契約なんかしなくても、奇跡の力を使ってみせる!   作:空豆熊

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第2話 和解しよう!

 杏子ちゃん、ゆまちゃんの二人と友達になった翌日の放課後。わたしは、さやかちゃんに、先日変な夢を見なかったかどうか、それとなく聞いてみました。すると……

 

「変な夢? そう言えばなんか薄暗くて、怖い夢を見た気がするけど……え? まどかも見たの? どんな内容だったっけ?」

 

 どうやら、さやかちゃんも、杏子ちゃんやゆまちゃんと同じく、断片的に夢を見ていたようです。なので、わたしは詳細を話すことにしました。

 

「え……? 魔法少女? 時間遡行? うーん……信じらんないけど、まどかの言う事だしなぁ……あ! そうだ! まどかも魔法を使えるんだよね? ちょっとそれ見せてよ!」

 

 思っていたより話が早いかも。わたしは人目が無いことを確認して、さやかちゃんの前で変身して見せました。さやかちゃんはそれを見て目を丸くしましたが、すぐに笑ってくれました。良かった……。

 

「そっか……そういうことか……うん。信じるよ」

 

 さすが、親友のさやかちゃん。これで少し安心出来ます。わたしのお願いも聞いてくれると嬉しいのですが……

 

「それにしてもうーん……願いごとが叶ったり、魔法少女になれるのは、良いなって思っちゃうけど、魔女になるのはやだな……」

「うん、特にさやかちゃんは、殆どの時間軸で、魔女化してたから、あんまり契約して欲しくないんだよね」

「うげ、まじかぁ……じゃあやめとくかなぁ。あー、でも恭介の怪我のことも諦めきれないんだよなぁ……」

 

 やっぱり、そう簡単にはいかないよね。それでもわたしは、さやかちゃんには契約しないで欲しいって思ってる。少なくとも、さやかちゃんが、絶望を乗り越えられるようになるまでは……

 

「さやかちゃん。ここは一つわたしに賭けてみて貰えないかな? 近いうちにきっと、普通の人のことも治療出来るようになって見せるから!」

「え!? いやそんな無茶なこと言われても……まぁいいや、わかったよ。あんたがそこまで言うのも珍しいし……約束だよ?」

「ありがとう! さやかちゃん!」

 

 ひとまずこれで、さやかちゃんが、契約のことを保留にしてくれることになりました。わたしの事を信じてくれたさやかちゃんの為にも、絶対に、上条君を治してみせる! 

 後はマミさんですが、マミさんのところへ行こうとしたその時、携帯電話にメールが届きました。差出人は杏子ちゃんです。内容はこうです。

 

『悪いまどか。マミの奴と和解しようと思ってるんだけど。今日これから会えるかい?』

 

 との事です。杏子ちゃんが自分から、マミさんと和解しようとしてくれるとは……でもそっか、考えてみれば、杏子ちゃんが動く切っ掛けになりそうなことは色々ありました。

 ゆまちゃんを守るための後ろ盾が欲しいと言う考えもあるでしょうし、わたしの目的に協力して欲しいとも思ってくれているのでしょう。それに何より、マミさんが魔女化したり、死んでしまう夢をみて、何とかしたいと強く思った可能性もあります。そう思うと、少し嬉しいです。

 

『もちろん大丈夫だよ。わたしもこれからマミさんに会いに行くつもりだったの。場所はどこが良いかな?』

『そうか。なら駅前にある公園に来れるか? そこで待ち合わせようぜ』

『了解。ちょっと待っててね』

 

 わたしは杏子ちゃんとのやり取りを終えて、すぐに移動を開始した。杏子ちゃんと会う前に、マミさんの説得の準備をしておかないと。

 わたしは近くのスーパーに立ち寄り、買い物を済ませて、そのあと、杏子ちゃん、ゆまちゃんと合流すべく、駅前の公園に向かった。

 

 

 

