音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第50話

「―――さあ行くか」

 

『さあ次に現れるのは大本命!!本日の一番人気―――マッハチェイサー!!!』

 

アナウンスと共に爆発する凄まじい歓声、それに応えるかのようにまるで新体操の演技なのかと言わんばかりに走りからのバク転、そして伸身三回宙返り一回捻りを決めながらパドックへと姿を現したチェイスは手を振ったり笑顔でそれらに応えていく。

 

「それじゃあ―――お待ちかねのイベントと行きますか……!!」

 

ジャージの上着を脱ぎ棄てると矢張りあったドライバー、それに更に歓声が上がる。曰くマッハドライバー炎、それが露出すると手の中に転がしていたそれをドライバーへと勢いよく装填しながらポーズを取り始めた。それに呼応するかのように流れ出す音楽、そして

 

シグナルバイク!!シフトカー!!

 

「Let’s ―――変身!!!」

 

マッハ!チェイサー!

 

「追跡、大逃げ、何れも……マッハッ!!ウマ娘―――マッハチェイサー!!!如何皆さん、いい絵だったでしょう?」

 

勿論だと言わんばかりの大歓声が沸き上がる、ホープフルステークス以来となるチェイスの勝負服の披露。これに沸き上がらない訳が無い、男も女も、大人も子供も魅了するド派手なパフォーマンス。この日を待ち望んでいたのだとカメラでこの瞬間を切り取って永遠に保存しようと躍起になっている人までいる。

 

「いいぞ~チェイス~!!!カッコいいぞ~!!」

 

その声に思わずバイザーを上げてしまった、その視線先にはツインターボがいた。その周囲にはスピカの面々も居るが、何故かツインターボだけは勝負服を着ているのでよく目立っている。

 

「にしても何でアンタ勝負服来てんの?また飛び入り参加とか言い出すんじゃないわよね」

「違うもん!!チェイスの三冠チャレンジなのにそこまで野暮な事はしないぞ!!」

「じゃあなんで?」

「勝負服の方が気合入れた応援が出来ると思ったから!!」

「成程、確かに一理ありますね」

 

確かに気合を入れるという意味では一番適しているのかもしれないと納得してしまう、そんな応援を体現すると言わんばかりに一番声を張り上げているツインターボに笑顔で手を振ってから踵で高速回転してからのポーズで応えるチェイス。矢張りエンターテイナーだ。

 

「はぅ!!チェイスさんが私に笑いかけ―――」

「アンタじゃないだろ、如何見たってターボにだ」

「―――分かってるっつの!その位妄想する事ぐらい自由でしょ~が~!!!」

「バカ」

 

ビルダーとバジンの二人も応援には駆けつけていた。このクラシック三冠ほど重要な物はない、その初戦―――どんな戦いを繰り広げるのかと様々な面持ちを浮かべている。特にスペシャルウィークとトウカイテイオーは緊張しているのか顔が硬い、それを見たバジンは溜息を漏らす。

 

「先輩二人が緊張しても意味はないです、だったらせめて応援してください」

「わ、分かってるつもりだけど……やっぱりこの空気は緊張しちゃうよ」

「そうだよね~……」

「ハァ……」

 

そんな溜息を漏らした直後、次のウマ娘がパドックへと姿を現した。それは青をベースにしながらもオレンジの肩当や胸当てを付けて、何処か武者のような印象を与えつつも名前にもあるサクラの意匠が何処愛らしさも演出している。そのウマ娘は―――サクラハリケーン。そう、スピカからは今回二人のウマ娘がクラシックに挑戦するのである。

 

「ハリケーンの奴も張り切ってんなぁ~転ぶなよ~」

「しかし、ハリケーンさんも同時に挑戦とは……何方を応援致しましょうか」

「私はチェイスさん一択!!」

「同じく」

 

新人二人(ビルダー&バジン)はチェイスを真っ先に応援すると名乗りを上げる。まあ指導役を担っている彼女を応援するのはある意味道理だろう。

 

「えっと……キタちゃんは如何する?」

「どっちも応援する!」

「そうね、確かにそれが一番いいと思うわ」

 

キタサンブラックの言葉に同意するようにスピカは二人を一緒に応援する事にした。カノープスはカノープスで如何するかと僅かに迷ったが、付き合いも長いしツインターボの事もあるのでチェイスを応援することで一致したという。

 

「おやおやおや、応援にも力が入ってるね」

「んっこの声って……」

 

沖野が振り向いてみるとそこには―――チェイスの父親であるクリム、兄であるグラハムがそこにいた。

 

「Hello there!!」

「お久しぶりと名乗っておこう!!」

「お~チェイスのお父さんじゃないか!!やっぱり応援!?」

「当然、娘の晴れ舞台―――しかも三冠の初戦だからね。応援に来ない訳にはいかないさ」

「ウムッ!!実は今回は天倉町を上げて応援に行こうという事になる筈だったのだが……流石に難しくて、せめて我々だけでも来ようという事でやってきた次第」

 

町としてはチェイスの応援に来る事には大賛成だったのだが……如何にも予定が合わない人が多数だったので今回は家族である二人を送り出そうという事になった。だが次の機会には絶対に皆でやって来るという言伝を預かっている。スタンドの一部を占領する勢いで天倉町から此方に乗り込むつもりらしい。

 

「そりゃいい、チェイスも喜びますね」

「だろう!?矢張り沖野氏は分かっているな!!」

「さてチェイス―――君のDriveを見せて貰うよ」

 

 

早くもバイザーを降ろし、集中の体勢を作っているチェイス。例えどんなレースでも気構えを変えるつもりはない、だがこの勝負服に身を包むとどうしても気が昂ってしまう。なのでそれを予防する意味でも早めにバイザーを降ろしている。この道を行けばターフだ、あと少しで始まるのだ―――

 

「チェイス」

 

そう思っていると背後から掛けられた声、振り返るとハリケーンが真剣な顔つきでそこにいた。バイザーを上げるとハリケーンは鋭い瞳を作りながら言った。

 

「ぶっちゃけ、私は三冠とかは如何でもいい。チェイスと勝負して勝ちたいから今此処に居る―――ゴルドドライブだけがアンタのライバルじゃないって事だけは分かっててほしい」

「……分かってますよそんな事、ハリケーン」

 

ゴルドドライブだけを意識している訳ではない、どんな相手だろうとも全力で向かって行くだけでしかない。寧ろ自分はそう言う事しか出来ないと不器用なウマ娘だと思っている。

 

「ハリケーン、私のマッハチェイスに簡単に追い抜かれないでくださいね」

「舐めないでよね、此処からこそが私のステージだよ」

 

そんな言葉を投げ合いながら―――二人はターフの上へと姿を見せた。

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