あおげば空の、嵐かな (あおかな×エアギア) 作:EXTRA2販促おじさん
流石にこの文字数を連日投稿はきっつい…。
感想や評価が何よりの燃料ですので、お手数とは思いますがぜひぜひ宜しくお願い致します。
戦闘シーン執筆BGM:Rock From Da Bottom(アニメ版Air Gear OST)
謎多き転校生にして
それを再生して程なく映し出されたのは、どこかの廃工場のような場所。十棟弱はありそうな中小のコンクリートの建屋の中央に比較的大きな建物がそびえている。
映り込む空は黒い。夜なのだろう。しとしととまばらに雨の落ちる音と、時おりカメラのレンズに付く水滴からして小雨が降っているようだった。
画質はやや粗く、スマホか何かで撮影していることが伺える。
私はモニターの向かいにあるソファに腰かけ、その映像を注視した。
続いて、よく聞き取れない英語の実況のような声がスピーカーから流れ出す。
聞き取れないのは私の英語力うんぬんではなく、すぐさまそれ以上の音量で大歓声が鳴り響いたからだ。
思わずリモコンの音量低下ボタンを連打する。
仕事の妨げになってしまったのではないかとゴトー爺さんに目をやったが、特に変化はなかったことで胸を撫で下ろした。
意外なほど手ブレのないカメラが、中央にある工場の上下で見て中ほどに向けられる。
つづけてフォーカスが合わされたのは、壁に這わされた配管や鉄骨、出窓のへり、近場の建屋と繋がる渡り廊下の屋根など、めいめいの位置に立つ5人の人影。全員が揃いのジャケットと、闘牛のような曲がった角を生やしたフルフェイスのヘルメットを身に着けている。
彼らの共通項は服装だけではない。足に履いた
カメラが彼らの視線を辿るように、右へと動く。
隣接して立つ、2つのコンクリート製の小屋。
その屋根にそれぞれ立つ人物はわずか2人。それは紛れもなく、私服姿のセロ・アヴァロンとシャーロット・アヴァロンだった。
やはり、これは奴ら……
実況者が何事かを興奮したようにがなり立てると、それぞれの一団から一人ずつが歩み出る。
メット連中からは配管に乗っていた中肉中背の人物。
〈アーマゲスト〉からはセロ。
彼らは立っていた建物の壁をこともなげに滑り降り、互いの方へ向けてA・Tでゆっくりと移動。およそ中間の位置と思しき、1本の街灯が立つ位置で示し合わせたようにピタリと止まった。
メットの人物が何やら小さな紙のようなものを取り出し、手で街灯に押し付けた。
手が離されると、そこには小さくてよく見えないがカラフルな図柄が現れる。どうやらステッカーか何かのようだった。
対するセロも首肯し、似たようなサイズのステッカーを取り出して
その瞬間、ざわついていた観衆の声が一気に爆発的な歓声に変わった。
「っ」
また音量を下げようとリモコンを持った手を浮かせるが、声はすぐに収まった。
代わりに、カメラ越しでも伝わってくるような緊張感ある沈黙が辺りに張り詰める。
その時、カメラの手前側から円筒形の物体が投げ込まれた。
一瞬興奮した群衆が空き缶でも投げたのかと思ったが、セロはそれを軽くキャッチしてメットに差し出し、相手の方も驚く様子もなく頷く。どうやら違ったようだ。
そして、メットが手元で円筒の先端に何かを取り付け、スプレーでも噴くかのように指を押し込むと――
「あれって……」
「
「!」
作業中だったはずの老人が突如発した声に驚き振り向くが、彼は相変わらず丸めた背中をこちらに向けていた。何かの部品を組んでいるのか、動き続けている手元からはかちゃかちゃと音が聞こえている。さっきの台詞は私の聞き間違いだろうか?