「……それで、話って何かしら? 佐倉さん?」

「ああ、単刀直入に言おうか。あたしらはまどかの仲間になった。だから、あんたも仲間になれ。そうすりゃお互いハッピーだろ?」

「……随分乱暴な言い方ね」

 

 ……あちゃー、いきなり喧嘩腰だなぁ。

 杏子ちゃんらしいと言えばらしいですが……

 

「あんたもあの夢は見てるはずだ。緊急事態なのは分かるだろ? それに、まどかに対しても、悪い印象は抱いてないんだろう? だったら一緒に戦おうぜ」

「確かにあなたたちの夢は見たわ。それに、鹿目さんも良い娘だと思う。丁寧に挨拶をしてくれて、私の好きな茶葉も差し入れしてくれたもの。でも、キュゥべえが警戒するように言っていたのよ」

 

 やっぱり、言われていたみたいです。でもそれは仕方ないことですよね。キュゥべえ的には、何としてでも、わたしを追い詰めて、契約を持ち掛けたい所でしょうし。

 

「キュゥべえの言うことなんて信じるなって。まどかは良いヤツだぞ? 疑うだけ損だって」

「……はぁ……私も夢を見た以上、あなたたちが嘘をついているとは思えないし、信じたいと思ってるわ。でも、それでも私は、キュゥべえの事を疑いたくない」

 

 やっぱり、マミさんにとって、キュゥべえの存在はとても大きいようです。だからこそ、わたし達を、信用するわけにはいかないのです。

 でも、どうしよう……これじゃ説得出来ないよ……うーん……そうだ!

 わたしは、チラッとゆまちゃんの方に視線を向けます。すると、ゆまちゃんがわたしの方を見て、ニコッと笑いました。うん。これでいきましょう。

 

「……ねぇ、マミお姉ちゃん。キョーコも、まどかお姉ちゃんも、マミお姉ちゃんが心配なんだよ?」

「え……?」

「だってそうでしょ? キョーコ達は、マミお姉ちゃんが死んじゃう夢を見ちゃって、すごく不安なんだ。ゆまだってそうだよ! だから、お願い! ゆま達を信じて!」

「ゆま……ちゃん……」

 

 ゆまちゃんから手を握られて、マミさんはちょっと困っています。うんうん、ゆまちゃんの言葉を無碍には出来ませんよね。わたしはそこに畳み掛けるようにこう言います。

 

「ゆまちゃんの言う通りです。それにね、マミさん。あなたもあの夢を見たのなら、魔法少女の契約は、キュゥべえが言うほど綺麗なものではないことは、薄々気付いているのではないですか? それでもキュゥべえを信じるんですか? 本当に?」

「……っ」

 

 マミさんが押し黙っています。もうひと息かな? 

 

「マミさん。わたしはあなたのことが大好きです。あなたと一緒に戦うことが出来ればどんなに嬉しいか。それに、あなたがいなくなったら悲しい。寂しいんですよ。だから、もし良ければ、わたし達に協力してくれませんか? 絶対に後悔はさせませんから」

 

 わたしは最後に、笑顔を浮かべながら、そう言いました。すると、マミさんの瞳から涙が流れ始めます。そして、そのままわたしのことを抱きしめて来ました。

 あ、あれ!? まさか泣いちゃうなんて思ってなかったよ。ちょっと強引過ぎたかな……。

 でも、良かった。一番説得が難しそうだった、マミさんが味方になってくれそうです。

 

「ごめんなさい……鹿目さん……あなたはこんなにも私のことを想ってくれていたのね……それなのに私は……酷い態度を取ってしまって……」

「いいんですよ。それだけマミさんにとって、キュゥべえの存在が大切だったんですよね? そのキュゥべえを疑えなんて言われたら、誰だって反発したくなっちゃいますよ」

 

