皆さんこんにちは。わたしは鹿目まどか。見滝原中学校に通う、何処にでもいる普通の中学生です。
……その筈だったのですが、今朝わたしは変な夢を見ました。それは、暁美ほむらちゃんと言う少女によって、何度も繰り返されている、これからの一ヶ月の記憶でした。
ほむらちゃんの目的は、わたしが魔法少女と呼ばれる存在になることを阻止して、命を救うこと。それが未来のわたしとの約束みたいです。
でも、多分それだけでは、未来のわたしの願いは果たされません。だって、多分未来のわたしがあんなことを言ったのは、わたしが生き残りたいからではなくて、ほむらちゃんに生きる目的を持って欲しかっただけだと思うから。
なのでわたしだけでなく、ほむらちゃんにも生き残って貰わなければなりません。未来のわたしの願いを叶えるためにも。
「ほむらちゃんだけじゃないよ。みんなにも生きててもらわなくちゃ。あんな地獄を味あわせるわけにはいかない」
そう決意して、学校へ行く準備を始めることにしました。
でも、みんなで生き残るか……そうは言ったもののどうしよう? 生き残ろうにも、わたしがキュゥべえと契約せずに、ワルプルギスの夜を倒せるようになるとは思えません。何せあの魔女が、わたし以外に本気を出しているところを見た事がないのです。
ほむらちゃんや、巴マミさん、それから美樹さやかちゃんや、佐倉杏子ちゃんが協力したとして、勝てるかどうか怪しい相手でした。そもそも、この四人全員に協力を取り付けることも難しそうです。マミさんと杏子ちゃんは、仲違いしてから、ずっと疎遠らしいですし、マミさんがほむらちゃんを信用する可能性も低いと思います。
更に言えば、出来ればさやかちゃんには、契約して欲しくありません。何せ彼女は、契約した時間軸のほぼ全てで、絶望して魔女化してしまっているのです。
はあ……もっとこう、都合のいい魔法とか無いでしょうか……キュゥべえとの契約で貰えるような紛い物ではなく、本当に奇跡を起こせるような……
そんなことを考えながら、朝食をとっていた時のこと。
『何においても、まず前提を疑ってみることは大切です』
ふとテレビをつけると、コメンテーターの人がこんな事を言っていました。うーん、前提を疑うか……
「確かに、魔法の力はキュゥべえと契約しなくちゃ使えないっていうのも、勝手な決めつけだったかも」
まあ、そうは言っても普通に考えたら無理でしょう。
でもわたしには、ほむらちゃんの時間遡行によって集まったと思われる、膨大な因果の糸があります。夢にまで見るくらいなので、相当溜まっていたのでしょう。それを考えたら、きっかけひとつで、本当に魔法を使えてもおかしくないかもしれません。
よし! そうと決まれば試すしかないよね!!
そう思い立った私は、すぐさま行動を開始しました。
まずは部屋に戻って着替えてから、玄関に向かい靴を履いて家を出ました。そして少し歩いてから立ち止まります。
「えっと確か、こういう時は頭の中で強く願うんだったっけ?」
『変身!』
うーん、何も起きない。まあ、そう簡単には行かないよね。
でも、何も感じなかった訳ではありません。むしろ夢の中で、何度も体験したような、あの不思議な感覚がありました。恐らく魔力です。
今は僅かにしか感じませんが、少しづつ大きくしていけば、いつかきっと、何かできるはずです。
それからしばらくの間、魔力を感じる訓練を続けました。そしたらなんと、少しずつだけど感じることができるようになって来ていました。
これはいけるんじゃない!?
