仕事の都合で引っ越しをしてからというもの、インターネットを使える環境が碌に整わず。かと言って仕事の方がゆとりを与えてくれるというわけでもなく、そのままずるずると……。
お、俺は悪くねぇ!落ち着いた状況にしてくれなかった周りが悪いんだ!俺は悪くぬぇー!
要約:此処までの遅延、大変申し訳ございませんでしたorz
では、改めまして……。
???「ほのぼの回でございます。何なりとお使いくださいませ(?)」
コツコツと何でも屋稼業を経営して、それなりの年月が経過した。
数年程度の時が過ぎたが、俺が住むこの都の姿にはさしたる変貌は見当たらない。高々数年で明瞭に変化するというのもそれはそれで忙しないというか、不気味というか。まぁ大きな揉め事も殆ど起きていないし、時々近辺に現れる妖怪の出現も俺が手を下しているため平和である。
それに俺だけでなく都には屈強な兵士も滞在しているから、都の人も安心できている事だろう。都の中を徘徊するその顔ぶれを見れば、容易に判断できる話だ。
さて、ここらで周りの人たちとの繫がりを振り返って見る。
先ずは布都。
恐らく初めて法隆寺に訪れた際の火事の鎮圧が関係しているのだろうが、会って間も無いのに人懐っこい笑顔と態度で接してくれていた。そんな彼女とも数年の付き合いとなっているわけだが、初めから好感度高めの繋がりとなっていたため、後は言わなくても分かるはずだろう。
次は屠自古
ヤンキーのような口の悪さが同性と共にいる際に目立つ彼女であるが、彼女も火事鎮圧の影響か嫌な距離感が無いくらいの関わりとなった。言葉遣いとは裏腹に性格も落ち着いているため、会話をしているとこちらも落ち着いた気持ちになれて、心地がいい。賑やかな布都とはまた違った良さと言えよう。
青娥なのだが……これは何ともいえない感じだ。
布都たちよりも一足遅く知り合った間柄ではあるが、良好な関係を築けていると自負はしている。互いの嗜好だって普段の会話で聞いているし、一緒にいる時の雰囲気も穏やかなものだ。彼女の突拍子も発言に俺がサラッとツッコミを入れるというのも形式美となりつつあるし。
だが、なんとなく、俺は彼女を底まで理解できてはいないのではないかと……。
仕事のシステム上もあって、都の人たちとの繫がりも良い具合となっている。ご近所で険悪な関係とか胃に穴が開きそうだし、願っていたコミュ形成と言えるだろう。この間は夕飯の御裾分けをもらった、そして美味かった。
そして最後に、神子とは……。
「こうしてあなたと茶を嗜むのも、慣れたものですね」
都の一角にある、名の知れた茶屋。店頭には座るためのスペースが設けられており、青空のもとで茶を一服できるのが特徴的な営業方式を取っている。雨空では残念な事になるだろうが、今日のような晴天の下で飲む茶という物は、中々に趣があって好い。
仕事にひと段落をつけ家で寛いでいた最中、急に家を訪ねて来た神子に誘われた俺はこうして彼女と共に茶を飲んでのんびりとしている。
そんな彼女が、ふとそんな事を呟いてきたので、俺は小首を傾げながら探りを入れる。
「急にどうしたんだ?いきなり茶に誘ってくれたのは別に良いが、前約束も無しにお前が家に来たのは珍しかったぞ」
「まぁ、否定はできませんね。突然の訪問は布都の得意としている分野ですからね」
「青娥もな」
この場にいない二人の名を使って話を盛り上げつつ、俺と神子は茶を一口。
ふぅ、と一つ息を吐く動作が一致する。
「仕事の方は順調ですか?もっとも3、4年経った今になってこのような質問をするのも変だとは思いますが」
「ん……まぁ、それなりに羽振り良く務めさせてもらってはいるよ。ただ……」
「?」
「特に用事も無いのにたびたび家にやって来ては、食べ物や茶をせがんでくる知り合いは勘弁してほしいな。主に布都と青娥」
その二人の名前が出た瞬間、神子は気まずそうに口元をヒクつかせ始めた。自分と関わりの深い二人が問題扱いされているのだから、そのリアクションも分かる。
何を隠そう先ほど名前を取り出した二人。知り合ってからというもの、暇な時があれば俺の仕事場に乗り込んで、そのまま寛ぎだしてしまうのだ。それもまるで我が家へ帰るかのような無遠慮っぷりで、別荘か何かと思っているんじゃないかと思ってしまう始末だ。
おかげで家に溜めておいた飲み物や食料が、一人暮らしにしては妙に早い減り具合を示してしまっている。
「そこんところ、監督役の神子さんはどうお考えで?」
「あ、あはは……」
俺が意地の悪いジト目で神子の顔をジッと見やると、それに耐えられなくなったのか、神子はハリボテのような笑いを漏らしながら顔を反らした。
神子の反応を見納めた俺は、神子に向けていたいじらしい視線を止めて小さな溜め息を吐いた。
別に神子や布都たちを攻めているわけでは断じてないという事を理解してもらいたい。ただ、飯やら茶をたかる為に足を運ぶのは勘弁願いたいだけであってそう言っているのだ。まぁ、話し相手になってくれるので、一概に悪く言うつもりもないのだが。
「まぁ、別段迷惑だとか嫌悪感だとかそういうのは特にないから気にしなくてもいいけど」
「そうですか?もし何かあれば私の方から釘を刺しておきますが……」
