【重要】登場人物を大きく変更いたしました。暫くの間、タイトルの後ろに『改訂版』を付属します。時期が来たら取り外します。
プロローグ1
これは、誰かを助けるためにひたすら奔走を繰り返していく青年の物語。
落し物をして困っている人に対しても。
転んで怪我をして泣いている人に対しても。
困難を目の当たりにし、心が挫けている人に対しても。
周りに誰も味方が居なくて、孤立知っている人に対しても。
命の危機に直面している人に対しても。
青年は、無我夢中で手を差し伸べる。
世の全てを救うにはあまりにも小さすぎるその手を広げて、青年はどこまで救おうとするのだろうか。
さあ、今ここに記そう。
健気で。
一生懸命で。
それでいて哀れな青年の物語を。
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俺が住む街、○○市。
県内でも特に企業化が進められているこの街は、今日も変わらない景色を俺に見せてくれている。
青空の下でそこかしこに立ち並ぶビル。車道を走り行く大小様々な自動車。数えるのも億劫になるほどの人の波。
昨日も一昨日も先一昨日も、それよりずっと前からも。その景色は変わらなかった。
喧騒を漂わせているそんな街の中、俺は人混みに混じって真っ直ぐに歩いていた。
目的地は、ここから歩いて15分くらいの所にある市内公園。広い敷地に加えて中央部の大噴水が特徴であり、平日休日に構わず人通りは安定している。俺もよく通っていたりする。
そして今日そこに向かっている理由は……おっと、その前に俺の事を話さないといけないよな。
俺は『暁宮 満希(あけみや みつき)』
この街にある大学に通っているごく普通の大学生で、ボランティア活動を行うサークルに所属している。
髪は黒色で、昔っからクセが強いせいで毛の先が跳ねてしまっている。昔は改善しようとしたけど、一向に治らないし疲れるしでもう匙を投げてる。お陰で中学時代以降、時々ある身だしなみチェックでは事あるごとに先生から『お前、パーマかけちゃいかんでしょ』と突っこまれてる。
これはもう生まれつきと言う名の呪いなんだよ、先生。理容師が黙って首を横に振るレベルに達してしまってるんだよ、俺の頭にいる曲者は。
……と、話が脱線したが、今日はボランティアサークルの活動として、街の清掃活動を行う事になっている。というわけで現在、メンバーは公園に集合している最中である。
これで自己紹介も済んだことだし、公園へ行く理由も話した。他にしなければならない事も無い筈だから、このまま一気に集合場所へ向かう事にする。
……ところで、俺は誰に向かって自己紹介なんかしたんだろうか。
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俺が都市公園に着いた頃には殆どのメンバーが集合しており、その後すぐに清掃活動がスタートした。作業は3人一組の班に分かれて、各自の担当場所へ行って清掃を行っていくというものだ。ちなみに俺の班はこの公園内のゴミ拾いと草抜き。移動の手間が省けてラッキーだったりする。
俺の班は効率性を高めるために作業分担と散開しての作業を両立させている。俺がここら一体のゴミ拾い、他の二人は固まって草抜きに努めている所だ。ゴミ拾い程度に二人も人員を裂く必要な無いので、恐らくこれがベストな振り分けだと思われる。
「それにしても、どうしてキチンとゴミ箱に捨ててくれないのかね……」
呆れ気味にため息を吐きながら、誰にともなくそんな事をぼやく俺。手に持つ火バサミが掴まえている空き缶を見ていると、そう思いたくなってしまうものだ。
既に俺が持っているゴミ袋は、3分の一程度をゴミが埋め尽くす状態となっている。それほどまでにこの辺りにはゴミが落ちていたのだ。