と思った矢先のことでした。突然後ろの方から声をかけられたのです。
「おーい! まどかー!」
振り返るとそこにはさやかちゃんの姿がありました。
あれ? おかしいな、いつもならまだ寝ている時間なのに……。今日は珍しく早く起きたのかも。
「おはよう、さやかちゃん」
とりあえず挨拶をしました。するとさやかちゃんは笑顔で答えてくれました。
「おっはよー! どうしたの? なんか嬉しそうな顔してるじゃん」
「えへへ、だって……」
そこで、魔法少女の事とか話しても信じてもらえないだろうと思い、咄嵯に嘘を言ってしまいました。
「最近さやかちゃん、上条くんのことで、悩んでたでしょ? 明るく振舞ってても、溜息とかついてたし、でも今日のさやかちゃんは本当に元気そうだなって思ったら嬉しくて……」
これ自体は嘘ではありません。実際に心配していたのですから。
「あはは……ありがと。でも、もう大丈夫だよ。勿論恭介のことは心配だけどさ、あたしもいつまでも落ち込んでられないしさ……それに今度こそちゃんと想いを伝えるんだ」
「さやかちゃん……頑張ってね!!」
「おう! ありがとね、まどか!」
そんな会話を交わしていたら、学校へ行く時間になっていました。
よし、わたしも頑張ろう!
今日の授業は出来るだけ、学校にいる間に理解して、放課後は魔法の練習をするんだ!
そう思っていたのですが……
「食いもんくれて、ありがとな、まどか! 本当にヤバいところだった。な? ゆま!」
「うん、まどかお姉ちゃんありがとう!」
張り切って授業を終えて、浮かれていたわたしは道を間違えて、気付けば、風見野市まで来ていました。まさか生身で、市の境目を超えてしまうなんて……
そんな事を考えながら、風見野をさ迷っていたら、お腹を空かせた杏子ちゃんと、千歳ゆまちゃんという子がいて、思わず食べ物をあげた訳なのですが、問題はそこではなく、わたしは帰り道を見失ってしまっていたのです。
「うぅ……ごめんなさい……」
「いいっていいって、食いもんくれたお礼だ。見滝原まで案内するよ」
「杏子ちゃん……本当にごめんね。迷惑かけて……」
「いいっていいって、気にすんな。それにまどかとは前に会ったことがある気がするしな。どこかであったか?」
「え? うーん、あった気もするような、しないような……」
杏子ちゃんなら、未来の記憶のこと話しても、信じてくれそうな気もしますが、まだ、ちょっと勇気が持てません。
「ふーん……まあいっか。さっさと行こうぜ。見滝原へ行けるルートは、よく知ってるからさ」
「うん、わかった。お願いします!」
こうしてわたしは、杏子ちゃん、ゆまちゃんと一緒に見滝原へと向かうのでした。やっぱり杏子ちゃんはいい子です。それに、ゆまちゃんも、凄く優しい子でした。
嬉しくなったわたしが、二人と楽しく雑談しているうちに、時間はあっという間に流れ、わたし達が乗っているバスは、目的地まで到着していました。
良かった……ちゃんと帰って来れた。
そう思いながら、バスから降りた時のことです。突然杏子ちゃんの表情が変わり、
「っ! ゆま! 変身しろ!」
と叫びました。
まさか、魔女か使い魔……? このタイミングで来ちゃったかぁ……わたしがいたら足でまといじゃない。
「うん! まどかお姉ちゃんは、ゆまが守る!」
ゆまちゃんがそう言い、2人は変身しました。
申し訳ないですが、わたしはまだ戦えないので、ゆまちゃんの後ろにいるしかありません。
そんなことを考えている間に、わたしたちの周りは、暗くて不気味な世界に変わっていました。
「嘘だろ……? こんなに魔力の強い魔女が、どうやって今まで身を潜めてやがった!」
「キョーコ!」
「危ねっ!」
杏子ちゃんの死角から、赤い弾丸が彼女を襲って来ましたが、ゆまちゃんのメイスから放たれた衝撃波が、杏子ちゃんを守りました。
弾丸が飛んできた方向を見てみると、そこには、ドロドロとした真っ赤な身体をしていて、周りに大量の拳銃を浮かべる魔女がいました。
「こいつは……ヤベぇかもな……」
「大丈夫だよキョーコ! ゆまがいるもん!」
「へっ! その通りだぜ! 行くぞゆま!」
「うん!」
そう言って魔女に接近を試みる杏子ちゃんを、ゆまちゃんが衝撃波で弾幕から守ります。しかし魔女の弾幕は止まらず、杏子ちゃんは幾つか被弾していました。その度に、ゆまちゃんが治療してはいるものの、何度挑んでも接近は叶いませんでした。
