満希「いや、小説の話しろよ」
???「早くfullで聞けるようにならないかなー、楽しみだ」
満希「いや、本編見ろよ」
「…………」
さて、ついに大和の国との決戦の日がやって来た。
天気はものの見事に晴れ模様、絶好の洗濯日和とも言えるほどの快晴っぷりだ。
今日に向けてコンディションは整えている。当日になって風邪をひいていたり身体のどこかを痛めていたりなんてしたら勝負に支障をきたしてしまうからな、こういうのは普段より敏感になっておかないと駄目だ。
「…………」
既に俺たちは大和の国へと訪れ、決戦の地である大きな草原の中に立っている。無論、大和の国の神々もいる。
どうやらあちらは準備は整っている様で、堂々とした佇まいで腕を組んでいる神奈子を筆頭にその他の神々が俺たちの前に並んでいる。
「…………」
…さて。
「いい加減しっかりしろ、諏訪子」
「きゃう!?」
さっきから体がカチコチに固まってしまっている隣の諏訪子の頭をベシッとひと叩き。
「あうー…いきなり何するのさ~!」
「お前がいつまでも緊張してるからだよ。お前も向こうと同じ神ならもうちょっと堂々としてなよ」
叩かれた部分を押さえながら涙目で睨みつけてくる諏訪子。そしてそれを軽くあしらう俺。
これから始まる戦いの事を考えると、縮こまってるよりも多少の余裕を持ってくれた方が戦いに身が入りやすいのだが…どうにもこの様である。
…まぁ、理由は分からなくもないが。
「だって……わたしが負けたらわたしを信仰してくれてる皆に顔向けできないし、今日まで特訓に付き合ってくれた満希にだって…」
「……」
まぁ、やっぱりそう感じていたんだろうな。
以前にも言ったが、諏訪子は外見年齢相応の精神故にその年特有の優しさや心遣いを持っている。
それでいて自分がやるべきことは何なのか、自分に掛かる責任がどれほどのものなのか…その本質を大人並にしっかりと理解できている。そのせいで、余分な責任感までその小さな体に背負いこんでしまっている。
第一、今回の戦いは諏訪子が自分の民を戦いに巻き込ませないようにしているのだ。寧ろ感謝されるほどの施しを行っているから、顔向けだとかそう言う小難しい事を考え必要はないんだ。
…仕方ない。
ちょいと慣れないけど自分なりの激励でも掛けてみようかね。
「なぁ諏訪子。お前が今日までどれだけ特訓を頑張って来たのか…特訓に付き合ってきた俺が一番知ってる」
「……うん」
「お前は強いんだ。後ろ向きに考えないで堂々と戦えば、絶対に今まで以上の力を出すことが出来る。……それにな、負けたって誰もお前を責めたりなんかしないよ」
「……え?」
それまで俯けていた諏訪子の顔が、漸く俺の方へと向き上げてくれた。その瞳は、まだ少し不安の色を含めていた。
だから俺は、泣いている子供を慰める時の優しい表情と言葉遣いを意識しつつ、諏訪子の帽子を外してその頭を撫でてやる。
「あっ…」
「俺はどんな結果になっても、お前に同じ言葉を掛けるよ。『皆の為に戦ってくれてありがとう』…ってな」
「…っ!」
漸く、諏訪子の表情に力が籠り始めたな。勿論、力み過ぎなどの否定的な意味ではない、強い覚悟と意志の力、それが徐々に込められてきている事だ。
そして、諏訪子の口が重々しく開きだす。
「満希……」
「なんだ?」
「……わたし、やってみるよ」
そう言って、諏訪子は俺の眼をじっと見返してくる。
先程のように不安めいた瞳は既に無く、新たに鋭く強い瞳が其処に在った。
「相手が誰だって関係ない。全力を出して、自分に出来る限りのことをやってみるよ。…それが村の皆や満希の為になるんだって思うから」
「…ああ、それでいい。……行って来い、諏訪子」
「うん!」
強い頷きを俺へ返すと、諏訪子は神奈子の元へと向かって行った。
どうやら、俺の激励は無駄にはならなかったらしいな。あの様子なら神奈子ともいい勝負が出来るに違いない。
「さあ…それじゃあ行くよ、洩矢神」
「わたしは絶対に負けられない……勝たせてもらうよ、八坂神奈子!」
…と、そうこうしている内に向こうも戦いが始まったな。戦う二人は上空に飛び上ってそれぞれ戦闘の構えを取った。
まずは小手調べと言ったところか、神奈子は神力で出来た青い弾を多数形成し、弾幕のように諏訪子へ向けて放った。
宙を密集するかのような神力の雨。だが所々に潜り抜けられる穴が存在する。
諏訪子はその小さな体を活かして弾幕の中へ潜り込むと、次々と躱していった。
「おっ返しぃ!」
8割まで潜りとおしたところで、諏訪子は弾幕の隙間から速度のある神力弾を数発ほど発射。弾は真っ直ぐ神奈子に向けて飛んでいく。
「甘いよ!」
が、神奈子はそれを余裕をもって躱す。
