契約なんかしなくても、奇跡の力を使ってみせる!   作:空豆熊

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第7話 もう奇跡は必要ない

 あらかたの問題が片付き、ほむらちゃんから告白されてからの日常は、驚くほど穏やかに流れていきました。

 相変わらず因果魔女は、頻繁に現れていますが、苦戦を強いられることはほぼ無くなっていました。何故なら、わたしの魔力量の増加によって、わたしの補助魔法が驚く程長く持続するようになったからです。

 なので、あらかじめみんなに補助魔法を掛けておけば、わたしが居ない所でも、火力不足になることはそうそうありませんでした。

 また、最近は杏子ちゃんの固有魔法も、復活しつつあって、より一層安定感が増してきていました。

 順調なのは魔女狩りだけではでなく、上条君の治療も、わたしの魔力の増加に比例して、順調に進んでいきました。わたし、ゆまちゃん、さやかちゃんが力を合わせた、治癒魔法の効果は凄まじく、今では彼の左腕は完全に治っていました。本当に良かった……

 彼はリハビリを終えて退院した後、バイオリンの練習を再開出来たみたいです。さやかちゃんはというと、上条君の看病をしながら、アタックを続けていて、最近ようやく彼からOKを貰えたらしく、とても喜んでいました。良かったね!

 マミさんも、杏子ちゃんや、ゆまちゃんとの仲は良好で、最近では一緒にお風呂に入ることもあるらしい。そんな話を微笑ましいなと思いながら聞いていたら、

 

「私は鹿目さんとも一緒に入りたいわ!」

 

 なんて言われてしまいました。

 あぅぅ……みんなわたしへの好感度が高すぎだよぉ…… でも、嫌って訳じゃないんだよ! むしろ嬉しいんだけど、この前ほむらちゃんの告白に答えたばかりなのに、ちょっと気が引けるっていうか……

 わたしは今、ほむらちゃんと二人でお茶を飲みながら、みんなの様子を話していました。

 

「まどかは本当に、皆と上手くやっているようね」

「うん! みんな優しくしてくれるし、わたしなんかには勿体無いくらい良い人達ばっかりだよ」

「そんなこと無いわ。あなたは十分魅力的だし、みんなあなたのことが好きなのよ」

「そ、そうかな?」

「えぇ、そうだわ」

 

 ほむらちゃんに言われると、なんだか自信が出てきます。でも、ほむらちゃんもすごく魅力的な女の子だと思うのですが……

 そんなことを考えていると、ほむらちゃんが真剣な顔になって。

 

「本当はこのまま、まどかとイチャイチャしていたい所だけれど、そろそろ本題に入らないといけないわね。ワルプルギスの夜との戦いが、もうすぐそこまで迫ってきているもの。と言っても、作戦事態はもう、変えるつもりは無いのだけれど……」

 

 と、言いました。そうなのです。平和だったこの三週間は、あっという間に過ぎてしまいました。

 ほむらちゃんが言うように、いよいよ本番は目前に迫っています。うん、そろそろ気を引き締めなおさないと。

 

「作戦自体は、ほむらちゃんが止めた時間の中で、わたしがみんなの魔力を集めて、渾身の一撃を放つくらいしか、有効な手立てが無いしね……色々小細工打ったところで、あの魔女は倒せないと思う」

「そうね、私もまどかと同じ意見よ。だからこそ、当日は皆の士気が重要になるわ。魔法の力は、どうしても精神的なところに左右されてしまうから」

 

 ほむらちゃんの言葉に、わたしは静かに頷きました。それについては、この時間軸の初日に、魔法の力を祈りだけで強引に引き出したわたしが一番良く知っています。

 

「だから、まどか。明日……決戦前夜は、皆でパジャマパーティをしようと思うの」

 

 ほむらちゃんの提案に、わたしは思わず笑みを浮かべます。

 ほむらちゃんからこんな提案をしてくるなんて珍しいです。きっと、みんなとの距離を縮めたいと、思ってくれているのだと思います。

 

