音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第38話

チェイスの朝は早い。

 

「……朝ですね」

 

天倉町からいた時の習慣故か、3時半ごろになると自然と目が覚める。一応目覚ましも掛けてはいるが、毎回毎回それよりも早く起きてしまうのでアラームを解除してからベットから降りる。今は一人部屋なので良いが、その内この部屋にも同室者が来る事を考えると何か考えていた方が良いかもしれないと思いつつ顔を洗う。

 

「……何時まで経っても慣れたようで慣れんな、これには」

 

レースの事には色々と慣れてきているのに未だに全く慣れないしこれから先も慣れる気が一切しない物がある。下着である。元男である身としては着けない物を着ける事に抵抗がある……まあ着けないと色々と面倒なので確りつけるが……。

 

「……ちょっとキツくなったかな、ランジェリーショップとか一番行きたくないのに……」

 

チェイスの身体は既に本格化しているが、まだ身体の一部は大きくなっている。身長は少しずつ、がそれ以上にまた胸のサイズが大きくなっている気がする。以前計った時は86だった気がする……正直重いし肩が凝るので勘弁して頂きたい。男としてはこの胸に憧れた事もあったが、体験してみると結構辛い事が多い。

 

「ハァッ……まあスポブラで良いだろ」

 

そんな事を吐き捨てながらジャージに着替えて外へと出ていく。秋ごろになって開拓が終わったトレセンの周辺地理。生憎近くには朝日が綺麗に見える山が無い事は非常に残念だが……その代わりに朝日によって輝く川でその無聊を慰めている。

 

「おっチェイスさんおはよ~」

「おはようございます」

「今日も朝早いなぁ~!!」

 

開拓が終わってから毎日走っているからか、ルート上にある商店街では早朝の仕入れを終えて開店準備を行っている店の店主から声を掛けられたりしている。ナイスネイチャにこの商店街を紹介されたという経緯もあってか、チェイスはこの商店街でも可愛がられていた。

 

「チェイスちゃん如何だい今日は良いニンジンが仕入れられたんだけど一本どうだい!!」

「いえ、大丈夫です」

「何言ってんだい、チェイスちゃんはこっちのリンゴに決まってるじゃないか」

「おっとこりゃ行けねぇ、ほれっ遠慮しねぇで持ってきな!!」

 

投げつけられたリンゴをキャッチする、毎回遠慮はするのだがご厚意を頂いてしまっている。その分はレースで返そうと最近は思っている、一先ず貰ったリンゴは朝日が昇って来たのに合わせて訪れた川沿いで休憩しながら食べる事にした。

 

「うん、最高の贅沢」

 

このリンゴの鮮度も品質も最高レベル、それを味わいながら朝日を見るというのも最高の贅沢だ。

 

「あれっチェイスじゃん」

「おっ本当だ!!」

 

リンゴを食べ終わった頃、再び走り出そうとした時に不意に声を掛けられた。そこにいたのはナイスネイチャとツインターボの二人だった。同じように学園指定のジャージに身を包んでいる。

 

「おはようチェイス、朝早いんだな!」

「おはようございますターボ先輩にネイチャ先輩。お二方もお早いようで」

「いやね、普段は寝てる時間なんだけどターボは今度のレースも勝つ!!って意気込むもんだからさ、その為の朝練をするって事になったの。んでアタシはまあ付き添いっていうかターボがバテた時の回収係?」

「バテないもん!!最近は全然逆噴射しないもん!!」

「確かにしないけど念の為って奴よ」

 

ツインターボは最近調子を上げており、GⅡでの連勝記録を順調に伸ばしており今度こそはGⅠを取る!!とかなり息込んでいる。そんな原動力になっているのは自分を先輩と慕うチェイスのお陰である事は言うまでもないだろう。彼女との練習はツインターボにとっては大きな成長源となっていて、トップスピードを維持出来る時間は伸びている上に精神的にも成長している。

 

「宜しければお付き合いしても宜しいでしょうか」

「勿論いいぞ、チェイスも一緒に走るぞ~!!」

「お~お~チェイス絡みとなると元気いっぱいだねぇ~ターボは」

 

何時も以上に元気を出すというか、威厳を出そうとしているというか……正確にはやる気が漲るというべきなのだろうか。互いが互いを刺激するいい関係になっているとよくわかる。

 

「そうだネイチャ先輩、少しご相談があるんですが」

「おっ何々。ネイチャ先輩に何のご相談?」

「その……実はまた……」

「あ~成程ね、いいよ」

「んっ何の話?」

 

以前の休みに気分展開を兼ねて新しい洋服を見に行った時にウマ娘向けのスポーツショップに居たチェイスを見かけた事があったのだが……その時に何の色気も飾り気もないスポーツブラを選ぼうとしていたので、それを止めて選んであげた事があった。お洒落などには余り興味がないらしいので、その後も服を選んであげたりもした。チェイス自身見た目が良いので服の選び甲斐があっていい気分であった。それからチェイスは時折、服装の事などで相談しに来るようになった。

 

「何だチェイスは御洒落に興味ないのか、駄目だぞそれでは。今トキメクウマ娘がそれじゃ駄目だぞ!!」

「ターボも何だかんだで気遣ってるもんね」

「いえその……下着を買い替えたくて……」

「うわっまだ大きくなってんの?ヒシアケボノみたいになるんじゃないの?」

「それはそれで困るような……」

 

そんなからかいをしつつも後輩に頼られるという事に嬉しさを感じつつも任せておきなさいと胸を叩く。こうしているとツインターボがチェイスに尊敬されて嬉しそうにするのが良く分かる。

 

「んじゃそれはまた今度にして―――走りますか」

「よ~し走るぞ~!!」

「はいそれじゃあ……ってターボ先輩また全力全開ですか!?」

「だから何でもかんでも全開で走るのはやめなさいって言われてるでしょうが!!?」

 

この後、倒れて動けなくなったツインターボはチェイスがおんぶして寮へと戻った。




チェイスの身体データ。

身長:174㎝
体重:レースに出る関係で食べる量が増えたので、増量。
スリーサイズ:B88/W55/H89
靴のサイズ:両方ともに26.5

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