私の疑問が通じていたかのように、背を向けたまま老人は言う。
「おう、すまんすまん。そこに置いたDVDの中身はどれもさんざん見とるんでな、もう聞くだけで何の映像か分かってまうんじゃ」
「はあ……」
それは何とも器用なことだ。手元で作業しながら、背後から聞こえてくる音もしっかり聞き分けられるとは。
すこし気の抜けた感想を抱きつつも、私はリモコンの一時停止ボタンで映像を止め、続く彼の解説に耳を傾けた。
「立体的なフィールドに風船を流し、それを先に取ったチームが勝ち。
パーツ・ウォウっちゅーのは……まあ、
「縄張り? いえ……大体想像は付きますが……」
「まあそれで間違っとらんわ。やけんど暴風族の場合はな、この"
縄張りはイコール練習場所なのだと、ゴトー爺さんは言う。
広いエリアを持つチームほど、多様なロケーションで練習ができる。
それによって上手くなり、更にエリアを広げられる強さを手に入れる。
だから暴風族にとってエリアは、上に行くために死守すべきもので……この抗争では、勝敗によってエリアの支配権を奪い合う側面もあるのだと。
「ま、ほとんどは
"支配権"。馬鹿げた話だ。そもそも彼らにそんなもの、ある筈がないのに。
土地は地権者が、自治体が、国が持つものであって。
――だが、そんな理屈で止まる奴らではないのだろう。
興奮と、歓声と、奔放さに彩られた夜の空。
昼の世界とはまるで異なる、もう一つの国があるかのような。
私は無言で、映像の一時停止を解除した。
ゴトー爺さんの言った通り、画面に映る彼らはホイッスルの音と共に
だが〈アーマゲスト〉の2人ともがバルーンを追っていくのに対し、相手チームは2人ほどを
割いてセロ達の妨害に向かわせ、残るメンツがバルーンに向かっている。
そういう戦術があるのだろう。
FCは個人競技なのでチーム競技には詳しくないが、理解はできる。
それにしても――上手い。
A・Tに疎い私であっても、その映像には訴えかけるものがあった。
〈アーマゲスト〉はおろか相手のメット連中も、雨で濡れているだろうコンクリートの壁や非常階段の手すりを平気な顔で20m以上、それも高速で昇ったり滑り降りたり、あまつさえ別の建屋の壁から壁へ飛び移ったりしている。それどころか、互いのメンバーが交錯する瞬間には片足を浮かせて蹴りを放ったり、あるいは機敏に弧を描くような動きで躱したりしているのだ。
そして、どの動きも流れるようになめらかだ。動き同士の"つなぎ"にまるで違和感がない。
シャーロットは"
あれらの、一見曲芸染みた動き……どれも、単なるカッコ付けなんかのためじゃない。
攻撃。
防御。
回避。
移動。
迂回。
この戦いでチームを勝利に導くため、各々が必要なことだけに集中した結果生まれる動き。
刹那の攻防で己が持てる技術の粋と思考の限りを尽くした結果、見る者に"カッコいい"と
思わせるものが披露されるのだろう。
私自身、見ていてアツくなるものがあった。
何より、画面に映るライダーたちは一人の例外もなく……楽しそうだった。
可能なら、あそこに加わりたいとさえ――
無意識にそう考えた瞬間、試合が動いた。
バルーンの動きが大きく変わり、〈アーマゲスト〉の方へと一気に向かったのだ。
それを見逃さず一気呵成に壁を駆け上がるアヴァロンたち。それを阻止すべく、メットの一団も今度は5人全員で飛び掛かる。
フィールド中央の大きな建屋の上空で、お互いの全員が交差するかに見えた一瞬――
「!」
"鏡"だ!
