東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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満希「まさかこんなタイミングでルーミアが出てくるとはな…もう少し後になるのかと思った」
???「割と思いつきなんだけどね、今回の登場は」
満希「おい。…そう言えばここでもEXルーミアが使われるんだな」
???「二次創作の存在だけど、邪険にする必要もないし二次創作ならではの特権だから採用しますた」



第19話 過去最大の大苦戦!こいつ…強すぎる…!

 現在、突如として現れた闇を操る妖怪の少女――ルーミアと戦う羽目になった俺。

 

「ほらほら、避けてばかりじゃ私は倒せないわよ!」

 

 少女が手に持っているのは、持ち主の身長を軽く超えている程の刀身を持つ巨大な片刃剣。刀身が僅かに赤黒く、周囲に黒いオーラが纏われている辺りを見ると碌でも無い出所なんだと理解できる。

 そんな大剣にも関わらず、少女はそれを片手で軽々と扱っており俺に向かって次々と振り回してきている。

 

 いやいや、おかしいだろ!

 あんな細腕のどこにあれを振り回すパワーがあるんだよ、目測でも30~40㎏位はあると思うぞ!

 

「それは女の子の秘密ってやつだよ、人間くん」

 

 あ、思わず顔に出てたか。

 そうか…女の子の秘密か…………女の子って怖い。

 

「せいっ!」

「っと!…ならこいつだ!」

 

 横薙ぎに払われた大剣の一撃を後ろに下がって躱しながら、俺は掌に炎を溜めこんで火の弾をルーミアに向けて撃ち放った。

 上手いこと腕に当てて、何とか武器を握られないようにできたら――

 

「はい、残念」

 

 が、駄目。

 俺の思いも空しく、拳大の火炎弾は大剣によって真っ二つに両断されてしまった。両断された火炎弾はルーミアの両脇をすり抜けていってしまう。

 

 破れかぶれの攻撃じゃあいつには届かない、って事か…。

 

「(けど接近戦も接近戦で危なっかしいしな…)」

 

 そう思いたくなる原因も、ルーミアが持っているあの大剣にある。

 普通あの手の武器は重量感の影響で攻撃の速度が遅い筈なので、注意して回避をすれば接近戦においても十分に隙を見出すことが出来る、あれくらい得物が大きければ大体そんな事になるだろう。

 

 しかし、先程から繰り出されている重量感を一切合切無視したような攻撃のせいで近接が非常に恐ろしい事になってしまっている。加えてリーチも長いからナイフの時みたいに後ろに下がって避ける、なんてことをしたら下手をすれば攻撃を避けきれずに上半身と下半身が別れてしまう。

 

 近接は非常に危険、という事は…。

 

 

「遠距離から仕留める!」

 

 即言実行。

 俺は両腕に炎を纏わせると、投球の要領で次々と炎の弾を形成し、それをルーミアに向けて放ち始める。

 

「いいよ…暫く時間をあげる」

 

 次々と放たれていく火球であったが、ルーミアはそれらに臆する様子を微塵も表さずに次々と叩き斬っていく。しかも余裕そうな表情で。

 やはりこれだけでは彼女に手傷を負わせることすら難しいらしい。

 

 だが、一度や二度破られた程度じゃあ諦める材料には至らない。

 例え攻撃を防がれても、続けて技を繰り出せば隙を生み出せるかもしれない。さらに何度も行っていけば疲労も溜り、よりチャンスがやって来やすくなる。

 そしてそこを狙えば、確実にダメージを与えることが出来る。それが勝利への道筋。

 

 言うなれば、数撃ちゃ当たる戦法。もしくはゴリ押し。

 

 …カッコ悪いって?

 仕方ないじゃん、そうでもしないと隙が無さそうなんだしアイツ。

 

「…というわけだ、ガンガン行かせてもらうぞ!」

 

 お次は銃の真似事をした形に手を変え、人差し指の先から小さな炎弾を鋭く発射した。先ほどルーミアを見つけるために使用したのと同じ技だ。

 だが、今回は片腕のみの単発発射ではない。

 俺は更にもう一方の手も銃の形に変えると、そこからも炎弾を撃ち出す。西部劇なんかで数こそは少ないが大抵存在している、言わば2丁拳銃といった奴だ。

 

「中々に疾い攻撃ね…けど真正面から撃っても私には通用しないわ」

 

 まぁ、躱されることは分かってた。馬鹿正直に真正面から、それも今のは単発撃ちで計2発しか撃って無かったからだ。

 

 …なら、もっと増やしたらどうなるかな?

