音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第66話

マッハドライバーの予想外の大人気に流石のチェイスも困惑を隠しきれなかった。まさか自分の趣味全開のものがウマ娘界隈で此処までの波紋を生み出すなんて考えもしなかった。あの音声も自分は馴染み深いし感動もあるが、受けは悪いと思っていたのにノリが良いと概ね好評で困惑しか生まれない。

 

「チェイスチェイス、こういうポーズを考えてるんだけどどうかな!?」

「えっとそうですね……」

「こっちがいいかな!?」

 

そしてそんな大人気の火付け役にもなってくれたツインターボ、常にドライバーを付け続けながらどんな変身ポーズが良いのかと考えているらしく偶然顔を合わせたチェイスにこのポーズは如何か!?と意見を求めている。宛ら変身のおもちゃを買って貰ったばかりの子供とその姉と言った感じになっている。

 

「いやいやポーズならこっちの方が!!」

「おおっそのポーズも良いなぁ!!でもターボ考案のこれに勝てるかな!?」

「ムムッこれは中々……!!」

 

そこにビコーペガサスも入ったらもうチェイスでは止めらない。特撮好きであるビコーペガサスはビコーペガサスで憧れのキャロットマンのようになるために跳び蹴りの練習をしていたりポーズの練習を既にしていた身なので現在のツインターボと反りが合わない訳もなく、凄い勢いで仲良くなった上に一緒に変身談義迄始めてしまった―――ならば其処に自分が混ざらないなんてあり得ないとチェイスも参戦する。

 

「それならこれも良いと思います」

「それも良い!!じゃあこんなのは!?」

「ムムッそれならターボはこんなのだぁ!!」

 

と何時の間にか話は白熱して変身ポーズ談議に花が咲くのであった。そしてウイニングライブ中にこれらの事を活用できないかという話になったりもしたりして……そんな時間を送りつつもビコーペガサスには約束であるのでマッハドライバーを渡す。そして残りのドライバーについては……

 

「では申し訳ありませんがお願いします」

「任せておくと良い、私の名前に掛けて相応しい相手に託すことを約束しよう」

 

生徒会に委ねる事にした。ドライバーの使用権利を得る為のレース開催を企画してくれるという事なので、其方に全面的に任せる事にした。一先ずこれでなんとか自分に色々と話を持ってくるのは少なくなるだろう……まあ完璧に無くすことは無理だろうが。

 

 

 

そんな事もありながらもチームスピカは合宿に向かう日がやって来た。が、如何にも先輩方の反応はあまりよくはない。何でも隣でリギルが立派なホテルに泊まっていたのに、自分達は隣のかなりボロい旅館だった事があって随分と気にかかっているらしい。

 

「お前らなぁ……まあ今回は安心しろ!なんたって今回はダイヤの心遣いでサトノグループのホテルだからな、その辺りは安心していいぞ」

「やった~!!それなら安心出来るね」

「ダイヤちゃん態々ありがと~!!」

「いえいえ、この位お安い御用です♪」

 

笑顔でそんな事を言えてしまう辺り、本当にお嬢様なのだなとも思ってしまう。兎も角良い環境である事は確定している事に安心を浮かべているメンバーが多い中、沖野はある事を言う。

 

「実を言うとな、天倉町での合宿も考えなくはなかったんだよな~」

「天倉町っつうとチェイスの故郷か?」

「ああ、折角チェイスの実家は民宿やってるし毎朝走ってたっていうコースを走らせるのも悪くないって思ってたが断念した。流石に10人以上で民宿はきついと思ってな」

「いけない事はないでしょうが、色々と難しいかもしれませんので英断ですね」

 

一般住宅としては広い部類に入る家ではあるが、それでも流石に10人以上が泊まるとなると流石に狭く苦しく感じるだろうし流石に色々とキツいので遠慮させて貰った。

 

「後、今回はカノープスとも合同合宿だ。合宿中は合同トレーニングや模擬レースが目白押しだ、今回の仕上がりによっては芙蓉ステークスでのデビューも考えるからな。気合入れてけよ新人諸君」

 

そんな言葉に新入部員達は気合の籠った表情で返事を返す。そして沖野はチェイスへと声を掛ける。

 

「特にチェイス、この合宿の後にお前は菊花賞が待ってる。それを見据えて徹底的に扱くぞ、マックイーンにゴルシ、長距離相手は頼むぞ」

「承知いたしましたわ、メジロ家の名に恥じぬ走りをチェイスさんに御披露し菊花賞への力になりますわ」

「まあこのゴルシちゃん全部任しときな!!んじゃチェイスは着いたら遠泳な、取り敢えず20キロ!!」

「分かりました」

「いや勝手に決めるなっつの!!最初はカノープスと合同でミーティングだっつの!!チェイスも簡単に了承すんじゃねえ!!」

 

少し慌てた様子で止められるが、こう見えてチェイスは泳ぐ事は得意なので問題はないと思われる。だがまあ、トレーナーが組んだスケジュールに従うべきだと思いつつもチェイスは窓の外の景色を眺める。

 

「……」

「チェイスなんかあった」

 

そんな自分に隣のバジンが声を掛けてくる、何処か心配するような瞳を作っている。自分が何やら無理をしているように見えたのか、それとも……兎も角何も心配ないと言わんばかりに彼女の頭を撫でる。

 

「大丈夫です、一緒に合宿頑張りましょう」

「……勝手に撫でるな」

 

口こそ悪いが、撫でられているバジンの耳と尻尾は嬉しそうに動いている事を見たサイレンススズカは微笑ましく見守った。


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