「賛成! 早速みんなに声かけてみるね!」

「ありがとうまどか。お願いするわ」

 

 こうして、わたし達は決戦前夜の予定を立てた後、解散となりました。明日が楽しみです。

 次の日、わたしは朝からみんなに声をかけまくり、放課後になると、そのままスーパーへ直行しました。そして、食材を買い込んで、ほむらちゃん家に集合です。

 

「みんな揃ったねー」

「あら、鹿目さん。お邪魔します」

「おっすまどか!」

「おう、さやか。あんた今日は早かったんだな」

「ふっふ~ん、あたしだってやるときはやるのです」

「ゆま、パジャマパーティって初めて。まどかお姉ちゃん、どんなことするの?」

 

 わたしは、ゆまちゃんの頭を撫でながら、笑顔で答える。

 みんな楽しそうだな。良かった…… それからわたし達六人は、準備に取り掛かった。まずは買ってきたものをキッチンに運び込む。

 料理は、マミさんとわたしが担当。杏子ちゃんとさやかちゃんは、お菓子やジュースの準備。ほむらちゃんとゆまちゃんは、部屋の飾りつけを担当してくれた。

 

「鹿目さん。今日の献立は何を作るのかしら?」

「今日はクリームシチューです。わたし、料理はまだあまり得意じゃないんですけど、パパが作ってくれるシチューが好きで、よく練習してたんですよ」

「それは楽しみだわ。鹿目さんのご家族のお話も、もっと聞きたいわね。あとで聞かせてくれるかしら?」

「はい! 喜んで!」

 

 そんな感じで、和やかに調理を進める。やっぱりマミさんは優しい人です。一緒に居ると心が落ち着きます。

 そうこうしているうちに、夕食の時間になりました。わたし達がテーブルに着くと、みんながそれぞれの飲み物を手に持ったのを確認してから、乾杯の音頭をとります。

 

「みんな、今日は集まってくれてありがと! 明日の戦いに備えて、今夜はいっぱい食べていってね!!」

『いただきます!!』

 

 みんなは一斉にシチューを口に運ぶと、目を丸くしながら、次々におかわりの声を上げてくれました。

 えへへ、嬉しいなぁ。普段は中々こう上手くはいかないけれど、今日はマミさんと二人で作ったかいがあったよ。

 食事が終わり、片付けも済ませると、いよいよ本日のメインイベント、パジャマパーティの開始となります。

 

「じゃあ、始めましょうか。と言っても、何をすれば良いのかしら?」

「ふっふーん! 何でもいいんですよマミさん! よし、ここはこのさやかちゃんの、恭介とラブラブエピソードを披露しようじゃないか!」

「却下」

「何で!?」

「あんたの惚気は何時も長いんだよ。どうせまた、延々と聞かされることになるだろ」

「うぐぅ……そ、そんなこと無いしぃ……」

 

 さやかちゃんの反論は弱々しい。どうやら図星のようです。でも、惚気話が出来るくらい、上条君と上手くいっているみたいで、本当に良かった! 

 そんなことを考えているわたしに、ゆまちゃんが声をかけてきた。

 

「まどかお姉ちゃん、ノロケって何?」

「えっとねぇ、好きな人の自慢話かな」

「ゆまもやってみたい! えっとね、この前キョーコが──―」

「ちょ、やめろゆま! 恥ずかしいだろ!」

「ふふん、あんたもまだまだ青いわね」

「う、うるせぇよ……」

 

 …………なんか、微笑ましいな。その後、わたし達は色んな話をしました。学校のことや、最近のパトロールのことはもちろん、みんなそれぞれ、家族の話とか、趣味についてとか、本当に色々なことを。時間はあっという間に過ぎていきました。

 気がつくともう十時を過ぎています。そろそろ寝ないといけません

 

「それじゃ、みんな今日は遅くまで付き合ってくれてありがとう。明日は頑張ろうね!」

 

 わたしが締めくくると同時に、みんながそれぞれの挨拶を返します。うん、みんなやる気十分みたいです。わたしは嬉しくなって、思わず笑みを浮かべてしまいました。

 

