満希「意外にノロケだった!?」
~アマテラスの家、リビング~
「…と、今話したのが今回の騒ぎの一部始終って感じですね。大変過ぎて死ぬかと思いましたよ」
「はぁ…あなたって人は命知らずと言うか命知らずと言うか…呆れそうになるくらいの命知らずね」
つまり、俺は相当命を投げ捨てている輩という事ですか永琳さん。あと呆れそうになるというか、もう目が呆れてるんですが…。その視線が受けてて苦しい。
あれから何があったのか、少し話をしよう。
イザナミさんの出産を終えた後に寝てしまった俺は、そのまま一週間くらいは眠りっぱなしの状態だったらしい。
イザナギさん曰く、能力と身体の限界点を上げた影響で、身体に色々とガタがきたため精神がそれに比例して睡眠時間を引き延ばしたのだとか。一週間ぶっ続けって、最早睡眠ってレベルを超えてるような気が…
まぁそれは置いておくとして、一週間病院で眠り続けた俺であったが、その後が大変だった。
先ずはアマテラスさん。
どうやら出産の日にニュースを聞いて突然飛び出した俺を追いかけて街の中を探し回っていたらしく、俺が病院で眠って要る事を聞かされて直ぐに病室に駆けこんで来たという。
更に俺が眠っている間、仕事終わりや休日は付きっきりで看病してくれたのだとか。色々と心配をかけてしまったな……。
ちなみにそんな事になっても彼女は俺の事を怒らず、諭すような口調で注意をするだけでお説教(?)を済ませた。優しすぎるというのもある意味問題かもしれない。
そして次に永琳さん。
一週間の無断欠勤という事で、病院から退院した俺に対して溜まりに溜まった大量の仕事を提供してくれた。しかもノルマは一日中にとの事。徹夜で何とか終わらせた日には、追加で3日くらい眠るんじゃないかと覚悟もした。
後、俺が病院で寝ていた時も何回か様子を見に来ていたらしく、花なんかも持って来てくれていたとか。今度何かお返しをしないといけないよな。
最後にコノハナサクヤ。永琳さんが肉体的に大変だったとしたら、こいつは精神的に大変だった。
あいつはどうやら俺が寝ている間は毎日病室に来て様子を見に来てくれていたらしい。ここだけ聞くと良い奴に聞こえるんだが、あいつ曰く『起きたらすぐに暇つぶしに付き合ってもらうつもりだった』だとか。鬼かこいつは。
しかも俺が目を覚ました時には偶然室内に留まっていて、俺の意識が戻った瞬間驚いた顔で何かを言おうとしていたが、すぐに咳払いをすると俺を無理やり街に連れていった。
お陰で病院の先生から怒られるわ、遊びのお金は俺が払う事になったわで……鬼だあいつは。
そう言えば、あいつはあの時何を言おうとしてたのだろうか…本人に聞いてもはぐらかしてくるし。むむむ。
といった具合で、酷いけがも無かったお陰で目覚めた翌日に退院できた俺は、いつも通りの日常を送っている。
そして今日は、少し遅れてはいるが俺の退院祝いとカグツチの出産祝いを合わせたお祝いパーティを、アマテラスさんの家で行っている。
現在この家にいるのは、もともとここで生活している俺とアマテラスさん。
イザナギさんとも面識があり、寝たきりの俺への薬の処方も行っていた永琳さん。
イザナギさんとイザナミさん、そして今日の主役の一人であるカグツチ。
俺の友達だから、という事でアマテラスさんに招待されたコノハナサクヤ。
以上の7名で、豪勢な食事が並べられているテーブルを囲っている。
ちなみに今回のパーティの食事は皆で分担して作った物だ。コノハナサクヤが料理が出来るって言うのは意外だったが…まぁ教養はあるって言ってたし料理も教えられてたって事か。
「ま、こいつが命知らずなのは私も知ってたけどね。神にも遠慮なしに喧嘩売るくらいだもん」
「別に命知らずじゃないっての。それにお前は神らしくないからノーカンだノーカン」
「ははは。残念だけど満希くん、今回の事を考えると流石に僕も君の事は命知らずと思ってしまうよ?」
「え、イザナギさんまでそう言います?」
「勿論、今回は満希くんに感謝してもしきれないくらいの恩があります。改めてありがとうございます、満希くん」
「イザナミさん…」
「でも…ちょっと命を投げ捨て気味なのは否めないですね」
「ちょっ」
あかん、俺の肩を持ってくれる人が誰も居ない!