 

「はぁっ!」

 

 指の照準をルーミアに狙い付けると、俺は右手の指先から炎弾を撃ち出す。

 

 すかさず続けて左手の指先から。

 お次は右手の指先から。

 今度は左手。

 右手。

 左手。

 

 一発ごとに必要となる次の射撃のための僅かな装填時間を、空いている片方の射撃の時間にあてる。

 そうすることにより、銃撃と銃撃の間に出来る間断を作ることなく、連続して炎弾を発射させることが出来るというわけだ。

 

 焔で作られた銃弾の嵐が、ルーミアに向かって雪崩れるような勢いで襲い掛かっていく。

 

「…これはちょっと面白い感じかな?」

 

 表情を僅かに変えながらルーミアはそう言うと、自身に迫りくる銃弾の範囲外に飛んで直撃を避けていく。流石に標的が銃の弾レベルに小さいとなると、あの自慢の大剣で斬るなんてのは難しいらし い。まぁ、それ以前にあれを斬る位だったら動いた方が消耗も少ないだろうしな。

 

 さて当然、狙いがずれているまま何も行動を起こさない俺じゃあない。

 俺は空中にいるルーミアを視界に捉えると、彼女が今いる地点に照準を定めて再び銃撃を開始。

 

 照準を直されたことにより再び銃弾が来る立場に立ったルーミアは、再びその場から躱すように飛んでいく。

 まぁ当然の行動だろう。

 

 と、此処に来て何とか攻勢に立てた俺だが、未だ攻撃を与えられていない現状にある。先ほどから撃ち続けてはいるものの、炎弾がどれもルーミアに当たっていないからだ。

 どの弾も彼女がいた場所の空を切ってしまうだけで、どの一撃も掠りともしていない。

 

「(追いかけて撃っても振り切られる…なら!)」

 

 此処で俺は、発想を切り替える。

 ルーミアに向けて照準を定めるんじゃない。

 ならば…

 

「そう、更にその先を…予測を交えて撃っていくんだ…!」

 

 照準を変更、腕を15㎝ほど動かす。

 そこは誰も居ない空……否、これからそこに居る事になる!

 

 確信を胸に秘め、俺は指先から一発の炎弾を放つ。

 

「っ…!?」

 

 

 

 

 

「やっと一撃、か」

 

 俺の指先から放たれた空を鋭く切っていった銃弾は、空を飛ぶルーミアの頬を掠っていった。

 よし、直撃はしなかったものの小さくはあるが傷をつけることが出来たな。俺と彼女とでは力の差があるけど、少なくとも手傷を負わせることが出来るというのは気持ち的に楽な物を感じる。

 ほら、マンガだと圧倒的な力を持った相手に攻撃を与えても全然ダメージ入ってないってシーンがたまにあるし、そうなるんじゃないかという不安も確かにあったから…。

 

 一方、頬に一筋の赤い線を刻まれたルーミアは、声こそは挙げないものの、眼を見開いて驚く様子を見せている。

 そして頬にそっと触れて見せた後、彼女は口元を緩め、笑った。

 

 

 

 ……笑った?

 

「…ふふふ…」

 

 高笑いや爆笑などの派手な笑い方ではない。あくまで薄ら笑い程度のリアクションしか出していない。

 けどおかしい。別段笑えるようなことは無かった筈だ。

 

 何故、ルーミアは笑っているんだ…?

