音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第63話

「ただいま戻りました」

「お帰りなさいチェイスさん!!」

「お待ちしてました、あっお荷物持ちますよ」

「有難う御座いますキタちゃんにダイヤちゃん」

 

休養から戻って来たチェイス、ゴルドとの再会という思いもよらぬ出会いもあったが概ね良い休養となって心身ともにリフレッシュ出来ていた。

 

「おっ帰って来たなチェイス、如何だった久しぶりの天倉町は」

「何も変わらない町でした。私を売りにしていないので相変わらず静かな町でした」

「粋なことしてくれるねぇ」

 

天倉町はそもそもが経済的に困窮している訳でも無ければ、知る人ぞ知る穴場的な人気もあったのでチェイスを売りにする必要が無かったのもある。そして町全体の娘という扱いのチェイスをそんな風に扱うなんて事を親心が許さなかったのだろう。するにしても当人の許可は絶対に取るとの事。

 

「しかし……最後の日にはとんでもない大宴会で……」

「愛されてますねチェイスさん」

「あまり言わないでください、恥ずかしいので」

 

もうその勢いを町興しに使えよ、と言いたくなる程の大規模宴会であった。まあ宴会自体は良いのだが、その場で歌を歌えと言われたのは結構あれだった。まあウイニングライブの延長だと完全に割り切っていたが……式などの友人から新作歌えと煽られてやってしまったのだけが心残りである。

 

「にしてもこのお土産も凄い量ですね」

「多分ですが、後からもっと来ますよ。野菜やら米やら……」

 

チェイスが頑張って持ってきた分だけでも相当な量のお土産があるのにこれ以上に来ると言われて沖野は僅かに顔が引き攣りそうになった。まあそれだけチェイスが愛されているという事の証明だが、それを考えると良家の御令嬢であるサトノダイヤモンドやキタサンブラックの事を考えるとそれ以上に来る可能性があるのでは……と僅かながらにこれからの事に不安が募りそうになって来た。

 

「兎も角お土産は有難く貰うな、天倉巻あるか?何だったらトレーナー仲間に配って来るから、おハナさんも喜ぶと思うし」

「そうしてくださると助かります、所で他の皆さんは?」

「皆コースで練習中、キタとダイヤはメイクデビューに向けての話をする為に来て貰ってんだ。後はビルダーとバジン待ちだな」

 

「お待たせしましたぁぁぁあ!!」

「うっさい……」

 

噂をすれば影とはよく言ったもんである。名前を出した途端にビルダーとバジンが扉を大きく開けながら入って来た。そしてそれに応じるような形で振り向いてみると案の定というか何時もの反応というか……

 

「チェイ、スさん……が帰って来たぁぁぁぁぁ!!!我が世の春が来たぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「もう6月で梅雨時」

「さあ盛り上がって参りましたあぁぁぁぁ!!」

 

最近では卒倒する事すらなくなってきたが代わりにテンションが簡単に天元突破するようになってきたビルダー。沖野もこれには見慣れるようになってきた、というかゴールドシップに拉致られたりしている彼としては騒ぐ程度で動じる事なんてないのかもしれない。

 

「はぁ……なんでこんな奴と同室なんだよ……」

「大丈夫バジンちゃん」

「……チェイスが居ない間、ずっとテンション低いと思ったら急激に上がるし部屋だと神棚作ってなんか祀ってるし……」

「それだけチェイスさんを尊敬してるって事だよ」

「はぁ……だったらこっちに迷惑かけないでほしいわ……」

 

憧れ且つ最推しであるチェイスと会えなかったビルダーの調子は極端に悪かったとの事、故に時折チェイスのレース映像やらダンスの練習映像を見せて調子の維持をしていたと沖野は語る。尚、時折露出の高い衣装で踊っていた際は鼻血を出していたとの事。

 

「んじゃまあ取り敢えず話を始めるか、チェイスも一応参加してくれるか?参考までに話聞きたいし」

「分かりました」

 

と言っても自分のメイクデビューの時の話は全く参考にならないと思うのだが……だって転入して3週間でデビュー戦だったのだから……それでも力になれるのならと参加する事になってバジンの隣に座る、すると隣からバジンが顔を伏せながらも小さく話しかけてくる。

 

お帰りチェイス……さん

「ええ、ただいま」

 

なんだかんだでバジンもチェイスの帰りを待っていたのだ。それを言葉にして返答を貰うと直ぐにそっぽを向いてしまうが、耳と尻尾は嬉しく揺れている。本当にツンデレ気質だなぁ……とチェイスは思うのであった。

 

