東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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満希「前回、【天狗山の激闘編】は合計13話だと言ったな」
???「そ、そうだ大佐…」
満希「あれは嘘だ。あと誰が大佐だ」(パッ)

(次章の繋ぎとして今話を書くことになったため、合計14話になりました)

???「うわあぁぁぁぁぁ……」
満希「…という訳で本編自体に影響の無い報告なので、あまり深く気にせず楽しんでほしい」
???「……イ゛ェアアアア!!」
満希「浮上してきた!?」

以上、呪いの館を久々に見た時に思いついた果てしなくどうでもいいネタでした。



第36話 旅・ノ・小・話

 天狗の山での勤務を終え、山を出てから5日後。

 

 目的地を諏訪子たちの元と決めた俺は諏訪の国を目指して、旅を始めている。

 俺が帰る理由は、以前説明したとおりだ。天狗の山の騒動で唐突に手に入れた新しい力―モード・カグツチ―の力をものにするため。そして他の神具…コノハナサクヤの腕輪とアマテラスさんのネックレス、この二つもカグツチの指輪と同様の効果がある事を確認し、あわよくばその力を発揮できるようにするためだ。

 

 先の件でも判明している事だが、この神具に秘めた力は非常に強力なものだ。通常の姿で苦戦を強いられていた鬼とも圧倒した戦いを繰り広げられるほど、全体の力が急増していた。それほどの力を与えてくれるのだ、この指輪は。

 改めて考えると、能力を持っているだけの人間が妖怪最強種の鬼を打ち破るというのはかなりすごい話だ。

 

 これからの人生でも、きっと俺は強い力を必要とする時がやって来るだろう。誰かを守るためにはそれ相応の強さを持っていなければならない。どんなに守りたいと願っても、強くなければ結局は守れないのだから。

 

 そのためにも、諏訪子のとこに帰ったら残りの神具も扱えるようにしておかないといけない。これから出会っていく人たちの力となる為に。そして、俺自身の為に。

 

 

 

 では、そろそろ現状を話しておくとしよう。

 

 天狗の山から諏訪子の国までは幾分か距離がある。新幹線や飛行機などの交通手段が無いこの時代で考えると、一日やそこらで行ける長さではない。徒歩で行くとなると、約2週間は掛かる程の開きがあるのだ。

 

 当然、そんな遠出を休み無しで行くような無謀な行動はとるわけがない。疲労でぶっ倒れてその間に妖怪に襲われでもしたらシャレにもならないからだ。

 加えて野宿をするにしても、この時代の野良妖怪は活発な動きを見せている。夜眠る時は安全が確保できる場所に寝床を構える必要があるのだが、旅の中では常にそんな場所が見つかるとは限らない。一人旅と言うのは、それほどまでに大変なのだ。

 

 だからこそ…………。

 

 

 

 

 

「ほら旅人さんや、お茶が入りましたよ」

「ああ、これはこれはどうも……」

 

 

 

 通り掛かった村でまったりお茶を飲んでも、仕方のない事だろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 という訳で俺は現在、旅の疲労を取るために通りがかりの村にお邪魔して村人からお茶を頂いている所である。

 

 …ん?ゆっくりしすぎなんじゃないかって?

 良いんだよこれ位。休むときはしっかり休んでおかないと、後から支障をきたすからかもしれないからな。貰えるものもしっかり貰っておかなければ。

 

「それとこれはお茶請けに作ってみたけど、良かったら食べておくれよ」

「いやぁ、何から何まですみませんね」

 

 貰っとけ貰っとけー。こんなに美味しそうな漬物、遠慮したら損だろう。

 老夫婦の厚意によって頂いた、キュウリの漬物をパクリと一口。程よい味付けとポリポリとした食感、天狗の里のものよりも風味があって非常に美味い。その後にお茶を飲んでみると、これがまた良いんだよ。

 

 …と、ここまでの流れを見ている者にとっては、まるで俺が客人であることを利用して美味しい目に遭っていると思うような構図であろう。

 だがしかし、俺はそんな卑劣な行動に移るほど落ちぶれてはいない。

 

「それにしても旅人さん、若いのによぉまぁ稲仕事の事に詳しいじゃないかい。旅人さんの教えてくれた通りにやってみたら、作業がうんと楽になったよ」

「なに、これでも人並み以上に人生重ねてるもんでね。それなりに知識はあると自負してるよ」

「ほほほ、そうかい」

 

 そう、平和的なギブアンドテイクの精神だ。

 

 この村は周辺の山々の配置の都合から気候にも恵まれており、土壌の品質や水質もレベルが高い事が分かった。環境においては実に優秀な土地と言えよう。

 

