契約なんかしなくても、奇跡の力を使ってみせる!   作:空豆熊

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第6話 わたしが繋いだもの

 さやかちゃんが、魔法の力を得て、仲間になった翌日、今日は土曜日です。学校はないけれど、わたし達は朝早くから集まっていた。

 昨日ほむらちゃんと話していた、キュゥべえ対策の話を、仲間に無断でやるのはどうかと思いましたからね。それに、その手を使うためには、さやかちゃんの協力も、あった方が良さそうだったので……

 集まったメンバーは、わたし、杏子ちゃん、ゆまちゃん、マミさん、ほむらちゃん、さやかちゃん。まあ、わたし達の仲間みんなです。

 

「なるほど、キュゥべえが他の魔法少女に、何か吹き込んで、こっちに仕向けて来ないようにする対策か……確かにアイツはそう言う狡いことしてきそうだな」

 

 最初に口を開いたのは杏子ちゃんでした。

 彼女は腕を組んで、うーんと難しげに考え込んでいました。

 うん、やっぱり杏子ちゃんには分かっているみたいです。彼女は、魔法少女の真実を知る前から、キュゥべえのことは、信用していませんでしからね。

 

「実際私の知る限りでも、キュゥべえは私を使って、鹿目さんを排除しようとしていたものね……思い出したらムカついてきたわ!」

 

 次に話したのはマミさん。いや、本当に。話し合いだけで、早いうちにマミさんが、わたし達の仲間になってくれて良かったです。

 もし、マミさんの説得が遅れていたら、今頃はマミさんと戦ってたかもですし……

 まあ、とにかく本題に入るとしましょう。

 

「はい、わたしと、さやかちゃん。キュゥべえの管轄外で、グリーフシードを、必要としない魔法使いが、二人になりましたからね。でも、だからこそ、キュゥべえと交渉出来るネタがあるんです。まあ、キュゥべえと、交渉するのはちょっと癪かも知れませんが」

 

 わたしは苦笑しながら言いました。インキュベーターとは、出来ればあまり関わりたくないのですが、背に腹は変えられませんよね? 

 ほむらちゃんは、そんなわたしを見て、少し心配そうな表情を浮かべていました。

 ああ、大丈夫だよほむらちゃん。これは、別に無理矢理じゃないんだから……

 わたしがほむらちゃんに微笑むと、彼女も笑顔で返してくれました。

 ほむらちゃんとの仲も良好で嬉しいです。

 因みに他のみんなも、複雑そうな顔ですが、納得してくれている様子です。

 

「確かにな……あたし達は基本的に単独行動は避けて動いてるから、まず負けることはないとは思うが、念のため保険はかけておきたいところだもんな? 特に、ゆまとさやかは、まだ実戦経験が少ねえし……」

 

 杏子ちゃんの言葉に、ゆまちゃんがシュンとなります。

 

「元気だしてゆまちゃん。わたし達は、いつもゆまちゃんに護ってもらって、すごく助かってるんだから」

 

 わたしが励ますように言うと、ゆまちゃんは顔をぱっと輝かせました。

 うん、ゆまちゃんは素直なので、励まし甲斐があって良いですよね! 因みにさやかちゃんは、

 

「あはは……特にあたしは昨日馬鹿なことしたばかりだしね。勿論二度とあんなことする気は無いけどさ?」

 

 と、自嘲気味に呟いていました。

 そしてさやかちゃんは、決意を新たにするように、グッと拳を握りました。

 彼女の気持ちはよく分かります。昨日のさやかちゃんの行動は、本当に危険なものでした。

 もしもほむらちゃんが助けてくれていなかったら、今頃彼女はここにいないのですから……

 

「それで、その交渉材料っていうのは、一体何なのかしら?」

 

 マミさんが、興味津々と言った感じで聞いてきたので、わたしは用意していた物を取り出しました。

 

「さっき試しで作った魔力の結晶体です。どうせすぐ、霧散してしまうので、わたし達の役には立たないですけど、キュゥべえへの手土産くらいにはなるかなと」

 

 わたしが取り出したのは、この三日間で、一気に膨れ上がった、わたしの魔力を凝縮させたものです。これを渡せば、多少なりとも効果はあるでしょう。

 

「なるほど……確かに今のまどかが魔力を分け続ければ、契約して魔女化させるより、効率良いと言っても過言では無いかもな」

「いや、それは流石に過言だけどね?」

 

 杏子ちゃんの台詞に突っ込みを入れるわたし。いくらなんでも、そこまでは出来ません。少なくとも今は。

 わたしは苦笑しながら言葉を続けます。

 