「くそっ……近づけねぇ……このままじゃジリ貧だ……こうなったら!」
このままじゃ埒が明かないと判断した杏子ちゃんは、無数の槍を投げつけて、中距離から多角的に攻撃をします。
「今だゆま!」
「うん! えいっ!」
その攻撃を拳銃で防ぎ、動きを止めた魔女を、ゆまちゃんが衝撃波で崩し、杏子ちゃんがトドメを指すつもりのようです。これなら、確かに上手く行きそうだと思いました。
でも、そう簡単には行きません。確かに魔女は、衝撃波によって吹き飛びました。しかしそれでも、彼女の弾幕は止まらなかったのです。
「っ!? なんでだよ!」
「あいつ……痛覚がないのかも……」
「まじかよ……厄介だな……」
痛みを感じない相手を、倒すにはどうすればいいでしょうか。言うだけなら簡単です。相手が動けなくなるまで殴り続けるか、一発で仕留めてしまえば良い。
でも、それをするには、手数も火力も足りていませんでした。急所を突くにしても、そもそも接近すらままならないのです。
せめて、この場にわたしさえ居なければ、撤退くらいは出来たと思うのですが……
「あぁもう! ウザってぇ!」
焦りが出てきた杏子ちゃんは、再び被弾し始めてしまいました。
「キョーコ!」
と叫ぶゆまちゃんの声にも余裕が無くなってきたように見えます。
やっぱり、遠距離からの攻撃手段が欲しいところです。ゆまちゃんの衝撃波のような『崩し』の攻撃ではなく、相手を『仕留める』ための攻撃が必要でした。
わたしの弓があれば……! わたしは必死に念じていました。この状況を打開するための力が欲しい。そのための土台はあるはずです。今朝、魔法の練習をしていた時、確かに使えそうな手応えを感じていたのですから。
わたしは、魔法少女ではないけれど、ほむらちゃんが、今まで溜めてきた、因果の糸があれば、きっと使えるはず!
わたしはその可能性を信じることにしました。そして、イメージします。この窮地を脱するためのイメージを。わたしの手には弓があり、矢がある。あとはそれを射るだけなのです。
『できる……絶対に!』
わたしは目を閉じ、意識を集中させました。すると、手に身に覚えのある感触が現れました。わたしはゆっくりと目を開けます。そこには、わたしが思い描いた通りの物が握られていました。
うん、間違いありません。これは夢の中のわたしが、いつも使っていたものです。わたしは心の中でガッツポーズをしました。
でも、喜んでる暇はありません。わたしは再び辺りを見回ります。
「クソ! こんなところで……!」
「キョーコ! ……うぅ!」
二人はもうボロボロでした。明らかに弾幕の密度が上がっているのです。ゆまちゃんが回復を挟む隙すら、無くなってしまっていました。
それを見たわたしは、すぐさま弓を番えます。普通に射ってもだめです。どうせ急所は躱されるでしょうし、多少ダメージを与えたところで、あの魔女が弾幕を緩めることは無いのですから。
……よし、ここはあれを使ってみましょう。かなり難易度の高い技ですが、やり方は覚えています。わたしは弓を上に向けて、高濃度な魔力が込められた矢を放ちます。
『マジカルスコール』
放たれた光の矢が上空で弾け、無数の光の雨となって降り注ぎました。
魔女もすかさず、周りの拳銃で身を守りますが、その多くが破壊されていきます
「っ! 今だゆま! アイツを射程外まで吹き飛ばせ! 一旦仕切り直すぞ!」
「うん! わかった!」
そう言ってゆまちゃんは、思っきりメイスを振り下ろし、今日一番の衝撃波で魔女をはるか遠くまで吹き飛ばしました。
出来れば今のうちに仕留めたいところでしたが、二人は満身創痍ですし、わたしも大技使ったばかりで、次の攻撃の準備が出来ていません。そんな状況でな仕方のない事でした。
慌てる必要はありません。わたしが魔法を使えるようになった今、あの魔女を倒すための火力と手数は手に入ったのですから。欲を出さずに、しっかりと治療と装塡を終わらせてから、確実に仕留めましょう。そう考えていると、杏子ちゃんがわたしに声をかけてきました
「まどか……アンタ契約しちまったのか……」
杏子ちゃんは、悲しげな顔でこちらを見て来ます。まあ、そう思うよね。さっきのわたしの攻撃もそうですが、今のわたしの姿、どう見ても魔法少女の衣装なのです。でも、そうでは無いのです。
