音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第42話

「という訳でトレーナーさんのお話の方は私の友人でした、改めて紹介させて頂きます。私の友人のサクラハリケーンさんです」

「どうも恐縮です、サクラハリケーンです。島根のトレセンから来ました!一応戦績は5勝1敗っす!!」

 

土下座から立ち上がって挨拶をするサクラハリケーン。チェイスの友人という事で興味をそそられるが、戦績も中々。如何やら移籍が決まった後の最終レースでライバルとも言えるウマ娘と激戦を繰り広げ、写真判定の末に2着になってしまったとの事。

 

「あれマジで悔しかったぁぁぁぁ!!今度やったら絶対負けないし!!」

「中々良いガッツしてるっぽいな」

「うっす!!フィジカル面とガッツには自信あります!!」

 

快活な笑顔は何処となくサクラバクシンオーを彷彿とさせる。矢張り親戚なのだろうか。

 

「あのバクシンオーさんとは御親戚なんですか?」

「あっ勿論です!!と言っても私は分家っつうかなんというか……そういう感じで立場的には弱い部類ですけどバクシンオーさんには色々とお世話になりました。バクシンバクシーン!!ってレースに連れ出してくれたのもあの人ですし」

 

ハリケーンはサクラの家に所属こそしているが、如何にも複雑な事情というか、サクラの中では弱い立場にあるらしく集まりにも消極的で行くのは年始の集まり程度、そんな時にレースをしようと誘ったのがサクラバクシンオーで何とも想像しやすい図だ。確かに彼女は妙な事なんて気にせずに一緒に走ろうと声を掛けるだろう。

 

「ンで学園の案内は任せてくれって言われてて、でも私ってばワクワクを抑えられなくて自分で探検に来ちゃったんですよね~」

「アハハッ分かる分かる、ボクもトレセンに初めて来た時はワクワクドキドキで探検しに行っちゃったもん」

「でしょでしょ!?」

「私はテイオーさんに案内された時は本当に感動したな~」

「やっぱりですよね!?」

 

と、チェイスと違ってあっという間にスピカの空気に馴染んでいく。基本大人しく静かなタイプなチェイスと違ってテンションは高くお調子者な性格のハリケーンはスピカの相性は最高に近い。

 

「いやぁ~中央って島根と全然違うんだよなぁ!!人もウマ娘もすげぇ多いし、ぶっちゃけ此処に来るまでめっちゃ迷った!!」

「おいおい何だ何だそれじゃあ中央じゃ生きていけねぇぞ?しょうがねぇなこのゴルシちゃんがこの辺りを案内してマスターさせてやるよ」

「マジで!?先輩お願いします!!」

「いや、ゴールドシップさんに頼むのだけはやめておいた方が良いですわよ……」

 

そんな感じで話の中心になっているハリケーン、沖野は取り敢えず仲良くなれているように安心しているがそれ以上にハリケーンの戦績に関心を向けていた。5勝1敗、酷く立派な戦績だ。最後の一戦などはほぼ勝利したと言っても過言ではない程の激戦。これは中々に良い奴が中央にやって来たなと内心で笑っている。

 

「ハリケーンは何処のチームに所属するとかは考えてるの?」

「いや全然。でも折角ならチェイスのチームに入りてぇと思ってるけど」

「いいぞ入っても」

「ああそれじゃあ入って……ってうぉいテストとかそういうの無いんすか!?」

 

まるでタマモクロスのようなキレッキレなツッコミ動作をしながらハリケーンは沖野に問いをぶつけた。そんな簡単にチームへの入部を決めてしまってもいい物ではないだろう。

 

「別に問題はないぞ、スピカは入部テストとか設けてないし入りたきゃ入っていいぞ」

「ええ~……なんか私の想像してた中央と全然違う、なんか漫画みてぇに入部テストがあって希望者と鎬を削って合格者の資格をもぎ取る的な物を想像してたわ」

「そういうチームもあるわよ、リギルが代表的だし」

「ああやっぱりあるんだ……ってリギルってあの皇帝とかの居るチームですよね!!?か~一度見てみてぇ、出来れば勝負したい!!」

 

流石にハリケーンはその辺りの事に精通しているのか、皇帝だけではなく女帝にスーパーカーと言ったリギルに所属しているウマ娘の異名を列挙しながらも何時かその人達とも走ってみたいと闘志を露わにしている……が、それを沖野は謎の感動に包まれていた。

 

「そうそう……これが普通の反応なんだよ、皇帝って言われたらこの位驚いたり感動するのが当然なんだよ……」

「知識が皆無ですいませんでした」

「ああいや、あれはあれで新鮮で面白かったけどな。主に自分の事を知らないって言われた皇帝の顔が」

「えっチェイス、お前まさか……そう言えばスカウトに皇帝が来たって言ってたけどまさか……」

 

錆びた歯車のような動きでチェイスの方を見ながら引き攣った表情で問いかける。此方側の知識が少ない事は知っていたがまさか……と思っていると頷かれてしまうハリケーンはずっこけた。

 

「嘘だろお前!!?皇帝知らなかったってどんだけだよ!?TVとか見ないのか!?」

「みませんよ。天気予報だって最近はアプリで確認すれば済みますし」

「……国民的なスターがスカウトに来てアンタ誰って顔したのかよ……信じらんねぇ」

 

それを見て沖野もうんうんと頷く。

 

「今は分かってますから良いじゃないですか」

「そういう訳に行かねぇだろ……謝罪とかしに行ったのか?」

「天倉巻持参で挨拶には行きました」

「なら、いいのかな、うん。取り敢えず俺もこのチームに入りますんで宜しく!!」

 

色々ありながらもハリケーンはチームスピカに入る事を決意した。色々と緩い所はあるが、ハリケーン的には良い環境かもしれない、早速走りを見せて貰おうと思ったのだが……

 

「あ~すんません、この後寮に行って荷物の片付けと同室の子に挨拶しないといけねぇんで……」

「確かにそれもそうだな。んじゃチェイス、色々と手伝ってやれ」

「分かりました」

「おっそれじゃあ色々と話を聞かせてくれよ~チェイスちゃ~ん」

「そう言いながら抱き着きながら胸に顔を押し付けるのやめて貰えますか」

 

本当に仲が良いのか二人の距離は近い。そんな二人の後姿を見ながらも沖野はトレーニングを再開するぞ~と号令をかけるのであった。

 

 

「そう言えばヒシアマ姐さんから私の部屋に同室の方が来ると聞いてましたが……」

「えって事は……俺の部屋って此処って聞いたぜ」

「うん私の部屋です」

「やったぁっチェイスと同部屋だ!!これから毎日そのナイスボインを楽しめるな!!」

「……」

「あっちょ警察に通報はマジでやめて反省してますから」




ハリケーンの胸はスズカ位。

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