マミさんが仲間になってくれたその日の夕方。ほむらちゃん捜索のために、杏子ちゃん達と一旦二手に別れたわたしとマミさんは、暫く街中でほむらちゃんを探していましたが、中々見つからないので、一旦休憩することにして、お茶を飲みながら雑談をしていました。
「それでですねマミさん! この前その氷川きよしさんのライブに行ったんですけど、本当に凄かったんです! 氷川さんの歌唱力は勿論ですけど、照明の演出も、その曲の世界観をしっかり引き立てていて、もう本当に! 言葉では言い表せないぐらい素晴らしくて!」
「ふふっ、鹿目さんったらそんなにはしゃいじゃって」
興奮気味のわたしを見て、クスリと笑うマミさん。うぅ……ちょっと子供っぽ過ぎたかな? でも、仕方ないよ。一度演歌の話になったら、わたしは止まらないんだから……
「ごめんなさい、つい……」
「いいえ、全然気にしないわ。むしろ嬉しいぐらい。鹿目さんの意外な一面が見れたもの」
そう言って微笑んでくれるマミさんの顔を見ると、なんだか照れちゃいます……もう、今日は何回照れさせられたかわかりません。
「そろそろ、暁美さんの捜索を再開しましょうかしらね。また、強い魔女が現れていたら大変だもの」
「はい! 行きましょう!」
わたし達が席を立ち、再び街へ繰り出そうとしたその時でした。妙な魔力を感じたのは。
「……ん? マミさん、これって……」
「……ええ、魔女が近くにいるわね。それもかなり強力な奴だわ。昨日の魔女と比べても、遜色ないかも……」
うーん、今日も来ちゃったかぁ……しかも昨日のやつと同格って。あの魔女はわたしと、杏子ちゃんと、ゆまちゃんが、三人で力を合わせてやっと倒せた相手なのになぁ。
まあ、隣にいるマミさんは、かなりのベテランですし、わたしも昨日よりずっと、扱える魔力量増えたから、勝てるとは思いますけど……
「どうします?」
「出来れば佐倉さん達と合流してから挑みたいところだけれど、それでは被害者が出てしまうわ。鹿目さんさえ良ければ行きましょう」
「分かりました! それでは行きましょう!」
わたしもここで退く気なんてありません。街の人や、大切な人の命を脅かさせ無いためにも、早めに対処しなくちゃ!
こうしてわたしとマミさんは、杏子ちゃん達に連絡を入れた後、魔力を感じた方角へ向かいました。
向こうからも何か通知が来ていた気がしますが、確認している時間はありません。そして、10分後。遂に魔女の結界を見つけた。
「あれがそうみたいね」
「はい」
そこは、人気のない路地裏の奥にある、廃ビルのような建物の入り口でした。恐らくここ数日の間にできたものです。
「入りますか?」
「ええ、行きましょう」
マミさんの言葉を聞き、意を決して、入り口に向かって足を踏み出します。すると、突如として、辺りの風景が変わりました。
「うーん、やっぱり夢の中では、見た事ないやつです」
「そう……鹿目さんの知ってる魔女だったら楽だったのだけれど、仕方ないわね」
周りを見渡すと、そこには広大な草原が広がっていて、遠くの方には、RPGでよく見る魔王城みたいな建物が建っていました。
まるで本当にゲームの世界に入り込んだかのような感覚に陥ります。
「とにかく進みましょう。どんな魔女が出てくるのかわからない以上、慎重に行かないと」
「はい。わかっています」
警戒しながら魔王城の方へ一歩ずつ進んでいきます。今のところ特に変わった様子はありません。
でも、油断は禁物です。いつ何が起こってもいいように、武器である弓を構えておきます。
しばらく歩いていると、魔王城の前に、大群がいるのが見えました。このRPG風の魔女結界によく合う、ドラゴンの様な姿をした魔女が、ゲームでありがちな姿をしたモンスター風の使い魔を大量に従えています。
「数が多いですね……出来れば、近付かれるまえに、一掃してしまいたいところですけど……」
「流石にそれは厳しいわね……多少は『撃ち漏らし』を覚悟はしないと」
「ですよね……」
わたしとマミさんなら、大半は仕留められると思いますが、それでも、ある程度は残ってしまうでしょう……多少は近接戦の覚悟もしておかないと行けません。
それにしても、昨日の魔女の無数の拳銃といい、この魔女の使い魔達といい、この時間軸の魔女の物量は、どうなっているのでしょうか? 厄介極まりありません。
「とは言え、やることは変わらないわね。一発大技をぶち込んで、使い魔の数を減らしましょう」
「はい! 任せてください!」
幸いにも、まだこちらの存在に気付いた様子はありません。
ならば先手必勝です。わたしは魔力を高めて、矢を放つ準備をします。