「そもそも、わたし達に魔法少女を差し向けることは、キュゥべえにとってもリスクの筈ですから。無闇に魔法少女を減らしたくはないのでしょう。だったら、多少わたし達を生かしておくメリットがあれば、そう簡単に排除はされない。それがわたしとほむらちゃんの考えです」

 

 わたしの言葉に、皆一様に考え込む。キュゥべえの目的を考えれば、確かにわたしとさやかちゃんの存在は邪魔になるかもしれません。

 でも、はっきり言ってみんなは強いです。例えキュゥべえが幾ら戦力を揃えたところで、確実に犠牲を抑えられる保証はどこにもないのです。

 なら、少しでもこちらを利用させてあげれば、キュゥべえだって無駄に手を出そうなんて思わないはずです

 わたしは、自分の考えを話すと、みんなは感心したような視線を向けてきました。

 うーん、照れるなぁ。するとマミさんが

 

「……鹿目さんの言う通りね。私も、キュゥべえが何の為に契約を持ちかけてくるのか、もう少し考えてみるべきだったわ」

 

 と言ってくれました。いや、マミさんはキュゥべえのことを、つい最近まで信じていた訳ですし、まだ、キュゥべえのことなんて考えたくもなかったでしょう……

 正直こうして、キュゥべえ対策の話に付き合ってくれるだけでも嬉しいんですよ? 

 他のみんなだってそうです。まだ、キュゥべえの本性を知って日が浅いのですから、キュゥべえの思考なんて分かるはずもないですし、分かりたいとも思っていないはず。

 わたしとほむらちゃんは、嫌という程キュゥべえの手口を見てきた故に、キュゥべえの思考をある程度理解出来てしまっているのが、皮肉と言えば皮肉ですけどね? 

 

「よし、それじゃ、早速アイツを呼んでみるか! おい、インキュベーター!」

 

 杏子ちゃんが叫ぶと同時に、その生物は現れました。相変わらず神出鬼没です。まあ、別にいいけどさ? 

 

「なんだい? 僕を呼んだかい? 何か、用事かな?」

「ああ、単刀直入にいうぞ? まどかがお前に魔力を分けてやるらしい。だからお前も、まどかに手を出すな。もし、約束を破ったら……」

「破ったら?」

「その時は……テメェが何度生き返ろうと、何度だって殺してやるよ」

 

 杏子ちゃんの言葉を聞いて、ほむらちゃん以外の全員がギョッとします。どう見ても脅しですからね……

 とは言えこの脅しも、キュゥべえ相手にはあまり効果は無い訳ですが。良い意味でも、悪い意味でも……

 それでも、杏子ちゃんは敢えて、こういう言い方をしたのでしょう。これはきっと、みんなに気を使ってくれたのだと思います。

 キュゥべえと交渉することについて、みんなさっきは仕方ないと納得してくれましたが、やっぱり心のどこかで抵抗があるみたいですからね。

 そんなみんなの気持ちを和らげようと、あえてこんなことを言ったのだと思います。

 そんなことを考えているうちに、キュゥべえが言葉を返します

 

「確かに、無闇に残機を減らされるのは困るけど、君達からエネルギーを回収することを、諦める程のことでもないね。でも、まどかの魔力を貰えるなら願ったり叶ったりだよ。是非お願いするね」

 

 相変わらずの損得勘定に、わたしは苦笑いを浮かべながら、先程取り出した、魔力の結晶を差し出します。

 

「それじゃ、取り敢えずこれね? わたしも戦えるだけの魔力は残さなくちゃいけないから、そんなに込めてないけど、それでも取引には十分でしょ?」

 

 わたしが差し出した結晶体を、キュゥべえは躊躇無く受け取ると、すぐにそれを体内に取り込みました。

 

「確かに十分だよ。それに、今はまだ量は気にしないよ。君の因果糸の数を考えれば、ゆくゆくは膨大な量のエネルギーになり得るからね。今は、ほんの小手調べ程度にしかならないよ」

 

 小手調べって、結構大盤振る舞いしたつもりだったんだけどなぁ。

 でもまあ、そう言ってくれるのであれば、暫くは量を抑えても良さそう。

 こうして、キュゥべえへの対策は、一応終わりました。これで、打倒ワルプルギスの夜への備えにあたり、障害はあらかた取り除かれたと言っても良いでしょう。

『因果魔女』だって、わたしとほむらちゃんの二人組と、マミさん、杏子ちゃん、ゆまちゃん、さやかちゃんの四人組に別れれてパトロールすれば、そうそう負けることは無い筈です。