ほどなくして私の直感を裏付けるように、現れた人影――空中に浮かんだ鏡像が弾け、相手チームのうち2人ほどが吹き飛ばされる。
あれはシャーロットにとっても大技なのか、連射する様子はない。
その間隙を突くように、残る3人のうち2人が上下に分かれて空中で最跳躍。シャーロットの斜め下後ろと真上から立体的な攻撃を仕掛けたが、コンパクトな動きで割って入ったセロによって遮られる。そのまま上の方を以前私にも見せた倒立姿勢で蹴り上げ、下の攻撃は体を捻って躱した後に擦れ違いざまに踵を叩き込んで撃破。目にも止まらぬ早業だった。
そして、残る最後の相手……恐らくバルーンの奪取を狙った者もまた、シャーロットによって一瞬で伸された。そのまま相手を踏み台にシャーロットが再跳躍し危なげなく風船を取る。
響くホイッスルの音と、再度爆発するような歓声。
終わってみればあっという間の――それでいて思わず見入ってしまうような、高度な
戦いだった。
「――っふぅ」
思わず、詰まっていた息を大きく吐き出す。
ここまで見て、ふと私は映し出される攻防の中に小さな違和感を感じた。
シャーロットに吹き飛ばされた相手は確かにダメージこそ受けているが、空中で姿勢を戻したり叩きつけられた壁を足場にしたりと、復帰できているようだ。もっとも、受け身も取れずに叩きつけられてしまいふらつきながら立ち上がる者もいるが……。
一方、セロの蹴りを受けた相手はどうにも妙な動きをしているような気がした。
リモコンを持ち上げ、何度か一時停止と巻き戻しを繰り返す。
違和感の正体はすぐに分かった。
まるで空中で凍結式の殺虫剤をかけられた羽虫のように、吹き飛ばされた相手ライダーの体が
数瞬のあいだ不自然なほどに硬直しているのだ。
もちろんずっと固まった状態なわけではなく、落下の途中で危なっかしく復帰したり、地面を転がってからはしっかりと動く姿を見せてはいるが。
「……」
起きていることは分かった。
だが、どのようにして?
シャーロットの強さばかり印象に残っていたが、もうひとりの転校生も底知れない実力を持っているようだ。
知らず握り込んでいた、リモコンを持っていない方の手。その手の平に汗が滲んでいることに気づき、私は少しばつの悪い思いをした。
「おもろいやろう」
「……はい……本当に」
「そのアーマゲストっちゅう
おまけに2人ともA・Tを生み出したアヴァロン社の御曹司や。なんやそらっちゅう話やろ?」
相変わらず背を向けて作業しながら、ゴトー爺さんが声を掛けてくる。
色々と衝撃的な内容も含まれていたが、その言葉に含まれた、どこか楽しそうで自慢げな響きに共感を覚えている私がいて、何だか少しおかしかった。
白熱した試合映像を文字通り手に汗握って見たせいか、疲れがどっと増したような気がする。
全身に心地よい倦怠感が広がって、意識に曖昧なものが混ざり始めた。
眠い。
それを自覚した瞬間、さらにひどくなったような……。
それでも、彼にか自分にかは分からないが、言っておきたいことがあって。私は口を開いた。
「ゴトー爺さん……」
「ん?」
「私が喧嘩売ったの、あいつらなんですよ……」
「ほーん……おう!?」
「あいつらと、たたかうなら……たのしく……」
自由に、飛べる……気が……。
そこまで言い掛けて、疲れが限界になったのか。
いよいよ、瞼が抗いようもなく重くなってきた。
何しろ夕方に一度眠ったとはいえ、ほとんど気絶するようにトラックの荷台の上で転がっていただけだ。まともな休息を取ったとは言えない。
もう少し、もう少しだけ映像を……。
そう思うものの、背を預けるソファーの柔らかさと、ほどよい満腹感には抗えず。
瞼が落ちきり、そのまま頭もカクンと傾いてしまうのだった。
「そうかい……そら大変や。まあ今はゆっくり休んで、明日気張ればええ。
おやすみ、嬢ちゃん」
眠りに落ちる前、そんな言葉が聞こえた気がした。
#####
夜が明けて。
昨日来た航路を波に揺られて戻る最中も、空は雲一つない晴れだった。
「――ここでええか?」
「はい。すみません、港からここまで送ってもらって」
朝7時の船便で佐瀬保を発ち、港からは車に揺られて計3時間あまり。
我が家のある住宅街にほど近い、海岸沿いの道路脇。
今度は軽トラの(荷台ではなく)助手席から降りた私は、運転席の老人に頭を下げた。
