音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第67話

始まった夏合宿。今回はクラシック三冠のラストに挑戦するチェイスもいる事もあってキツめにすると前々から宣言されていたのでその内容も中々に辛い物となると沖野も宣言していた。その最初はいきなりカノープスとの合同トレーニング。

 

「まず見本としてツインターボ、スペ、スズカ、マックイーン、チェイス、タンホイザで走って貰う」

「おっ~いきなりか、どんなメニューでもドンと来い!!」

 

トレセン学園の水着を着用して砂浜へと集合した一同へと沖野と南坂トレーナーがメニューを確認しつつ、最初に六名を選出して見本として走るように言われる。それに気合を出すツインターボだが、これからどんな風に走るというのだろうか。しかも選出されたのはスピードに自信があるツインターボとサイレンススズカ、そして長距離が得意なメジロマックイーンとマチカネタンホイザ。この面子で何をするというのか。

 

「まずお前達には横並びで走って貰うんだが……今呼んだ順に先頭を走ってくれ」

「ってこれは……最初はターボが先頭で良いってこと?やった先頭だ~!!」

 

一番最初に一番先を走れる事に喜ぶ先輩に笑みを零すチェイスだが、直ぐ近くで僅かにムッとしているサイレンススズカがみえた。矢張り先頭を譲るというのは彼女にとっては嫌な事らしい。

 

「んでだ、こっからあそこまでツインターボが先頭で走ったら今度はスペが先頭で、次がスズカで次がマックイーンで感じなんだが……先頭になった奴は自分が今出せるスピードを出せる限り出して走ってくれ、んで他はそれに追いつこうとしてくれ」

「えっそれって……ツインターボさんとかスズカさんに続けって事ですか!!?」

「そう言う事だ」

「これはスピードとスタミナの強化を兼ねてます、シャトルラン形式ですが休みなしの連続ですのでかなりきついですよ」

 

一番最初がツインターボ、しかも彼女は性格上確実にMAXスピードを出すに違いない。その次はスペシャルウィーク、そして次はサイレンススズカ……それらが終わっても今度は長距離が得意なメジロマックイーンとマチカネタンホイザが控えているので速さを維持したままになるであろう。

 

「んじゃ行くぞ、よぉ~い……スタート!!」

「ターボ―――MAXダァァァァアシュ!!!」

 

「ってええええっツインターボさん速すぎません!!?」

「この後走る気あるんですの!!?」

 

スペシャルウィークとメジロマックイーンが驚愕してしまう程の爆速でスタートダッシュを決めると即座にトップスピードに到達したツインターボに思わず驚きの声が漏れる。チェイスとの勝負を続けている為か、スタートダッシュも相当に上達しているのか一瞬で最高速度に到達できるようになっているツインターボ。それに喰らいつけというのだからこれは相当にきつい、しかも地面は砂浜。足は取られて走りにくい。

 

「追い付け、ない……!!」

「流石ターボ先輩……!!」

「ターボやるぅ!!って追い付いてる!!?」

「嘘!?」

 

たった一人、ツインターボに追い付けていた。それはサイレンススズカ。先頭の景色は譲らんと言わんばかりに隣に並んだ、他のメンバーは6身差はある。そしてそのままスズカはターボと共に真っ先にゴールする。

 

「やるなぁスズカ!!でもお前が先頭の時は直ぐに追い付くぞ!!」

「ええ、望む所よ」

「休むな休むな、次はスペだ。よ~い……スタート!!」

「い、行きま~す!!」

 

他がゴールすると直ぐにスタート、今度はスペシャルウィークが先頭で先程よりは追い付くのは容易。それでも辛さは感じるが……先程よりも楽に皆がゴールしすぐさま次、サイレンススズカが先頭でスタートするのだが―――此処で牙を剥き始める。

 

「この速度差……!!」

「中々に来ますわね……!!」

 

トップスピードがほぼ同じとも言われる二人のウマ娘、それを連続ではなく間に他が挟まっている事で負担が重く圧し掛かって来るかのように感じられてくる。しかもサイレンススズカのスピードは尋常ではないのでツインターボも追い付けない―――と思いきや

 

「負けないぞぉ……!!」

 

「ってうっそターボ、スズカに喰らいつけてる!?」

「逆噴射してませんね、着いて行けてます!!」

 

ツインターボはスズカのフルスピードに追走出来ている、チェイスとの勝負をほぼ毎日やり続けた結果が出てスタミナも相当に着いている為に何とか喰らいついてそのままゴールする事が出来た。そして……既にバテが来始めてきている状態で長距離を得意とするメジロマックイーンにバトンが渡り、まだまだ行けると言わんばかりの速度で駆け抜けていく。

 

「これは、きくっ……!!」

「チェイス今度はお前だぞ、気合入れてけ~」

「分かってます―――マッハチェイス、ずっと……マッハッ!!」

 

回って来たチェイスの手番、久しぶりの大逃げスタイルでの疾走だが既に息も上がっており疲れも見え隠れしている状態ではかなり辛い。精々最高速度の70~80が限界という所だった。それは他のメンバーも同じだが、経験値の差とも言うべきなのか、精神力で完全に上回られている為かあっさりと並走されてしまう。

 

「よ~しいくぞ~えいえいむんッ!!」

 

最後である筈なのに全く平気そうな顔をしながらも見事な走り、そのまま駆け抜けていくメンバーの中でチェイスは最下位、それ所か砂浜に足を取られて軽く転んでしまってしまった。

 

「ううっ……結構、きついです……」

「だから言ったろキツいって」

「チェイス~……ひ、膝貸して……」

「あ、仰向けになりますのでご自由にどうぞ……」

 

流石に満足に膝も貸せないので仰向けになって自由に使って貰うという緊急処置を取る程度にはキツいらしいこのトレーニング。メンバーにもよるが、砂浜という足場が悪い場所で速度が違うレースを連続で強要されるので相当に来る。見本も終わったのでさっそく他のメンバーもグループ分けして走らされる事になっていく。

 

「チェイス、休み終わったらお前は海の中だ。太腿辺りまで浸かる辺りで出来るだけ走ろうとしてくれ」

「わ、分かりました……」

 

まだまだ、合宿は始まったばかりである。


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