東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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Q.天魔ってもしかしてオリキャラとして色々設定あり?

A.迷走中。案外容姿を詳細に書いておきながら、ぽっと出のキャラとして扱うかもです。よくよく考えるとこの作品オリキャラ多すぎて…。なぜプロローグの親友二人を蓮子たちや早苗にしなかったのか…。



第25話 業・務・代・行

 侵入者として捕縛され、急遽ここで働くことが決定してより翌日。

 

「さてと」

 

 支給された食料を使って簡単な朝食を終えた俺は、身なりを整えて身支度を終わらせる。何か出勤前のサラリーマンみたいな描写だが…まぁ意味合いとしてはそこまで遠くは無いかな。

 

 これから俺、仕事に行くんだし。

 

「…しかし、どうしてこうなったんだか」

 

 先日の件で、俺は何故か此処の天狗たちと一緒に仕事をする羽目になったんだが…。やはり理解が出来ない。

 

『負傷者が復帰するまでの間、その者の代わりに業務をこなせ』

 

 俺が提案したものをあっさりと押しのけ、そう俺に命じた天魔。

 天魔が何故俺にこのような処置を施したのか謎が残ったままだが…こればかりは本人に直接聞くしかないかもしれないな。

 

 まぁ、その辺は追々判明させるとして……。

 

「そろそろ、俺の上官が来る時間だと思うんだが……」

 

 陽の上がり具合を観察しながら、俺はそんな事を呟いた。

 

 

 

 俺の上官。

 

 今回の俺の勤務において、天魔とその他の偉い人らが事前に会議を行った結果、俺の仕事には常に担当の鴉天狗を一人配置するという事らしい。

 表面上は仕事に慣れるまでの補佐・指導役として説明をされているが…監視目的だというのはバレバレである。

 まぁそれは当然の処置であろう。いつ暴走するか分からない輩を自由に行動させるなど、それこそ有り得ないだろうからな。別に暴れるつもりは無いから無駄な心配とだけ言っておこう。

 

 という事で、今はその上官が来るまで自宅待機中だ。

 

 どんな人が来るだろうか…あまり面倒じゃない人が来てくれると良いんだけどな。一番身近な人物が嫌なやつとかだったらストレスで寿命が激減しそうだもの。

 でも聞いた話だと、最終的な決定は天魔がやったって言うし、あの人ならいやらしいチョイスはしないでくれると…思う。

 

 そういえばあらかじめ担当の名前は知らされているんだよな。確か、射め――

 

 

 

「入るわよー」

 

 ノックも無しに、突然開かれた入り口の扉。そして女性特有の高さがある声。

 数歩ほどカランコロン、と下駄出歩く音が聞こえた後にこちらに向かって足音が近付いてきている。

 

 恐らく、さっき言っていた俺の上官が来たのであろう。

 というか普通に入って来よったよ上官。それこそ我が家に入るような、動作にほとんど隙間がないほどのスムーズさだったよ、音に聞こえる限りでは。

 

 と、俺が心の内でツッコミをしていると、当の本人である上官の姿が露わになる。

 

「ああ、いたいた。あんたね?今日から私の下で働くことになったって言う人間は」

 

 若干16~7と判断できる若さの少女が、俺の居る居間まで来ると第一声にそう言い放った。

 

 彼女の格好は、これまでに出会った天狗の中ではかなり印象的だった。

 

 黒いショートヘアーに赤い瞳、そして頭には山伏風の赤い帽子。

 これだけとりあげればまだいい、まだ天狗っぽさが感じられる要素があるからな。だが、問題は次だ。

 

 上半身は白い半袖シャツ。

 下半身はフリル付きの短い黒スカート。

 

 一言で言おう……現代的すぎるんだよ!

 

 まるで今時の女子高生の学服かと思うような近代的ファッション。

 これには流石にツッコミをせざるを得なかった。今の時代って弥生時代位のはずだろう、何故フリルが存在してるんだ!