 よしよしと、頭を撫でてあげます。先輩に対して失礼な気もしますが、マミさんはされるがままになっていました。

 ひとしきり泣いたあと、マミさんは杏子ちゃんにも謝っていました。

 

「佐倉さんもごめんなさい。それとありがとう。私を仲間にしたいと言ってくれて。嬉しかったわ」

「あー、いや……あたしこそ悪かったよ。そもそも勝手にあんたから離れたのはあたしの方なのにさ」

 

 杏子ちゃんが照れくさそうにしています。やっぱり素直じゃないなぁ。

 そんな杏子ちゃんを見て、マミさんはふふっと笑ったあと、ゆまちゃんの方を向きました。

 

「ゆまちゃんもありがとう。あなたのおかげよ」

「へへーん! ゆま頑張ったもん! ねぇ、まどかお姉ちゃん! ゆまのこと、褒めてくれる?」

「うん! ゆまちゃん偉いよ! よく言えたね! ホント凄いよ!」

 

 わたしは満面の笑みを浮かべながら、ゆまちゃんの頭を優しく撫でました。ゆまちゃんも、気持ちよさそうな表情をしています。

 どうやらゆまちゃんは、時々こうして、甘えん坊になる時があるみたいです。そういう時は、しっかり可愛がってあげないと行けませんね。

 

「おいおい、なんでそこであたしじゃなくてまどかなんだ?」

「え? キョーコも褒めてくれるの? やったー!」

 

 杏子ちゃんが少し不貞腐れたような顔をしています。まあ、日頃の行いだよね……仕方ないよね……

 

「さて、鹿目さん、あなたが知っていること、特に、魔法少女の真実について教えて貰えるかしら? まだ、キュゥべえのことを疑いたくない気持ちはあるけれど、あなたを信じると決めた以上、もう目を背けることはしないわ」

 

 マミさんの目にはもう迷いはありませんでした。強い意志を感じます。

 うん。これで魔法少女の真実を知ったとしても、きっと大丈夫でしょう。

 

「もちろんです。でもわたしから言う前に、マミさんご自身の推測を聞いても良いですか? 人から言われるより、自分で考えた方が納得出来ると思うので」

 

 杏子ちゃん達のときと同じです。なるべく精神的なダメージは、受けて欲しくありません。

 まあ、あの時は、わたしが誘導したのではなく、杏子ちゃんたちの方から、言ってくれた訳ですが。

 

「わかったわ、あの夢を見てから、ずっと考えていたの。ソウルジェムが濁りきってしまったらどうなるのかを」

 

 マミさんは一度深呼吸をして話し始めました。

 

「ソウルジェムの濁りと、グリーフシードの濁り方は、よく似ているなとは前から思っていたの。それで、グリーフシードが濁りきった時って、孵化して魔女が産まれるでしょう? だから、もしかしたら、ソウルジェムが濁った場合も、同じことが起こるのではないかと、冗談交じりに考えたことはあるわ。あの時はまさかそんな訳ないと思っていたのだけれど……」

 

 流石マミさんです。まさか、夢を見る前からそこまで考えていたなんて……

 答えに辿り着いていることはわかりましたし、わたしから言ってしまっても問題なさそうですけど、まだ、あの夢がどんな風に、その推測を強化したのか、聞いていません。わたしは次のマミさんの言葉を待ちました。

 

「……夢の中で、私はこんな事を言っていたわ『みんな死ぬしかないじゃない!』ってね。なぜ死ぬしかないと思ってしまったのか? それを考えたとき、さっき言った説を、ふと思い出したのよ。もし、ソウルジェムが、そのうち魔女を産むのだとしたら、それを知って絶望した私が、孵化する前に、破壊してしまおうと考えてもおかしくないと。そしてその行為が、魔法少女を殺すことになるのだろうともね」

 

 よりによってその夢を見ちゃったかぁ……できれば見てもらいたくなかったなぁ…… あの時暴走したマミさんを、わたしが殺したことを思い出すと、胸が痛くなります……

 

