東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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Q.行間の区別の仕方は?

A.1行……動作の主体が変わる時、主人公の感情オンリーの描写をする時。
 3行……若干の時間経過、次台詞の印象付け。
 5行……それなりの時間経過、シリアス描写の為に次文を印象付ける間。
 10行……大幅な時間経過。
 10行+ライン……大幅な時間経過&場所の移動。


まぁ、適当なんですけどね…



第26話 天・狗・生・活1

 

 二日目。

 

 初勤務が何事も無く終わってから翌日。

 

 俺は先日と同様の時間帯で行動を起こし、先日仕事を行った場所へと足を運ぶ。

 というのも、今日から仕事を始める時は此処からだと射命丸に指示されたからだ。まぁ向こうが一々俺の家に迎えに行くというのも億劫だろうしな。

 

 到着する時には既に射命丸はそこにおり、向こうもこちらに気付いてきた。

 

「ああ、来たわね。それじゃあさっさと行くわよ」

「了解」

 

 随分と事務的で素っ気ない会話が一通り済まされると、俺たちは決められたエリアを巡回し始める。

 

 勤務初日から薄々感じていた事だが、巡回というのは実に退屈なものだ。

 以前天魔も言っていた事だが、この天狗の山は付近の村では不可侵の地として有名だそうだ。加えてそれを知ったうえで破るものならば、斬られても文句は言えないとの事。

 そんな場所に毎日侵入者が来るなど有り得た話ではないとは分かっている。

 

 分かってはいるんだけども…。

 

「暇なものはしょうがないと思うんだよな」

「二日目で何言ってんのよ。いいからもっと周囲に気を配りなさい」

「あっはい」

 

 厳しい。

 

「でも気を配れとは言っても、実際侵入者もいないわけですしどう気を配れと言うんですかね。いつまでも気ぃ張ってたって疲れるでしょう」

「確かに常時気を張るなんて疲れるわね。けど今あんたに課せられてるのはその侵入が発生しないようにするためなんだから、ちゃんと目を光らせておきなさいよ」

「嫌だなー…って言ったら?」

「あんたの仕事ぶりを報告するのも私の仕事だというのを、忘れないようにね」

 

 つまり…真面目に取り組まないとチクってやるぞ、という事か。中々に狡いを考えてきおる。

 まぁ俺としてもチクられて面倒な事になるのはごめんだし、しばらくは下手な事はしないでおこうか。

 

「どうやら理解したみたいね。なら気を取り直して巡回の続きをするわよ」

 

 俺の表情から心情を察したのだろうか、射命丸はそう言うと俺の前を歩き始めた。

 了解、とだけ言葉にして俺はその背中を追いかけだす。

 

 それにしても…射命丸ってこんな真面目なキャラだっけ?

 この間質問した時に、退屈な時間は好きじゃないような反応をしたから、てっきりこういう巡回も面倒くさがるものかと思っていたんだが…。話を聞く限りだと使命感が強いって印象だな。

 まぁ、侵入者を監視するにはそういうのはおあつらえ向きって事か。

 

 

 

「しっかり警戒しておくのよー。その分私の負担が軽くなって楽が出来るから」

 

 それが理由かい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 午前の哨戒も何事も無く終わり、昼休憩と食事を挟んで午後の部に突入する。

 相変わらず食事中に降りかかる周囲からの視線には多少落ち着かなかった。射命丸の言うとおり、早く慣れておきたいもんだ。

 けどこっちが早く慣れても向こうが慣れてくれないと根本的な雰囲気が治らないというのがネックだ、あの様子じゃ一週間あっても足りないような気がする。せめてひと月は必要だろうか…けど天狗の人間に対する態度や扱いは相当の物みたいだしそれだけの期間でイケるのか微妙な所だが…。

 

 っと、日数でちょっと思い出したけど少し疑問があったんだ。

 折角だし、聞いておこうか。

 

「あのー、射命丸さん」

「なによ?」

「俺がこうしてるのって、実際あとどれくらいあるんですか?」

 

 勤務期間。

 それが俺が射命丸に尋ねた内容だ。

 よくよく考えてみると、俺がこうやっているのはあくまで負傷者の代理。その負傷者が治り、仕事に復帰するまでが俺の勤務期間に該当する。だが、その負傷者の全治がいつになるのかがハッキリしていなかったような気がするので、こうして尋ねる形になったのだ。

 

 さて、どれくらいになるだろうかな。

 

「一週間だそうよ」

「みじかっ!?」

 

 一週間て。

 自分でやっておいてなんだが、あの攻撃って一週間程度じゃ全快しないくらいに威力調整してあったんだけどな。や、急所は普通に外してあるけど。

 

「あんまり妖怪嘗めるんじゃないわよ。人体に相当影響する部位が欠損、とかでもない限り外傷の治りは大体早いものよ。それこそあんたも急所じゃない場所に攻撃してたみたいだし、今回はその程度で済んだのよ」

 