「みんな、お休みなさい」

「おやすみなー」

「おやすみー」

「おやすみー!」

「お休みなさい」

「お休みなさい」

 

 みんなを見送った後、わたしは寝室へと向かいます。明日のために早く眠らないと。

 ベッドに入った後も、わたしはなかなか眠ることが出来ませんでした。明日は全力で魔力を使うことになるので、今のうちに休んでおかないといけないのに……

 わたしは気分転換も兼ねて、ベランダに出ることにしました。夜の風は涼く、火照った身体にはちょうど良かったのです。

 手すりにもたれかかりながら、ぼんやりと夜景を見つめていると、隣に誰かが来た気配を感じました。ほむらちゃんです。

 

「眠れないの?」

「ええ。少し考え事をしていたから。まどかこそ、どうしてここに?」

「わたしも同じだよ。ちょっと目が冴えちゃって。ほむらちゃんは、何を考えてたの?」

 

 ほむらちゃんはしばらく黙り込んでいましたが、やがて静かに語り始めます。

 

「今までのことを、思い出していたの。この時間軸に来たばかりの時は、本当に戸惑ったわ。あなたは契約をしていないのに魔法を使うし、既にマミや、杏子達と仲良くなっているし……それでも、あなたが私の事を覚えていてくれたことは、とても嬉しかった。私は今まで何度もこの一ヶ月を繰り返してきたけれど、こんな時間軸は、初めてだったわ」

 

 そうだったね。わたしも夢で見たから、よく知っている。今までほむらちゃんが辿ってきた未来は、いつだって、絶望しか無かった。だから、わたしは、全部描き変えてしまえと走り出したんだ。

 

「私にとってこの時間軸は、希望そのものよ。やっと、あなたと交わした約束を果たせる。絶対に、成功させましょうね」

「うん、もちろん!」

 そう言って笑い合うと、わたし達は部屋へと戻りました。

 

 

 いよいよワルプルギスの夜襲来当日。あの魔女は、一般には災害として認識されていて、人々の間に不安が広がっています。それを払拭するためにも、今回の作戦は必ず成功させないと! 

 

「さぁ、行きましょうか」

「うんっ!」

「ええ!」

「おう!」

「よっしゃ!」

「頑張る!」

 

 決戦の舞台は見滝原市。わたし達は魔法少女として変身して、やつが出現すると思われる場所へと向かいました。

 

「薄暗い天気ね……まるで嵐の前触れみたい……」

「縁起でもないこと言うんじゃねぇよ。ま、確かに不気味な雰囲気だけどな」

 

 空は一面灰色の雲に覆われて、太陽の光を完全に遮っています。風が強いせいで、街の灯りも心なしか、かき消されているように感じてしまいます。

 

「それにしても、随分遠くまで来たね。まだ着かないの?」

「もう少しだと思うわ。あと数分といったところかしら」

 

 そんな会話を交わしているうちに、目的地が見えてきます。そこは、川に面した広い河川敷で、周囲には誰もいないようです。

 

「この魔力……やっぱりあいつも今までの時間軸より強化されているみたいね……現れたらすぐに時間を止めないと、私達も吹き飛ばされかねないわね……」

 

 ほむらちゃんが呟きます。わたしも同意見です。明らかに今までとは、魔力の濃度が違います。

 

「……来るぞ!!」

 

 突然、杏子ちゃんが叫びました。その直後、わたし達の周りは急変します。

 サーカス的に飾られ、万国旗のようなもので連結されたた無数の象が、パレードを始め、同時にカウントダウンが始まります。

 

「まるで、ここで舞台を開演するかのような演出だね」

「ええ。実際あいつにとってはそうなんでしょうけど」

 

 さやかちゃんの言葉に同意するように、ほむらちゃんが言いました。そして、カウントがゼロになった瞬間、その舞台は開幕しました。

 

『キャハハッ!』

 