「信じたくなかったわ……キュゥべえが私を騙していたこともだけど、私が今までやってきた事ってなんだったのかなって……だから私はその考えに蓋をしてしまったの……」

 

 そうだろうなぁ……マミさんはずっと1人で戦ってきたんだもんね。それが街を守るためのことなのだと信じて……それなのに、いずれは、自分が街の人を、襲う側になるかもしれないなんて、考えただけで嫌になります。それでもわたしは、マミさんがしてきた事は無駄なんかじゃないと思っています。それを伝えたかったのです。

 

「マミさん、夢の中のわたしは、いつもあなたを、尊敬してました。あなたのようになりたいって思っていました。それは今でも変わりません。だって、あなたは自分の身を犠牲にしてまで、この街を守ってきたんですもの。あなたに助けられた人は沢山います。それ自体は、何も変わっていないんです」

 

 これは嘘偽りのない本当のことです。

 実際夢の中のわたしは、どの時間軸でもマミさんのこと尊敬していましたし、魔女化のことを知ってからも、それは変わりませんでした。

 マミさんが暴走した時間軸だってそうです。だからこそ、あの時は本当に辛かったのです。もうあんな悲劇は繰り返したくありません。

 

「鹿目さん……」

 

 マミさんは俯いていた顔を上げて、わたしの目を見ました。

 大丈夫だよマミさん。もうわたしがいるから。絶対に、あなたの未来を絶望で染めたりはしないから! 

 それを伝えるために、わたしはそろそろ答え合わせをすることにしました。

 

「マミさんの推測は、何も間違っていません。濁りきったソウルジェムが魔女を産むのは事実です。でも、あなたを魔女になんて、絶対させません。キュゥべえの思い通りになんて、させない!」

 

 マミさんは驚いたように目を丸くしたあと、優しく微笑んでくれました。

 

「ありがとう、鹿目さん。今日は本当に、あなたに会えて良かったわ。あなたが味方でいてくれるなら、私はまだ頑張れる。そう思うくらいには、心の底から感謝しているのよ?」

 

 そう言ってくれるのは嬉しいですけど、照れるからやめて欲しいです……

 

「あー、なんだ、まどかも言ってる通り、あんたが魔女になることは無いと思うぞ? あたしは昨日、こいつが不可能を可能にした瞬間を、目の前で見たばかりだからな。契約しなくても魔法使えんじゃね? って思い立って、本当に使っちまうような奴なんだ。そんなまどかが言ったことなら信用できるだろ? なあマミ?」

 

 杏子ちゃんまで……恥ずかしすぎるよ…… そんなわたしを見て、ふふっと笑ったマミさんは、

 

「そう、それなら安心ね」

 

 と言ったあと、真剣な表情に戻って、

 

「まだ、魔女の話しか聞いていなかったわね。鹿目さん、私はもう大丈夫だから、あなたがあの夢について知っていることを、教えてもらえないかしら? 何か力になれるかもしれないわ」

 

 と言ってくれました。

 

「はい。わかりました。それじゃあ話しますね。あの夢の正体を……」

 

 そこから、わたしは夢の中での出来事を話し始めました。

 あの夢の世界で、わたしは、魔法少女として生きていたこと。わたしが死んじゃって、ほむらちゃんが、キュゥべえと契約して時間を巻き戻したこと。でも、何度巻き戻しても、わたしは死ぬか、魔女化するかのどっちかだったこと。それでもほむらちゃんは諦めずに、時間遡行を繰り返したこと。そして、繰り返し続けた先に今があること。わたしが話し終わると、マミさんは。

 

「そう……だったのね……暁美さんは……」

 

 そう呟いた後、しばらく黙ってしまいました。

 

「キュゥべえは、その娘の事も警戒するようにって言っていたわ。『僕と契約した記録のない、イレギュラーな魔法少女』だと。でも、本当は契約していたのね。時間遡行する前の、最初の時間軸で……」