ふむ…やはり一筋縄ではいかないみたいだな。
「やああぁぁ!!」
「はぁっ!」
諏訪子が距離を詰めた事により、二人は互いに拳を振るって接近戦へと戦いを移行させた。
ぶつかり合う二人の拳。
衝突によって衝撃を生まれ、その余波は地面にいる俺や他に神達にも届いてきた。
「おお…やはり八坂様の力は凄い、これ程のものとは…」
「しかしそれに拮抗している洩矢の神…中々やりおる」
「馬鹿を言うでない。分からぬのか?八坂様はまだまだ本気を出しておらぬのだぞ?」
「いや、それを言うと洩矢の神もまだまだ余力を残しているように見える…」
「どちらにせよこの戦い、長くなりそうだな…」
向こうは向こうでヤムチャよろしくな解説を始めだした。いや、スピードワゴンでもいいか?…どっちにしても懐かしいもんだな、もう何十年も前の知識だというのにそれなりに覚えてる自分が怖い。
…と、俺は俺でどうでもいいことを考えていると……
「とりゃぁあ!!」
「ぐっ!?」
諏訪子の全身を使った蹴りが神奈子の腹部へとモロに直撃していた。神奈子は蹴りの衝撃で後方に思いっきり吹っ飛ばされて行った。
そして追撃とばかりに諏訪子はそれを追いかけていく。
…っと、あれだけ離れたら俺も少し移動しないと戦いの様子が見れないな。
「さて、それじゃあちょっと移動を……」
「あは、こんな所に神様がウジャウジャなんてね……食べ応えがありそう」
突如として耳に届いてきた、不穏な言葉。
それが聞こえたのは俺だけではなく、他の神々も何だ何だといった様子で周囲を見渡し始める。
だが、その行動が手遅れだったという事を、直ぐに思い知らされる。
「ぎゃあ!?」
一人の悲鳴。
その場にいた全員が声の発生元を目で辿っていく。
そして、全員が見たものは…
頭の先から下半身の半ばまで黒い塊で埋まっている、神であった『物』が地面に倒れ伏している姿だけだった。
一体、何が起こったというのか。
それを考え始めるよりも先に、俺の中の危険信号が警鐘を鳴らす。
ボーっとしていてはいけない。早く次の行動を移さなければならない。
俺の勘からそう告げられ、咄嗟に周囲の草草を注意深く観察しだすと同時に妖気の察知に集中する。
「……………そこか!!」
多少の背丈がある草草の影の中に感じた『違和感』
『違和感』を見た俺の行動は中々に敏だった。
すかさず人差し指を突き出した拳銃のような構えを取ると、その『違和感』がある場所に向けて指先から炎の弾丸を放った。
放出口を極力狭めることとイメージの具体化により、スピードの特化を図った牽制や奇襲に向いた射撃術。
弾丸は『違和感』を持つ影へと直撃する。
「ぐっ…」
弾丸が命中した影は苦悶の声を一瞬だけ上げると、もぞもぞと動きだして地上に浮き上がり始める。
影が何で意志を持ってるように動いてるか…なんて思いもしたが、今はそれを考える時間ではない。
俺は警戒心を怠らせぬまま、注意深く影の動きを観察する。
他の神達もそれぞれ武器を構えながら、俺と同じ影を警戒し始める。
「いたた……まさかおまけで見てた人間が私を見つけるなんてね」
すると、影は活発に動きだして一点に集まり始め、見る見るうちに人間の姿を形成していく。
諏訪子のよりも明るく、腰まで長さを蓄えた金色の髪。
白いブラウスの上に袖なしの黒いシャツを着て、下には黒のロングスカートを着用。
ルビー石のように紅い瞳を持った端正な容姿は小学生程度の外見。
だが、そんな可愛らしい見た目をとことん裏切っているのが、彼女が纏っている妖力の規模。
濃密にして強大、それも今まで戦ってきた妖怪のそれとはまるで格が違う程のスケールだ。
これ程の妖力を持った妖怪は、今まで御目にかかったことが無いくらいの。
「なかなかやるんだね、人間くん。どうして私の居場所が正確に分かったのかしら?」
「今の太陽の位置に対して、お前がいた場所が影の伸び方が若干甘い場所になってたからだ。それに少しだけ影の色が濃かったのも発見の一つとしてあるな」
「へぇ…」
にたり、と不敵に笑みを浮かべてくる少女。
普通の女の子だったならこれほど警戒心を抱く必要もなかったのだろう、先程から漂ってくる妖力が笑みと同時に濃くなったのを感じた所為で余計に警戒せざるを得ない状況となっている。
気を抜けば虚を突かれて殺される、さっきからそんな空気が漂っているのだ。
「おのれ、妖怪風情がよくも我らの同胞を!!」
「即刻滅してくれるわ!」
と、ここで神様たちが怒りを露わにしながら少女に向かって食って掛かり始める。その内容は、先程この少女に殺された神様の事だと容易に推理できる。まぁ仲間を殺されて黙っていられるわけも無い筈だ。
