はい、超どうでもいい話でした。でも主題歌的な設定があるとなんか(ry
布都の仏像恐怖症克服という名目で遊び……特訓を行ってから更に一週間。
ここ数日は程よく忙しくさせてもらっていた何でも屋だが、今日はその反動がやって来たのか、普段よりお客さんの数が少なかった。既に数日の好景気で収入も得られているし、偶にはこういう日があってもいいだろうと思う。いつもバリバリ働いていられるほどワーカーホリックでもないし、俺。
しかし、仕事が無いというのもそれはそれで……ヒマである。
「う~む……」
自作の背もたれ付の椅子に背中を預けながら、俺は退屈な時間に飽き飽きとして唸ってしまう。この椅子、実はお気に入りである。
先月も薄くは感じていた事だが、やはり暇な時間を潰す事が難しい。
他国との交流が盛んとは言えない今のご時世、倭国の文化が強すぎて娯楽面が全くと言っていいほど豊富さが無い。そもそも、そういう娯楽は貴族に向けられてものばかりだから、一般庶民である俺ではその辺りに手を出すことは金銭的にも身分的にも難しい。なんとも世知辛い。
物とか文化が豊かになるのは他国との交流が強くなってからだから……暫くは暇つぶしを探すしかないという事か。
よし、なら今度織物屋で布を買って服作りにチャレンジしてみるか。どうせこんな職務体制だから時間は十分あるし、趣味作りも兼ねて取り組んでみるのも悪くないだろ。
そうなると服だけじゃなくて、カーペットとかカーテンとかも作ってみたくなるな。あれば冬の寒さも幾分かマシになるかもしれないし……能力使えば無意味か。まぁインテリアは大事だよな。後は材料に目処が付いたらベッドとか作って見ても良いかもな。
……あれ、結構エンジョイできそうじゃね?
そうなると、まずは外に出て道具と材料を揃えて来ないと行けないだろう。
「……どこの店で布を買えばいいんだろうな」
しかし、普段はその手の店を利用する事が無いため、店の場所がイマイチ頭に浮かんでこない。店の前は通りかかって入ると思うのだが、如何せん関わりが無いと足を運ぶ機会も無くなり、印象から外れてしまう。
こうなると、虱潰しに探すしかないか。
「それならここから正門方向に歩いて3分もすれば、都内でも定番の染物屋が経ってるわね」
「そうなのか」
それは良い事を聞いた。おかげで都内をうろうろさ迷い歩くことをせずに済みそうである。
軽く予算を見繕ったら、少し覗いてみようか。
「それで、布なんて買ってどうするのかしら?」
「そうだなぁ……先ずは簡単にカーペットとかマットとか作ってみるか」
「かぁぺっと?まっと?……って何?」
あぁ、しまった。独り言の気分が抜け切れてなかったのか、外来語の意味が伝わらなかったみたいだ。
「あぁ、まずカーペットっていうのはな……いや、その前に」
誰、この女の人。
―――――――――――――――――――
「という訳で、不法侵入者を捕まえたんで後はよろしく」
「は、はぁ」
法隆寺にて。
俺は、突然部屋に現れた謎の女性の首根っこを引っ掴んで神子の目の前に差し出した。玄関口や依頼の受付場所までなら勝手に入るのは許容しているが、プライベートスペースにまで入り込まれるのは許していないので、このような処置を取っている。
俺の家に潜り込んできた女性だが、パッと見20代辺りの年齢くらいだ。青い髪に高そうなかんざしを刺し、胸元の大きく開いたドレス調の服を着込んでいる。長らく生きているせいか誘惑的な光景が目の前にあってもあまり心が揺れ動かないのは、喜ぶべきことなのだろうか……。
若者にはちょっと刺激的と思えるそんな恰好をした女性は、俺にぶら下げられながらも、俺の方に顔を向けて頬を膨らませ、口を開く。
「だから不法侵入なんてしてないんだってばぁ、ちょっと話に聞いて興味があったから顔を見に来ただけじゃないの~」
「入り口から人が入る気配はしなかったぞ。それならどっから入って来たんだ?」
「壁から」
「侵入者どころか忍者だったかおめーさん」
「いだだだだ、頭部鷲掴みは勘弁してっ!というかニンジャって何!?」
余った腕で女性にアイアンクローをかましながら、俺は先ほどの発言に気になるところがあった。
確かに彼女は壁から部屋に入って来たと言っていた。だが新築であるあの家に人が入れるような古隙間があるとは到底考えられないし、そもそも無い。
彼女の言う事が本当ならば、俺と同じ能力持ちか。それとも何らかの法術を使ったか……。どちらにせよ、今ここで決定づけるのは些か早計と言えるだろう。