「もう直ぐ夏合宿だ、そこでの仕上がりを見つつ具体的なメイクデビューを決めようと思ってる」

「合宿!?凄い楽しみになって来たねキタちゃん!!」

「うん、どんなことするだろう……?あっそうだ、トレーナーさん合宿なら宿泊場所が必要ですよね。それならサトノグループにお任せください」

「おっマジで?ンじゃ後で合宿の予定地渡しちまってもいいか?」

「はいお任せください♪」

 

満面の笑みで快諾する。流石巨大コンツェルンであるサトノグループの御令嬢……簡単にそんな事を言えるのは流石としか言いようがない。

 

「初めての合宿になるだろうからお前達は他の面子と同じようにガッツリ鍛えようと思うなよ、基礎的な部分を集中的に鍛えてその先を狙うようにな。まずはメイクデビューだ、特にバジン」

「……何」

「お前は如何にもチェイスに倣おうとしてる節がある。お前はお前らしく走ればいい、この合宿でそれを確かめてくれ」

「……分かった」

 

本人的には良く分からないらしいが、如何にもそんな節があると沖野は語る。彼女の脚質は先行、チェイスを何処か意識した走りをして自分の走りを阻害している。それでも他の新入生から頭一つは飛び出る程には彼女は素晴らしい逸材だが……自分の走りが出来れば確実に三冠は狙えると沖野は思っている。

 

「あとビルダー。お前は芝かダートどっち出たいかも決めといてくれ」

「どっちもは駄目ですか?私としてはデジたん先輩に倣うのも悪くないと思ってますけど」

「いや駄目って訳じゃないが……誰かに倣ってそうしようってのは駄目だな、自分でしっかり考えてそれなら文句は言わない。だから合宿でそれについても考えてくれ」

「は~い」

 

ビルダーは芝だろうがダートだろうが走りが乱れない、バ場状態がどんなに悪かろうがパフォーマンスが崩れない事が最大の長所。なので当人が言うようにアグネスデジタルのように芝、ダートの双方を目指すのも悪くはない。

 

「んでチェイス」

「はい」

「この夏合宿ではお前は菊花賞を目指したトレーニングを積んでもらう」

 

クラシック三冠の最終戦、菊花賞。無敗での三冠が掛かっているが、菊花賞の3000mはチェイスにとって一番長いレースにもなってしまう。練習ではその距離にも走り切ってみせたがレースではそれが通じるかは分からない。だが幸運な事もある。

 

「合宿ではマックイーンと一緒に走って貰う事を考えてる。実力が確かなステイヤーの先輩がいるんだ、確り揉んでもらえ」

「はい」

 

メジロマックイーンの存在である。菊花賞よりも距離が長い天皇賞春の連覇経験者、生粋のステイヤーであるメジロマックイーンにその指導などをして貰うつもりでいる。

 

「そして……合宿が終わったらマックイーンは本格的に復帰させる、その前段階だと思ってくれ」

「えっマックイーンさん復活するんですか!?」

 

サトノダイヤモンドの言葉に沖野はサムズアップで応える、遂に名優とも呼ばれるウマ娘の復活。憧れのウマ娘の復活にサトノダイヤモンドは既に大興奮で隣に座っているキタサンブラックに抱き着いてしまう。

 

「さあお前らもお前らで先輩に負けるなよ、先輩を飲み込むつもりで成長してけ!!」

『はい!!』

 

その言葉と共に会議を締めながらも皆に練習に行くように促す。皆が合宿の事もあって意気揚々と向かって行く、そんな彼女らを見つめながらもチェイスも身体を伸ばしながら沖野と共に練習へと向かう。

 

「ああそうだチェイス、これだよな前にちょっかい掛けて来たって警察官って」

 

新聞を取り出した沖野はとある記事を見せて来た、そこにあったのは……全国紙の一面を見事に飾っている仁良 光秀の姿だった。そこには現職警官、またもや不祥事!?と面白可笑しく派手に書かれていた。

 

「はいこの人です、ついでにゴルドの養父です」

「養子にしてたウマ娘を置き去りにしたってゴルドドライブかよ……ほら、此処の記事にあるだぞ」

「ええ、しかも天倉町ですよ置き去りにしたの」

「……マジで?」

「マジです」

 

結局あの後ゴルドに迎えが来る事もなく、チェイスの休養最終日まで一緒に家に泊まっていった。ゴルドは天倉町を存分に楽しみ、天倉巻や武士道米をお土産にして笑顔で帰っていった。そして仁良は祖父と祖母に大激怒されたとか何とか……。

 

「チェイスだけじゃなくて娘にもって……どういう奴なんだよ、仮にも警官だろ」

「強いて言うなら……悪代官ですかね」

「せめて警察で例えてくれ、いやまあ分からなくもないが」




フルアーマー・フクキタルをお迎え出来ました。

嬉しいけど、嬉しいけど……!!
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