 

 その通りです……この時間軸のキュゥべえが知らないだけで、ほむらちゃんはキュゥべえと契約していたのです。わたしを助けるために……

 

「キュゥべえがあんな事を言うから、どんな娘なのかと思っていたけれど、その娘はただ、鹿目さんを助けたい一心で行動しただけなのね。きっとその娘は、とても優しい人なのね」

「はい。わたし自身は会ったことないですけど、大切な友達です」

 

 だから絶対、ほむらちゃんの戦いは終わらせてみせる。

 

「鹿目さん、あなたのお陰でよくわかったわ。ありがとう。私もあなたの目的、全面的に協力するわ。暁美さんとも協力して、一緒にワルプルギスの夜を倒しましょう!」

「はい! よろしくお願いします! マミさん!!」

 

 こうして、わたし達は仲間になりました。マミさんと話し終わったあと、わたし達四人は見滝原駅近くの喫茶店に来ていました。

 ここはマミさんのお気に入りのお店で、よくここでお茶をしているらしい。そこでわたし達はこれからの方針を決めることにした。

 

「なるほど……暁美さんの時間遡行の影響は、私達の夢だけではなく、魔女の強さにも及んでいるかもしれないのね。確かに、私も昨日その魔女と交戦したけれど、強すぎて撤退を強いられたわ。けれど、どうして時間遡行を繰り返しただけで、あそこまで強くなるのかしら?」

「ああ、あたしも昨日言われた時は流したけど、気になってはいるんだよなぁ。なんであいつはそんなに強くなってるんだろうな? つか、そもそも、過去の時間軸であいつは居たのか?」

 

 杏子ちゃんもやっぱり、気になっていたみたいです。ほむらちゃんが時間を巻き戻してるせいで、魔女が強くなっちゃってるなんて、考えたくありませんでしたが、それとは別に、一つ仮説を立ててしまっている自分もいます。わたしはそれを話すべきか迷いました。でも、隠すわけには行きません。

 

「……多分、わたしと同じなんだと思います。ほむらちゃんが時間遡行する前のわたしは、まだ普通の魔法少女でした。でも、彼女が時間遡行を繰り返すにつれ、わたしは強力な魔法少女になれるとキュゥべえから言われるようになりました。多分、ほむらちゃんの時間遡行の目的がわたしにあったから、全ての時間軸の因果糸が、わたしに集まったんです。でも、ほむらちゃんの目的の障害となる、魔女にだって、因果糸が集まる理由はある。それでも、因果糸そのものは、何かしらの切っ掛けが無ければ、表面化しないのが普通なので、今までの時間軸では問題無かった。でも今回は、溜まりすぎた因果糸が、漏れ出してしまっているんだと思います。わたしがキュゥべえとの契約と言う切っ掛けを経ずとも、魔法を使えてしまうくらいに……そして、その因果は、既存の魔女を強化するだけでなく、新たな魔女まで、生み出してしまったのだと思います」

 

 わたしがそう言うと、みんな驚いたような顔になります。

 当然だよね……この仮説を考えたわたし自身でさえ…… まだあまり飲み込めていないのですから……

 俯くわたしの背中に、杏子ちゃんが手をポンと置きながら言いました。

 

「まどか、あんま気を落とすな。確かにほむらって奴の時間遡行の影響は、良いことばかりじゃねぇだろうさ。でもよ? 悪いことだけじゃないはずだぜ。だってそうだろ? あたしたちがこうして集まったんだ。それは間違いなくいいことだよ」

 

 ゆまちゃんもそれに同意するかのようにうなずきます。

 マミさんも、優しく微笑みかけてくれました。その言葉を聞いて、少し心が軽くなった気がします。

 そうだね、わたしは一人じゃないんだ。

 みんながいれば、きっと大丈夫!! わたしが元気を取り戻したところで、マミさんが話し始めました。

 