この近くにはゴミ箱が無いのか?と思われそうだが、別にそんなことは無い……というかそれ以前に、ちゃんとこの公園内にもゴミ箱は設置されている。ベンチで休息する人や遊ぶ子供たちのお目汚しとならない様に、人気の少ない場所に置かれてはいるのだ。一応、そう言う配慮を含めてのポジショニングと言えよう。
まぁ、それがこの様ではあるのだが。
早く園内の見直しとか環境保全の運動とかしてくれないだろうか、と心の中で改善を願いつつ、俺は口よりも手を動かすべく作業を再開する。
早速新たな空き缶が地面に転がっている光景を視界に捉えると、何とも言えない気分を抱えながらも、そこに向かって歩いていく。
その時だった。
俺が拾おうとした空き缶を、通りがかった誰かが拾ってくれたのだ。手袋をしているわけでもなければ、清掃活動に向いた服装でも無いその姿を見て、俺は直ぐにその人が今日の活動に参加している者ではないという事に気付く。
「あぁ、ありが――」
俺はわざわざゴミを拾ってくれたその人に対して感謝の言葉を述べようとする。
「――……何だ、お前か」
……が、言い切る寸前でキャンセルした。
理由については単純明快。ゴミを拾ったその人物は、俺が良く知っている人物だったのだから。改まって感謝の言葉を言うなんてこっぱずかしいし、後でからかわれるネタにでもされたら面倒だ。
「なによその態度は。折角、人が慈善活動に精を出している健気な青年のお手伝いをしてあげたのにさぁ」
不満げに口を尖らせ、ジト目で睨みつけてくるこの女性は俺の友人、名前は宇佐見 蓮子(うさみ れんこ)。
白いリボンが巻いた中折れの黒い帽子を頭に被り、服装は赤ネクタイを巻いた白いシャツと黒のスカート。黒帽子も含めるとツートンカラーの印象が目に強く受ける。茶色の髪で、左側だけ白のリボンで結んでいる。
そんな彼女の隣には、またしても俺の知る人物が一人立ち並んでいた。俺はその女性に対して軽く微笑みながら挨拶をする。
「よっ、メリー。今日も蓮子が振り回してくるみたいだな」
「もう慣れてるから。満希くんの方こそ講義の後だっていうのにサークル活動なんて、大変そうね」
「もう慣れてるよ」
マエリベリー・ハーン。俺や蓮子があだ名で『メリー』と呼ぶこの女性の名前だ。
日本人離れした鮮やかな金髪を肩まで伸ばし、頭には独特な白いナイトキャップを身に着けている。加えて服装は紫一色のワンピースと、現代においてはかなり派手と言えるファッションセンスだと言えよう。
彼女たちと知り合ったのは、大学に入ってまだ間もなかった頃。
ボランティアサークルに所属したての俺が、大学生活初めての清掃活動に取り組んでいた時の事だった。
俺は他のメンバーと一緒に学園内の庭を整備している途中で、この二人の姿を見つけたのだ。
二人は何もない場所に対して揃って注目しながら、あれやこれやと談議を行っていた。それだけでも十分に気を引くものがあったのだが、彼女たちの『結界』『境界』というワードを耳にして
そこで興味を持って声を掛けたのが、彼女たちとの交流のスタートラインだった。
彼女たち、というか蓮子は自分たちの活動に興味を持った俺に対し、興奮気味に入部の勧告をして来た。
ボランティアサークルは定期的な活動なため毎日が忙しいという風潮ではないので、兼部をしても何ら活動に支障が起きない。加えて俺自身も彼女たちの活動に興味を持っていたため、俺はその誘いに乗った。
蓮子は『同志が増えた』と喜び、メリーも蓮子の強引さに対して申し訳なさそうだったが、その後の表情は蓮子に通じるものがあった。
それから俺は、この世の摩訶不思議な出来事・現象を解明するオカルトサークル『秘封倶楽部』のメンバーとして彼女たちの輪に加わる事になったのだ。