 

「…ねぇちょっと、話聞いてるの?」

「え?あ、あぁ…スマン。少し考え事をしてた」

「ふぅん…私を見ながら考え事、ねぇ」

 

 思わせぶりなニヤニヤ顔で俺の事を見てくる少女。

 …いや、別に変な事を考えてないから。その辺勘違いしない様に。

 

「…まぁいいわ。もう聞いてると思うけど一応自己紹介するわ。私は射命丸 文、これからあんたの上司として存分にこき使ってあげるから…精々宜しくね」

 

 少女――射命丸 文はそう言うと腕を組み、小さく鼻を鳴らす。

 その表情はやはりというか何と言うか、俺に対する優越感を感じる。まるで弱者を見るかのような、上に立つ者が現しやすい眼だ。

 

 まぁ天狗にとって人間は脆弱な生物、自身より格下の存在と認識されている。天狗であるこの子も例外とはならないって事か。

 

「ああ…じゃなかった、はい」

 

 いかんいかん、思わずまたタメ口で話すところだった。よく考えたら俺より年下っぽくてもこの子は上司なんだから、ちゃんと敬語でいかないと何言われるか分かったもんじゃない。

 では改めて…。

 

「私の名前は――」

「ああ、名乗らなくてもいいわよ。興味ないし」

「えっ」

 

 いや、切り替えたばっかりなんですけど!?いきなり言葉を遮られたらちょっと凹むわ!

 しかも興味ないからって名乗らせてもらえないって…かなり惨め。

 

「あと一人称は別に俺でも良いわよ。さっきみたいに私って言ってても違和感が凄かったし」

「あっはい」

 

 違和感があるのは知ってた。だってそういうキャラじゃないし、俺。

 まぁでもこの許可は有難い、一々普段と違う一人称使ってると疲れるし。まぁ流石に敬語を崩すのは許されてないみたいだが…仕方がないか。

 

「さっ、時間も時間だしそろそろ行くわよ。ついてきなさい」

「はい」

 

 踵を返して玄関の方へと向かっていく射命丸。

 俺は大人しくそれに着いていき、彼女と同様に居間を出て行くのであった。

 

 

 

 

 

「ところで射命丸さんって何の天狗ですか?」

「鴉天狗だけど」

「えっ?」

「……何よ、その反応」

「…いや、なんでも」

 

 全然烏っぽくないんですが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 提供された家から出て数分。俺は射命丸についていき、昨日巡回中の天狗と戦った場所の近くに訪れる。

 移動の最中に聞かされたが、基本的に俺の仕事はこの辺り一帯の巡回という事らしい。

 具体的には侵入者がやってこないかを見張り、もしやってきた場合には始末をするのが仕事だそうだ。

 追い払うのではなく、始末するというのが随分と物騒だが……そもそも俺ってそんなヤバいとこに来てたんだな。

 

 と、言うわけで早速巡回開始だ。

 

 しかし俺は天狗みたく自由に飛べる身ではない。

 一応跳躍飛行も行えるとはいえ、何時間もぶっ続けで行うのは少しキツイものがある。

 

 

 

 そう言うわけで…歩きで巡回をすることに。

 

「はぁ…何で人間なんかに調子を合わせなきゃならないのよ…」

「なら射命丸さんは空を飛んでてもいいんじゃないですか?俺は別に逃げないですし」

「天魔様の命令だからそんなこと許せるわけないでしょ。それにあんたが逃げない保証なんてどこにもないし、ちゃんと近くで監……様子を見させてもらうわよ」

 

 やっぱり監視だったか。

 

「ゴホンゴホン…あー、今日はいい天気ねー」

 

 いや、それっぽく何事も無かったかのように振る舞って誤魔化してるつもりだろうけど、もともとバレてるから。やるだけ無意味だから。

 まぁでも確かに、今日はいい天気だな。初勤務からいきなり雨天とかだったらテンション下がってただろうし、良かった良かった。

 

「…ところで、雨が降ったら仕事はどうなるんですか?別の事したりとか…」

「ないない、基本的に巡回よ。雨笠が普及されるからそれを使えばいいし」

「なるほど」

 

 ずっと巡回、ね。

 

 やはり俺が倒したあの天狗は相当下っ端だったのだろうか。まぁ強者とか上位な雰囲気が一切無い人だったし、多分そうなんだろうな。

 けどずっと見張りというのもヒマそうだな。これでもし侵入者らしきヤツが来なかったら…。

 

「…なんだか嫌な予感がする」

「嫌な予感?まさか侵入者が来るって言うの?」

「いや…どちらかというと…」

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、3時間が経過した。

 

「だと思ったよ!」

 