 まあ、この振り分け方をし過ぎると、ほむらちゃんばかり、わたしと組んで狡いと言い出す人が、二名くらい出たりしそうな雰囲気があるので、バランス調整は必要ですけどね。

 そんなこんなで、今日の魔女狩りは特に問題なく終わり、魔法少女達は解散し、それぞれの家路につきました。

 

 

 ふぅ……今日は土曜日か。学校が休みなのがせめてもの救いかな。

 思えば、夢でほむらちゃんの時間遡行のことを、知ってからのこの四日間、わたしはほとんど休んでいませんでした。

 わたしの大切な人たちに、この時間軸でまで、あんな地獄を見せてたまるものかと、そして、ほむらちゃんのためにも、絶対に生き残ろうと、そのために頭を回し続けたのです。

 慣れない考え事をずっとしていたせいか、少し疲れてしまいました。わたしは、ベッドに横になると、意識を闇に委ねていくのでした。

 

 

 そして翌日、目を覚ますと、既にお昼を過ぎていました。穏やかな気分です。昨日、寝る前に考えていたことが、嘘のように思えるほど、今のわたしは晴れやかな顔をしています。

 

「ふふ……なんだか……すごく久しぶりに、心の底から笑えた気がするな……」

 

 勿論、今までみんなに見せていた笑顔が偽物だとか言うつもりありません。

 ただ、わたしが心の奥底で望んでいて、でも、決して叶えられないと思っていた願いを、叶えることができた。その喜びが、自然と表情に現れてしまうのです。

 

「うん、本当に……嬉しい……」

 

 わたしは、思わず涙ぐみながら、自分の胸にそっと手を添えます。

 まだ、全てが終わった訳ではありません。

 上条君の怪我もまだ治して無いですし、肝心のワルプルギスの夜の討伐も、そのための準備もまだまだこれからです。

 でも今のこの状況は、間違いなくわたしの理想の未来へと近づいています。

 この幸せな時間が続けば良いのに…… でも、そんな風に思っていても、時間は止まってくれません。いつまでもこうやって幸せに浸っているわけにもいかないのです。

 だって、世界は残酷ですから。いつだって、現実は非情なのです。

 それでも、今この時くらいは、この幸福を噛み締めても良いですよね? 

 わたしは、ゆっくりと深呼吸すると、心を切り替えます。

 

「よし! 頑張ろう!」

 

 気合いを入れて立ち上がると、まずは着替えることにしました。

 それから、一通り身支度を整えると、わたしの携帯に着信が入っていることに気がつきました。

 誰だろう? と首を傾げながら確認してみると、発信元はマミさんでした。何かあったのでしょうか? 

 

「もしもし?」

「鹿目さん、おはよう。ふふ、良かったわ。鹿目さん、やっとちゃんと休めたのね」

 

 電話越しに聞こえるマミさんの優しい声に、わたしは嬉しくなって、つい顔が綻びます。

 

「はい、おかげさまで。ご心配をおかけしました」

「うふふ、いいえ。謝りたかったのはこちらの方よ。私達、本当はもっと早く鹿目さんには休んでもらいたかったのよ。でも、あなたに頼るしかなくって……本当なら、私が守らなくちゃいけないのにね」

 

 申し訳無さそうに語るマミさんの言葉に、わたしは慌てて否定しました。

 マミさんが悪いことなんて何も無い。全部わたし自身のエゴでやってきたことなのです。

 それに、わたしが辛い時は、みんなが支えてくれました。特にほむらちゃんと、杏子ちゃんの存在は大きかったです。

 彼女達と仲間になれた時、わたしの感じていた責任感や重圧は随分と軽くなったものです。

 なので、マミさんが気に病む必要はどこにもありません。むしろ、わたしの方が感謝したいくらいです。

 

「いえ、わたしも好きでやってることです。わたしはただ、今までほむらちゃんが辿ってきた未来みたいな結末を、絶対に迎えたくないだけなんです。みんながその目的に協力してくれて、わたしは本当に助かっています。ですから、どうか気にしないでください」

 わたしがそこまで話すと、マミさんは安心してくれようです。

 

「ありがとう、鹿目さん」

 と微笑んでくれた。

「それで、あの、どういった御用件でしょうか?」

 わたしは、話が脱線してしまったことを謝罪しながら、本題に入るよう促します。

 

「ああ、ごめんなさい。ほら、今日って日曜日じゃない? だから、ちょっと遊びに行きたいなって話を、皆としていたのよ。勿論魔女が出るといけないから、見滝原組と、風見野組には別れることになるけれど、よかったら、鹿目さんも一緒に行かないかと思って連絡をしたのだけど……」