「ううん、わたしはキュゥべえとは契約してないよ。この力にはちょっと事情があるんだけど……そのことについては後で話すから、今はあの魔女を倒さない?」
と、わたしは言いました。本当はもっと詳しく話したいのですが、時間がありませんから。すると杏子ちゃんは
「そうだな……アンタのお陰で、あいつの銃はかなり減った。治療も終わったし、今がチャンスだ。行くぞゆま!」
と言って槍を構えました、ゆまちゃんも
「うん! まどかお姉ちゃんも一緒に戦うんだね!」
と嬉しそうな声を上げました。そうして3人になったわたしたちは、先程ゆまちゃんが吹き飛ばした、赤い魔女のいる方角に向かって行くのでした。
「銃を減らしたとはいえ、近接攻撃でアイツを仕留めるのは難しい。だから、トドメはまどか、アンタに任せるぜ。ゆまもそれで良いよな?」
「もちろんだよ。キョーコ」
杏子ちゃんの言う通りでした。あの魔女は、危機感が高まった時ほど、最寄りの敵に対して、射撃精度を上げて来ます。そうなると近付くのは難しいです。
マジカルスコールで、もう一度、銃の数を減らす手もありますが、流石にもう、警戒されているでしょうし。なので、わたしは強く頷いてこう言いました。
「わかった! 任せて!」
それからも作戦を練りながら、慎重に魔女に接近していくわたし達。やがて、魔女もわたし達の接近に気付き、銃口をこちらに向けてきました。
でもその数は、まだわたしが減らした時と比べて、そんなに増えてはいません。その程度の弾幕であれば、ゆまちゃんの衝撃波だけで十分相殺できました。
多少『漏らし』が出ても、杏子ちゃんなら、避けられるし、わたしも魔法で防げます。それを確認した杏子ちゃんは、『漏らし』を掻い潜り、魔女に肉薄して行きました。
流石に近接戦は、彼女の土俵です。槍を振るう速度もどんどん上がって行きます。わたしの援護射撃も、少しは効いているみたいでした。
「オラァ!」
そう叫びつつ、槍の穂先で突くように見せかけたフェイントからの、横薙ぎの一撃を叩き込みます。
しかし、それは寸前のところで回避されてしまい、魔女はわたしたちに向けていた銃口も全て杏子ちゃんに向け直しました。それを見て、杏子ちゃんはすぐさま離脱すします。
「大した防衛本能だ、咄嗟にあたしへ攻撃を集めるなんてな。でもさ、流石にやりすぎだぜ?」
「ゆまから目を離したね!」
その瞬間、ゆまちゃんが、再び衝撃波で魔女を吹き飛ばしました。
当然のことでした、幾らあの魔女の視野が広くとも、わたしの援護射撃を捌きながら、全銃口を杏子ちゃんに向けている状態で、他に意識を割けるほどのリソースはありません。つまり、ゆまちゃんの動きを見てる余裕なんて無いはずなのです。
それは、魔女自身も分かっていたみたいですが、分かっていても、警戒心を上げざるを得ないほど、杏子ちゃんの槍術が脅威だったということなのでしょう。
あとは、魔女が宙を舞っている間に、わたしが仕留めるだけです。わたしは弓に魔力を込めて行きます。生半可な攻撃では、また防がれます。今のわたしに出来る最高の一撃を放つ必要がありました。魔女も、わたしの魔力に気付いたみたいですが、もう遅いです。先程ゆまちゃんが魔女を吹き飛ばした時点で、わたしは、この技の、有効射程ギリギリまで、バックステップで下がっていました。魔女の弾丸が、届く距離ではありません。
『スターライトアロー』
そう唱えた瞬間、空高く浮かんでいた魔女の体は光の矢によって貫かれ、グリーフシードだけ残して、消えて行きました。
「やった……勝った……」
「おう、お疲れさん」
「わーい! やったよキョーコ!」
「ああ、よく頑張ったな、ゆま。さて、まどか、あんたの事情ってのを聞かせてもらうぜ? ついでにあたしらのことも話してやるよ」
「うん、そうだね……ありがとう……」
そうして、わたし達は変身を解除しました。時間ももう遅いですが、わたし達は、一旦近くの公園で、落ち着いて話すことにしました。
「えっと、どこから説明したらいいかな……」
「ゆっくりで大丈夫だからな?」
「ありがと、じゃあまずは……」
わたしは二人に、自分が見た夢の話をし始めました。
暁美ほむらちゃんと言う魔法少女が、わたしを助けるために何度も時間遡行していること、その障害に、ワルプルギスの夜という魔女がいること、恐らくそれによって溜った膨大な因果によって、わたしが魔法を使えるようになったことなどを話しました。