そんなことを考えていると、神子の方から『まぁまぁ』と言った具合に宥められたので、俺は彼女の顔を立てることにした。侵入者の女性の顔面から顔を離す。
俺の手が離れたことにより、女性は頬を擦りながら安堵の息を吐く。
「うぅ……いたいけな女の子に乱暴するなんてひどい人。おかげで傷物になっちゃったわ、くすん」
「泣くにしてももうちょっと感情入れないと、あからさまだぞ」
「あら、残念。男は女の涙に弱いって相場が決まってるんだけどねぇ」
俺が嘘泣きだと見抜いた途端、女性は泣き真似を止めケロリとした様子で立ち上がった。
「やれやれ……青娥殿、幾らなんでも前触れも無しに彼の元に現れても、無駄に混乱させるだけですよ。まぁその心配も無かったみたいですが」
「伊達に長生きしてないんでね。って、名前を知ってるって事は神子、アンタこの子と知り合いか何かか?」
「えぇ。彼女は霍 青娥(かく せいが)。西方の大陸からこの国に訪れてきた、仙道に通ずる者ですよ」
神子の紹介によって素性が知れた。この青髪の女性――霍 青娥という名前と種族についてだ。
確かに彼女の纏っている雰囲気……気とも呼ばれるのだが、それが人間のものとは一線を引いているように感じることが出来た。説明が難しいが、人間らしさが離れて孤高さや高尚さが引き出されているような感じだ。
この浮世離れな雰囲気に、神子の話の中にあった『仙道』という言葉。
実際に見たことは無いが、知識としての心当たりが一つだけあった。それを、口にしてみる。
「仙道……という事は、仙人か何かか?」
「ご名答♪これでも結構な時間を生きてるんだから、思う存分敬うと良いわよー」
「敬まれたいんならもうちょっと威厳をだな」
思った通り、彼女は仙人だった。
西方の大陸に彼女の名前の特徴性を考えると、やはり中国辺りと考えるのが妥当だろう。あの辺りの地域は仙人云々の話が良く出るところだから、恐らく彼女の出自はその辺だ。
それにしても、西方の仙人がまさか聖徳太子である神子と知り合いだったとは……また歴史の裏の事情を知らされたような感覚である。と言っても友好関係についてだけだが。
「で、その仙人さんが俺の家にわざわざやって来たんだ。一体どんな用件があったんだ?」
「いやね、少し前に太子殿から貴方の事を聞かされてどんな人物なのかなーって思ってたの。それから街でも貴方の話がチラホラと聞くことが出来たから余計に興味が湧いちゃって、どうせなら直接会った方が手っ取り早いかなーって事で、お邪魔させてもらっちゃった」
「……要約すると、別に用事は無かったと」
「そうとも言うわね~」
溜め息を吐いた。まさかこんな突拍子もない思いつきで、しかもあんな予測不可能な手段で出向いて来るとは思わなかったからだ。
せめて何か用事でもあれば、あの唐突な登場も許容できたんだが……用件も無しにあんな変な出入りをされては、こちらも複雑である。
「取り敢えず、ああいう出入りをされるとこっちの心臓に悪い。ちゃんと入り口があるんだから、今度からはそっちから入ってくれ。そっちなら用があろうがなかろうが歓迎するから」
「はーい。あっ、そうなると火急の用事があるなら壁から入っても良いってこと?」
訂正。二度と壁から出てくんな。
手厳しくそう言い告げると、青娥は『よよよ……』と悲しげな声をあげつつ、その場に泣き崩れた。どう見てもフリだが。
「何と言うか……青娥殿がご迷惑を掛けてしまい、すみません」
「いや、明らかに神子のせいじゃないから謝らなくていいさ。その言葉を言わせたいのは別にあるし」
「酷いわ……私はただ、誰にも縛られずに自由でいたいだけなのに」
「壁からニョッキリ出てくる自由があってたまるか。というか、あれも仙術の一種か?」
「あら、ひょっとして道教に興味が湧いた?」
「いや、生憎とその手の道は間に合ってる」
「それは残念」
そう言って不敵な笑みを見せつける青娥。先ほどから繰り出す言動のせいか、そう発言する彼女の表情には残念がっている様子が感じられない。
どうにもこういう掴み処のない者と相手をするのには慣れていないみたいだ。俺の周りの人物は、割と素直な面々ばかりだったからか。一番近い所で言うと……永琳か?けど彼女はどちらかというと、何枚も上手を重ねた達観さのようなものだろうが……。
「まぁなんにせよ……改めて宜しくお願いね、何でも屋さん」
「こちらこそ、仙人さん」
俺たちはそう言うと、互いの手を握って邂逅を果たした。
――終
ただの青娥との出会い話。4000文字にも至らない短さでした。
ぶっちゃけ、ていの良い話数稼ぎ……ゲフンゲフン。出会いの話は大事だから(震え声)