音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第115話

風が強まってくる、雨が強くなってきているような錯覚を味わいながらも全身にぶつかってくる。雨は体温を奪って行く、だがそれにも負けずと走り続けているウマ娘達。そんなウマ娘に熱狂が渦となる―――と言いたい所だが今回ばかりは全く別の渦が生まれているのだから笑えない。

 

『マッハチェイサーの後方、5身離れた最後方にはゴールドシップがいます。まさかの事態を引き起こしながらも懸命に走っていますが間に合うのでしょうか』

『まさか過ぎる出来事でした、声を上げちゃいました』

 

この宝塚記念の連覇がかかっている筈のゴールドシップ、それが渦の中心。まさかの隣のウマ娘に食って掛かるという事をやってスタートを大きく遅れてしまうという事をやってしまった。故に観客からは様々な感情を乗せた声が漏れている。

 

「まだまだだぞゴルシ~!!」

「こっから巻き返せ~!!」

「真面目に走れよお前今回は~!!」

 

だが諦めや怒りの声よりも遥かに笑ったり応援する声が圧倒的に多いのである。それはまるで子供の運動会を見に来ている保護者のような和やかな雰囲気を出しながらも最後方で走っているゴールドシップへと声を送っている。これも彼女のカリスマ性が成せる業なのだろうか……

 

「マジかよお前~……」

「んもうゴルシってば……まあしょうがないな」

「ゴルシだしな」

『寧ろこっから食い付くのがゴルシだし』

 

「ゴ、ゴールドシップさんへの信頼が凄いです……」

「まあうん……あいつは別の意味でチェイス並みのエンターテイナーだからな」

 

感じた事もないような和やかで楽し気な雰囲気に包まれているのに目を丸くして辺りを見回しているオルフェーヴルに沖野は何処か諦観の表情になっていた。もうこうなったら手遅れだしやらせるだけやらせるしかない。

 

『先頭を駆け抜けるのはゴルドドライブ、逃げを打っておりますがこのまま逃げ切れるのか!?直ぐ後方にはサクラハリケーンがピッタリとくっ付いております!』

 

「逃がさねぇよ……!!アタシの跳びは流石のアンタでもコピれないでしょうしね!!」

「寧ろメリットがないわ」

 

先頭を走り続けているのはゴルド。チェイスが来る前にさっさと逃げ切ってしまおうという事なのか、ツインターボに負けたからなのかは分からないが先行から逃げに戦法を最近は変えてきている。それにピッタリと張り付いて行くハリケーン。分かった事だがハリケーンにとってはゴルドのゴルドランは怖くない。何故ならば―――彼女の切り札はスイッチの切り替えに跳躍が必要になるから。

 

「オラオラオラァ!!」

 

『サクラハリケーン激しくゴルドドライブを煽って行きます、これはかなり走りにくいぞ!!』

 

溜め込んだ力を解き放って跳躍、そこから着地で更に深く踏み込んでから一気に大加速するハリケーンの戦法は他のウマ娘にとってはリスクしか付き纏わない。なのでゴルドランでコピーされる心配はないとハリケーンは酷く強気であった。

 

「マジで貴方何なんですか……」

「うぉおおおマジでミスったぁぁぁ!!これも全部シャカシャカスイスのせいだ!!」

「っザけんなぁ!!」

 

と前から怒号が聞こえて来た。丁度前あたりにはゴールドシップと激しい言い合いをしていたエアシャカールがいた、彼女も彼女でゴールドシップ程ではないがかなりの出遅れをかました上にリズムが大いに狂ってしまって酷く走りにくそうにしている。

 

「だけどなっゴルシちゃんはこういうのは大得意なんだよなぁ!!」

「それじゃあ―――勝負しましょう、先輩」

 

『第四コーナーを過ぎて―――内だ!!内から上がって来たゴールドシップ、マッハチェイサー共に既に上位にいるぞ!!ゴルドドライブとサクラハリケーンを既に捉えている!!』