「いいさ。なんやかんやで退屈しないからな、あいつらといると」
布都はからかい甲斐があって面白いし、屠自古とも話のウマが合う。青娥は逆にこちらをからかってくるのがちょっとアレだが、ああいったほんわか系は珍しいから話し相手としては十分だ。
「なぁ――」「ところで――」
…………。
被ってしまった。偶にあるよなこういうの、そしてこの妙に気まずい沈黙は確定的な事柄なのだろうか。お見合いじゃあるまいし、笑いのネタにしてしまえば楽だろうに。
うむ、どうしたものか。空気を読まずにこちらから話を切り出すのもアリだけど、別に大した話をするわけでもなし……まぁ無難に譲るとしようか。
「あぁ、失礼しました。満希さんから先にどうぞ」
その前に譲られたんだなコレが。いや、優先権もらってもしょうがないしなぁ。
「いや別に俺の方は大したことじゃないから、神子から良いぞ」
「いえいえ私の方こそ大丈夫です。満希さんこそ、話を進めてください」
「だから大したことじゃないんだってば。譲られてもこっちが困るって」
「私だって同じですよ。先に言おうが言うまいが関係ないですし、それなら満希さんにお譲りします」
「いや、だから……」
あれ、さっきから話が一向に進んでなくないか?不毛な発言しか出て来てない気がするんだが。
「それならば、アレですよアレ。貴方から言うまで私は絶対に喋りませんから。どんなに気になってもそっちが先に言わないと私も口を開きませんから」
「何で譲り合いでそこまで言うんだよ……」
「いえ、偶にはこういうのもアリかと思って」
「さいですか。まぁ俺からで良いなら話すけど。っていうか前後どっちでもいいなら頑なに譲らなくてもいいんじゃ……」
まぁいいか。折角順番が決まったのに、話をぶり返してまた同じ展開になってもアレだし。
そういえば、彼女と最初に会った時もこんな感じでお互いに譲り合いをしていたっけか。随分と懐かしい話だ。
「まぁ、本当に大したことない話……話というより質問なんだけどな。どうして俺の事をあんなにあっさり受け入れてくれたんだ?」
「あんなにあっさり、と言いますと?」
「ほら、俺が今の仕事を始めたいって言いだした時さ、神子は結構すんなりと許可して、おまけに色々手配やらしてくれたじゃん。誰に対してもああするってわけじゃない筈だろ?」
そう言って俺が思い浮かべているのは、数年前に神子に営業の許可を貰おうと話をしていた時。
あの時彼女は一個質問を掛けてきただけで、なんら書類の準備をするという事もなく手続きを進めてくれた。
その事に関しては彼女に感謝している。都に住まうとなると働き口も無しというのは世間体やら生活資金やらが目も当てられない状況になってしまうのだから、一日でも早い就職というのは有難い話である。
だが、それと同時に疑問に思う事もあった。
『何故、ここまで良くしてくれるのだろうかと』。
俺は彼女に借りとか恩義とか、そういったものを作らせた覚えは一切ない。前日に露店で顔を合わせたが、出会ったのは一時間にも満たないたった一度の邂逅のみ。友誼もそれほど強くしたつもりはない、つもりどころか強くなっていないという事実。
そんな中で、彼女が俺に良くしてくれた理由とは、一体なんであったのか。
何気に気になっていたことを、折角だったので俺はここで吐露させてもらった。
「おもしろそうだったから、ですかね」
…………ん?
「え」
「いや、何ですかその反応は」
「何ですかも何も、だって……え、どゆこと?」
言葉のとおりですが。と返答すると、軽く狼狽している俺に対して神子が言葉を入れてくる。
「確かに貴方は、一見すると周りの人々に溶け込んでいるような感じです。しかし、最初の邂逅とその翌日の騒動でその感想は拭うべきだと判断しました」
「(この服装、明らかに周囲に溶け込めないと思うんだけどなぁ……今更だけど。原因も分かんないし)」
なるほどな、と相槌を打ちながら俺は彼女の話に耳を傾ける。
「たった二日であそこまで振り回されたのは、恐らく布都についで2度目となります。そんな人物をみすみす見逃して、淡々と関係を済ませるというのも少々もったいない気がしたので。その判断は間違っていなかったようですし」
「それは何よりだな。というか布都ぇ……」
お前……過去も何やらかしたんだよ……。『も』って言ってる時点でもう駄目な気がするけどな。
「……もっとも、それ以上に気になる事もありますがね」
「何か言ったか?」
「いえ、何も」
ううむ、確かに何か言っていたような気がするんだが……わざわざ追究する程でもないし、別にいいか。
何はともあれ、これで俺が聞きたかったことも知ることが出来たし、十分だ。
「じゃあ、今度はそっちが俺に聞く番だな。今更無しなんてオチはないだろうな?」
「あはは、流石にそんな真似はしませんよ」
「それもそうか、じゃ。答えられる範囲なら何でも答えるぞ」
「そうですか、それでは遠慮なく……」
「誰かを助けたいという貴方の思い、それは本当に本心ですか?」
―――終
ほのぼの回だと思った?
残念!最後の最後でシリアス突入でした!
満希「調子に乗るなアホ」
すいませんでしたorz