 だがそこには一つの問題があった。それは環境的問題ではなく、そこに住む人たち自体にこそあった。詰まる話が、ここの住民たちは環境に見合った農耕技術を持ち合わせていなかったのだ。決して技術が悪いとかではなく、優良な土地を最大限まで使いゆく知識、及び技術が備わっていなかっただけである。

 

 俺はそこに狙いをつけ、各地を廻った旅人として村人たちに効率的な農耕作業のやり方等をアドバイスとして送り、試しに行わせたのだ。

 結果は良好。住民たちは余所からの知識を加えた事により更なる効率化を見出し、作業スピードを格段に上げることを成し遂げたのである。こういう様を見ていると、教えた甲斐があるという物だ。

 

 といった経緯があり、俺は現在感謝の意味を込めたおもてなしとして村の自慢の漬物を振る舞ってもらっているのである。

 

「おぉ旅のお方や、ここにおられたか」

 

 俺がまったりしていると、お婆さんの亭主さんが鍬を片手にこちらに笑顔を向けて歩み寄ってきた。

 このご老人、俺のアドバイスを先ほど聴いて早速実践しようと言いだし、さっきまで農作業に精を出していた所である。表情から見るに、どうやら良い成果を得られたみたいだ。

 

「やぁお爺さん、俺の助言は役に立ったかな?」

 

 確認ついでに会話の切り出しとして俺はそう尋ねた。

 

 尋ねられたおじいさんは柔和な笑みを浮かべたまま、その口をゆっくりと開く。

 

「うむうむ、それはもう大助かりじゃったよ。お前さんの教えてくれた通りに身体を動かしてみたらこれがまた身体への負担がグッと減っての……これくらい余裕ならお隣の畑も手伝えそうじゃわい」

「ははは、それは何より」

 

 元気ハツラツと言わんばかりに明朗快活なお爺さんの姿を温かい目で見守りつつ、俺は辛く笑ってみせると手元の湯呑に入ったお茶を飲む。

 

 今回俺が老夫婦に教えた農作業におけるコツ。教える前に約束していたのだが、教わった事は自分たちだけで独占しようとせず、皆にもちゃんと教えてやってほしいと頼んでおいた。

 会話をする限りでは、余所の技術を独り占めしようとする精神は持ち合わせていない様なので安心した。これならば近いうちに村全体の農作業率は向上してくれる筈だろう。

 

 ほどよい暖かさのお茶が喉に流れゆく感覚を覚えながら、そう思う俺。

 

 

 

 そんな時、お婆さんが……――。

 

 

 「あっ」

 

 ――と、小さく声を放った。

 

 一瞬、なにか不味い事が起こったのかとも考えられた。だが、顔色の変化や焦燥などの様子も見られなかったため、緊急の物事だという線はすぐに消えて無くなった。折角のまったりタイムだというのに、妖怪の侵攻があっては堪ったもんじゃない。

 様子からして大方、何かを思い出したといったところだろうか。

 

「そう言えば……ついさっき聞いた不思議な話があってね」

 

 俺の読みどころはビンゴだった。

 

 先に興味を示しておばあさんの話を聞こうと耳を傾けているお爺さんに続き、俺も口を閉ざして彼女の話を聞く姿勢に入る。

 

「このお漬物にしたキュウリなんだけどねぇ、お隣さんによると河童から急にもらったそうなのよ」

「河童?」

「ええ、この村の近くの河川には河童が集落を立てて住み着いてるんだけどね、なんでも特に何かしたわけでもないのに沢山のキュウリをもらったそうなのよぉ」

 

 そう言って語るお婆さんの話を聞いた俺とお爺さんは、揃って関心の声を漏らした。

 

 そう言えば、河童は人間の事を盟友として見ている節があるって以前に聞いたことがあるな。もしかすると、今回の急な貢ぎ物はそれが関係しているのだろうか。

 しかしその割には、今の今まで河童が人間に対して友好的な行為を行ったという話は聴いたことが無い。お婆さんが不思議だと言ったりお爺さんの反応を見る限りでも、河童が人間に対して施しを行ったのは件の話が最初だと考えられる。

 

 はて、それならいつの間に盟友と扱われるようになったのだろうか。

 

「ほうほう、そりゃ不思議な話じゃの。しかしどうして」

「キュウリをもらった人が直接河童に尋ねたらしいんだけどね、なんでも最近、妖怪が住んでる山で襲われていた河童を救った人がいたんですって」

 

 ……ん?