 

「ふふ……傷をつけられるの、案外早かったなぁ」

 

 俺の動揺など構わず、俺に聞こえる程度の声量で、しかし独り言のようなそぶりで語り出すルーミア。

 大剣を持った手もダラリと下げ、無防備な姿を晒している彼女。

 

 得物を構えていない今なら、追撃で攻撃が命中するのではないだろうか。

 

 が、俺がそう思ったのは一瞬だ。すぐにその思想はかき消した。

 今、手を出しても恐らく攻撃が当たることは無い…俺の感覚がそう告げてきているのだ。生物的な危機察知能力が発揮しているのだろうか。

 

 というわけで俺はルーミアの動向を警戒しながら、ファイティングポーズを取り直していつでも戦えるように準備を整える。

 

 …そして。

 

 

 

「『終わり』、だよ」

 

 ルーミアは動き出した。

 いや…動き出したと言っては、遅すぎる表現だろう。

 

 

 

 既に彼女は、俺に己の剣が届く範囲までやってきていたからだ。

 

「…っ!?」

 

 刃が迫る。

 相手の狙いは首元。生物にとってそこが狙われれば死が待っている程の箇所だ。

 無論、あんな巨大な大剣の手に掛かれば、一瞬で首が身体からおさらばしてしまうだろう。

 

 確実に殺しにきた行動により、俺の身体は強烈な緊張感を纏う。鳥肌が瞬間的に立ち上がり、体温も下がったような気がするが、今はそんなことどうでも良かった。

 

 俺は即座に上半身後ろへとを反らし大剣の攻撃範囲から逃れる。

 身体に降りかかった緊張の所為で一瞬硬直してしまった、お陰で反応がコンマのレベル遅くなってしまった。かなりギリギリな所だ。

 

 大剣は剣先を俺の首元を掠めながら、ブォン!と派手に空気を切り裂く音を響かせた。

 

「痛ぅっ…」

 

 首に針のように小さな痛みが走り、俺は顔を顰めながら首元を押さえる。

 感触と温度で判別できる、どうやら首から僅かに血が流れ出てしまったようだ。首の皮は他と比べて厚くないから、掠っただけでも血が出るのには十分という事か。

 

 しかし、これだけで済んでかなり僥倖だった。下手したら俺の体から首が無くなってたかもしれないからな。

 

 苦悶の表情をしているである俺を見て、斬りかかってきていたルーミアは小さく微笑む。

 

「もう、そのまま止まってくれてたら楽に死ねただろうにね…わざわざ嬲り殺しにされるのがお好み?」

「…随分物騒な事言うもんだな」

「言わなかった?『終わり』だって。ちょっと早いけど、あなたが私のここに傷をつけた瞬間、貴方にあげていた攻勢の時間が『終わった』のよ」

 

 

 

『いいよ…暫く時間をあげる』

 

 間違いない。俺が遠距離戦を決めた直後にルーミアはそう言っていた。

 彼女は…奴は決して遠距離に入った俺に対する攻め手を欠けさせられたから、回避に徹したわけじゃない。

 

 よくよく考えてみると、ルーミアには俺の攻撃を掻い潜って距離を詰めて攻撃を仕掛けてくるタイミングがいくらでも存在していた。両手撃ちで連射をし始めた時も、彼女は近づくことをせずに一定の距離を保って逃げ続けていた。

 

 つまり……奴は、遊びの感覚で俺に攻撃をさせていた…!

 

「っ……随分と余裕なんだな、あんた」

「当然でしょ。私はそこんじょそこらの妖怪では決して勝てないくらいの力は持っているもの。それにあなたも散々見たはずでしょ?私が神たちを倒してきた姿を、それが私の強さを十分に証明しているわ」

 

 彼女の話が耳に聞き届いている今の俺の顔は、きっと苦々しく歪んでいる事だろう。眉間に力がこもっている事がハッキリと自覚できる。

 

「さて、お喋りはこの辺でおしまい。そろそろ遊びの続きをしましょう…ねっ!」

 

 瞬発的に肉薄するルーミア。

 接近したのちに、轟、と空を切る音を奏でながら迫りくる彼女の拳。

 腕は見た目こそ華奢なそれだが、ただの人間が出せる事の無い音とスピードのせいで外見を裏切る威力がある事は容易に理解できた。

 

 紙一重の所で、その拳撃を躱す俺。

 肌の隣を通り過ぎていく刃の感触が、背中に嫌な冷や汗を覚えさせてくれる。

 

 だが、休む間もなく次に大剣が俺に向かって振りかざされる。さっきのパンチもそうだったが、当たれば当然即死ものなのだろう。

 その斬撃も、身体を反らしてギリギリ避けきる。

 

「そら、まだ気を抜いちゃダメ!」

 