 甲高い笑い声と共に、それは現れました。ツートンカラーのドレスに身を包んだ少女の姿をしています。ただし、スカートから伸びた脚はなく、代わりに巨大な歯車が顔を出しています。その姿は、夢で何度も見てきたものでした。間違いありません。あれこそが、ワルプルギスの夜なのです。

 ただ、サイズが違いますが……全長600m程でしょうか? 以前見た時とは比べ物にならない大きさになっていました。

 

「うぇっ!? 何あれいくらなんでも大きすぎない!?」

「さやか、落ち着きなさい。時間はもう止めたわ。今のうちに、まどかの弓へと魔力を集めるわよ!」

 

 ほむらちゃんの言葉を受けて、みんなが一斉にわたしの弓へ魔力を送り始めてくれました。

 今わたし達六人は、全員マミさんのリボンで繋がっているため、ほむらちゃん以外の五人も、止まった時間の中を自由に動くことが出来ます。

 だから、ほむらちゃんの時間停止が続く限り、ずっとわたしの弓への魔力供給を続けることが出来ます。

 あの魔女を倒すためには、みんなが一回ずつ魔力を注ぐだけでは、到底足りません。そのため、彼女達はグリーフシードを使ってソウルジェムを回復させながら、わたしのために魔力を供給し続けてくれるのです。

 そして、この攻撃がワルプルギスの夜を倒せる程の威力になるかどうかは、最終的にはわたし次第ということになります。みんなの想いを背負っている以上、絶対に失敗は許されません。気合いを入れ直さないと! 

 わたしは必死に精神を集中させます。少しずつ、矢の先端部分に集まっていくみんなの魔力を感じながら、ゆっくりゆっくりと意識を高めていきます。それでも、まだ全然足りません。

 もっと……もっと強くイメージしないと……ほむらちゃんが今まで横断してきた、幾多の平行世界の因果を束ねて放てるほどの力を……

 徐々に意識が遠退いていくような感覚に襲われます。それでも、辞める訳にはいきません。わたしはひたすら念じ続けるしかありませんでした……

 

 

 

 そうして、どれくらい時間が経ったでしょうか? もはや時間の経過すら分からなくなってしまいました。

 確かに力は溜まってきています。でも、それに比例するように、自分の中の何かが失われていっている気がします。

 わたしは一体どうなってしまうのでしょうか……

 ダメだよ……わたし……負けちゃだめ…… わたしがここで倒れたら、たとえ敵を倒せても意味がないんだよ……お願い……耐えて…… みんなの力を借りてここまで来たのに……こんなところで諦めたくないよ…………

 あれ? みんなって誰のことだろう? わたしは何のために戦ってたんだっけ? そもそもわたしは誰なんだろ? あぁ……何もかも分からないや……

 多分このまま攻撃を放てば、わたしは死ぬんだろうな……何も分からないけど、それじゃあダメなことだけは分かるよ……

 でも、もうやるしか無いよね……だって他に方法なんて思い付かないし……そうだよ。きっとこれが運命だったんだ。今まで頑張って来たのも、全部無駄なことだったんだね。

 ごめんね……みんな……約束守れなくて……本当にごめ──―

 その時でした。ふっと誰かの手が自分の手を握ってくれた感触がありました。とても温かい手でした。

 

「まどか、あたしも一緒に祈る。だから、一人で背負い込まないで。あたしだって、あんたと同じ、魔女化する心配のない魔法持ちなんだからさ」

 

 ……さやかちゃんの声だ……思い出したよ……

 そうだよね。さやかちゃんのこと頼るって、決めたばかりじゃないか! 一人で背負い込むなんて、わたしらしくないもんね! ありがとう、さやかちゃん。おかげで少しだけ元気が出たよ。よしっ! 気合入れ直せー!!!

 そして再び、自分の中の魔力に集中し始めた時、今度はわたしの背中に温かい何かが流れ込んでくるような感覚を覚えました。これは……杏子ちゃんの魔力? 