 結局、侵入者らしき者の姿は影も形もなかった。

 まぁ予感はしてたけどさ。そんな頻繁に侵入者が来るって言うのもおかしな話だし、多分来ないだろうとは思ってたよ。

 

 だからヒマすぎる。

 一応射命丸が話し相手としてくれてはいるけど、向こうは馴れなれしくするつもりがないから返答が素っ気ないし話す内容も仕事系に偏っている。

 

「急にどうしたのよ、大声を出して」

「いや、巡回役って相当暇なんだなと思って…」

「それはそうでしょ。それに何事も無いって事は平和の証なんだし、お堅い連中にとっては喜ばしい事よ」

 

 そんなの当たり前でしょ?といった風な顔で俺に言葉を掛けてくる射命丸。相変わらず偉そうに腕組みをされていらっしゃる。

 というかその言い草だと自分はお堅くないから不満だって言ってるようなものだと思うが…もしかして。

 

「射命丸さん…侵入者が来たりとか騒がしくなる事、期待してます?」

「……あんたが知る事じゃないわ」

 

 素っ気なくそう返し、顔を俺から逸らす射命丸。

 

 ちなみに質問された瞬間、一瞬だけど彼女の目が揺らいでいたのが見えた。図星かな。

 

「それはそうと、そろそろ昼餉の時間だから集会所に行くわよ」

 

 そう言えば、もうそんな時間になるのか。

 確かにそれなりに腹も減っていたところだし、ここら辺で飯が食えるというのなら有難い。是非いただくとしようか。

 

 しかし…集会所?食堂とかじゃなくてか?

 

「集会所?なんでまたそこに?」

「巡回兵用に昼餉を支給してくれてるのよ。いいから大人しく付いてきなさい」

「はいはい」

 

 先行して空を飛びだした射命丸に続き、俺は地面を蹴って空を跳び、彼女についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 集会所は山の中腹辺りに位置していた。建物の造りは目測で見てもそれなりの大きさを誇っており、歴史を感じさせる古めかしさを漂わせていた。

 射命丸曰く、この他にも集会所は何ヶ所か存在しているらしく中でも此処は謂わばセントラル的な場所…大集会所と言った方が分かりやすくなるだろうか。そんな場所だそうだ。

 

 その集会所に入り、少しばかり歩いた頃。

 

 射命丸の案内によって連れてこられた一室は、大企業の社員食堂をイメージさせられるほどの広々としたスペースだった。

 中には数十人の天狗たちがおり、テーブルに座って食事をしながらお喋りをしていたり、膳を両手に持ちながらどこに座ろうかと並び歩く同僚と話し合っていたりと、明るく賑わいでいた。

 

「ここが食堂よ。早く腹ごしらえを済ませるわよ」

「了解」

 

 入り口に立っていても腹は満たされることは無い、それは当然だ。

 射命丸は傍らに重ねて置かれているお盆を一枚取ると、料理の盛られた器が並べられているテーブルに歩いて行った。

 

 なるほど、どうやらあそこから自分の食べたい料理を好きな量だけ取っていけばいいらしい。まるでバイキングだ…というかまんまバイキングだな。

 では、俺も行くとしようか。

 

 実際に料理を目の当たりにすると…これは中々…。

 

「(天狗が料理好きって話、聞いたことないんだけどな。それにしても…美味そうだ)」

 

 ちょうど出来立てが来た頃合いだったのだろう、温かい料理には殆ど湯気が立っており、良い匂いがそこかしこに拡がっている。

 基本的には山菜が食材の中心のようだが、お浸しに炒め物、加えて天ぷらとバリエーションが実に豊富だ。

 更には野菜が多く入った煮物に焼き魚も揃っており、加えて豪勢に盛り付けされた猪肉のステーキがドン、と大皿に在る。これには思わず喉が鳴ってしまう。

 ついでに腹の虫も。

 

「(ま、適当にっと)」

 

 俺は近くに置いてあった菜箸を使い、何種類か料理を更に乗せ始める。

 それぞれの料理の味を堪能するためにも大目に取っておきたい気持ちはあるが、俺の今の立場は理解しているつもりだから、その様な事は決してできない。

 どの皿も、少ないな、とは感じない程度に量を残しつつ取り皿に料理をよそい終えた俺は、先に行っていた射命丸に追いついた。

 