 そう言ってルーミアは、通常の剣が届くくらいの距離から複数の妖力弾を俺に向けって放った。

 気を抜くな、とは言うがなぁ…お前…。

 

「こんなもの、気を抜けるかっての…!」

 

 縦横無尽に振り回される、斬撃の群れ。

 軽快にして重烈な一撃を誇るそれらが、容赦なしに俺を殺しにかかってきている。

 正直、未だに回避が出来ている自分を褒めてやりたいところだ。これ程の激しい攻勢、普通の人間だったら一撃目で躱せずに死んでいたところだろう。

 

 …そう思うと、俺って人間やめてるんだな。全然歳とってないのにそう思うのも今更ではあるが。というか前にもこんなこと考えてたような気もするが…。

 

 まぁそれはどうでもいいとして、問題は今のこの状況だ。

 やはり接近戦に入ってしまうとこちらは手出しが出来なくなってしまうな、攻撃のリーチが違いすぎて反撃の余地が見当たらない…。

 なんとか隙を見つけて、もう一度遠距離からの攻撃を――。

 

「ほら、また隙が出来てる!」

 

 一手先の事に対して思考を廻らせ過ぎたツケが、今になって回ってきてしまったらしい。

 

 ルーミアの放った鋭い蹴りが、俺の腹部に叩き込まれたのだ。

 

「がっ…あ…!?」

 

 気が遠くなるような重い一撃が身体全体に響き渡る。

 腹を硬くしてダメージを減らすことも出来たろうが、反応が遅れた所為で純粋なダメージが俺の身に届いた。

 もっとも、減らしたところで強烈な事に何ら変わりは無かったのだろうが。

 

 身体を後ろに吹っ飛ばされながら後ずさる俺だが、そんな中でも彼女の攻めの手は緩まない。

 手に持っている大剣を、再び俺に向かって振りかざしてきている。

 

「な…めんなぁっ!」

 

 能力を行使。炎を腕から振るい放ち、大剣へと命中させる。

 焔の介入によって軌道をずらされた大剣はそのまま俺の横を通り過ぎていく。

 

 しかしルーミアはお構いなしとばかりに、大剣を手から離すと俺の頭をガッチリと鷲掴んできた。

 

「そらぁ!」

「ぐあっ!?」

 

 俺の頭を掴んだルーミアは、そのまま力任せに地面に向かって叩き付けてきた。

 ゴシャア、と乱暴に土が削れる音と共に、先程の蹴りに匹敵する痛烈な感覚が俺の体へと訪れてくる。

 

「ふふ……それなりに頑張った方だけど、それでもあなたは私には勝てない」

 

 彼女は俺にとって穏やかでない戦況の中、穏やかに笑っている。

 俺の頭を掴んでいる手は以前力を込めたまま、俺の体を地面に拘束してきている。ちくしょう…わかってたけど相当な馬鹿力だなコイツ…!

 

 とにかく、圧倒的不利なこの状況を抜け出そうと俺は抵抗を試みる。

 …が、身体を動かそうとしても上手い事動いてくれない。

 恐らく…先程の一撃が脳に来ていたのだろう、どうにも頭が上手く働いてくれない。どうにか抜け出す手段を考えてみようとしても、グラリとふらつく感覚が短く周期的に襲い掛かってくる。

 

「それにしてもあなたは十分抗えた方だと思うわよ?私の攻撃をそれなりに躱せてたし、私に一撃を入れることも出来てた。さっき殺した神たちよりはよっぽど出来がいいくらいにはね」

「ぐ…っ…」

「ねぇ、あなたの名前を教えてちょうだい?人間でありがならここまで戦えたのは貴方が初めて…名前を知らずに殺すなんてもったいないから…」

「……暁宮 満希、だ。……けどな、殺されるつもりはこれぽっちもないっ!!」

 

 俺はお喋りに熱心で油断しきっているように見える彼女に対して、フリーになっている手から火炎放射を放つ。

 

 ………が。

 

「無駄だよ」

 

 手の平に闇を纏わせ、その手を真正面から炎へ当ててきたルーミア。

 ルーミアの手の闇に直撃した俺の炎は、水にでも当てられたかのように急激に勢いを失し、あっけなく消し去っていった。

 