ええわええわ、そういうのは十分や……とでも言いたげに辟易した表情で両手を上げたゴトー爺さんは、何やらわざとらしく「おっと!」と言い、運転席の窓から少し顔を乗り出した。
「なんや大変そうやし、嬢ちゃん将来有望そうやけんな。渡しときたいモンがあったんや。
えーちょい待ってな……シートの下に……」
「はい……?」
運転席の窓から出していた顔を車内にひっこめ、何やらごそごそやりだすゴトー爺さん。
私はなんとなく手持ち無沙汰になって、周囲を見回した。
昨日1日で随分な経験をしたせいか、よく見知ったはずの近所なのに何だか新鮮な景色だ。
普段この時間帯は学校にいるから、そういう意味では見慣れていないからかもしれない。
「あったあった。嬢ちゃん、ほれっ」
「え――、っとと」
掛けられた声に振り向くと小さな段ボール箱を投げ渡され、とっさに受け止める。箱の奥行は
30㎝ほどで、幅と厚みは20㎝弱というところ。大き目の靴でも入っていそうなサイズ感だ。
「何ですかこれ」と聞けば、「パーツ屋の爺がやれるもんなんてパーツに決まっとる」と笑われた。
「餞別や。持ってき」
「いやそんな、頂けませんよ。泊めてもらった立場なのに」
「ええから持ってき。きっと必要ンなるわ、
「ですけど……」
「ええからええから」
結局押しに負けた私は、その箱を受け取った。
しばし、決して不快ではない沈黙が流れる。
朝陽が差し込む海岸沿いの道路は不思議なほど静かで、
やたらファンキーな格好の白髭の老人は運転席の窓を下げ、にっと笑った。
「そんじゃァな。まあ妙ちきりんな出会いやったけど……楽しかったわ。
嬢ちゃん――勝てよ」
「――――はい!」
出会いも唐突なら、別れもあっけないもので。
私は運転席の窓から片手を挙げながら走り去るトラックに、自然と頭を下げて見送った。
少しして頭を上げ、一度海を見て、空を見て――視線を、学校のある方角へ向ける。
すべきことは、したいことは、既に心に決まっていた。
まずは――
「家帰って、風呂入るか」
#####
がちゃり。
「ただいま……」
「あらお帰り葵、聞いたわよ~セロ君から! 見て見てイギリスのお菓子頂いちゃった」
「いえいえ、お詫びの気持ちとしては少なすぎはしないかと心苦しいばかりです。
なにしろ昨日葵さんに起きた件に関しては、僕たちと
「……」
がちゃん。
「…………」
がちゃり。
「あの子ったら、飛行指導員*1になったんならそう言えばいいのに。ああいう言葉足らずな所、ほんとウチの人そっくりなのよ~。しゃべり方も男の子みたいになっちゃったし」
「いいじゃないですか凛々しくて、きっと女の子にはモテモテですよ。
まあ僕ほどじゃありませんがハッハッハ」
「やだぁもうウフフ」
「HAHAHAHA」
「………………」
がちゃん。
「……………………」
私は眉間を揉み、見た物が幻覚か何かである事を神に祈り、再び居間の扉を開けた。
がちゃり。
「グッモーニン」
「何がモーニンだお前この野郎」
もちろん、我が家の居間で母と談笑するセロ・アヴァロンの姿が消えたりはしなかった。
#####
「……お前、うちで何をやってたんだ」
ざぶざぶと波の音が聞こえる、海岸沿いの歩道もないような田舎道。
俺の背中を押すようにして家を出てから無言でズンズン歩を進めていた各務さんが立ち止まり、こちらに振り向かないまま言った。
随分と大急ぎでシャワーを浴びて飛び出してきたからか、少し湿り気を帯びた長い髪がやや重たげに揺れる。
「純粋にお詫びだよ。昨日の件は俺たちの落ち度でもあるんだし、親御さんからすりゃ年頃の娘さんの失踪騒ぎだろ。そりゃ気にも掛けるし詫びだって入れる」
ほんとあの時は焦った。たまたま永崎に駐在していたうちの人員を宥めすかして所在確認をお願いし、安全を確認したときには心底胸を撫で下ろしたものだ。
尤も、
そういう意味でも、彼女は俺が今最も期待を寄せている人間だ。万が一がなくて良かった。
それともう一つ、そう言って俺は付け加えた。
「必要なら君にお節介を焼く気でもいたんだが……まあ、これは必要なさそうだ」
「お節介?」
「君が昨日俺らを追ってきたときみたいな……
乾かして、焚きつけた方が良いんじゃないかってね」
「余計なお世話だ」
「だからお節介って言ったろ?
