東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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コノハ「もう14話目になるんだからさ、小説を読むときは部屋を明るくして画面から目を離して観るようにしてね、って言わなくても読者さんは守ってくれてるよね?別に言う必要ないと思うんだけど」
永琳「確かにそうね。今回も言ってしまっているけれど」



第12話 残された者と生きていた者

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 私は今、怒りを感じている。

 実験の失敗?悪口を言われた?否、理由はそんな事ではない。

 

 私が怒っている理由は、私の目の前で腰を抜かし、ガクガクと身を震わせて怯えているこの男にある。

 

「ゆ、許してくれ……今回は仕方が無かったんだ…!」

「仕方が無かった、ですって?」

 

 随分と馬鹿げたことをほざいてくれるわね。この男は、自分がやったことがどのような事かまるで理解してない。

 

「己の身が可愛いあまり、家族や友人がいる防衛隊の人たちを地上に置き去りにしたままロケットを発射させた。それが仕方ない事だと貴方は言うのかしら?」

 

 この男は、国の上層部の内の一人。とは言っても、上層部に入ったばかりでその地位は中でも低い方である。

 この男は妖怪たちの数が防衛隊の人数より遥かに多い事を知ると、慌ててロケットの発射ボタンを押したと言うらしい。

 外にはまだ、妖怪の軍勢と戦っている防衛隊が居たというのに。

 

 いや……外に居たのは防衛隊だけではなかった。

 

「満希……」

 

 暁宮 満希。

 

 アマテラスさんから聞かされたけれど、彼もロケットに乗らずに外に残っていた一人だった。

 なんでも、防衛隊の人たちと一緒に妖怪の侵攻を防ぎに行ったのだと言う。本当に、あの子はいつまで経っても無茶ばかりする…。

 

「…とにかく、貴方の処遇はイザナギ様にご判断していただくことにするわ。外に残っていた人の中にはイザナミ様の命の恩人もいたから…いい結果は期待しない方が良いわよ」

「…………」

 

 顔面蒼白に陥った男への用件を済ませた私は、踵を返してその場を去っていく。

 コツコツ、と足音の響く通路を進みながら、私は考え事に更け始める。

 

「それにしても…これから満希はどう生きていくのかしらね」

 

 満希は、今も生きている。

 

 満希が地上に残っていると聞かされた時、私は文明消去の為の強力な爆弾が街に設置されている事を知っていたため初めは柄にもなく狼狽してしまった。何せあの爆弾は街を簡単に吹き飛ばすほどの破壊力を備えている。普通の人間がまともに喰らえば跡形も無く消滅してしまう程に。

 

 しかし、アマテラス様が神力を込めたお守りを満希に渡したと後から聞いた時には、抱いていた不安もすっかり無くなっていた。

 何せアマテラス様は太陽を司る能力を持っておられる。彼女の力が込められた神具があれば、人間の作った爆発物など容易く防いでしまうだろう。

 そして、満希自身の悪運の強さ。これまで何度も危険な目に遭ってきた彼だが、運が良いのかどれも無事に乗り切っている。

 

 だから、満希はきっと生きている筈。

 

「もう住み慣れた文明は消えてしまっている。ゼロから始まる世界の中をどう乗り切っていくのかしら。まぁ、その前に…」

 

 いつの間にか辿り着いていた、通路の先に在る大きな扉。

 私が近付くと自動で開いた扉を進むと、そこは灰色の大地に加え深海のように暗い空と星々の光景が広がっていた。

 

「私は私のやるべき事をしなければ、ね」

 

 私がこれからやるべきこと、それは今いる月を早急に都市化して一日でも早く市民にいつも通りの生活を送らせるようにする事。

 

 私は出口を通じて、外へと足を踏みだした。

 

「貴方の悪運が長続きすれば、きっとまた会える筈……その時まで元気で、満希」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 まったく…アイツは本当に何やってるのよ。

 

 月に来ても満希の姿が全然見えないと思ったら、まさかの地上に残ってた?都の全市民が月に行くのにわざわざ残るってどんな物好きよ。

 …と、思っていたけどどうやら満希も満希で事情があったらしい。防衛隊の人からの話によると、防衛隊の人たちをロケットに乗り込ませるために最後まで戦い続けていたとの事。

 相変わらず考えなしに人を助けるお人好しよね、アイツ。まぁアイツらしくと言えばそうなんだけどね。

 

 ちなみに防衛隊員の人たちは満希に任せて先に避難してしまったことに負い目に感じていたけど、アタシが何とか説得させている。ホント、手間を掛けさせてくれるわね満希の奴は。

 

「コノハおねえちゃん……満希おにいちゃん、だいじょうぶかな…?」

「大丈夫よ、カグツチくん。満希は絶対に生きてる」

 

 更にはこんなに慕ってくれてる子を心配させるなんて…しょうがないやつね。

 

 けど実際問題、満希はきっと生きている。

 アマテラスさんが事前に神力を込めたお守りを渡していると言っていたし、あいつがそう簡単に死ぬような奴じゃない事もアタシは知っている。

 

「ほら、そろそろお父さんとお母さんの所へ行きましょ?あんまり親に心配かけちゃダメよ?」

「うん…分かった」

 

 大丈夫だとは言ったものの、やはり満希の事が心配みたいね。けどこればかりはどうしようもないからね…。

 アタシはそんな様子のカグツチくんの手を引いて、イザナギさんの元へと向かう。

 

 アタシも一人の神として、いずれまた地球に降り立つ時が来る。

 その時までアイツと話が出来ないって言うのはちょっと寂し……退屈だけど、いつかまた会えるというのならそう悲観するものでもないでしょう。

 

 …アタシの友達なら、必ずまた顔を見せなさいよ…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…ブハァ!」

 

 いきなりでなんだが、土の下から飛び出してきた俺。どういうこと?と聞かれても返答に困るが、とにかく土の中から俺は姿を現した。

 

「っ…眩しいな」

 

 そして何故か太陽が眩しい。

 

 モグラって地面から顔出すとこういう気持ちだったのかな…じゃなくて、一体何が起こったんだっけか。

 確か…ロケットに乗り損ねた俺は置いてけぼりにされて、妖怪に四方八方を囲まれて絶体絶命の危機に陥ってたんだったな。

 で、何とかしようとしたら……何だっけか、何かが聞こえて来たんだよな。ん~………。

 

「…あっ、変なタイマー音」

 

 そうだ、タイマーみたいな電子音が鳴り出して、それが急に止まったかと思ったら急に目の前が白くなって、凄い爆発音も一緒に聞こえてきたような…。

 

「…つまり」

 

 どういう事だってばよ?

 

 まぁとにかく、一旦状況を整理してみてから…あれ?

 

「ここ…都だったよな?」

 

 周りをぐるりと見回してみて、俺は余計に混乱する羽目になった。

 さっきまで大都会にいたはずなのに、周りが思いっきり草原になっていたのだから。

 

 

 

 …というか俺、しょっちゅう理解できない展開に振り回されてるような気がする。

 

 

 

 

 

【第一章 終幕】

 

――終

 




と言う訳で、1章のエピローグ的なものと2章のプロローグ的なものを書いた繋ぎの回でした。
3000文字にも達していないという短文仕様…普段からこれ位だったら執筆速度も落ちにくいのですが…無理か(′・ω・`)

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