 驚嘆する俺の反応を面白がるかのように、ルーミアは語り始める。

 

「さっきも言ったけど、私の能力は闇。深く暗い闇はこの世の全てを覆いつくし、無力にする。それはあなたの炎も例外じゃない、火も、水も、剣も雷も拳も矢も……全て闇の前では為す術を失う」

 

 闇、という概念は俺の中で細密に根付いていないが、彼女のいたい事は理解できた。

 闇は、絵の具で言う黒色。他の色を強引に自分色に塗りつぶし、元の色の面影を消す存在。しかも彼女の力そのものが強大なために、塗りつぶす量は多量にあるということなのだろう。

 

 今になってこれを使われたとなると。

 ……やはり、先ほどまでの戦いは相当嘗められてたって事かよ。

 

「さて、疑問も解決したところでそろそろ止めを刺してあげる。中々楽しかったよ、満希」

 

 そう言うと、ルーミアは手刀を作って俺の頭部に狙いを定める。

 

 そして、そのまま勢いよく腕を振り下ろそうとしてきた。

 

 

 

 

 

 …だが、そこに。

 

 速度のある神力弾が、ルーミアの横から飛んで来た。

 

「っ!?」

 

 咄嗟の事態だったが、ルーミアは反射的にそれを躱してみせた。

 だが、さすがに俺を捕まえながら避けるというのは無理だったらしい。それに神力弾の来る位置も的確だったため、ルーミアは避けるために俺の近くから離れざるを得なかった。

 

 鷲掴んでいた俺の頭から手を離したことにより、俺の拘束は解かれた。

 俺は軋む体を腕で支えながらも何とか起こし、ルーミアの方へと向きなおす。

 

「満希っ!大丈夫!?」

「くそ、戦いに集中しすぎて妖怪の存在に気付けなかったとは…私も衰えたものだな…!」

 

 俺の横から、先ほどまで戦っていた諏訪子と神奈子が飛んできた。どうやら先ほどの神力弾は二人の内のどちらかのものだったらしい。

 横から一瞥して見ると、諏訪子の方は身体も服もボロボロで、神奈子の方も諏訪子ほどではないが一部傷が出来ていて服もボロけている。どうやら戦いは諏訪子の方が劣勢だったみたいだ。

 …と、そんなことを考える場合じゃないな。

 

 とにかく、遅れて来たとは言え二人が来てくれて本当に助かった…。

 もし少しでも登場が遅れていたら、俺は恐らく……。

 

「ふぅん…なるべく妖力を漏れ出さないよう戦ったんだけど、ばれちゃったか。ならここは退散させてもらいましょうか」

 

 すると、ルーミアの体が足の先から黒い霧状に散り始めていく。

 何が起こっているのか理解出来ないが、先程の口ぶりからするとここから逃げるつもりなんだろう。

 

「貴様、逃げるつもりか!」

「消耗してるとは言え、流石に上位級の神様二人を同時に相手をするのは骨が折れそうだからね、日を改めて伺わせてもらうとするわ。……それに今日は面白い物も見れたから、満足してるしね」

 

 神奈子の威勢を何食わぬ顔で返すルーミア。そして捕捉のように言葉を足した後、俺にいわくありげな笑みを向けてきた。

 

 格下の物を見るかのような、嘲笑のようにも思える嘗めきった笑み。

 俺は身体の痛みに鬱陶しさを感じながら、ただその笑みに対して睨みを返す事しか出来なかった。

 

 だが、彼女は俺に睨みつけられても可愛いものを見るようなそぶりで笑っていた。

 小さな犬が懸命に威嚇をしている、ルーミアには満身創痍の俺がそんな風に見えているのだろう。

 

「ふふ……それじゃあね、満希。またいつか会いましょう」

 

 そして彼女は、全身を霧状へと化して大気へと散っていった。

 彼女のいた場所には、一人分の足跡が残っているだけ。

 

 

 

 

 

 こうして大和の国と諏訪の国の大戦は、何ともいえない空気を漂わせたまま終わりを迎えるのであった。

 

 

 

――終




長き6連勤を無事に乗り越え、今日は休みを満喫してました。大半は寝てたけどね!
…もうちょっと執筆しておけばよかったかな(´・ω・`)
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