音速の追跡者   作:魔女っ子アルト姫

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第85話

あくる日、練習中にチェイスの携帯に連絡が入った。随分と繰り返しと掛けてくるので誰なのかと思って確認してみると……チェイスは笑みを作りながら沖野に許可を取って電話を掛け始めた。

 

『ああチェイス、すまんな何度も連絡してしまって。練習中だったか』

「いえ、休憩に入りましたので。それで如何しましたゴルド、態々そんなに掛けてくるなんて」

 

連絡を掛けて来てくれたのはライバルであるゴルドドライブだった、ライバルと言ってもレース以外では良き友人として連絡を取り合ったりこの前は一緒に変装してスイーツ食べ放題に繰り出して一緒に取った写真を同時にSNSにアップして沸かせたりしている。

 

『本当は夜でも良かったんだが、少しでも早く教えた方がお前の為にもなると思ってな』

「私の為、ですか……如何したんですか一体」

『あの屑についてだ』

「屑……ああ、仁良 光秀についてですか」

 

ゴルドの義父に当たる仁良 光秀、何時ぞやの天倉町での一件で嫌な全国紙デビューを決めてしまったせいで随分と肩身の狭い思いをしていると聞いている。

 

「正直名前も聞きたくないんですが」

『ああ、私だって聞きたくなんてない』

「それで朗報というのはゴルドの親権がお爺様とお婆様に移ったという事だったりしますか?」

『ああそれもあるな』

「マジですか」

 

軽い冗談のつもりだったのだが、マジでゴルドの親権は仁良の父と母に移ったらしい。ゴルド的には万々歳で今は今までお爺様とお婆様と呼んでいたのに、お父様とお母様と呼ぶ事になれずに悪戦苦闘しているらしい。

 

「フフフッ私にも覚えがありますよ、クリム父さんをそう呼ぶのにも苦労しました」

『全くなんであそこまで恥ずかしいんだ……これならGⅠで勝つ方が楽だ』

「その内慣れますよ、少しずつ慣れて行けば」

『ムゥッ……』

 

話を聞けば聞くほどにゴルドは苦労しているらしいが、それでも声は軽やかに弾んでいる。実際、御二人は若々しくそう呼ぶ方が相応しいらしいのだが……流石に急に変えるのは大変らしい。因みに二人はトレーナーと担当ウマ娘の関係だったらしく、ゴルドの活躍を大層喜んでいるとの事。トリプルティアラを取った時は嬉しすぎてその事が乗っている新聞をそこら中から買い占めたらしい。

 

『す、すまん私事が過ぎた』

「いいえ、友達が幸せそうで何よりです」

『からかうのはやめてくれ……それで仁良についてだが……奴め左遷されたとの事だ』

「左遷―――えっマジですかそれ」

『マジもマジ、大マジだ。奴の元部下の人が親切にも教えてくれた、何でも私のファンらしくてな。サインと引き換えに教えてくれたぞ』

 

何でも、これ迄も軽薄かつ不謹慎な言動や嫌がらせも多かったのだが、遂に限界を迎えたらしく降格処分を受けるか左遷されるかの二択を迫られたらしい。何でも離島にある小さな警察署に飛ばされたらしい。しかもその署長は剣道と空手の有段者で相当に厳しいとの事。

 

『一日一便しかないフェリーに乗らないと島を出られない程度には離島らしいぞ、如何だ私とお前にとっては朗報だろう』

「フフッ私よりもずっとうれしそうじゃないですかゴルド」

『当然だろう!!漸くあの屑から離れたんだ、この上なく嬉しいに決まっている』

 

ゴルドの晴れやかな声が聞こえてくる、本気で嬉しいのが伝わってくる。

 

『これで漸くお前との再戦に集中出来るという物だ、準備を怠るなよ?』

「怠ると思ってます?」

『あり得んな。見ていろチェイス、ヴァージョンアップした私のゴルドランでお前をぶっちぎってやる』

「ほう、随分と大きな口を叩くじゃないですか」

 

思わず、ゴルドに釣られるようにチェイスの言葉も強さを増していく。それを見ていたスピカメンバーは基本的に敬語キャラなチェイスがあんな事を言う事に少しばかり驚いていた。

 

「私のマッハチェイスに一度負けているのに、そう簡単に越えられるとでも?」

『負けたからこそ、練度を上げて挑むのだ。今度は貴様に敗北の味を思い知らせてやる』

「貴方に敗れるのは吝かではありませんが……私だって伊達に無敗で三冠になった訳じゃないんでね―――今度も負けるのはお前だゴルド」

『ほざけ―――勝つのは私だチェイス、貴様は私の後塵を拝していればいいんだ』

 

突如として二人は殺気のようなオーラを纏う、威圧感に溢れたそれは電話越しに相手へと伝わっていく。

 

『私は貴様の予想を超えて行く、付いて来られるのなら付いて来て見ろ音速の追跡者』

「逆だろ、お前が私の背中を追うんだよ究極の輝き」

「『――上等だ、ブッちぎってやる』」

 

最後には全く同じセリフをぶつけ合いながら電話を切った、携帯を置きながらドリンクを喉奥へと流し込みながら空を見上げる。朗報と共に齎された宣戦布告、なんて胸が躍る……最高の舞台でライバルと全力を出し合う……待ち遠しい。

 

「トレーナーさん、次のメニューをお願いします。ゴルドには絶対に負けない為に」

「お、応っ!任せろ!!」

 

今までにない程にやる気に満ち溢れるチェイス、絶対に勝つ。その為にトレーニングに励む。そんなチェイスに思わずバジンが尋ねた。

 

「チェイス……ゴルドとは、仲いいの悪いの?」

「良い方だと思いますよ、この前も一緒にスイーツバイキングに行きましたし。デラックスメロンパフェって奴を一緒に食べたりもしましたよ」

「何ですって!!?あの不定期に店頭に情報が開示され、数量限定且つ予約も出来ずに当日に並ばないと食べられない幻のスイーツを食べたんですの!!?」

「詳しいな、おい」

「こ、これは―――やっぱりチェイゴル!!?そ、それともゴルチェイ!?ハゥッ―――!!」

「ギャアッビルダーまたかよ!?おい大変だビルダーがまた鼻血出して倒れたぞ!?」

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