……まぁ、パワースポットや心霊スポットにお出かけしたり、皆で揃ってご飯を食べたりなど活動内容は想像以上にユルユルなものだったのは、入ってから驚かされたが。
基本的に大学に行く日はほぼ毎日この二人と顔を合わせており、今となっては二人とも良い親友といっても良いだろう。本人たちの前では口が裂けても言えないが。
しかし、今日は見ての通りボランティアサークルとしての活動があるため、秘封倶楽部には顔を出していない。今日は秘封倶楽部も活動がある日だとは聞いていたのだが、二人にはこちらで活動がある日はこっちを優先させたいと言っているので、今日は俺は欠席となっている。
だからこうして二人の顔を見られた事には、内心驚いていた。一体どうしたのだろうか。
「もしかして、この辺にスポットがあったりしたか?」
「違う違う、折角だから二人でミ○キーの顔見に来ただけ。そもそも、そういうスポットには3人揃って行くって決まりだったじゃない。忘れたの?」
「そう言えばそうだったな。前回が2か月以上も前だったから、すっかり忘れてた」
「あ~……確か隣町まで行ったんだっけ」
2か月前のスポット探検というと、確か蓮子の言うとおり隣の○○市に電車で行った日だったな。市内に心霊スポットがあるという事で、蓮子の提案の元、夜頃に3人で一緒に現場に向かったのだ。
「で、1時間は歩き回った結果、場所を間違えてたんだったよな」
「うん、そうだったわね。しかも蓮子は当日も遅刻してたし……」
「おうふ……し、仕方ないでしょ!遅刻で急いで行ったから、場所があやふやになったんだもん!」
何とも酷いオチである。隣町に来てすることが夜の散歩とか、豪勢かつ無駄な時間だっただろうか……。
ちなみに間違えてしまった蓮子への償いは、有名店のスイーツの奢りという事で無事に清算された。あの時間もスイーツをタダで食べられるための犠牲と思えば、十分お釣りがくるだろう。それくらい美味かった。
「で、経済的にいち早く冬を迎えた蓮子が財布を潤すまで遠出は出来なくなった、と」
「うぅ……二人とも容赦なく高いスイーツを食べるなんて鬼畜過ぎる……」
「因果応報」
「自業自得」
「おっしゃる通りです、ハイ」
勝者、満希選手とメリー選手。蓮子選手、弱弱しく項垂れております。
……と、俺たちが仲良く漫才をやっているところ。
「やーい!女とままごとして遊んでるなんて、男なのに女みてー!」
「ち、違う……」
今いる場所より少し離れた所、公園内だろうか。子供特有の高めの声調をした会話が耳に聞こえてきた俺たちは、作業の手を止めて揃って声のした方に顔を向けた。
俺たちの視線の先。そこには5歳くらいの男の子と女の子の二人組が、男の子のグループ3人に囲まれている光景があった。
一緒に遊んでいる、というような温かい光景には到底思えない。恐らくあれは……
「蓮子、メリー。ちょっと行ってくる」
「あ、ちょ、満希くん!?」
「……まぁ、分かってたけどね」
驚きと呆れ。それぞれの反応を背に受けつつ、俺は子供たちの居る場所へと向かう。
「おれ見たぞ!こいつがその人形持って変なしゃべり方してた!」
「えー、かっこわりー!」
「だ、だって……アカネちゃんがおままごと、好きだから…」
「うわ、こいつ女の言いなりになってやんのー」
「「かっこわるー!」」
何と言うか、言いたい放題だなあの3人組……。最近の子は苛めの連携力も高いのだろうか。何ともはた迷惑な成長である。
女の子と一緒にいるあの男の子はあんまり強く言えないみたいだし、女の子の方も同じか。まぁここで怖気づくことなくビシッと物言い出来る子なら将来有望だろうな、ある意味。
「あ~……君たち、ちょっといいかい?」