「鹿目さん、行くわよ!」
「はい!!」
マミさんの掛け声と共に、わたし達は攻撃を仕掛けます。
『マジカルスコール』
『無限の魔弾』
マミさんが大量のマスケット銃を生成し、一斉に発射すると同時に、わたしは魔力を込めた一本の矢を放ちました。
放たれた矢は分裂していき、マミさんの攻撃と合わさり、雨のように降り注ぎます。その攻撃は、瞬く間に、使い魔達を飲み込み、次々と消滅させていきました。
「その技のことは佐倉さんから聞いてはいたけれど、凄まじいわね……」
マミさんが少し驚いています。杏子ちゃん達に見せた時とは、矢数も威力も別物ですからね……自分の力に少し怖くなって来るくらいですが、ワルプルギスの夜を倒そうと思ったら、もっと何倍も力を付けなくては行けないのです。これしきのことでビビッていられません。それに、この戦いも本番はこれからです。わたし達の放った弾幕が振りやんだ時、殆どの使い魔が消滅していましたが、僅かに生き残った使い魔と、それを従える魔女が、既にわたし達の目前まで来ていました。
「来たわね……大分減らしたとは言え、あいつら全てをリボンで食い止めるのは、しんどそうだわ。鹿目さん、確かあなたも近接戦いけるのよね? 多分幾らか漏らしちゃうと思うから、お願いできるかしら?」
「分かりました! 頑張ります!」
正直不安はありますが、マミさんなら、そんなには漏らさないでしょう。わたしの弓矢を掻い潜ってくるのも、簡単では無いはずですし、数体すり抜けてくるくらいなら、わたしの杖術でも何とかなるはずです。
迷っている時間はありません。すばしっこい使い魔達が、わたし達に襲いかかってきました。
『トッカ・スピラーレ』
マミさんの声と共に、巨大なリボンが現れ、使い魔の大群を押し潰していきます。
その隙間を通って、数体の使い魔がリボンを乗り越えてきました。
そのうち半数は弓で仕留めましたが、もう半数はわたしに襲いかかってきます。でも、問題はありません。わたしは弓を杖型に変形させて、魔力をこめ、
『トゥインクルスタッフ』
と叫びながら使い魔達を薙ぎ払う。すると杖の先端についた宝石から光が伸び、使い魔達を貫いていく。
でも、その一瞬の隙を『彼女』は見逃しませんでした。
わたしが杖を振り切ると同時に、あのドラゴン型の魔女がわたしに向かって突進して来たのです。
不味い! この体制じゃ躱せない!
「鹿目さん!」
しかし、概ね使い魔を倒しきったマミさんが、何とかリボンでわたしを吹き飛ばしてくれたことで、間一髪難を逃れました。ありがとうマミさん!
「この魔女、結構速いですね……」
「えぇ……でも、さっきの攻撃が本命だったはずよ。ここに辿り着くまでに、やつは多くの使い魔を失ったから。残り僅かな使い魔を囮にして、早期決着を狙ったんでしょうね」
マミさんの言う通りです。削り合いでは相手に、勝ち目はないですから、さっきの攻撃が魔女にとって、最大のチャンスだったことは間違いありません。
使い魔を捨て駒にせず、魔女も、同時にわたし達に、襲いかかってきていれば、もっと厄介だったかもしれませんが、彼女の生存本能が拒んだのでしょう。自分自身も、危険に晒すわけですからね。
さて、彼女としては、これだけ形成がこちらに傾けば、逃げの一手を打ちたいところでしょうけど、それはもう無理です。
この結界は、完全にこの地に根付いているようですし、使い魔達を失ったことで、面積も狭まっています。逃げ場なんてどこにもありません。
「とは言え油断は出来ませんね。魔女である以上、どんな隠し玉を持っているか分かりません。戦い方にも注意が必要です」
「えぇ、そうね」
それからは、わたし達は二人掛かりで魔女を攻め立てました。
陣形は特に決めていません。どうせ彼女の機動力で、撹乱されるからです。
それなら最初から、二人とも自由に動いた方が良いでしょう。一方が襲われたら、もう片方がフォローする形にしました。
そしてわたし達は、お互いを守り合うような感じで戦いました。
マミさんとは夢の中で何度も共闘したので、彼女の動きはよく知っています。
マミさんの方は、多分、わたしの動きを、まだ、あまり知らないはずですが、流石にそこはベテランです。すぐに合わせてきます。
わたし達は、互いに互いをカバーしながら戦う事で、初めて発揮出来る力がありました。
わたしとマミさんのコンビは、どんどん魔女を追い込んでいきました。
「いい調子よ! このまま一気に押し切りましょう!」
マミさんもかなりテンションが上がってるみたいです。
「その台詞はフラグです!」
でも、わたしも内心では、同じ気持ちでした。今なら勝てる気がする!