「あら、速かったわね」

「そこまで多くとらなかったもので」

「あっそ…なら適当に座るとしましょう」

 

 興味なさげに会話を断った射命丸は、そのまま歩き出す。彼女の進行方向を見てみると、奥の方に空いたスペースがある事が確認できたため、恐らくそこに向かうのだろう。

 俺も彼女に続いていく。

 

 すると、移動中に俺の耳に声が届く。

 

「ねぇ、あれが昨日連絡にあった……」

「ええ…今日から暫く此処で働く人間よ…」

 

 声は俺に宛てられたものではない。天狗間でのヒソヒソ話だった。

 

「…生意気な顔だな…自分の立場分かってんのか…?」

「どうだか……人間風情だし…」

「…そもそも、なんで天魔様はあんな人間を……」

 

 時には俺にも聞こえるくらいの声量で語られる、俺を話題とした内緒話が食堂内に広がり出す。

 そこから先ほどまでの賑やかで明るい雰囲気から一変。不穏とまでは言わないが、何とも言えない微妙な空気が満ち出すようになっていた。

 話題の的となっている俺は特に居心地が悪い。やたら視線が掛かってきているのが気になるし、嫌味が良く聞こえる音量で話している奴もいるので尚更だ。

 

 俺は表面上では何ら気にしないと言ったそぶりで、纏わりつく嫌な空気を振り払うと先に席に着いた射命丸の対面に膳を置き、席に座る。

 

「…まぁ、今のあんたの立場だったらこうなる事は薄々分かってたけどね。あんたもさっさと慣れた方が今後の為よ」

「…そうだな」

 

 射命丸の言うとおりだ。

 癪に障る空気ではあるが、俺がどう感じようとこの雰囲気が変わることは無い。侮辱の籠った視線が減る事は決してない。

 ならば、少しでも嫌な気持ちが軽くなるようにこの雰囲気に慣れていくしかない。時間こそ掛かるものの、それが一番確実だろうから。

 

 まぁ、どちらにせよ長居はしたくないから早めに食事を済ませよう。

 

 

 

「あっれ~?もしかして此処にいるのって最近噂になってる人間ちゃんじゃねぇ?」

 

 軽薄な調子をも思わせる男性の声。

 声は後ろの方から聞こえてくるが、振り向く気にはなれなかったので姿までは分からない…が、チャラそうな奴だと判別できる。

 

「茂武(もぶ)さーん、こんなひょろっちい奴に声掛けちゃダメっすよー。茂武さんの威厳が減っちゃうじゃないっすかぁ」

「バッカお前。これは周りから蔑まれて嫌な思いをしてる寂しい人間ちゃんに、激励の言葉を掛けようとする俺様の寛大な優しさだろうがよぉ」

 

 しかもウザい系キャラと来たか。それも取り巻きと一緒になって対象の人物をおちょくるタイプの。随分と小物くさい奴だ。

 

「……ハァ、メンドい奴が」

 

 対面に座っている射命丸が、鬱陶しそうに顰めた面で重いため息をつく。随分と嫌そうだ。

 というか同じ天狗でもこの思われようって、こいつら相当人望が無いのでは…。いや、良いと思う方が可笑しいか。

 

「よぉ文ちゃーん。久しぶりに会ったけど元気にしてた~?」

「…どうも。元気ですよ」

「いや~、俺様ってば階級上がっちゃって文ちゃんと中々会えなくなってさぁ、寂しくしてないかな~って思って声掛けたのよ?」

「…はあ」

 

 射命丸の隠された嫌悪感を察する事も無いまま、茂武と呼ばれている男は彼女から俺の方へと視線を向き直す。そのままこっちを向いてくれなかった方が気が楽だったんだが。

 

「おぅ人間ちゃんよ。今日から仕事始めたそうだけど調子の方はどうよ、ええ?」

「…それなりには」

「ふ~ん、まぁ人間程度じゃ出来る範囲もたかが知れてるし、期待なんてしてないから安心して頑張ってくれてたまえっ」

「…どうも」

 

 そこまで話したところで、妙にノリノリだった茂武の表情が少し強張った。こちらに対して何かしら感じたのだろうか、俺を睨むように見つめてくる。

 

「……けっ、つまんねー反応しやがって」

「…………」

 

