音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第40話

『本日、此処東京レース場で行われるのはGⅢ共同通信杯。16人のウマ娘が出走します!!天気は生憎の分厚い雲に覆われ、僅かに雪も見えるようになっております。今日のバ場発表は稍重となっていますが、これが今回のレースにどのような影響を及ぼすのか』

 

まだまだ厚めの冬服が手放す事が出来ない2月、本日の気温は2度。極めて寒いうえに雪までちらつき始めてしまっている、この寒さの中で走る上で確りとしたウォーミングアップは欠かせないし走る前に身体が冷えてしまっては元も子もない。出走ウマ娘はみな何処か気張った顔付きをしている。

 

『三番人気はモニラ、マイルでは負け知らず。その末脚は今日も冴えるのか、二番人気はジェットタイガー、優しい巨人はマイルでも強さを見せます!!一番人気はこのウマ娘!!無敗のジュニア王者マッハチェイサー!!中距離がメインであるこのウマ娘、マイルではどんな走りを見せてくれるのか楽しみです!!』

『ジュニアでは走ってきたのは中距離のみ、マイルでも得意のマッハチェイスは出るのか楽しみですね』

 

息を吐けば白くなって登っていく。そんな様子を見つつもチェイスは暢気に勝負服を着て。バイザーを上げた状態で息を吐いて放熱再現やりたいなぁ……なんてくだらないことを考えていたのであった。初のマイル挑戦であるのにも関わらずこのウマ娘はなんてマイペースなのだろうか……。

 

「フフフフッ……まさか貴方がマイルに挑戦するとは、少し驚いたよ。リードオンには悪いが今日は私との一騎打ちですな」

「ジェットタイガーさん」

「タイガーで結構ですぞ、私もチェイス殿と呼ばせて貰う故」

 

ゲートイン前に話しかけてきたのはジュニアクラスで幾度も戦ってきたジェットタイガー。如何やら今回はリードオンはいないらしい、なので今回は彼女との激突ということになる。

 

「何にせよ本日も宜しくお願い致しますぞ、一言だけ言わせていただけるのであれば私は負けませんぞ、こう見えてマイルは大得意故」

「此方こそ宜しくお願いします。私だって負けるつもりはみじんもありません、勝つ気でいます」

「ではっ―――あとは雌雄を決するのみ、ですな」

 

静かだが力強い、そんな笑みを浮かべながら手が差し出される。それを強く握る返すと彼女はそれを望んでいたかのように笑った、そしてそれを切っ掛けにするかのようにゲートインの時間が訪れた。5枠9番のチェイス、今回はこの位置になるがどんなレースをするのかと観客だけではなくほかのウマ娘たちも警戒を強めていた。

 

『各ウマ娘ゲートに入って、体勢整いました』

 

 

やはりゲートの中に入ると自然と神経が鋭敏になっていく感覚がする、そんな感覚の中でチェイスは唯々始まりの時を待つ。そして―――その時が訪れた。

 

『さあ今共同通信杯の(ゲート)が切られました!!先頭は―――マッハチェイサー!!そのあとにジェットタイガーが鋭く食らいつく!!』

 

「マッハチェイスを実行します、ずっと―――マッハッ!!!!」

「フフフッリードオンの代理のつもりですかな、ならば―――続くのみ!!」

 

『百日草特別以来の逃げ戦法だぞマッハチェイサー!!新年一発のレースで得意の追い込みではなく大逃げ戦法!!それを追走するのはジェットタイガー、リードオンと走る時と同じようにマッハチェイサーを逃がさない!!!』

 

ゲートが開いた直後からの爆走、スタミナの配分なんて一切考えないような大逃げに驚くウマ娘たち。何せクラシック一発目でもあるこのレースで得意の戦法で感触を確かめるなどではなく過去に一度やった真逆の戦法を使うとはまさか思わなかった。だが、それに驚かなかったのはジェットタイガー、彼女だけがチェイスの走りについていく。

 

『レースを引っ張るのはマッハチェイサー、まさかの大逃げ戦法でレースを引っ張ります!!おっと他のウマ娘たちもそれに続こうとしているのか、掛かっているぞ!!1800mとはいえこのペースで大丈夫なのか!?』

『彼女の逃げ戦法はツインターボやメジロパーマーを彷彿とさせるものですね、ですがそれに続くジェットタイガーの走りも素晴らしいです』

 

マイルを散々サイレンススズカと走って分かった。追い込みの掛け方もだいぶ分かって来たが、それ以上にいい戦法がある。それが以前に一度だけ行った逃げ戦法である。中距離を逃げ切る事が出来たのならばマイルだろうがそれが出来る筈だと沖野から逃げ戦法を提案された。実際に逃げで走ってみると追い込みよりもしっくり来たので逃げで走ってみる事にしたのであった。

 

「―――ずっと……マッハッ!!!

 

『此処でマッハチェイサーがスパートをかける!!凄まじい加速だ、ジェットタイガー食い下げる、食い下がる!!2身差を維持したままで駆け抜ける!!ラストの直線でこの二人の激突だ!!』

 

「負けん、負けてたまるかぁぁ!!!」

 

『此処でジェットタイガーもスパートを掛ける!!!さあマッハチェイサーに追いつけるか、行けるのかタイガー!!』

 

猛烈な勢いで迫るジェットタイガー、このウマ娘は矢張り直線で最大の力を発揮する。ヒシアケボノにも匹敵する巨体から繰りだされる走りは凄まじいストライドを誇る、それは音速の追跡者をも捉える―――

 

「―――ずっと……マッハッチェイサァァァァ!!

 

いや捉えられない。更に加速したチェイスはスパートをかけるジェットタイガーを置き去りにして更に先へと突き進んでいく。

 

『マッハチェイサーが更に抜ける!!なんという強さだマッハチェイサー!!音速の追跡者、逃げでもその強さを証明するかのように今ゴール!!!!』

 

逃げ切られた、ジェットタイガーは二着でゴールイン。矢張り強い、さすがはジュニア王者……その名に相応しい強さだと思わず膝をついてしまいながらも前にいるチェイスを見てジェットタイガーは静かに笑う。

 

「本当に、凄い人だ……」

 

「追跡ィ!!大逃げェ!!何れも―――……」

『マッハ!!!』

「ウマ娘―――マッハチェイサー!!!」

 

定番のポーズで会場が沸き上がる中、一人のウマ娘がチェイスの活躍をうれしそうな表情で見つめていた。

 

「さっすがチェイス!!昔っから凄かったもんねぇ~……でも、もうターフはあんただけのものじゃない、何故なら―――ここからは私のステージなんだから!!」

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