わたし達の連携の前に、遂に魔女の体力も尽きたようです。体が少しずつ崩れていきます。羽ももうボロボロで、持ち前の機動力も失っていました。
「これなら、捕まえられるわ! 鹿目さん! トドメは任せたわよ!!」
マミさんが魔女をリボンで拘束して、動きを止めます。
「はい! 任せて下さい!」
わたしは弓を番えて、軽く魔力を込めます。すでにボロボロな彼女を仕留めるのに、大した火力は必要ありません。
マミさんが動きを止めてくれているうちに、さっさと射ってしまうべきでしょう。
『マジカルアロー』
わたしの声と共に矢は飛んでいき、魔女の胸元を貫きました。
すると、魔女は少し暴れたあと、パタリと動かなくなり、そのまま消滅して、結界も解けました。
わたしとマミさんはそれを確認すると、お互いにハイタッチを交わしました。
やったー!! わたし達の勝利だ!!!
「凄いわ鹿目さん! 流石ね!」
「いえ! マミさんこそ凄かったですよ! わたし達コンビなら無敵ですね!」
「えぇ、そうね!」
良かったぁ、これで一安心だね! 昨日よりも、余裕を持って倒せた! イエイ!
ただ、余裕があるだけに、ふと、こんなことも思い出してしまいます。
今の魔女も、元はキュゥべえと契約した、魔法少女だったのかも知れないという事です。まあ、ほぼ間違いなく、因果糸によって生み出された魔女だと思いますが、それでも辛いことには変わりないと思うのです
だとしても、倒すしかないのは分かっていますが、せめて、最後の瞬間だけは、絶望から解放してあげられないものでしょうか……
と、そんなことを考えていたわたしに、マミさんが話しかけてきた
「さて、さっきの魔女の、グリーブシードで濁りを吸収しようかしら。鹿目さんは……必要ないんだったわね」
「はい、わたしにソウルジェムはないので」
わたしはキュゥべえの、管轄外の魔法使いですからね。今思えば、よく昨日のわたしは契約無しで魔法を使おうと思ったものです。
マミさんがグリーフシードを回収している間に、わたしは携帯で、杏子ちゃんに報告することにしました。そう言えば、さっき、杏子ちゃんの方からも、通知がありましたね。何かあったのでしょうか? わたしはそのメールを開いてみました。
『おっすまどか! アタシとゆまで、ほむらとの接触に成功したぜ! 大まかな事情は、アタシから話しといたけど、アンタと話したいって言ってたから、そっちへ連れてくぜ!』
おお!? すごいよ! 本当に接触できたんだね!
『了解だよ。わたし達はさっき連絡した件の魔女を倒したばかりだから、そのまま向かってきてくれる?』
っと返信完了。あ、返信来た。早いね。どれどれ……
『オッケー! じゃあ後でな!』
うん、簡潔な文章だけど、杏子ちゃんらしいね。よし、後は到着を待つだけだね。
「鹿目さん、お待たせ。佐倉さんへの連絡は終わったのかしら?」
「はい! 凄いですよマミさん! 杏子ちゃん達、ほむらちゃんと接触出来たみたいです!」
「えぇ!? 本当!?」
マミさんも驚いているみたいです。そりゃそうですよね。何せ今日捜索を始めたばかりなのですから。
それがいきなり見つかっただなんて、奇跡以外の何ものでもありません。
「はい! この後すぐに連れて来てくれるみたいです!」
「そうなの……でも、本当に良かったわ。この時間軸で、暁美さんに単独行動を続けさせる訳にはいかないもの」
マミさんは、心底安堵しているみたいです。捜索前からずっと心配してくれてましたからね。
しばらく待っていると、人影が見えて来ました。あれは、杏子ちゃんですね。その横にゆまちゃんと、ほむらちゃんがいます。あれ? ほむらちゃん、わたし向かって駆け寄ってきてる?