十分に距離が縮まったところで、俺は子供たちに向けて言葉を放った。
それまで互いの相手の方を向いていた5人は、俺のの言葉と同時にこちらの方へ一斉に顔を向けてきた。やはり見知らぬ人間に急に声を掛けられたためか、その顔には僅かな緊張感を滲ませていた。
俺としてもこういう注目のされ方、あんまり慣れてないんだよな……。なるたけ早めにやる事やってしまおうか。
「兄ちゃんだれ?」
「俺?俺はちょっとここを掃除してたんだけどさ…君たちが喧嘩してるのが聞こえてね」
腰を少し落とす&やや柔らかめの口調の子供向けのW素材のおかげで、余計な警戒心を持った子は少なそうだ。お陰でこれからの話に集中できる。
「けんかじゃないよ、こいつがおままごとで遊んでるのがヘンだって言っただけだもん!」
「そうかそうか。けどさ、実はこんな話があるんだよね」
俺は主に苛めっ子3人に対して、語り部っぽく話をし始める。
大した話じゃないから略させてもらうか、かくかくしかじかっと。
「へ~!大人でもおままごとしてるんだー!」
「知らなかったー!」
「つまり、この子は皆より早く大人の仕事をしてただけで、何もヘンじゃないってことだよ」
どうやら納得してくれたようである。
ちなみに話の内容は『お仕事をしている人は人形を使って接客の練習をしている』といったものである。
言っておくが言ってる事は嘘だ。あくまでこの場を上手いこと治めるための口八丁でその場しのぎのようなものである。まぁ、これ位の嘘なら子供の夢も壊してないので、多分問題ないだろう。
「んじゃ、君はこの子に謝っておくんだぞ。ヘンって言ってゴメンってな」
「うん、分かった。……ゴメンな、大人のやってる事やってたのにヘンって言って」
「え、あ、ううん……だいじょうぶ」
どうやらこれにて一件落着だな。
その後すぐに、3人の子供たちは見たいテレビがあると言ってそれぞれ公園から走り出て行った。慌てすぎて途中で転ばないようにな。
3人組が去ったところで、俺は男の子と女の子の方へと向き直り、それぞれの顔を窺う。
互いに先ほどのイジメが無くなったことに対しての安心感に混じり、状況の移り変わりの整理が出来ずに困惑している様子が感じられた。
まぁ、見ず知らずの男に突然場を掻き回されたらそうなるか。俺だって同じ状況にあったら、平静でいられるか分からないし。
「よし……二人とも、大丈夫か?」
「あ、はい、その……ありがとう」
「ありがとう、おにいちゃん。ケンタくんを助けてくれて…」
怖がらせないように優しく二人の様子を確かめると、二人とも律儀に頭を下げてお礼を言ってきてくれた。ちゃんとお礼が言えるのは親の教育の賜物だな。
「さて……ケンタくん、だったね。実はさっきの大人も人形を使うって話だけど…あれウソなんだ。その場しのぎのね」
「えっ……?」
少なからず俺の話に影響を受けていたのだろう。少年――ケンタくんはアレがウソだと知ると、少しだけ目を見開かせた後に、不安そうな表情を浮かべて俯いてしまった。
何もこんなところで真実を伝えなくても……と思うかもしれないが、ウソである事に変わりは無い。ちゃんと言ってしまった方がいいだろう。
すると、ケンタくんの隣にいた少女――アカネちゃんがパクパクと何か言いたげに口を動かす事数回、そこでようやく俺に対して言葉を発した。
「あの、その……ケンタくんはおままごとが好きじゃないの」
「?」
子供の説明と言うのは幼さゆえに多少の伝わりにくさがある。
思わず、どういう事?といった表情を浮かべてしまった俺だがアカネちゃんは更に言葉を続けてくる。
「わたし、すぐにつかれて遊べなくなるから男の子の遊びがあんまりできなくて……そしたらケンタくんが、わたしがやりたい遊びをしよう、って言ってくれて…」