「まずは現状の確認ね。鹿目さんの仮説が本当だとしたら、一番影響を受けているのは、ワルプルギスの夜の筈だわ。鹿目さんが生き残る上での、一番の障害だもの。そう考えると、普通の魔女の、増加と強化は、ある意味僥倖とも言えるわ。ワルプルギスの夜を倒すうえで、鹿目さんのパワーアップと、グリーフシードの調達は、必要不可欠だもの」

 

 なるほど……確かにそうかも知れません。ワルプルギスの夜と戦うために、今のわたし達がやるべきことは、あの魔女を、一発で仕留めるための火力を用意することです。

 下手に追い込んで、本気出されてしまうと、一瞬で街が壊れてしまいますからね。

 そのために、わたしはこれからの一ヶ月で、今より何倍も力を引き出せるようになるために、訓練と戦闘を繰り返さないと行けませんし、グリーフシードが持つ魔力もバカに出来ません。まあ、グリーフシードの魔力を火力に変換するには時間がかりますが……そこは、ほむらちゃんの時間停止魔法さえあれば解決します。つまり、一ヶ月後に、ワルプルギスの夜に、勝てるかどうかは、これからどれだけの強い魔女と戦えるかどうかに、かかっているってことになります。

 

「次に暁美さんについてだけど、なるべく早いうちに接触して、仲間になって貰わないと行けないわね。何せ、あんなに魔女が強化されてるのだもの。幾ら時間停止魔法を使えるとはいえ、一人では危険すぎるわ」

 

 そうなんだよね……この時間軸の、やたら強い魔女は、ほむらちゃんにとっても、イレギュラーなのは間違いないのです。それでも、ほむらちゃんなら、そう簡単には死なないと思いますが……

 

「でも、どうやって接触すればいいのかわからないです。ほむらちゃん、確か夜も活動していたはずなので……」

「じゃあ手分けして探そうぜ。流石に今の状況で単独行動は危ねぇから、二人一組で行こう。あたしとゆまは、あんまり風見野から離れねぇ方が良いから、まどかは、マミと組んでくれ」

 

 杏子ちゃんの提案に、わたし達は賛同した。ほむらちゃんを見つけるための手がかりが無い以上、今はそうするしかありません。

 そして、わたし達四人は二手に別れて、町中を探し始めました。

 

 

 

***

 あたしとゆまが風見野の方へしばらく歩いていると、一気に静かになった。

 マミとまどかが心配ではあるが、風見野市を放っとく訳にも行かねぇからなぁ……

 それにあいつらは強い。余程のことがない限り負けることは無いだろう。マミは言わずもがなだし、まどかの魔力量も、昨日共闘した時より、増えていたしな。立ち回りにも特に危なげは無かった。

 それよりもアタシ達自信の心配をしないといけないかも知れねぇ。昨日戦ったような魔女が出てきたら、あたしとゆまだけで倒せるとは思えねえからな……

 まあ、昨日の変身前のまどかみてぇな一般人さえいなければ、撤退くらいは出来ると思うんだが……。

 

「どうすっかなぁ……ほむらって奴探すにしても、闇雲に歩き回るのもな……」

「んー? 取り敢えずゲームセンター行く?」

「何でだよ!?」

「だってキョーコ言ってたでしょ? 夢の中で、キョーコが良く行く場所で、遊んでる時に、誰かが声をかけてきたって」

 

 言われてみれば確かにそうだ。最初は、何であんなクソどうでもいい事覚えてんだと思ったもんだが、そいつの外見は、まどかから聞いた、ほむらの特徴と一致していた気がする。あんま覚えてねぇけどな……だからと言って、ゲーセンに行くのは違う気がする。そもそも、そんな場所に行ってる暇なんて無いんだよ! だが、このままでは何も進展しないのもまた事実だ。

 

「しゃあねぇ、行ってみるか!」

「うん!!」

 