「あ、はい。そういうことでしたら是非行きましょう! すぐに準備しますね!」

 

 願ってもいないお誘いでした。断る理由などありません。というか、正直嬉しいです。

 わたしにとって、新鮮な記憶の殆どが、夢で見た、過去の時間軸絡みのことなので、魔法少女と関わる前の、気軽に友達と遊んでいた頃の記憶が、遠い過去のことのように感じるのです。この時間軸では、まだたったの数日前の話なのに不思議です。

 なので、体感的には久しぶりのお出かけでした。わたしは、急いで外出の準備を済ませると、集合場所に向かいます。

 そして、しばらく待っていると、杏子ちゃんとさやかちゃんがやって来ました。

 

「おーっす、まどか。何だかんだアンタと遊ぶのは初めてだな」

 

 元気いっぱいといった様子の杏子ちゃんを見て、思わず笑みが溢れます。

 そういえばそうです。杏子ちゃんとは、すっかり、旧知の仲になったような気でいましたが、考えてみれば、わたし達は出会ってまだ、四日しか経っていません。

 その間ずっと、わたしの目的のために動いてくれていたのです。それなのに、もう何年も前から友達だったように錯覚してしまうほど、仲良くなった気がします。

 

「うん! よろしくね! 杏子ちゃん!」

「おう! 任せとけ!」

 

 笑顔で応える杏子ちゃんは本当に頼もしい。わたしは改めて、彼女が仲間になってくれて良かったと思いました。

 

「ぐぬぬ……まどかの親友ポジはこのあたしだってのに……」

 

 隣では、さやかちゃんが何やら悔しそうな顔をしています。

 あはは、なんだろうこの感覚? なんか懐かしいなぁ。

 

「ふふふ」

「くぅ~! 余裕ぶっこいてるんじゃないわよ!」

 

 いやいや、だってさ? 最近さやかちゃんとは、お互い遠慮しちゃってたし、またこうして、距離を縮められたことが、凄く嬉しいんだよ? 

 

「なーに言ってんださやか。あんただって、昨日の晩、あたしと一緒に寝たじゃねぇか。つまり、あん時のあんたは親友ポジション確定だったんだよ!」

 

 ドヤ顔で胸を張る杏子ちゃんに、わたしは呆れてしまいます。

 えっと、大分論点がズレているような……

 

「はぁ!? なんでそうなんのよ!! ていうか、その言い方だと、まるであたしが夜這いかけたみたいじゃん! 違うわよ! あれはあんたが勝手に入ってきたんでしょ!」

 

 真っ赤になりながら反論するさやかちゃ

 ん。

 

「おいおい、忘れちまったのかよ。アレはお前が『寂しくて眠れそうにない』とか言うからだろ? だから、あたしが添い寝してやったんじゃないか」

 

 得意げな表情のままそう言い放つ杏子ちゃん。

 えぇと、わたしは何を見せられているのかな? これ。

 

「うそつけ! あたしが寂しがっているからとかいって、本当は自分の布団が汚れるの嫌だから、あたしをダシにして入っただけでしょうが!!」

「……」

「黙って目を逸らすな!」

 

 あはははは。本当に二人は仲良しさんだなぁ。

 わたしはそんな二人のてを引っ張って、早く行こうと急かすのでした。

 さあ、今日は三人で遊ぶぞ! 

 それからしばらくして、ようやく落ち着いた二人を連れて、ショッピングモールへとやって来ました。

 まず最初に来たのは、アクセサリー工房です。ここには、指輪やネックレスなどの宝飾品の他に、ブローチなどの小物もあります。

 しかも、自分でデザインしたオリジナルの商品を作ることもできるので、女子の間では人気の場所らしいです。

 なので、わたしも張り切ってみんなへのプレゼントを作っていたのですが……

 

「ふっ、どうだ。あたしの作ったまどかデザインは、可愛いだろ?」

「何言ってんのよ杏子のくせに! あたしの作ったまどかの方が断然可愛いでしょ!」

 

 二人が喧嘩を始めたものだから全然集中できません。

 って言うかなんでわたしの名前が出てくるの? 

 

「あーもぉ! 静かにしてよ! 気が散っちゃうじゃない!」

 

 わたしは少し声を大きくしながら言います。すると、二人は申し訳なさそうな顔をして謝ってくれました。

 まったくもう! せっかく楽しく作っていたのに台無しだよ! 