ただ、ソウルジェムが魔法少女の魂で、それが濁ると魔女になってしまうことは、まだ話していません。
「そんなことが……だからか……」
「えっ? どういうこと?」
「いや、実はあたしも今日変な夢を見たんだよ。あんたが見たものほど、具体的なものじゃなかったけど、あたしの知り合いが死んでゆく様子だけはハッキリ見えた」
そうだったんだ……わたしの見た夢ほどの情報量は無かったみたいだけど、それでも杏子ちゃんにも影響が出ているなんて……
もしかして、他のみんなも見てたりするのかな?
……明日辺りさやかちゃんにも聞いてみようかな? そんなことを考えていると、ゆまちゃんが泣きながら、こう言います。
「うう……ゆまもみたよ……ゆまが知らないうちに、キョーコが死んじゃう夢……そんなの嫌だと思って、キュゥべえと契約したの……ごめんねキョーコ……」
「その話はもう、終わっただろ? 確かにあん時は、あたしも腹立ったけどさ。実際あたしはお前に助けられた訳だし、感謝もしてるんだ。ありがとな、ゆま」
そう言ってゆまちゃんを慰める杏子ちゃん。
ゆまちゃんはしばらく泣いていましたが、やがて落ち着いてきたみたいです。
「グスッ……ほんとにキョーコは優しいよね……」
「うるせぇよ」
杏子ちゃんは照れくさそうにそっぽを向いてしまいました。
「それで、まどかお姉ちゃん! 他に何か分かったこととかないの?」
「うーん……さっきの魔女の異常な強さを見て、ほむらちゃんの時間遡行が、悪い意味でも影響してるのかもって思ったくらいかなぁ……」
これはあくまで憶測に過ぎません。でも、そう考えると辻妻が合うのです。
今まで、ほむらちゃんのしてきたことは無駄ではなかったと思います。でも、決して良い方向にばかり働いたとは言い切れません。
「まあ、それは今考えててもしょうがないんじゃないか? それよりアタシはあの夢について、まだまどかに聞きたいことがあるんだけどさ……」
「どうしたの?」
杏子ちゃんは聞き辛そうにしなが
ら、口を開きました。
「あー、その……なんだ、アンタの友達っぽい奴のソウルジェムが濁りきった時、グリーフシードっぽいものになってた気がするんだけど、あれはそういう事なのか? 確かゆまも見たって言ってたよな?」
「うん、ゆまも見たよ。まどかお姉ちゃん、教えて欲しいな?」
二人は真剣な表情でこちらを見つめて来ます。やっぱり、気になるよね……。
どの道、何れは話さなくてはならなかったです。覚悟を決めて、わたしは答えを口に出しました。
「ソウルジェムは、魔法少女の魂そのもの。魔法を使ったり、絶望したりして、濁りきった時、ソウルジェムはグリーフシードに変質して、魔法少女は魔女となる……キュゥべえは、インキュベーターは、みんなを騙してるの」
わたしの言葉を聞いて、二人は驚愕の表情を浮かべていました。無理もありません。わたしだって、最初は信じられませんでしたし。
「じゃあ、魔法少女は何の為に戦ってんだよ!?」
「.これも言いたくなかったけど、キュゥべえは、魔法少女の希望が、絶望に相転移する時、膨大なエネルギーが発生するって言ってた。それを回収して宇宙の寿命を伸ばすことが、あの生物の目的なの」
「.つまり、あたしたちはあいつの家畜みてぇなもんてことか?」
杏子ちゃんの声が低くなります。
「そうかもしれない……ごめんなさい……」
「おいおい、なんでまどかが謝るんだよ? お前は悪くねぇだろうが!」
杏子ちゃんは少し怒ったように言って来ます。
でも、わたしには、二人の気持ちがよく分かるから…… だから、言わずにはいられませんでした。
「あーもう! 良いから顔上げろって! あたしたちはあんたを責める気なんてないんだからさ! だからそんな辛そうな顔をしないでくれよ……」
わたしの顔を上げさせて、優しく語りかけてくる杏子ちゃん。この子は本当に優しい子です。
「ゆまも、気にしてないよ? だって、魔法少女じゃなくても、人はいつか死んじゃうから……いつか、魔女になっちゃうとしても、それは今じゃないよ。キョーコとまどかお姉ちゃんがいれば、ゆまはまだ元気だもん!」
そう言って笑うゆまちゃん。
二人とも、ありがとう。わたしは決めたよ、絶対に二人を魔女になんてさせない。二人だけじゃない、わたしの友達みんな、わたしがソウルジェムを浄化してみせる!