 そうと決まれば話は早い。あたしとゆまは近くのゲームセンターへと駆け出した。

 

「着いたぞ!! ここだ!!」

「わぁ~凄い大きいね! 早速入ろぉ!」

 

 そう言うなり、ゆまは店内に入って行った。ホント元気になったもんだなあいつは。初めてあった時は、何もかも諦めたような目をしてやがったのによ。

 

「おい、待てよゆま!」

 

 あたしは慌てて後を追った。

 店に入ると、騒音が耳に飛び込んできた。うるせぇ……ここってこんなに騒がしかったっけか? 音に顔をしかめていると、奥の方から聞き慣れた音楽が流れてくるのに気付いた。

 これは……『コネクト』か……

 これは、あたしが魔法少女になったばかりのころ、好きだった曲だ。その後荒んだあたしは、綺麗事ばかり言う歌詞に苛ついたりもしたが、何だかんだ良い曲だ。

 そう言やこの曲の歌詞ってまどかとほむらの話に似てるよな……夢の中でほむららしき奴に、話しかけられた時も、この曲を遊んでたっけか。ちょっとやってみるか……

 

「おっしゃあああ!!! 来たあああ!! フルコンボだぜええ!!!」

 

 曲が終わると同時に、あたしはガッツポーズをとった。ゆまがパチパチと拍手をしている。

 

「流石キョーコ! すごいね!!」

「へっ! どんなもんだい!」

 

 ふふんと鼻を鳴らすと、後ろから視線を感じた。振り返ると、そこには見覚えのある顔があった。黒髪ロングで、目つきの悪い女。間違いない、こいつがほむらだ。

 

「ようあんたが、ほむ……ら?」

 

 あたしは呼びかけようとしたが、途中で言葉が途切れてしまった。理由は簡単だ。

 何故なら、そのほむらは、あたしが振り返った時には俯いていて、戸惑ったような声でこんなことを呟いていたからだ。

 

「奴らのことは対処しておいたのに、千歳ゆまが契約して、佐倉杏子と一緒にいるなんて……しかも、二人とも、まどか達と既に仲良くなっているし……ここは一体どう言う時間軸なの……?」

 

 あー、なるほどな……

 今までこいつが見てきた時間軸って奴とは、もう相当まどかの奴の行動によって、歴史が変わってる見てぇだからなぁ……

 勿論それら自体は、良い変化だと思うけど、その辺の事情をまだ知らねぇこいつが戸惑うのも無理はないか。だがまあ、それはこれからあたし達が教えてやれば良い。

 

「おーい! あんたが暁美ほむらだろ? ちょっと話を……」

 

 そこまで言ったところで、ほむらの顔がパッと上がり、驚いたようにこっちを見た。そしてこう叫んだ。

 

「どうしてあなたが私の名前を知っているの!? まさかキュゥべえの奴が……」

「いや違えって! まどかがあんたのこと覚えてたんだよ! あんたが気になってること、多分全部教えてやれるから、少し話を聞いてくれ!」

 

 あたしの言葉に、ほむらは戸惑いながらも、こくりと小さく首肯した。

 それを確認したアタシは、話をする前に一応自己紹介をすることにした。

 

「あんたはあたしのこと知ってるらしいけどさ、一応名乗っとくぜ。あたしは佐倉杏子だ。よろしくな」

 

 あたしはそう言ってから、ポケットに入れていた、ロッキーを差し出して、こう言葉を続ける。

 

「食うかい?」

「……いただくわ」

 

 あたしの手から袋を受け取り、一本取ってポリポリと食べ始めた。さて、話すとするか。

 つっても、詳細はまどか本人から聞いた方が良いだろうし、あたしからは簡単な説明だけして、後はあいつに任せるとするかね。




読んでいただきありがとうございます。
無事にマミが仲間になり、ほむらも登場しました。いよいよ、まどかと再会出来るのでしょうか……?

第3話『ずっと一人だった』
お楽しみに!
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