――どうやら、あっちでいい出会いがあったみたいだ」
「……ああ」
僅かに振り向いて見える口の端が、口角を上げているのが見えた。
「正直シャーロットに嫉妬してるよ。なんで君に挑まれるのが俺じゃないんだって」
「何を、バカなことを」
「そうかい? 今の君はマジでかなり魅力的だよ。ホットでキュートだ。ぜひご一緒して飛んでほしいと思うくらいには」
「なっ……」
背後から前に回り込み、色素の薄い眼をまっすぐ見て素直な賛辞を口にすると、彼女は少し動揺したように瞳を揺らした。
コナをかけに来た訳じゃないので、話題を切り替える。
「そんな君に、お近づきの印にプレゼントをどうぞ」
そう告げて手渡したのは一枚のステッカー。星と五線譜の意匠をベースとした図形に、パンキッシュな字体でARMAGESTのアルファベットが記されている。
受け取った彼女が当惑というより驚いた雰囲気で目を見開いたのを見て、俺は贈り物の意味が正確に伝わったことを察した。
「……これは?」
「分かってることを聞くもんじゃない。俺たちの
君の好きに使えばいい……ま、使い道なんざ一つだけだろうけどね」
「……」
「さぁ、学校に急ごう。
「っ」
俺の意図を――と言うか、俺に意図を察されていることに気付いたのだろう。
各務さんは少し口をとがらせて、俺から顔ごと視線をそらした。
自分の内側を悟られまいとするような振る舞いが馴染みの誰かさんを想起させて、思わず少し笑ってしまう。
じろりとねめつけてくる各務さんに手の平を立てて謝罪のジェスチャーをし、砂浜と道路を隔てるコンクリ塀に飛び乗って、彼女の方へ振り向いた。
背中には照りつける真昼の太陽。
頭からつま先まで、俺はそのぬくもりを感じながら言う。
「夜の
#####
その後、半日の遅刻で教室に現れた各務葵は。
昼休みに沸くクラスを突っ切り、シャーロット・アヴァロンの机の前に立つと。
その天板にカラフルなステッカーを叩きつけるように貼り付け――
その上に、テープで
「――セロ、あんたの差し金ね」
対するシャーロットは動じるでもなく、冷静な声音で呟くように言う。
「ああ。こうでもしなきゃ不完全燃焼だろ? それに
「……ふん」
「――二人でごちゃごちゃ言ってるところ悪いが。どうなんだ、受けるのか」
「――誰にモノ言ってんのよ、うじ虫。
良いでしょう。この戦い、私たちの
「好きにしろ。今度は負けん」
「あ、そ」
周囲のクラスメイトたちが思わず一歩引いてしまうような一触即発の雰囲気。
それにも動じることなく、セロは「決まりだな」と言って、声を上げた。
「んじゃ隼人、審判頼むね。夜に校庭な」
「――はい!? 俺ェ!?」
負けじと葵も言った。
「赤崎、お前も来い」
「ふへぇっ!? 何故に私もっ!?」
当事者と、巻き込まれた者たちの
決着の刻は、近づいていた。