と、申し訳なさそうな表情をしながら説明をしてくれたアカネちゃん。
要するに。
アカネちゃんは体力が無いから激しい運動ができないから、ケンタくんが気を遣って彼女の身体に合わせて遊んでいたという事らしい。
なるほど、これは……
「ケンタくん…………偉いな、君は!」
「ほぇっ!?」
俺はケンタくんに褒め言葉を贈ると、彼の頭の上に手を置き、わしわしと撫でてあげる。
突然の出来事で困惑がぶり返したケンタくんだったが、俺はお構いなしに撫で続けている。
「アカネちゃん…だったね。この子の事をちゃんと考えて遊びを選ぶなんてしっかりしてるな、ホントに偉いぞ!」
「ほ、本当に…?」
「ああ、これはホントだ。安心して良いぞ」
念を押しつつ、俺はケンタくんの頭から手を放す。
「……必ず、傍にいてやるんだぞ」
「「?」」
褒められて満更でもなさそうに顔を綻ばせていたケンタくんと、隣で微笑ましそうにしていたアカネちゃんが揃って顔を此方に向け、小首を傾げる。
言った直後になって、今先程の俺の口調が少し冷たくなっていたのに気付いたが、ここから先は大切な事だ。
必ず伝えなければならない。
味方になるという『結果』だけでは。それだけでは駄目なのだと。
「これから先も、今日みたいな出来事がきっと起こるはずだ。だからアカネちゃんは、自分と一緒に居てくれるケンタくんの事を信じているんだ。そしてケンタくん、君は絶対にアカネちゃんを裏切らずに守りきるんだ……必ずね」
5歳くらいの子供には、きっとこういう話は難しすぎるだろう。その証拠に、二人とも話の100%を理解しきれたというような顔をしていない。置いて行かれた感が見ていて感じ取れる。
だけど俺はどうしても言いたかった。
せめてこの子たちには、俺と同じような経験はして欲しくなかったから。
―――――――――――――――
「まったくもー、ミ○キーってば話長すぎ!結局あの後、メリーと二人で割と待っててと」
「悪かったって。お詫びにジュース奢ってやるからさ……500mlのやつ」
「流石はミ○キー、分かってるじゃない!愛してる!」
「200円足らずで買える愛とか逆に要らんわ。向こうに自販機あるから、これで好きなの買って来いよ」
「じゃあ自販機が欲しい!」
「自分で買え」
ジョークジョーク、と茶目っ気を込めて舌をチロリと出して蓮子は自販機の方へと走っていった。元気だなぁおい。
っていうか今更だけど、その呼び名は本当に危なっかしいから止めてくんないかな?1話で物語終了とか少年漫画の読み切りだけでいいんだよ。
結局あの後、俺はあの子たち二人に言う事だけ言ってその場を去った。
色々とちょっと無責任だったかもな、と感じるところもありはしたがいつまでも歳の離れた見知らぬ男が居ても変に緊張してしまうだけだろうし、仕方ない。
「メリーはいいのか?ジュース」
「私は大丈夫。あんまり喉乾いてないから。それにあんまり満希くんに奢らせても悪いから」
「そっか……けど俺、お前に奢った記憶無いんだけど。ことごとく断るから」
メリーは割とこういうの遠慮しがちなんだよなぁ……この間はレストランで夕飯を3人で食った時、俺が蓮子の分だけ奢る形になってたし。俺に掛かる金銭面の負担を考えてくれるのは嬉しいけど、こちらとしてはもっと頼ってくれてもいいのにな。
と、そんな事を考えていると。
「…ねぇ、満希くん」
「ん?」
メリーが俺の方に顔を向けて、言葉を出し始めた。その声色はいつもより低めで、表情もいつものように悠々としたようなものではなかった。
まるで壊れ物を繊細な手つきで取り扱うかのように、傷つけてしまわない様に。
心配そうに目を細め、こちらの表情を覗き込む形で窺ってきた。
「あの子たちに言っていた言葉なんだけどね、少し聞こえてたの」