いや、確かに今回は結構無茶をしてけどさ…別にそこまで命をぞんざいに扱ってるつもりはないぞ俺も。なんやかんやで助かった命だし、これからも大事にしていくつもりだし。
「嘘だよね、それ」
「いきなり心読まないで、イザナギさん!」
「いや、顔に何となく出てたから」
どんな顔ですか、それ。
やばい、本気で味方が0だ……いや、まだだ!まだアマテラスさんが俺に味方してくれるかもしれないじゃないか!優しいし。
「アマテラスさん!」
「ごめんね、満希くん。今回ばかりは味方になれないかな」
「ウェイ!?」
あ、孤立無援ですわ、これ。
というか、これじゃあ俺が命知らずって言うのが確定事項になってしまうじゃんか。ホントそんなつもりないのに……。
「あー、だー」
「おお…カグツチ…」
すると、カグツチが眩しい笑顔を浮かべながら俺の元に来てすり寄って来た。
そうか、お前だけは俺の味方してくれるんだな……やばい、ちょっと泣きそう。
「赤ん坊に慰めてもらうなんて…カッコ悪いわよ、アンタ」
「うるさいよ、バカ」
「きゃっきゃっ」
ああ……俺の味方はお前だけだよ、カグツチ。
「ふふふ…どうやらカグツチに懐かれていますね、満希くん」
「まぁ、満希くんはこの子の命の恩人だからね。懐くのも当然だろうさ」
「いや、でもまだ赤ん坊ですよ?」
「赤ん坊って言うのはね、最初の頃は頭じゃなくて感覚で理解していくものなのさ。君が自分を助けてくれたって言うのを感覚的に分かってるんだよ」
「へぇ~…」
イザナギさんの言葉に思わず感嘆の声を漏らす俺。
俺は俺の膝の上に乗って料理を口に運んでいくカグツチの方を見下ろす。…ところで生まれて間もないのに普通の飯食ってるけど良いんだろうか。いや、でも歯もちゃんと並んでるし、髪の毛だってこの年にしてはちゃんと生えてるし……まぁ、神だったらそうもんか。ちなみにこの子の髪の色は黒色。イザナギさんとイザナミさんも髪は黒だから、親の遺伝なのだろう。
それにしても、イザナギさんの話を聞く限りだと赤ん坊って凄いんだな。前の時代では赤ん坊と触れ合う機会が無かったから良く知らなかった。
「それはそうと…実はカグツチに懐かれてる君にちょっと頼みごとをしたいんだけど」
「頼みごと?」
「うん、実は今日から3日後なんだけど…僕とイザナミはちょっと仕事の用事で二人とも家を留守にしないといけないんだ」
「私もこの人も重要な立ち位置として行かなければならないので、どうしてもその日は外す事が出来ないのです」
「そこでだ。君にその日だけでいいからカグツチの子守りをやってくれないかな?」
「お、俺が子守り!?」
いや、無理無理!子育てなんて一度もやったことないし詳しい訳じゃないからどんなことすれば良いのかよく分かんないし!
「あら、それならその日は仕事は別の日に回しておきましょうか。それなら子育てに専念できるでしょう?」
「休みじゃなくて別の日に仕事を回すってところが永琳さんらしい、まぁ確かに有難いですけども!」
「あらあら…それなら私がその日の仕事を休んで一緒に子守りをした方がいいかしら?」
「ダメよアマテラスさん。こいつもいい大人なんだから、子育てくらいこなさないとこの先やっていけないわよ」
「未婚者に何言ってんのお前。というかお前こそ育児出来るって言うのかよ」
「出来るわよ。何日か経験もつんだことがあるし」
なん…だと…!?
こいつが子供のお守りをちゃんとできる?それも実際にやったことがあるだと…。
「そうねぇ…アンタが頭を下げてお願いしてくれるんなら、アタシが前に使ってた育児の教本を貸してあげてもいいわよ?」
「じゃあ貸して」
「敬意が0、不合格」
ケチ。
「それで、子守りの件は引き受けてもらえるかい?もちろん強制はしないから、断ってくれても別の方法を探すけど…」
「……いえ、折角俺に話をしてくれたんですから、やらせてください」
確かに子育ての経験とか全くないから不安が無いとは言い切れない、寧ろ不安アリアリである。
しかし、イザナミさんたちは態々こんな俺に託そうとしてくれているのだ。その思いを蹴ってしまうのは俺としても本意ではない。それに経験も知識もないとはいえ、本番は3日後だ。それまでになんとかすればいいだけの事。
「そうか…!良かったな、カグツチ。今度満希くんと一緒に遊んでもらえるそうだよ」
「みー?」
「そうだぞー。今度一緒に遊ぼうな?」
「みー♪」
俺はそんな約束をカグツチと交わしつつ、当日の日に向けて新しく気合いを入れ直すのであった。
「という事でコノハナサクヤ、教本貸して」
「貸し1ね」
「敬意が0なんだから貸しも0でいいだろ」
「却下」
ケチ。
――終
というわけで次回、子守りに健闘する満希のお話!
……ホントは今回の話でやろうとおもったのは内緒(ボソッ)