「まどか!!」
ほむらちゃんは、そのまま飛びついてきて、ぎゅうぅ〜っとして来ます。ちょっと苦しいかも……。
「杏子から聞いたよ……あなたが私のこと覚えてたって……私、ずっと一人だった……それで良いと思ってた……あなたのことさえ守ることが出来たなら、他のことはどうでもいいって……でも、あなたが今までのこと全部知ってくれているって聞いて、嬉しくなっちゃって……」
そっか……やっぱり寂しかったんだね。わたし、こうしてほむらちゃんと会うことは、楽しみにしてたけど、本当はちょっと不安だった。ほむらちゃんはわたしを守るために戦っているのに、わたしが戦うことを認めてくれるかなって……だから今まで、ほむらちゃんを探すことに少し消極的になってしまっていた節があるけれど、そんなことはなかったんだね。良かった、本当に良かったよ……
「ありがとう、ほむらちゃん。わたしも嬉しいよ。また会えて、本当に良かった。これからもよろしくね」
「えぇ……こちらこそ!」
わたしとほむらちゃんは、強く抱き合ったまま、再会を喜びました。
「えへへ。まどかお姉ちゃん、良かったね!」
横では、ゆまちゃんがニコニコしながらこっちを見ていて、それを見ているマミさんも微笑ましそうにしています。なんか恥ずかしいなぁ……。
その後、わたし達はみんなで、ほむらちゃんの家に向かいました。そして、そこでほむらちゃんが改めて自己紹介してくれました。
「初めまして、皆もう私のこと知ってるみたいだけど、一応名乗らせて貰うわ。私は、暁美ほむら。魔法少女よ。まどかを守るために、何度も時間遡行を繰り返しているわ」
さっきまで素が出ていたほむらちゃんでしたが、今は普段のクールモードに戻っています。
「さっきは取り乱してしまったわね……ごめんなさい。それで、まどか。この時間軸のおかしいところについて、あなたが知っていることを聞かせてもらえる?」
「うん、勿論だよ」
この話をするのも、かれこれ四回目です。流石に慣れてきました。
わたしはいつも通り、ほむらちゃんに、この時間軸で何があったか話しました。
昨日の朝、ほむらちゃんが繰り返してきた、この一ヶ月の夢を見たこと。他のみんなも、断片的であるけど同じ夢を見たこと。わたしが契約してないのに魔法使えたり、この時間軸の魔女が強い理由について、わたし達がどう考えているか。さらに、杏子ちゃんや、ゆまちゃん、マミさんと仲良くなった経緯など、全部話しました。
それから、わたし達が今どう言う方針で動いてるかも話した訳ですが、すると……
「そんな……あの強化魔女たちと、まどかを軸に一ヶ月も戦い続けるなんて……いや、でも、確かにワルプルギスの夜まで強化されてるとしたら、それくらいしないと……いやでも……それでも……!」
ほむらちゃんは頭を抱えてしまいました。そうだよね……わたしを危険に晒すような策を、ほむらちゃんがそう簡単に認めるはずがないよね……わたしが戦うこと自体は、認めてくれてるだけでも、十分過ぎるほどありがたいところです。でも、わたしも、退く訳にはいきません。
「ごめんねほむらちゃん。ほむらちゃんはわたしとの約束を、ずっと守ってきてくれたんだよね。その約束、今度はわたしにも背負わせてくれないかな? わたしだって、ほむらちゃんと一緒にいたいし、守りたいんだよ。キュゥべえとの契約だけは、絶対にしないから!」
わたしがそう言うと、ほむらちゃんは俯いていた顔を上げて、真っ直ぐな目で見つめてきました。そして、ゆっくりと口を開きました。
「……分かったわ。あなたの気持ちを尊重する。あなたはこの時間軸で、今まで私が出来なかったことを成し遂げた。だからきっと大丈夫だと信じることにするわ。ただし、これだけは言っておくわ。あなたに何かあったら、私はまた繰り返すから。その時は、あなたを助けるために、どんな手段を使ってでも、あなたを守るから。それだけは覚えていて。いい?」
ほむらちゃん……やっぱり優しいな……こんなにわたしのことを想ってくれているんだもの……
実際のところ、これ以上時間遡行するのは、かなり厳しいでしょうし、危険なことは重々承知していると思いますが、それでも、止まる訳には行かないのでしょう。
だからこそ、そんなことにならないように、わたしも生き残らなくては……!
