音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第27話

遂にこの日がやって来た。12月、ジュニア王者を決めると言ってもいいGⅠレース、ホープフルステークス。中山レース場には多くの人が押し寄せている、流石に有記念ほどの人ではないが、それに負けない熱気が中山レース場に渦巻いている。それもその筈、このレースの条件はクラシック三冠の一角である皐月賞と同じ。つまりこのレースの結果がクラシックに直結すると言ってもいい、皆がその目に焼き付けようと押し寄せてきている。

 

「チェイスまだかな~まだかな~!!」

「落ち着きなってターボ、もうちょいだって」

 

パドックでは各ウマ娘達がこのレースの為に拵えた勝負服に身を包んで絶対に勝つという意識を燃やしている、勝負服に浮かれている者も居るがそれでも闘志に溢れている。そこにはチェイスと何度も戦っているリードオンとジェットタイガーの姿もあり、彼女らもチェイスの登場を待ち望んでいる。

 

『さあ今回のホープフルステークス、ダントツの一番人気のマッハチェイサーの登場です!!』

 

いよいよ来るか!!と観客たちが騒ぐ中、ド派手にバク転をしながら跳び上がり空中で捻りを加えての登場をするチェイス。それに皆が興奮するが皆が首を傾げる、何故ならば彼女が纏っているのはジャージ、勝負服などではなかったからだ。間に合わなかったのだろうかという声も聞こえてくる。

 

「何でチェイス勝負服じゃないんだ!?スピカのトレーナー如何言う事なんだ!?」

「いや俺が知りたいわ!?」

 

思わずツインターボだけではなく、スピカのメンバーからもどういうことなのかと問い詰められるが全く分からない。そんな時、その中心に立つチェイスが一際大きな声を出した。

 

LADIES&GENTLEMEN! IT'S TIME FOR SUPER STAR ACTION!!

 

そんな言葉を飛ばしながらもジャージの上着を脱ぎ棄てると彼女の腰部分に何やら青いドライバーのような物があった。そしてこれ見よがしにその手に中にあった車のような物を揺らしながらドライバーの一部をスライドさせてそこへと差し込んだ。するとドライバーは音を立てながらそれが何かを叫ぶ。

 

シグナルバイク!!シフトカー!!

 

共に流れ出すロック調の音楽、それに何が起こるのか全ての人の視線を釘づけにしていた。それを待っていたと言わんばかりにチェイスはポーズを取りながら叫んだ、それこそ自分が本当の意味でのマッハチェイサーになる為の合言葉だ。

 

「Let’s ―――変身!!!」

 

マッハ!チェイサー!

 

直後にチェイスの四方を取り囲む光の輪、それはその身体へと装着されるかのように収束していき形を変えていく。そして―――光が収まった時、そこにあったのは勝負服に身を包んだマッハチェイサーの姿だった。ライダースーツを思わせるような全身を覆っている、シルバーと紫がメインの下半身と青を基調とした上半身、そしてジェットヘルメットにも見えるバイザーを身に付けたこれこそチェイスの勝負服。

 

「追跡、大逃げ、何れも……マッハッ!!ウマ娘―――マッハチェイサー!!!如何皆さん、中々にサプライズの利いた絵だったでしょう?」

 

ポーズを取った後、バイザーを上げてから笑顔でそう言って見せると一気に観客に火がついて大歓声が起きる。何というパフォーマンスなのか、此処までやるウマ娘がこれまでいただろうかと言わんばかりにあらゆる視線を独り占めしていた。

 

「カッコいいぞ~チェイス~!!ターボもそれ使ってみたい~!!」

「いぃやぁ~……なんかアニメの変身シーンみたいだったね」

「エンターテイナーなチェイスらしいですね」

「カッコいいよね~今まで以上人気でそう」

 

「チェイスさん凄いカッコいい~!!」

「スペの時とは大違いだな」

「それを言うのはやめてあげなさいって……ウオッカ如何したの?」

「―――超カッコいい。トレーナー俺もあれ使いてぇ!!」

「僕も僕も~!!」

「一瞬であそこまでやれるのは確かに便利ですわ……」

「いや俺に言われてもな……」

 

だがこれでチェイスが何故ホープフルステークスを楽しみにしていてくれと言ったのもよく分った。まさかこんな演出が登場するなんて予想外にも程がある、あの時理事長が渡したのは恐らくあのドライバーであれが勝負服を展開させたという事なのだろう……いったいどういう仕組みなのか酷く気になる。

 

「おやっ沖野さんじゃないか、奇遇ですな」

「実にお久しぶりだな、と言っておこう!!」

 

その声に聞き覚えがあって思わず振り返ってみるとそこにはクリムとグラハムがそこにいた。

 

「あっチェイスさんのお父さん!!」

「Hello there!また逢ったねスピカの皆さん方」

「チェイスのお父さんなのか!?」

 

まだ面識のないカノープスは声を聞いてチェイスの父親なのかと尋ねてみると笑顔で頷きつつグラハムも兄だと挨拶をする。

 

「おおっ~!!ツインターボだぞ、チェイスとはよく一緒に走ってるんだ」

「では君達がチームカノープスだな?!チェイスがメールで言っていたぞ、尊敬出来る先輩方が所属しているチームで良くお世話になっていると。このグラハムも兄として礼を言わせてほしい!!」

「い、いやぁ尊敬出来る先輩とかちょっと照れちゃいますねぇ」

「私達は真摯に応えているだけですので……」

「フフンッ!!特にターボとチェイスは仲良しだぞ!!」

「ほほう!!」

 

何やらグラハムはカノープスの面々と話し込み始めた、気質的にも相性がいいのかこの辺りもチェイスと似ているからかもしれない。その間に沖野はこの間の事を尋ねてみる事にする。

 

「クリムさん、この前理事長がチェイスに贈り物を渡したんですけど……URAでもチェックしたとか」

「ああ。チェイスが付けているドライバー、マッハドライバー炎は私が作ったものだよ。と言っても大した機能はないさ、せめてああいう事が出来る事ぐらいだよ」

「いや十分凄すぎると思うんですが……もしかして天倉町を離れる時のお願いってこれですか」

「Exactly.こう見えても私は結構優秀な科学者でね」

 

そう言いながらもその場で勢いよく回転してからポーズを取るなどして完成した自分を見せているチェイス。あれだけ喜んでくれるとは思いもしなかった、娘の為に頑張った甲斐があったという物だ。

 

「ねえねえおじさん!!あれって僕とかも使えたりする!?」

「Yes.君の詳細なデータなどがあれば問題ないよ、と言ってもその為にはデータを取るのに時間がかかるけどね。チェイスの場合は私の研究を手伝ってくれていたからそのデータがあったんだよ」

「ターボも使いたい!!」

「おいおいおい……なんかすいませんね」

「HAHAHA.娘の友人に此処まで頼りにされるのも悪い気分はしないさ」

 

「どう皆さん、これ中々に凄いでしょ~?」




うん、やっちゃったぜ。尚、唯勝負服は唯の勝負服でしかないので特殊能力云々はない。

ある意味、トニーが関わる前のスパイダーマンのスーツに近い。
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