくんだよな?」
「ああ」
「それじゃ次、赤崎行きます! 持ってきたのはー……じゃん!」
そう言って珠美が背負い鞄から出したのは、見るからに
たしかお下がりという話だったが、あまり使い込まれた形跡はない。
「これは……」
「さっき言っていた、ボウローラー式とかいう奴か?」
「ああ。けど少し不思議だな」
「え、何が?」
奇妙というほどでもないが、使い込まれた形跡はないのにしっかり手を入れられている印象だ。
備え付けの工具を借りて中を開けてみても、組み込まれたパーツは純正品には見えない。一昔前で言う上の下くらいのグレードで、今使ってもエントリーモデル程度の性能は十分にあるだろう。
カスタムしたはいいが、いざ履いたら合わなかったから譲ったとかだろうか?
そうならそうで、カスタムパーツを入れっぱなしにする事もないと思うが……。
疑問は浮かぶが、当の珠美に聞いても心当たりはないようだ。
であれば悩んでいても仕方ない。とりあえず、高温多湿な四島で長期保管されていた関係で電子部品類は劣化が進んでいる可能性がある。念のため交換した方が良いだろう。
「逆に言えば、そこさえ替えれば普通に動くかな」
「わ、ラッキー! あっでもでも、足のサイズが合わないんだよね」
おっと、それもそうか。貰い物だものな。
そもそもボウローラーは上級者向けのタイプだ。さっきのシャーロットの言ではないが、見た目が気に入ってサイズも合い、初心者にも優しいウィールタイプなんかのシューズをこの店で買い、このA・Tからは可能な限り中のパーツを流用する方向でいった方がトータルのコスパもいいか。
「――という訳だから、シューズ見ておいで」
「はーい! 行ってきまーす」
「いやオカンと子供か?」
しゅたっと駆けだした珠美に葵のツッコみが冴え渡る。
隼人も「いろいろ見てくる事にするわ」と言って陳列スペースの方へ向かい、組み立て机には俺とシャーロットと葵が残された。
――――ある意味、ここからが本番だな。
あの爺様から貰ったらしいが、一体うちのリーダーにどんなパーツを渡してくれたのやら。
「じゃあ後は葵、君のだな」
「ああ。よろしく頼む……実は、まだ私も中身を見てなくてな」
葵がバッグから段ボール箱を取り出す。
靴一組入りそうなサイズ感のそれを開け、みっちりと詰め込まれた緩衝材やら厳重な梱包を剝がしていくと――――
「――――おいおい」
「フン……」
現れたのは、
タイプで言うならワンウィール型。先の尖った、踵を高くしたショートブーツのようなシャープなデザイン。
だが一般的なスニーカー型やらブーツ型のそれらとは明らかに違う。絡み合うような流線型を基本として複雑に成形された、樹脂とも金属ともつかない素材。持ち上げてみれば不自然なほどに軽く、足を覆う厚みは驚くほど薄い。だというのに強く握っても撓み一つない。仮に思い切り蹴飛ばされたとしても、せいぜいカスリ傷でも付けばいい方だろう。
絶句する俺。舐めた真似をとでも言いたげに鼻を鳴らすシャーロット。
そんな反応が予想外だったのか、葵が首を傾げた。
「どうした? これを知ってるのか」
「あー、その、何だ……オリジナルモデル、って言えばいいのか……」
「オリジナル? ゴトー爺さんのか」
「ンなわけないでしょ。
「ふぅん……? じゃあお前たちは何をそんなに驚いたんだ? 珍しいのか?」
動揺ひとつ見せないシャーロットが何とも頼もしいが、俺の方は思わぬ不意打ちに動揺を隠せない。
珍しいだって? そりゃもう珍しいとも。
「あのジジイ、何だってこんなモンを……」
「経緯は何にせよ、してやられたみたいね。で、どうするの、あんた」
「まあ葵が使うのに文句は……ないが。話は聞いた方がよさそうだな」
俺達の話に置いてけぼりを食らった葵が、耐えかねたように割って入る。
「お前らだけで話を進めないでくれ。結局、コレは何なんだ?」
……これは何か、ね。
そう訊かれれば、答えは決まっている。
「――――
俺とシャーロットがこの世界に
そのひとつ……〈爪の