「うん……ありがとう、ほむらちゃん」
「まどか……」
わたしとほむらちゃんは再び抱き合う。その様子を見て、みんなが笑顔になります。本当に良い友達を持てたなぁって思います。
「それじゃあ、改めて作戦会議をしましょ」
マミさんがそう言いながら、地図を広げてくれた。
「暁美さんは、今までの時間軸で、ワルプルギスの夜が現れた場所を、統計しているのよね?」
「えぇ。大体は把握出来ているわ」
「なら、これからワルプルギスの夜が現れる可能性があるところをピックアップしてもらえるかしら。私達も可能な限り手伝うわ」
「ありがとう。助かるわ」
凄い……マミさんとほむらちゃんが、協力して話し合ってる……なんか感動してきた……
でも、わたしもただ見ている訳にはいきません。ほむらちゃんによる、ワルプルギスの夜出現場所のピックアップが終わると、わたしと、ほむらちゃんが今まであいつと戦って、見てきたあいつの戦闘力についての話をして、それからワルプルギスの夜を倒すまでの流れのおさらいをすることになりました。
「昨日も聞いたけど、やっぱとんでもねぇ奴だな……しかもまどかは、普段のアイツは本気出してないって考えてんだろ?」
「うん、とある時間軸でわたしが契約した時、途端にあいつは逆立ちをやめようとしたんだけど、その時、あいつの魔力が更に膨れ上がっていくのを感じたの……多分あいつが本気出したら、この街は一瞬で吹き飛んじゃうと思う」
わたしの言葉を聞いて、みんな黙り込んでしまいました。みんな同じことを考えてるみたいです。……沈黙を破ったのはゆまちゃんでした。
「大丈夫だよ! だって、ワルプルギスの夜が本気出す前に、まどかお姉ちゃんが一発で倒すんでしょ?」
「ふっ……そう言うことだな!」
杏子ちゃんが、ゆまちゃんの発言を受けて不敵に笑います。
「まあ、その為の準備が大変なのだけれどね……」
マミさんは苦笑いしながらそう言いました。そうですよね……ワルプルギスの夜を倒すまでの流れをおさらいすると、この時間軸の強い魔女を、出来るだけ沢山倒して、わたしの魔力トレーニングの踏み台にしつつ、グリーフシードを集め、当日は、貯めたグリーフシードと、みんなの魔力をわたしに集めて、渾身の一撃でやつを仕留めると言う流れになる予定です。骨の折れる作業になりそうです。
「やっぱり、まどかに掛かる負担が大きすぎるわ……まどかを信じるって決めた以上、もう、止めはしないけど……」
ほむらちゃんは心配そうな顔をしていました。確かに、わたしへの負荷が大きい作戦なのは間違いありません。
でも、みんなの負担だって、決して小さくは無いはずです。積極的に、強い魔女を狩ることになる以上、リスクを背負うのはみんな一緒なのですから。
「大丈夫だよ、ほむらちゃん。それに、わたしだってみんなを守りたいもん。これくらいへっちゃらさ」
「……分かったわ。ただし、無理はしないで。少しでも危険を感じればすぐに退くこと。いい?」
「うん、分かってるよ。ありがとう、ほむらちゃん」
ほむらちゃんの為にも、わたしは絶対に、生き残らないと。改めて決意を固めつつ、わたし達は作戦会議を続けました。
作戦会議が終わった時、既に夜だったので、みんなで近くのファミレスにて、夕食を食べてから解散しました。
そして、家に帰って、自分の部屋に戻ったわたしは、ベッドの上に横になりました。疲れていたのか、眠気が襲ってきました。
目を瞑りながらわたしは、今日のことを振り返ります。
さやかちゃんと上条君の怪我をわたしが治す約束をしたり、杏子ちゃんやゆまちゃんと、説得してマミさんが仲間になってくれたり、マミさんと組んで魔女を倒したり、何よりほむらちゃんと本当の仲間に戻れたことが嬉しかったです。
……2周目や3周目の時間軸で、ほむらちゃんと一緒に戦っていた時は、本当に楽しかった。でも、
『キュゥべえと契約する前のバカなわたしをとめて』
と。わたしがそう言ったあの時から、ほむらちゃんは終わりの見えない迷路に閉じ込められてしまいました。キュゥべえと契約する前のわたしは、ほむらちゃんのことを覚えていないのに、それでもわたしとの約束を守るために、ずっと一人で戦って来たのです。
ほむらちゃんに生きる目的を持ってもらうためとはいえ、辛いことをお願いしてしまった……その罪悪感が胸の中に残っています。だから、今度こそ、ほむらちゃんの戦いを終わらせないと。わたしも頑張ろう。そう心に決めているうちに、意識が落ちていくのでした。
読んでいただきありがとうございます。
無事にほむらと合流出来ました。これでまどかも一安心ですね。
因みに、第1話の時点では夢で見た記憶に対してどこか他人事のように感じていたまどかが、この話ではまるで自分のことのように感じているのは、単純に記憶が定着してきていて感情移入し始めているからです。
さて、次回はここまであまりスポットを当ててこなかった、あの子の視点でのお話となります。
第4話『あたしの憂鬱』
お楽しみに!