音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第44話

「ホラホラッもっと頑張らねぇとゴルシちゃんにまた負けるぞ~!!」

「今度こそぉぉぉっ!!」

 

改めてスピカへと加入したハリケーン。チェイスよりも遥かに親和性が高い為か既に馴染んでおり、特にゴールドシップとは仲良くなって何時も一緒になって走っている。自分とツインターボを傍から見たらこんな感じなのかなぁ……と思いつつもチェイスは次のレース、即ち弥生賞の事を考えていた。

 

「弥生賞……皐月賞と同じ条件でのレース、今までの物だと芙蓉ステークスと同じって事にはなるがGⅡでのレースだ、あれと同じだとは思うなよ」

「当然です。他の方々も私と同じように大きくなっている筈です」

「その通りだ、お前だけが成長してるだけじゃない」

 

確かにチェイスの成長は著しいのは確か。本当にレースや走りの知識が無かったのかと言いたくなる程に急激な成長をし続けている、だがそのチェイスに触発されて同期のウマ娘達の実力も軒並み上がっているといってもいい。スペシャルウィーク、グラスワンダー、エルコンドルパサーの三強が名を連ねた黄金世代とも言われる世代、それに勝るとも劣らない程に粒がそろっている。

 

「中山レース場については言うまでもないと思うが、最後の坂が難所だな。まあチェイスは寧ろ坂道は得意だろうから問題ないだろうが」

「何だったら坂路を走りますが、ブルボンさんからまた一緒に走らないかとも誘われてますから」

「走る時はせめて一言言ってからにしてくれ、な?」

 

以前、ミホノブルボンが分身してる!?という小さな騒ぎが起きた時があった。一体何の戯言かと思われたが真実は簡単、チェイスが一緒に坂路トレーニングをしていたという簡単な理由だった。坂路の申し子とも呼ばれるミホノブルボンの隣を走り続けるチェイスを話を聞いて様子を見に来たシンボリルドルフは

 

『伊達に何年も毎朝山を登って朝日を見に行っていないという事だな』

 

その言葉にエアグルーヴもおおむね同意であった。彼女もあの山道を登った経験があるが故に出来る納得であった。問題なのはその量であり、普通のウマ娘なら絶対に走れなくなる程の疲労を訴えるであろう回数の坂路を走り続けていた。それなのに当の本人達はケロッとしていた。

 

『やりますねブルボンさん……!!』

『チェイスこそ』

『『じゃあもう一本』』

『いや流石にそこまでにしておきたまえ』

 

流石のルドルフがストップを入れるほどに走る二人、それを聞いた沖野はそれからは坂路を走る時は一言告げてからにしてほしいというようになった。ミホノブルボン並の坂路への強さというのは魅力的な所だが、流石にそこまで走り込まれると不安が過る。

 

「それでは坂路、行ってきます」

「ああ、3本までだぞ」

「分かりました」

 

一瞬不満げな表情を見せそうになったが、素直に従ってくれるチェイスに胸を撫で下ろす。山道を走り込んでいたので坂路には相当に強いが他のトレーニングとの兼ね合いもあるので制限は掛けておく。

 

「あ~くそまた負けたよこんちきしょう!!」

「お疲れさん、ドリンク行くか?」

「頂きます!!」

 

ゴールドシップに揉まれたのか、大敗を喫したハリケーンは手渡されたドリンクを憂さ晴らしをするかのごとく一気飲みしていく。

 

「ああ畜生!!」

「また負けたみたいだな」

「8身差も付けられた……今度こそ勝つ!!」

 

威勢自体は良いがゴールドシップに勝つ事は難しいだろう、純粋に実力が不足しているのもあるがゴールドシップは普段の奇行や言動で隠れがちだがスピカでも一二を争える程の実力者なのだから。

 

「んでチェイスは?」

「坂路に行ったぞ」

「ゲェッ~……あいつ今以上に坂に強くなってどうする気なんだよ……私も一緒に行った事あるけどあそこマジできついのに……」

 

ハリケーンもチェイスの早朝の走りに付き合った事があるのか山道のキツさは身を持って体験済み。あれを何年もずっと、しかも毎日続けていたのだから信じられない。

 

「やっぱりそんなキツいのか、ルドルフとエアグルーヴもキツいって言ってたが」

「単純な坂路じゃないんですよ、路面状態は悪い上に自然の山に沿うように道路があるから右へのカーブの次は左カーブっていうのが当たり前。車で登るのだって嫌ですよあんなの」

「想像するだけでヤダな……それを何年もか」

「毎日っすよ毎日、ぶっちゃけ唯のバカでしょそんな事するのって」

 

呆れ果てているハリケーンの言葉には同意せずにはいられない。友人である彼女に此処まで言わせるチェイス、あの走りの源流は矢張り天倉町にある。そしてその強さは今、改めて日本中に知れ渡ろうとしている。

 

「ハッキリ言って、今のクラシックではチェイスは最も警戒すべきウマ娘の一人として見られてる。だがその程度で止められるほどあいつは軟じゃない、止められるとしたら―――あいつの強さを熟知しているお前か他の二人ぐらいだ」

「へへん、中央の走りにも大分慣れて……って他にもいるんすか?」

「ああいる。チェイスが負ける可能性が高い相手……その内の一人と弥生賞でぶつかる事になる」

 

その相手はチェイスと同じくジュニア最優秀ウマ娘の候補として選ばれたが、出走レースのクラスの差で軍配が上がったウマ娘。目的はトリプルティアラだと公言しているが、弥生賞に名乗りを上げた。それはチェイスへの挑戦状なのか、それとも……。

 

「ゴルドドライブ。それが次の弥生賞で最も警戒すべきウマ娘」

 

今最も勢いがあるウマ娘を上げろと言われたら上がるのがマッハチェイサー、そして最も輝いているウマ娘と言われるのがゴルドドライブ。距離適性はマイルと中距離、それ故のティアラ路線らしいが……それでも何時矛先が向けられるかは油断ならない。

 

もう一人、警戒すべきウマ娘はいるが……其方は今は気にしない方がいい、気にすべきは―――

 

「そうだ、その力でマッハチェイサーを―――!!」

「黙っていろ三下、貴様の言う事など聞く耳持たん。だが―――彼女には興味がある、その速さと私の輝きのどちらが素晴らしいかがな……」

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