 

「あたし達から注げる魔力は、それが最後だけど、あんた達の祈りが届くよう、全力で応援してやるからな!」

「頑張って、鹿目さん! 美樹さん!」

「お姉ちゃん達頑張って!」

 

 みんなの想いを感じます。こうしてみんなに励まされるのは初めてじゃないけど、不思議と力が湧いてきちゃうよ。

 

「まどか、この前あなたも言ったことよ。あなたが辛い時は、私が支える。あなたが苦しいときは、私が助ける。私はもう、ただあなたを護るだけの盾ではないわ。あなたの隣に立つ、対等の存在よ」

 

 ほむらちゃんの言葉を聞いているうちに、不思議なことに体中にあった疲労感のようなものが消えていくのを感じます。まるで、全身を優しく包み込まれているかのような安心感に包まれているみたいです。

 うん、大丈夫だよ。ほむらちゃんがいてくれるだけで、こんなにも勇気が出てくるもの。

 

「まどか、私達はずっと一緒よ。これから何があっても、どんな運命でも乗り越えていけると信じてる」

 

 その言葉を聞いた瞬間、今まで以上に弓へ集まるみんなの思いを感じ取ることが出来ました。

 みんな、本当にありがとう。今度こそ、絶対に負けないよ。

 ──―ッ!? その時、今まで感じたことの無い程の膨大な量のエネルギーが、わたしに流れ込んできました。そしてそれは、瞬く間に一つの形を成していきます。

 

『鹿目まどか、君の力は素晴らしいね。まさか、希望と言う感情だけで、そこまでのエネルギーを生み出すとは思わなかったよ。本当は君が追い詰められるのを待って、契約を持ち掛けるつもりだったけど、予定を変更したよ。君の祈りが、君の膨大な因果の力を十全に引き出せるよう、こっちで調整しとくね』

 

 キュゥべえの声が聞こえます。この子はいつも、余計なことしかしない。でも、今は感謝するしかありません。これで、ワルプルギスの夜を倒せるかもしれないのですから。

 わたしは改めて、弓を構えます。この一撃で、全てを終わらせるために。すると、頭の中にイメージが流れ込んできました。

 今まで幾重にも積み重ねられてきた、みんなの願い。それが、矢へと姿を変えていく。

 希望を未来へ繋ぐための、無限の可能性を秘めた光の矢を、今ここに放つ! 

 そうだよ。絶望なんかに、わたし達は負けない。魔女は、倒すべき敵なんかじゃないんだ。彼女達だって、魔法少女システムの犠牲者なんだ。彼女達の祈りを、絶望で終わらせたりなんかしない! あなたの怒りも、後悔も、全部受け止めてみせる! 浄化してみせる!! いっけぇー!!! 

 わたしは、渾身の一撃を解き放ちます! 放たれた矢は一直線にワルプルギスの夜へ向かい、そのまま彼女の体を貫いたかと思うと、次の瞬間には眩い光を放ちながら爆発しました。

 そして、わたしは見ました。その輝きの中で、ワルプルギスの夜が微笑むところを……彼女は救われたのでしょうか? 

 そうであればいいな。そう願わずにはいられないよ。

 やがて光は収まり、わたし達の元に、僅かに残った光の粒だけが降り注いだのでした。

 それは、唯の残り滓ではありません。確かに、希望という名の輝きだったのです。故にその光は、奇跡を起こしました。

 

「なんて綺麗な魔法……」

「綺麗なだけじゃねぇ……アタシ達のソウルジェムが、浄化されてやがる……」

 

 さやかちゃんと杏子ちゃんの言う通り、確かに穢れが消えてなくなっています。良かった……どうやら成功したみたいです。

 

「まどか……あなたって子は……」

 

 ほむらちゃんも驚いているみたいです。でも、これはあなたがわたしにくれたものでもあるんだよ。それに、みんなが居たから出来たことなんだから。

 

「みんな、ありがとう」

 

 わたしの言葉を聞いて、みんな笑顔で応えてくれました。

 そしてわたし達は、手を取り合って喜び合いました。

 本当に良かった。勝てたよ。みんなを助けることができた。それに、念願の浄化魔法も完成させることが出来たし……

 