 近くの俺は愚か、周りも聞こえそうにないほどの声量でそう呟いた。恐らく正真正銘の独り言といったところだろう。

 不機嫌そうに顔を顰めたまま、茂武は踵を返してその場を去り始めた。

 

「冷めちまったなー。おい子分、とっとと行くぜ」

「あ、へい!」

 

 やれやれ、漸く離れてくれるみたいだな。折角の食事だというのに絡まれてしまって中々手を付けることが出来なかった。

 けど、これで漸く何にも案ずることなく飯を食うことが出来そうである。

 

 …っと、その前にだ。

 

 

 

 

 

「っ……」

「……」

 

 木製の容器。

 水が器に盛られていたそれが、突如俺の頭上に降りかかってきたのだ。

 ぶつかる直前にキャッチをしたので、直撃する事は無かったが。

 

 首を大して動かさず、周囲を視線だけで見渡してみる。

 恐らく…というより確実にさっきの男が投げて来た物だろう、投球後のポーズをとっているのがバレバレである。

 なんかふざけた笑い方をしながら去っていったが…まぁいいや、気にしないでおこう。

 

 しかし失敗したな…。一応零れない様に取ろうとしたつもりだけど、流石に無理があったみたいだ。半分くらいは零れて頭から水を被ってしまった。

 

「カッコがつかないわね」

「ほっといてくださいよ」

「…まぁ、災難だったわね。あんなのに絡まれるなんて」

 

 射命丸からほんの僅かな同情を含む視線が送られてくる。

 今までの素っ気ない態度を思い返すと意外な反応だったが、確かにああいうのに絡まれたら同情を持つのも無理はないか。

 

 まぁいいや、休憩時間も大分減ってきているだろうし、早いところ飯を済ませてしまわないと。幸運にも飯の方には水がかかっていないからこのまま食べても問題なさそうだし。

 

「ってあんた、食べるより前に濡れた体を拭いてから……あや?」

 

 まぁ、濡れてる程度なんて『熱』を操ればすぐに乾かせるから。

 

 怪訝そうに頭上に?マークを浮かべている射命丸に構わず、俺は食事を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 食事も済ませ、午後の業務に突入。

 

 ここらで気合を入れ直して仕事に励もう!という気概も悪くは無いのだが…。

 午前とやる事が大して変わらないのだから、いかんせんそう言う気にはなれそうにない。変わった事といったら、せいぜい最後に一日の報告を上司にするくらいだからな。

 

 というわけで早速、侵入者がいないか見張り見張り。

 

「平和だからって気を抜くんじゃないわよ、人間。巡回して見張るだけの仕事も満足に出来ないんじゃこの先やってけないわよ」

 

 何故気を抜いてたのがバレたし。

 

「…それにしても、あんたも存外図太い神経してるのね」

「というと?」

「あんた、アレに目を付けられてるのよ?まさか今日だけであんなことが終わったと思ってないでしょうね?」

 

 あー…確かに。

 射命丸の言うとおり、あの茂武とかいう男、今日一回絡んできただけでは終わる筈も無さそうな雰囲気をしていた。恐らくこの先も面倒な事をしてくるのだろう。

 それに俺…というより人間そのものに良い印象を抱いていない連中も居る筈だ。あの男に限らず、他の奴もちょっかいを出してくる可能性も十分あり得るだろう。

 

 まぁでも、それはそれだ。

 今からそんなことを考えていたってどうしようもないだろうし、重い事考えて生活をしていては身が持たない。何かトラブルが起きたらその都度どうにかしていけばいい話だ。

 

「…まぁ、なんとかしていくって事で」

「無計画ね」

「否定はしないですけどね」

「出来る材料が無いだけでしょ。それよりも業務に戻るわよ」

 

 はいはい。

 

 それじゃ、真面目に巡回していくとしようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局暇な一日だった」

「良いじゃない、厄介事が無くて」

 

 

――終

 





ここで清く正しい射命丸さん登場です。まだその名乗りをすることはありませんが。

椛「あの人が出るという事は、私も近いうちに出るという事ですね!」

残念ながら出ません。今回は射命丸だけです。

満希「これも全てたいおって奴の仕業なんだ」
椛「なんだって!それは本当かい!?」

それでは、次回もお楽しみに!
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