 

「どう言う事じゃ?妖怪の住んでる山だというのに、どうして同種の河童が襲われているんじゃ?」

「さぁ……それを言ったら、妖怪の山に人間がいるって話も不思議じゃありませんか?」

「ふむ…それもそうじゃの」

 

 

 

 

 

 …これ、もしかしなくても俺の事だよね。

 

 

 

「おお、そうじゃ思い出した。実はわしも噂話を耳にしているんじゃよ」

「あら、そうなんですか?」

 

 どうやら、お爺さんの方も噂話を持っているらしい。お婆さんの話を聞いて刺激されたのか、話したそうにしている。

 

 …なんだろうか、嫌な予感がするんだけど。

 

「実はつい先日村に立ち寄った行商人が話してくれたんじゃがの……なんでもあの鬼が人間と宝物を賭けて戦うという事を始めだしたそうじゃ」

「あらあら、それは怖いですね…けどどうしてまた急に?」

「さぁのぉ…じゃが噂によると、つい最近鬼の一人が人間によって倒されたという話があっての、それを聞いた鬼の仲間が人間に興味を持ったそうじゃよ」

 

 ……ん?

 

「人間があの鬼を倒す?とても信じられた話じゃないですけどねぇ……」

「まぁ、あくまで噂じゃからの。真偽については実際見てみないと分からないわい」

 

 

 

 

 

 ……これ、もしかしなくても俺の事だよね……ってもういいわ!なんで同じ件を二度もやらなくちゃならないんだよ!見てて飽きるわ!

 

 というか、え、何?いつの間に妖怪たちの動きがそこまで変わり出してるの?まさか俺が天狗の山にたった7日住み着いただけで、大々的にメジャーな2つの種族の、人間に対する見方が大きく変わってるんだけど。

 しかも2つとも俺が元々いた時代まで語り継がれてる話だし……いや、100年以上も前の事だからあんまりハッキリと覚えてないけど。そもそもの話、後世まで伝えられる河童&鬼と人間の関係性って、もしかして俺のやったことが原因で後世まで続くことになるって事を指してるんだよな、これって。

 

 ……何と言うか、色々とやらかした感が湧きあがってくるんだけど。

 

「ところで旅人さんは、旅の途中で現場に居合わせたりしなかったかの?」

「……い、いや~……居合わせてはいない、ですかね~」

「まったくお爺さんってば、いくら旅のお方だからといって、そんなことあるわけないじゃないですか」

「それもそうじゃの、はっはっは!」

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……この漬物、美味しいなー。ポリポリ。

 

 

――終

 




 というわけで、急遽作った【天狗山の激闘編】の後日談的な回でした。

 せっかく天狗、鬼、河童の3種族を出したのですから、今後のキャラとのコンタクトで役に立ちそうな素材を作っておこうという思いの元、作られました。ギャグが後半しかない、のんびりメインの話となりましたが。

 さて、次回からは時代を一気に進めるとともに第3章へと突入していきます。2章は神や妖怪と共にいる事がメインでしたが、次章は人間との関わりがメインになってくると思われます。

 ではここから、ちょっとした予告を。



―――――――――――――――

――1000年の時を重ね、一人の少年は新たなるステージへと足を踏みこむ……。

「さぁて……これからどうやっていくかな」



――その女性は死を拒んだ。

「わかったぞ!お主……仙人じゃな!」
「ちげー」

――なぜ人は皆、死ぬ運命を背負わなければならないのだろうか。死さえなければ、私は永久に国を安定へと導いていけるというのに……と。

「あぁちくしょう!布都の奴、また飾りの仏像を焼いてやがった!あれだけ2度と焼くなって釘を刺しておいたのに!」
「おぉふ……仏の焼け姿が生々しい」

――そして彼女は、禁忌にも近い秘術に近づいた。

「誰かを助けたいという貴方の強い思い……擁護欲とも言いますが、貴方のそれは人一倍に重く、厚い」
「……急に何を――」
「しかし私には理解できた。貴方の欲は完全なる白ではない……虚飾の黒が混じった、鉛色に寄りかかりし偽りある願いだと」
「……っ!!」

――『道教』、妖怪をも超越する力を齎す禁忌の道。誰の眼にも届かない場所で、彼女はそれに手を染めていく。

「貴方といい豊聡耳様といい、本当に私を退屈させない……ふふ、やっぱり力は見せないと損よね」
「ったく……性悪染みた事を」
「忘れたの?だって私……邪仙だもの」

――仏教において治められた時世。一人の異国者の囁きが、新たなる震撼を呼び起こす。

『第3章―約束―』【仏教動乱編】



「どんなに時間が経っても……次に会える時も、私の事を―――」



――――――――――――――――

 以上、ノリで作った予告編でした。次々回の【竹取物語編】の予告はまたいつの日か書こうと考えています。
 それでは、次回もお楽しみに!

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