 なるほど。

 つまり急所に当ててたり更に威力を上げて攻撃をしていたりしたら、もっと長い間働くことになっていたのか…危ない危ない…。つくづく、手加減してて良かったと思っている。

 それにしても、一週間だけで住むなんてかなりラッキーなことを聞けたな。半年…長くて数か月くらい働くことも予想してたけど、これは想像以上の短期間だ。

 かれこれ百年以上生きてる俺にとって一週間なんて短いのなんの、といった具合だ。これなら楽に終わりそうだな。

 

 自然と、俺の表情には僅かな笑みが浮かび上がっていた事を自覚する。

 

「…随分と嬉しそうね。まぁ残念がってもこちらとしては迷惑だけど」

 

 ジト目は止めて、ジト目は。

 

 まぁ確かに嬉しいけどさ。あんまり乗り気になれるような環境でも仕事でもないし、早く帰れるのならそれに越したことは無いだろう。

 そのためにも、先ずは今日の巡回を終わらせてしまわないとな。

 

 

 

 などと、俺たちがそうやっている話している所に…。

 

「あ、射命丸さん。お疲れ様です!」

 

 俺たちと同じで同じ巡回の仕事を行っている天狗の女性が二人、朗らかな笑顔で射命丸に向かって挨拶をして来た。

 初見の人からすれば、何故自分たちの巡回するエリアで他の巡回兵と会えるのか?という疑問が出てくるかもしれない。が、これにも理由はある。

 

 俺も射命丸から聞いた話だが、どうやら巡回の範囲は綿密に区分けされたものではなく、あくまである地点から一定半径の円内とされている。そしてその範囲はすぐ隣のエリアを担当する者の範囲と被る場合もあるのだとか。

 なので自分の範囲の一番外側を巡回していると、時折こうやって他の者と接触することが出来るのだそうだ。

 

「あら、お疲れ様。何か変わった様子はない?」

「いいえ、今のところこれといって問題は発生していません!至って平和なものですよ!」

「そう、分かったわ。けど油断はしちゃダメよ。いつ侵入者がやって来るか分からないんだから、警戒心は常に心に抱いておくようにね」

「「はい!」」

 

 つまりこの二人は、俺たちの隣で巡回を行っている天狗という事になるわけだ。

 

 それにしても挨拶してきた二人…言葉を交わしただけでも随分と嬉しそうだな。なんかただ同業者と話すような雰囲気ではない感じがする、これは…。

 

「あ、そうだ。もしよろしければ今度、お時間がある時に私と碁を打っていただけませんか?」

「あ、抜け駆けはずるい!射命丸さん、私ともお願いします!」

「はいはい、それじゃあいつか時間作っておくから今はお仕事頑張るようにね」

「はい!」

「それじゃあ射命丸さん、また今度!」

 

 二人の女性天狗は明るい笑顔のまま、嬉々とした様子でその場を飛び去って行った。去り際に二人して、やった、とか、楽しみだね、といった会話が小さく耳に届いた。

 

 …なるほどな。

 

「人気者ですね、射命丸さんって」

 

 羨望・尊敬。

 3人が喋っている光景を傍から見ていた俺は、彼女たちからそういった感情をから感じることが出来た。

 向こうの方が新入りなのか、それとも射命丸の方が経歴が長いのかは流石に見ただけでは分からないが…同僚にああも敬意を示されるとは中々だな。もしかして射命丸って、意外と凄い人物なのか?

 

「人気者、ね……私としてはどうでもいいんだけどね」

 

 と、関心なさげにそう呟く射命丸。

 

 ふうん、人気云々はどうでもいい、と来たか。

 それまた何故だろうか。

 

「周りからどう思われようと、それが自分にどう影響を及ぼすって言うのよ。そんな周囲の評価をいちいち気に留める程、私も物好きじゃないし。そんな事してるヒマがあるのなら…私は自由にやっていくわ」

 

 自由に?

 

「ええ、今の私は何が本当にやりたい事なのか分からない…少なくとも、今の仕事じゃないのは確かよ」

 

 ふむ。言われてみれば、彼女の仕事の取り組みぶりを見る限り、こういったお堅い仕事はあまり好きじゃないっぽかったしな。さっきも俺に押し付けようとしてたし。

 彼女自身、何がやりたい事なのかはまだ見えていないと言っている。それが一体何なのか、出会って数日の俺では到底分かるものではないだろう。

 しかし…。

 

「けど、いつか絶対に自分のやりたい事を見つけてみせる。」

 

 彼女ならきっといつか、その答えを見つけ出すことが出来る。

 俺に対して見せかけてきた、小さいながらも確かな笑みを見ると、なんとなく程度だがそんな気がするのだ。

 

「っ…無駄話が過ぎたわ。早く行くわよ」

 

 微笑んだのも束の間で、自分が笑っている事に気付いた射命丸はハッとした表情を一瞬だけ見せると、直ぐにいつも通りの素っ気ない顔つきとなった。

 そして踵をクルリと返して俺から顔を反らすと、そのまま先に進んでいった。

 ほんの僅かだけど、彼女の顔が赤らみを帯びているのが見えた気がした。

 

 

 

 

 

 ほんの少しだけ。

 そう、ほんの少しだけど、彼女のことが分かったかもしれない。

 

 

 

 

 

「という割には、あの子たちにさっき時間を作ってあげるって…」

「…うっさい」

 

 気難しい風だこと…

 

 

 

――終

 

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