 

外から一気に上がっていくチェイスの背後にピッタリとくっ付いていきながら駆けあがっていくゴールドシップ。確かに大幅に出遅れた、今回のレース場は雨によって場が悪かった。だがそんなの関係ないと言わんばかりに悪路に強いチェイスと常識なんて知るかと吐き捨てるゴールドシップは一気に内を突いて駆けあがっていた。

 

「噂に聞くワープという奴か!?」

「膨らんだ隙を突かれてる!!」

 

既に射程圏内に捉えられていた二人は思わず焦った。チェイスが駆け上がって来る事は予測出来ていたがまさかゴールドシップまで駆け上がって来るなんて……あんな出遅れをしておいて、どういう走りをしているんだ!?とその焦りを二人は見逃さない。

 

「ゴルシちゃんを舐めんなよぉぉぉぉ!!!木魚ライブ絶対にやってやるぅぅ!!」

「ホントこの先輩怖いなぁ!!?」

「冗談抜きで命を危機を感じるのはなんでだ!!?」

「そのモチベーションで此処まで持ち直すこの人マジで可笑しい!!」

 

とゴルシ節全開のままとんでもない大混戦になった先頭集団。掲示板に乗る事も難しいと諦めていた者の予想を裏切る様にゴールドシップはそのまま力強く走り続けていく。後輩たちの後ろを取りつつも追い抜かんと迫り続けている、そんな先輩に色んな意味で危機を感じて三人はどんどんスピードアップしていく。

 

「ヒャッハァァァァ!!!」

「すいません、ハリケーンとゴルド―――身代わりお願いします!!」

「あっちょまってチェイスゥゥゥ!!」

「本気で待ってくれぇぇぇ!!」

 

命の危険を感じた事でリミッターが外れたのだろうか、チェイスは一気に加速して先頭に立ってそのまま逃げだしていく。そんな彼女に二人は懸命に走るのだが……背後から迫って来たねっとりした笑い声が身体を包み込んだような気がした。

 

「つぅかまえたぁ♪」

「「ヒィッ!!?」」

 

『マ、マッハチェイサー抜け出したっというよりもこれは逃げ出したというべきなのでしょうか!?サクラハリケーンとゴルドドライブもなんだか凄い形相で走っております!?これが連覇ウマ娘の覇気なのか、底力なのか!!?』

 

そのまま二人を飲み込んだゴールドシップはそのまま駆け抜けていった。そして―――

 

『ゴール!!一着マッハチェイサー、そしてあれだけの遅れを見せながらもゴールドシップ何とまさかまさかの二着ぅぅぅぅ!!!?』

 

「いやぁ惜しかったよな!!どこぞのシャカシャカの邪魔なければゴルシちゃんが勝ってたのにな!!」

「マジでそう思えるから怖い……」

「つう訳で、アタシに抜かれたそこの二人―――マグロ漁な♪」

「「なんで!!?」」




はい、という訳で宝塚記念でした。ゴルシ、木魚ライブやる為に頑張って二着。流石にあの遅れは致命的で無ければチェイスに圧勝してた模様。

因みに三着はゴルドドライブ。ハリケーンは五着に沈みました。尚、週末マジでマグロ漁船に拉致られた模様。

当時の事を思い出しましたが、なんというか……阿鼻叫喚でありながらも凄い和やかでもあったんですよね。純粋にゴルシを応援している人も大勢いたし笑っている人もいた。マジで運動会のような雰囲気もありました。

いやぁぁぁぁ!!!って絶叫とあちゃ~wwwってのが半々ぐらいでしたかね。尚、私の親父は絶叫側。確かゴルシに数万突っ込んだとか言ってたような……

興味ありましたら2015年の宝塚記念で検索してみてください。良くも悪くも競馬に興味沸きますよ。初競馬がこのレースだった私が保証します。
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