 その後は適当にお店を回った後、喫茶店でお茶をすることにしました。店内にはジャズの音楽が流れていて、とても落ち着く雰囲気です。

 わたし達は注文を終えると、雑談をしながら時間を潰していました。

 そして、しばらく経って、料理が運ばれてくると、

 

「あのさ」

 

 不意にさやかちゃんが話しかけてきました。

 

「うん?」

「恭介の怪我って、本当に治せるかな……? いや、あんたの言った言葉は信じてるんだけど……」

 

 さやかちゃんの声は不安そうです。無理もありません。一般の人に治癒魔法が効きづらいことは、彼女も既に知っているのですから。

 いくら、わたしの魔力量が他の人より多いと言っても、今はまだ、上条君の傷を癒やすことはできないでしょう。それでも、

 

「大丈夫。わたしの魔力は、わたしの想像してた以上の速さで、膨れ上がっていってる。そこにゆまちゃんの治癒力と、さやかちゃんの想いがあれば、きっと上手くいくよ」

 

 根拠なんてないけど、なぜか自信がありました。さやかちゃんも、その答えを聞いて安心してくれたようで、 ニッコリ笑って、

 

「うん! そうだよね! ありがとまどか! なんか元気出てきた!」

 

 そう言ってくれました。

 

「おう! あたしはその恭介って奴の容態は知らねぇけど、まどかが言うなら間違いねぇな!」

 

 杏子ちゃんも親指を立てて笑いました。

 なんだか照れ臭いです。

 でも、それだけ信頼されているっていうことなのかな? だったら嬉しいなぁ……。

 その後、楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。日もそろそろ暮れようかという時間になり、わたし達は帰ることにしました。

 

「それじゃ、また明日ね!」

「バイバーイ!」

「ああ、気をつけて帰れよ」

 

 三人で仲良く手を振って別れました。

 今日はとても楽しかったなぁ。昨日までの四日間、頑張ってきて本当に良かった。

 そんなことを考えながら歩いていると、風見野から戻ってきたらしい、ほむらちゃんの姿を見つけました。

 

「あ、ほむらちゃん! お帰り! ほむらちゃんも今日はハメを外せた?」

 

 わたしは駆け寄って笑顔で問いかけました。ほむらちゃんは、少しだけ微笑んで、

 

「ええ、ありがとう。久々に息抜きが出来たわ。まどかはどう? ちゃんと楽しめた? 昨日は少し疲れていたみたいだったから、心配だったのだけれど……」

 

 そう言いながら優しく頭を撫でてくました。

 そんな風に聞かれると恥ずかしいです。

 でも、今日一日のことを思い出してみたら、自然と顔が緩んじゃいます。なので、満面の笑みで答えることが出来ました。

 

「うん! すっごく! 今日は最高の休日になったよ! みんなのおかげで!」

 

 わたしは胸を張ってそう告げました。すると、突然ほむらちゃんは、両手を頬に当てて真っ赤になってしまいました。

 あれ? どうしたんだろう? そんなことを思っていると、 ギュッ! いきなり抱きしめられた!? 驚いている間もなく、耳元で囁かれます。

 

「大好きよ、まどか」

 

 その瞬間、全身が熱くなるのを感じました。

 え? 何これ……心臓の音すごいよ…… ドキドキする…… どうしよう…… 何か言わないと……

 

「わた……し……も…………好き」

 

 消え入りそうな声で答えるのが精一杯でした。

 

「うふふ。今日のところはこれで我慢しておくわ」

 

 ほむらちゃんは嬉しそうに言うと、わたしを解放して、そのまま立ち去って行きました。わたしはその場にへたり込んでしまいました。

 そして、火照る顔を冷ますように手で扇ぎながら、思います。

 この気持ち……いつまで続くのかな? 

 ──―それは誰にもわかりません。

 

 

 

 

***

 

「……告白、してしまったわ……うぅ……何やってんのよ私はぁぁ!!」

 

 まどかから立ち去ったあと、私は頭を抱えてしまった。

 だってしょうがないじゃない! あんな可愛いこと言われたら抱き締めちゃっても仕方ないと思うの!! まどかが可愛すぎるのが悪いのよ!!! あぁもうダメ! このままだと私の理性が崩壊してしまうかもしれない。早く家に帰らないと。

 それにしても、まだワルプルギスの夜も超えていないのに、こんな調子で大丈夫かしら? 

 いや、きっと大丈夫。どれだけあいつが、強化されていようと、私達なら絶対に勝てる。そう信じたい。

 でも、もし万が一のことが起こったら、その時は……

 

「大丈夫。まどかは必ず私が守る」

 




読んでいただきありがとうございます。
まどかが、理想の未来を掴みかけていることを確認する話でした。
次でいよいよ最終回となります。最後までお付き合いいただけると幸いです。

第7話『もう奇跡は必要ない』
お楽しみに!
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