「……そっか」
「……大丈夫だった?」
なるべく最低限の言葉を選んで来る辺り、やはりメリーは人間が出来てる。
訪ねて来たのは……『あいつ』の事か、それとも『あの子』の事か……。
いや、メリーの事だから両方だろうな。俺が子供たちに向けて言った言葉はあいつとの事に関係してるし、ケンタくんたちの年齢もちょうどあの子と一緒くらいだった。
正直な話、思い返すだけで胸が張り裂けそうになる。胃の中に入ってる物をすべて吐き出したくなるような、そんな気持ち悪さが身体を駆け巡っていく感覚もある。
どうしてもっと早く知ることが出来なかったのか。
どうしてもっと早く気付くことが出来なかったのか。
俺がもっとしっかりしていれば、助けられることも可能だったはずなのに。
無尽蔵に湧き上がる自責の念が、呪怨のように俺の心を蝕む時期すら存在していた。変えられるはずの無い過去に思いを馳せ、後悔に脳を支配され。
まぁ、今はそこまで酷くはならないけどな。周りから聞いた話だと当時の俺は本気でやばかったらしいし。
けど……もう大丈夫だ。
少なくとも、あの時のようにはならない。
「大丈夫だって、メリー。最近はあの時みたいなことにはなってないだろ」
「うん、分かってるよ。それは分かってるの。だけど…………っいや、やっぱりなんでもない」
「…おう」
メリーも、これ以上この話題を掘り下げたらマズイと感じたのだろう。なにた言いたげだった唇を噛み締めることで無理矢理抑え込み、この話を終わらせた。
…本当に気遣いが上手いよ、メリーは。
「いやぁ、お目当ての飲み物が自販機にある時ってラッキーだと思うわけよ」
……
「いや~、やっぱコーラは炭酸の王道よね!炭酸といったらコーラ、コーラといったら炭酸って感じで!」
「あら、私はサイダー派なんだけどね」
「俺はそうだな……ラムネだな」
なんだ?急に炭酸談義が始まったんだが……。
そして俺も思わず乗っかって適当に炭酸の飲み物を上げたんだが……何故ラムネにしたし。別に好きでも嫌いでもないんだけど。
「むっ、二人ともコーラの素晴らしさを分かってないわね。コーラのあの甘味と刺激、あれこそ炭酸をほうふつとさせるんだよ!」
「サイダーもかなり良いものよ?あれは水を始めに素材は良質な物を使用しているもの」
「老舗の屋台でも出るラムネの伝統的な風格が分からんのか?」
自分で言っておいてなんだけど、伝統とか風格とか俺も知らねぇから。
「そこまで言うなら二人ともこのコーラ飲んでみなって!世界が変わるから!」
「そういう蓮子も、このサイダーを飲んでみてよ!宇宙の法則が変わる筈だから」
「それでも僕は、オリーブオイル」
「そのサイダーどこから出した!?つか炭酸で世界や法則が変わって堪るか!」
おいおい、何か妙に白熱した談議になってきてるんだが。……俺以外の二人限定だけども。メリーはいつの間にかサイダー持ってるし、どっちもいきなり妙なこと口走ってるし。
いや、それよりも気になる事がある。
『誰だ今の』
ホントに誰だよ……。
―――終
ちょっとしたキャラ設定を紹介!
【名前】暁宮 満希
【読み】あけみや みつき
【職業】大学生(2期生)
【所属】ボランティアサークル
【特徴】・髪はミドルな長さで、生まれつきの癖の強い黒髪を持つ。ちなみに学校の制服はブレザータイプで、上着は紺、ズボンは黒となっている。
・困っている人がいたら、助けずにはいられない性分。理由は小説内で判明予定。
かつて投稿したものの改訂版です。
・紗奈⇒蓮子、光莉⇒メリー
・台詞及びシーン描写の変更。
などが施されています。
第一話だというのにオリキャラばっかり動かしても、イマイチイメージしづらいと思ったためこうなりました。もっと早く気付けばよかった……