音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第108話

正直言って考えていなかった訳ではなかった。自分の名前もそうだが、天倉町の知り合いにもライダーマシンの名前を冠する友人は居た。ビートチェイサー然り、そんな彼女曰くカブッちゃんことカブトエクステンダーにディケたんことマシンディケイダー。そんな知り合いもいるので何時か逢うかもしれないと思っていた。だが―――まさかその対象がアメリカのウマ娘だとは思いもしなかった。

 

「そんなに凄い方なんですか」

「凄いなんてもんじゃきかねぇよ、ダートも芝も行ける上に全ての走り方に精通してるんだぞ」

 

トレセン学園にもハッピーミークというウマ娘がいる。彼女も芝にもダートにも対応出来る上に全ての距離に対応できる奇跡のウマ娘と称されるが……トライドロンの場合はそれを完全に凌駕している。芝でもダートでも距離を問わず好走できるという、競走ウマ娘としてはなかなかの逸材ではあるが、これといった長所が無いのが欠点としてあげられている。だがトライドロンの場合はそれが無い。

 

「なんて言うべきかな……短距離なら短距離の技術(スキル)が、長距離なら長距離のって技術あるだろ?」

「はい。スピードやらスタミナの温存やらですよね」

「トライドロンは走るステージによって適した技術を繰り出してくるんだ、しかも大量にな」

 

ハイパービークルとも呼ばれる所以である。走るレースに合わせた技術を繰り出して自分の走りを強化してくるのである、短距離専門だろうが長距離専門だろうが関係なしに彼女は勝利をもぎ取ってくるのである。走れぬ場など無しと言わんばかり、その走りでアメリカのウマ娘の中でも最強格として真っ先に名前が上がる。

 

「とんでもないですね」

「だろ、凄い奴に目を付けられちまったな……まあ幸いなのが今年のジャパンカップって事か……去年はもっとやべぇからな」

「どんな方が居たんですか?」

「トライドロン以上のバケモンが居たんだよ。オペラオー包囲網的な事をされてそれを一瞬でブッちぎって圧勝するようなバケモン」

「何処のモンスターマシンですかそれは」

 

一体どんなウマ娘なんだ……と思わず思ってしまうのだが、その後に名前を聞いてチェイスは思わず納得してしまった。確かにそいつならしょうがないわ、寧ろ戦いを挑んだ事自体が間違いだわと諦めすら浮かぶ。

 

「そいつライドロンっていうウマ娘なんだけどな」

「ああうんしょうがねぇわそれは」

「何だ知ってるのかよ」

「ああいや、そうじゃないですけどなんか説得力というか……」

 

その名前を出されたらもう納得するしかないのである、というかそれが本当に現役じゃなくて良かったと安心してしまう。絶対に勝てないし勝ち筋があったとしても不思議な事が起って絶対に逆転されると自信を持って宣言できる。

 

「んで今は引退してトライドロンのトレーナー的な事をやってる。やりたい事は全部やり切った、だから次のやりたい事って言って今度はトレーナーだ、全く以てすげぇよ。その手始めに妹をって具合なのかね」

 

何でも一発でトレーナー試験に合格したとかで扱い的にはサブトレーナーらしいが、既に一流のような手腕を発揮しているという話まで出ている程に完璧すぎるウマ娘。しかしそう言った進路に進むウマ娘もいるのか……と警察官志望のウマ娘は思うのであった。

 

「というかトライドロン、さんのお姉さんなんですか」

「ああ。姉貴のライドロンみたいにトライドロンも今の所負けなしだ」

 

何というか、色んな意味で本当にとんでもない相手に目を付けられてしまったらしい。トライドロンだけでもお腹いっぱいなのにそのバックアップに時間さえも超えてしまうライダーマシンのライドロンが付いているなんて悪夢だろうか。いや実際に戦わないだけマシなのだが……。

 

「兎に角チェイス、ジャパンカップに出るつもりなら覚悟しておいた方が良いぞ。何も強敵はトライドロンだけじゃないんだからな、他にも来るだろうからな」

「分かってます、というかジャパンカップの心配をする前にまず宝塚記念の事を心配しないといけませんからね」

「応、そういう事だ」

 

ジャパンカップも大いに気になるのだが、今は宝塚記念に専念しないといけない。何せ―――宝塚記念にはゴルドも出るのだから。ヴィクトリアマイルを征して宝塚記念に望むつもりでいるのだから。

 

「ウチからもお前以外に今回はゴルシとハリケーンも出るから覚悟しとけよ、相手はゴルドだけじゃないぞ」

「ハリケーンは兎も角、ゴールドシップ先輩も一緒ですか……なんか恐怖を感じるのは私だけですかね」

「言いたい事は分かる」

 

流石にレースでは普段の奇行やらは出ないが、それでも不安になる気持ちは理解出来る。

 

「私は私で頑張りますが、それより先に日本ダービーが先でしょう」

「ああそりゃ解ってるし特別メニューも渡してあるから大丈夫だ」

「……サブトレーナー、まだ決まらないんですか?」

「……中々な」

 

疲れたような笑みを浮かべる沖野、大分大所帯になっているスピカ。流石に沖野一人ではチーム管理も辛くなってきたころなので理事長にもサブトレーナーをお願いしているのだが……普段から知れ渡っているスピカの奇行の影響で引き気味になっているのに加えて、自分という無敗の三冠ウマ娘が誕生してしまった事で色んな意味で敬遠されがちになってしまっている。

 

「なんか、すいません」

「いやいやいやチェイスが謝る事なんてねぇよ」

「肩ぐらい揉みますよ」

「……悪い頼めるか」

 

 

沖野トレーナー。ゴールドシップの奇行に巻き込まれて色んな意味で鍛えられていると言っても流石に限界が近くなっている模様。




良かったねチェイス、ライドロンとは戦わないよ。
彼女がサポートするトライドロンと戦うだけだよ!!

チェイス「どっちにしろ絶望的だよ!!?」
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