音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第48話

「はふぅ……チェイスさんに覚えていてもらえたなんて最っ高な日……ああ、もう死んでもいいわ私」

「ビルちゃん大丈夫なんか、足がふらふらしてるよ」

 

マシンビルダー。今年から新しくトレセン学園に入学したウマ娘でチェイスに憧れを抱いてやってきた、その憧れの度合いはかなり強いのかトレーニングコースへと案内をしている最中に行っている雑談でも何やら声を上げてふら付いて倒れそうになるという事があった。

 

『ビャアアアアアアアァァァァ!!!??今季最注目と言っても超絶エンターテイナーのマッハチェイサーさんのポーズ練習に出くわしてしまうなんてぇぇ!!?これも日々徳を積んでいたお陰!!?』

『……ええっと、ポーズ取った方が良い流れですよね?』

『是非!!!!!』

 

「(なんか、デジタルさんみたいな感じだなこの子……)」

 

以前、試合後のポーズにバリエーションを持たせようと色々と練習している時に偶然出くわしたアグネスデジタルの事を思い出す。如何にも似ている、まあ何方かというとあれがポテトになるのだろうが……。

 

「さて到着しましたが……既に随分と集まってますね」

 

スピカのパフォーマンスレースが行われているコースには既に多くのウマ娘達が集まってターフを走っているウマ娘に熱い視線を向けている、どうやら走っているのはダイワスカーレット、ウオッカ、ゴールドシップの三名らしい。

 

「やっぱりスピカって凄い注目されてるんですね」

「まあテイオー先輩にマックイーン先輩もいますからね、ある種当然です」

「チェイス先輩も居るんですから当たり前ですよね!」

「いえ、私はそこまではないでしょう」

 

鼻息を荒くしながら推しを図るビルダーの言葉を軽く受け流しながらもレースが見える位置まで前進していく。そこではラチの直ぐ傍でストップウォッチを構えている沖野、その手伝いをしていると思われるスペシャルウィークとハリケーンがターフを凄い気迫で走っていく皆を見つめていた。

 

「チェイス来たのか」

「はい、来ましたけど……なんか随分と気合が入ってますね先輩方」

「入ってるも入ってる、入りまくりだ」

 

新入生の前でカッコつけたいというのあるだろうが、次のスピカのエースは自分だと誇示しているような気合の入り方。まあそれだけ練習にも力が入るのだから悪くはないのだが……。

 

「さてと―――パフォーマンスレースはこんな感じになるんだが……この後は普通に練習風景の見学になる。希望するなら今から軽くだけど練習に混ざる事も可能だぞ?」

 

沖野の声にウマ娘達から歓声が上がる。そして練習方法もスピカそれぞれのメンバーについて練習をするという方針になったため歓声はもう更に強くなっていった。元々今日は軽めのメニューをするつもりだったのでそれも可能なのだろう。

 

「テイオーさん宜しくお願いします!!」

「うん、軽くで行くけど確り付いてきてねキタちゃん」

 

「マックイーンさん、私頑張ります!!」

「ええ、でもあまり気負い過ぎないよう」

 

その言葉に従うようにキタサンブラックはトウカイテイオーの元へ、サトノダイヤモンドはメジロマックイーンの元へと駆けていった。その他の皆の元にも多くのウマ娘達が並んだりしている姿を見ると矢張り人気があるのだなという事を実感する。人数で一番多いのはサイレンススズカ、次点は僅差でトウカイテイオーだろうか。有記念での勝利は感動的だったのが理由だろう。

 

「んでまあ……気にすんなチェイス」

「いえ私は別に」

 

慰めるように声を掛ける沖野、こればっかりは致し方ないという物。ジュニア王者とはいえシニア級で活躍しているスピカメンバーと比較するのは酷、チェイスはこれから人気が爆発すると沖野は思っている―――が、そんな思いに反するようにチェイスの元にはウマ娘がいた。マシンビルダー……だけではない。もう一人のウマ娘がそこにいた。

 

「ぐぬぬっ……私だけがチェイスさんを独り占めすると思い込んでいた……ですが私以外にもチェイスさんのファンがいた事は嬉しい、ああ何で矛盾、なんて狂おしくも悩ましい二律背反!!!」

「……うっさ」

 

銀色に近い葦毛に栗毛の前髪、そして黄色い瞳が特徴的で何処か冷めたような態度を取り続けているウマ娘。沖野はそれを見て思わずナリタタイシンを思い浮かべた、よく彼女に似ている気がする。

 

「えっと……一先ず自己紹介をさせていただきます」

「知ってるよマッハチェイサー、ジュニア王者で弥生賞じゃゴルドドライブに勝利して今期のクラシック三冠ウマ娘の筆頭って言われてる」

「おおっ良い事言いますね!!貴方結構なチェイスさんのファンなのでは!?更に補足するなら―――」

「ウザい……ニュース見てれば誰でも分かるっつの」

 

テンションが上がってきているマシンビルダーはもう一人の言葉に激しく同意しながらも早口で次々と情報を述べていくのだが、それを煙たがるように顔を顰める。だが本気で嫌悪をしている訳ではないのか距離を取る訳でも無ければ、耳を背ける訳でも無く其方にも耳を傾けている。如何やら悪い子ではないらしい。

 

「んじゃま、チェイスの事は御二人さん分かってるみたいだし俺に分かるように自己紹介頼むぜ?」

「えっとマシンビルダーです、チェイスさんに憧れてトレセンに来ました!!!夢はチェイスさんみたいになる事、です!!」

「……オートバジン」

「(おいおいおいオートバジンかよ……成程既視感あると思ったらたっくんか……)」

 

サクラハリケーンを始め、ゴルドドライブで大分耐性は付いたつもりだったがまさかまさかのオートバジンの登場である。しかもご丁寧に凄いたっくんこと、乾 巧っぽいのである。

 

「んじゃチェイス、この二人を頼むなってハリケーン誰もいないのか……」

「いやまあ地方上がりっすから分かってはいたけど結構きついっすねこれ……」

「チェイス、ハリケーンも入れてやってくれ」

「分かりました」

「チェイス~!!!」

「だから一々胸に顔を突っ込むのやめて貰えます?」

 

「はぅ!!これはもしや―――ハリチェイ!!?」

「……意味分かんねぇこいつら……バカばっか」




やっぱり出したいから突っ込んだ。

あとマシンビルダーはなんというか……若干デシたんっぽいかな。チェイス限定のデジたんみたいな……。

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