「まどか、大丈夫?」

 

 わたしが少し感慨にふけっていたら、ほむらちゃんが心配そうに声を掛けてきました。えへへ、やっぱりほむらちゃんは優しいなぁ。

 

「うん、平気だよ。ちょっと疲れちゃったけど、それだけだから。それより早く帰ろうよ。みんなで一緒に」

「そうね。帰りましょうか」

 

 わたし達はお互いの顔を見て笑い合うと、それぞれの家に向かって歩き出したのでした。

 携帯を見てみると、ママ達も避難所から家まで帰って来ているようでした。無事でよかった……。

 そして家に着き玄関を開けると、ママとパパから、今までどこに行っていたのか、怪我はないのか等々質問攻めに遭いました。うぅ、ごめんなさい。でも、事情を説明できないのが辛いです。

 ただ、二人ともわたしの疲れ切った顔を見たせいなのか、それ以上は何も言わずに抱きしめてくれたので、とても嬉しかったです。弟のタツヤも、ねーちゃねーちゃと言って抱きついてきます。

 それから、わたしはお風呂に入って汗を流した後、すぐに自室のベッドへ倒れ込みました。

 

「はぁ~、気持ちいいぃ。本当に、全部終わったんだよね……」

 

 わたしは大きく伸びをします。窓から差し込む月明かりが心地良いです。ふと窓の外を見ると、そこには満天の星空がありました。まるで宝石箱のように煌めく星達に、思わず目を奪われてしまいます。

 

「わぁ、すごいなぁ」

 

 わたしは窓を開けてみます。すると、涼やかな風が吹き込んできて、頬に当たる感覚がなんとも言えず、気分が安らぎました。

 そのままわたしは、少しの間星を眺めることにしました。

 

「希望が大きなエネルギーにか……まさかキュゥべえにあんなこと言われる日が来るなんてね。なんか、変な感じ。まぁ、悪い気分じゃないんだけどさ。これで、魔法少女システムも、少しは変わるといいな……」

 

 今まで、ほむらちゃんが頑張ってきてくれたお陰です。わたしは自分の手を見つめます。穢れの無い、白くて綺麗な手。それが嬉しくて、わたしはその手でそっと胸に触れます。すると、心臓がドキドキしているのを感じました。

 わたしはまだ、生きている。この鼓動を感じられることが、何より嬉しいと感じてしまうのです。

 

「ちょっと前までは、誰かの役に立とうとか、そんな事ばっかり考えていて、自分のことは二の次だったけど、今は違う。何度も地獄を見てまで、わたしの為に戦ってくれたほむらちゃんがいるんだもん。それに、わたしには、こんなにも素敵な友達がいっぱいいるんだ。家族だって、いつも優しくしてくれる。それが何よりの幸せだって、今なら思えるよ」

 

 わたしにはもう、怖いものはありません。だって、わたしの周りにある全ては、希望で溢れていますから。

 もう奇跡は必要ない。既に充分過ぎるほど、奇跡は起きていたのだから。

 

「まどか、そろそろご飯の時間だよよ。降りていらっしゃい」

 

 下の方からパパの声が聞こえてきました。時計を見ると、いつの間にか結構時間が経っていたようです。

 

「はいはーい、今行くよ!」

 

 わたしは返事をすると、急いで部屋を出て階段を下っていくのでした。

 




最後までお読み頂きありがとうございました。これにて『契約なんかしなくても、奇跡の力を使ってみせる!』は完結です!
今後は特に更新の予定はありませんが、もしかしたら番外編や幕間的な形で、ちょこっとだけ何かを更新するかもしれません。具体的には、第6話での風見野組とのやりとりとか、最終話でダイジェストにしてしまった、恭介の治療シーンとか、その辺りを少し考えています。

さて、改めてお礼を申し上げます。このような、さして目新しいアイディアがある訳でもなく、ただ自分が読みたい展開を書いただけの二次小説を読んで頂き、本当にありがとうございます。もし少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。それでは機会があればまたどこかで!
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