しかし、十人以上の神の怒りを前にしても尚、少女は平然としている。
否、それどころか先ほどよりも表情が楽しそうになっていた。
そしてその表情を浮かべたまま、少女はどこからともなく黒い物体を自分の周りに浮かびあげて…。
「いいよ……遊んであげる♪」
俺たちに笑顔を向けて、そう言い放った。
―――――――――――――――――
「…やばいだろ、これは」
ヤバい。
想像していたものよりも、相当にヤバい状況だ。
妖怪の少女が一人に対して、神達の人数は約十数名。数だけで言えば可哀想になる位の人数差だった。
加えて神様は文字通りの神様。そこらの妖怪と比べては失礼なほどの実力を持っている者が多数だ。ちなみに全員と言い切らないのは、基本的に戦闘能力が高いのは戦いに関する神様ぐらいなだけで、知略や農業などの神様はイメージ通り基本的に肉体労働を得意としていないからだ。だがそれでも、今回の決戦の立ち会いとして、その大半は戦闘能力が高い者のはずだったのだ。
しかし、そんな戦況をもろともしないかのような立ち振る舞いをして見せた妖怪の少女。
影のように黒い何かは意志を持つかのごとき動きを見せると、次々と神達を倒していったのだ。間違いなく、少女の能力による何かなのだろう。
そして当の少女はというと、戦いが始まってからというものその場から一歩も動いていなかった。動く必要もない、そう俺は感じられた。
圧倒的。
まさにこの一言に尽きる瞬間を見せつけられてしまった。
「さて、それじゃあ次は人間くんに相手をしてもらおっかな。……それじゃあ始めましょう?」
「っ!」
黒い物体が、先端を鋭利に尖らせて俺に凄まじい速さで迫ってきた。その勢いは正に弓から離れた矢のようである。
俺は寸でのところで頭を反らして、迫りくる攻撃を回避。一歩でも反応が遅ければ、恐らく俺の顔には涼しい穴が開いていたに違いない。
……怖っ!
「まだまだ、休んでるヒマは無いよ」
少女は続けざまに自身の周りに黒い物体を形成すると、先程と同様な形に変形させて俺に向けて飛ばしてきた。
数はおよそ8つ。避けきるのは少しきついか…?
「ふっ!」
初撃の一発目、再びギリギリのところで回避。
2~4発目、一斉に襲い掛かって来たので横に大きく転がって纏めて躱す。
5~6発目、飛来するポイントが的確だったが強引に体を捻じって直撃を逃れる。
変わらず速い動きで襲い掛かってくる黒い物体を、身体を捻り大きく跳躍しを織り交ぜて避け続ける俺。
しかし残る2つの黒い物体が、無理な回避によって身体のバランスが安定していない俺に無情にも襲い掛かってくる。
このままでは避けれない……なら!!
「はあっ!」
手の先から炎を放出し、俺の方へと向かってくる黒い物体に浴びせた。
炎に侵攻を阻まれたことにより勢いを削がれた黒い物体は、そのまま炎に飲まれて跡形も無く消えてしまった。
ふぅ…今のは結構危なかっ…いてっ!
「あれは、炎…!?」
しまった…バランス崩したまま能力使ったから、自分が倒れそうになってるって事を忘れてた。受け身も取れずに呆気なく倒れる形になっちまったよ。痛い。
…まぁ、直撃を免れたんだから文句を言う必要も無いわな。
って、なんかあの女の子が驚いたリアクションをしてるんだが……なんだろう?
「…驚いたわ。人間である貴方が能力を使えるなんてね」
「ああ、その事か。やっぱり人間で能力を持ってるのって珍しいのか?」
「そうね。見た所、炎を操る能力のようだけれど」
「まぁ…大体あってるな」
本当は熱も操れるんだけど…まぁ態々敵に自分の情報を教える必要も無いか。
「けど…貴方が能力を持っていたところで私に勝つことは出来ないよ」
そう言うと、少女は自身の背中に黒い物体を纏わせた。
何を始めるのかと思った矢先、その黒い物体は鳥のような翼を形作り、羽ばたく。少女の体はふわりと宙に浮かび上がった。
「私は宵闇の妖怪、ルーミア」
少女――ルーミアは空中から俺を見下すような形で笑みを向けてくる。
彼女が上に立ち、俺が下にいる。
これが私と貴方の力の関係。
まるでそう示しているかのような配置に、流石の俺も軽く眉を顰めてしまう。
だが、ルーミアは俺の心境など知る由も無しといった様子で、今度はどこからともなく巨大な大剣をその手に携えた。
「『闇を操る程度の能力』……それが私の能力よ」
闘争は未だ、始まったばかり。
――終
うーむ…投稿スピードが落ちてきてるなぁ…。けど仕事があるからなぁ…。
まぁこんな時の為に不定期更新のタグを付けてたんですけどね!(`・∀・´)
予防線を張っておいて良かった良かった、ははは。
…すいません、ちゃんと頑張って書きますorz