わたしは改めて決意を固めたあと、二人とこれからのことについて話し合いました。
「二人とも、今日は本当にありがとう!」
「おう、こっちこそな! またいつでも呼んでくれよ!」
「ゆまもまた遊びたいなぁー」
別れ際、笑顔で手を振る、杏子ちゃんと、ゆまちゃん。
わたしは二人が見えなくなるまで見送った後、家に帰り、自分の部屋に戻りました。そして、今日のことを振り返りながら、色々と考え始めました。
まず、杏子ちゃんやゆまちゃんと、こんなに早く仲良くなれたことは、大きな収穫だったと思います。
次に、魔法を使えるようになったことです。あの時は喜ぶ暇もありませんでしたが、冷静になって考えてみると凄く嬉しい。これで、キュゥべえと契約しなくても、戦えるようになりました。
……ただ、幾つか不安もあります。まずは、キュゥべえのことです。ソウルジェム無しに魔法を使えるわたしに対して、あの生物が、何の手も打たないとは考えられません。恐らく、今までの時間軸でほむらちゃんにそうしたように、わたしのことも、警戒するようにマミさんに言い付けるでしょう。そして、泡良くば、わたしに契約を持ちかけるはずです。
「そうなると難しいなぁ……」
マミさんは、キュゥべえのことを、家族同然に見ているところがあるので、もし、杏子ちゃんや、ゆまちゃんと同じ夢を見ていたとしても、わたしたちよりキュゥべえの方を信用すると思うのです……
「さやかちゃんはどうだろう?」
わたしのことを信じてくれるかな? 親友だし、信じてくれると思いたいですが、自信が持てません……
取り敢えず、あの夢を見たかどうかだけでも、聞いて置こうと思います。
「何よりの問題は、ワルプルギスの夜だよね」
今のわたしの魔法は、大体三周目のわたしと同程度の出力しかありません。正直、ワルプルギスの夜が相手では、まだ心もとないのでした。
勿論魔法は、まだ、使えるようになったばかりですし、これからの訓練次第で、何倍にも強くなれると思いますが、それだけであの魔女を倒せるかと言えば、微妙なところでした。
「これに関しては、早くほむらちゃんと相談したいな……」
ただ、ほむらちゃんは何時も色々暗躍していたので、適当な時間に家を訪ねたとしても、会える可能性は低い気がします……
彼女は何時も、あらゆる魔女を出現と同時に倒していたみたいですが、具体的な場所と時間はよく知りません。ほむらちゃんが、帰ってくるまで、家で待ったりしてみようかな?
「ふぅ、考えてたら疲れちゃった……明日以降にやることも何となく決まったし。今日はこの辺にしとこうかな」
こうしてわたしは、一旦考えることをやめて、明日に備えて英気を養うことにしました。
お読み頂きありがとうございます。
最初に仲間になったのは、杏子とゆまでした。
これからどうなるのでしょうか……
第2話『和解しよう!』
お楽しみに!
因みに、この作品の設定上、ゆま以外の、スピンオフキャラは登場しません。