音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第41話

「よし休憩!!」

「皆さんお疲れ様です、ドリンクをご用意しました。此方に天倉巻もご用意してますので」

 

共同通信杯にて大逃げで大勝したチェイス。ジュニア王者は幸運による産物などではないという事を改めてその実力を見せ付けた、そんなチェイスは他のメンバーが練習中に差し入れを持って来ていた。今は脚を休める時間なのだが何もしないというのはどうにも性に合わないので、サポート役に徹している。

 

「プッハァ~!!生き返る!!」

「この天倉巻は抹茶とチョコクリームですわ!!」

「って早ぇよマックイーン手を付けるの!?」

「私達だって食べたいんですから~!!」

「ボクも食べる~!!あっこの天倉巻、蜂蜜入りだ!!」

 

我先にと天倉巻に群がるスピカメンバー、良くも悪くも天倉町の名前はトレセン内で広まっている傾向にある。

 

「手伝って貰って悪いなチェイス、でも休んでて良いんだぞ」

「料理は仕事であり趣味ですからいい気分転換になりました、はいトレーナーさんも。スズカ先輩もどうぞ」

「悪いな」

「有難うチェイスちゃん」

 

すっかりスピカにも馴染んでいるチェイスは度々天倉巻を作ってくるようになった、ご丁寧な事に甘さやカロリーも調整しているのでトレーニング中でも安心して食べられる。個人によっては燃費が悪い為、朝昼晩の食事の間を絶食と表現する者も多い。

 

「マックイーン食べ過ぎには気を付けろよ、幾らチェイスがカロリーとかに気を遣ってくれてるって言ったって食べ過ぎたら普通にアウトだからな」

「わ、分かってますわ!!」

「だったらこれはアタシが貰うわ」

「ああっ!?ゴールドシップさん貴方、楽しみに取って置いた最後の抹茶チョコ味を!!」

「20個以上喰ってるじゃねぇか」

 

それでも個人によって太りやすいのもあるので油断は出来ない。代表例はメジロマックイーン、そして食べ過ぎによって皐月賞を落としたスペシャルウィーク。

 

「そう言えば天倉巻と言えば……チェイス、島根のトレセンに友達がいるとかスカウトした時に言ってたよな」

「はい。以前町のお祭りに来てくれた人でその時にステージで一緒にブレイクダンスをやりました」

「実は今日、島根のトレセンから一人中央に来るんだよ」

 

それを聞いて思わず友人を思い出した、だが彼女が来るのは4月の筈。ならば別の人だろうか。

 

「おっなんだ島根って事はまたチェイスみたいな奴が来るのか?んじゃアタシが連れて来てやろうか!!」

「連れて来るのはいいけど、頭陀袋で拉致るのはやめろよ」

「もうやらねぇって。この看板で引っ張って来るだけだっつの」

「……あの、その看板直しません?」

 

何処からともなく取り出されたスピカの勧誘に使う看板。が、そこにあるのは土に埋まっているウマ娘の姿と"入部しないとダートに埋めるぞ"という最早よく分からない脅迫めいた文章。これで入部したいというウマ娘がいるだろうか。

 

「絵なら自信ありますから私描きますよ」

「おっマジで?いい加減この看板もマンネリ感漂ってきたもんな~」

「いや普通に考えてないと思います……私もスピカに入る前に見て何これ……って思いましたもん」

 

スペシャルウィークの言葉は的を射ている。沖野の放任主義的な所が押し出されていて何とも自由らしさが強調されていると言えばそうだが……。本当にメンバーを集めたいなら本気で変えるべきだと思っている。

 

「んでそいつの事を聞いて吃驚したんだよ」

「何に驚いたの?」

「そいつ、あのサクラのウマ娘だったんだよ」

「サクラって……バクシンオーさんとかの」

 

サクラと言えばウマ娘の世界においてはメジロ家にも並び劣らないとされる名家、別名サクラ軍団。有名処を上げろと言われたら矢張り短距離最強ウマ娘として真っ先に名が上がるサクラバクシンオーだろう。まあ彼女は別の意味でも有名ではあるが。

 

「あのもしかして……そのウマ娘の名前って―――」

「おっ~此処が中央トレセン学園のコースかぁ~!!島根のトレセン以上に広くて設備も揃ってるなぁ~!!!」

 

その名前を口にしようと思った時、何処からともなく快活な声が響き渡った。視線を向けてみるとそこには肩に青いバッグを担ぎながらコースを見渡して耳を激しく動かしているウマ娘がいた。キラキラと瞳を輝かせながら目の前に広がる全てに興味を示して今すぐにも走ってみたいっという気持ちが見えている。

 

「おっいい所にチームを発見!!お~いちょっと話を―――ってああああああああああああああ!!!!!???」

 

元気よく跳躍してから着地すると声を掛けようとするのだが……突如として大声を上げるとそのウマ娘は凄い勢いで此方へと迫って来た。突然の事に何事かと皆が困惑する中でそのウマ娘はチェイスへと抱き着いた。

 

「チェイスゥゥゥゥおっ久しっぶり~!!!!直ぐに会えちゃうなんて流石は私ぃ~!!」

「も、もしやかと思ってましたけど本当に貴方だったなんて……ハリケーン」

「えへへっ来ちゃったぜ♪」

 

チェイスの胸に顔をうずめながらも笑顔でチェイスにウィンクをするウマ娘、彼女こそがチェイスの友人であり島根トレセンから中央にスカウトをされた存在。桜の花びらを模した髪飾りが特徴的なウマ娘、サクラハリケーン。

 

「4月に此方に来ると言ってたじゃないですか……?」

「あ~だって三冠に挑戦出来ないかもって思ってさ、無理言って早めに転入させて貰ったんだぜ。いやぁ~チェイスがレースに興味を持ってくれて私は嬉しいな~順調に育ってくれて嬉しい限り~胸も順調に育ってくれてるみたいで……ボリュームもマシマシで抱き着き心地もまた倍増しちゃって……」

「知ってますか、セクシャルハラスメントって同性でも適応されるんですよ」

「マジすんませんでした」

 

自分の胸にぐりぐりと顔を埋めて感触を楽しんでいる友人、だが容赦はしないと言わんばかりに問答無用で警告を発する。それに流石にやり過ぎたと反省したのか後方に飛び退きながらそのまま後ろ向きに滑りながら土下座するという器用な真似をするサクラハリケーンに色物集団扱いされるスピカも呆気に取られてしまった。そんな友人に溜息をつきながらもチェイスは笑顔を作った。

 

「でも、貴方に会えて嬉しいです」

「おうっ私も嬉しいよ!!これから宜しく!!」




チェイスの友人事、サクラハリケーン参戦。

性格は紘汰ベースでチェイスに対してちょっとスキンシップが激しめ。そしてサクラバクシンオーとは親戚関係……?

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