出来ましたね。割と簡単に。
満希「なんで入れたし」
尺稼ぎ。
そう、あれは4年前の事だ。
……じゃねーや。外見年齢が大学生だからそっち基準で計算してしまった。
4年前とかあれじゃん、神奈子と諏訪子が色んな地方の神様集めて一週間くらいぶっ通しで大宴会を開いた年だったな。俺も諏訪子たちと縁のある人物ということで特別に参加することになったけど、一日でグロッキー状態になって脱落した。だって色んな神様が酒注いでくるんだもの、樽ごと差し出された時は死を覚悟したね。
っと、話が脱線してたな。結局、何年前って事になるんだ?
…………。
何年前とか数えるのが面倒くさいから、俺がかつていた世界で高校一年生だった頃って事にしておく。本当にマジで何歳だよ、俺。そしてこの疑問も何度目だよ。
……いかんいかん、さっきからボケてばかりだな。ここ最近はシリアス続きでボケるシーン無かったから、無自覚で存分に入れてしまっているようだ。というかそろそろ俺がボケ役かツッコミ役かハッキリさせた方が良いと思う。
では改めて、話を始めようか。
たった一人の女の子を救えなかった、どうしようもなく情けない男の昔話を。
――――――――――――――――――――――――――――
「なーなー満希―、頼むから貸してくれってー」
午後4時過ぎ。
俺が普段通っている高校は、平日はいつもこの時間帯に帰ることが出来る。部活動をしているメンバーは今日も放課後に練習を行っているが、俺は帰宅部なので学校に居残る必要はどこにもない。
そしてさっきから俺の隣で喧しくしているこの男も、俺と同じ帰宅部。名前は山田・アントニキス・太郎・エロザエモン。
……もう一度言っておく、山田・アントニキス・太郎・エロザエモンだ。色々ツッコミたくなる名前だけど、後で覚えてればツッコミを入れておくことにする。
「はぁ……あのなぁ山田。いきなり貸せって言われても何のことかわからねーだろ」
「エロ本」
「絶交してやろうかこの野郎」
何で俺がエロ本持ってる気でいるんだよこのアホは。俺高校生だぞ、持ってる訳ねーだろ……いや、18超えても持たないからね?こいつじゃないんだから。
「えー!だって一年生全員に頼んでみたけど、誰も持ってないんだぜー!?だったらもう頼みの綱である満希に頼むしかねージャン!」
「頼み込む範囲が明らかにおかし…………待てよ。6時間目の前の休憩時間に女子の悲鳴が聞こえたけど、まさか……」
「美少女のビンタ美味しいです」
「変態じゃねーか」
ふひひ、と下卑た笑い声を漏らす馬鹿に冷ややかな視線を送る。女子にエロ本を求める男子学生がこの世のどこにいるって……ここにいたか。
「お前なぁ……そう言う事してるから女子から圧倒的に人気失ってるんだろ。もうちょっと、というかかなり欲望控えた方が良いぞ」
「お前はオレに死ねと申すか!」
「じゃあ言うわ。その欲望をもっと控えろ」
「あぁ、神よ!隣で残酷な宣言をしてくる友人がおりましてございましてね!オレ泣きそうなんですわ!うわーんわんわん!あ、神より女神をキボンヌで」
うるせーなコイツ。知ってるけど。
「ごめん、ちょっと距離置かせてもらうわ」
「え、なにそれ。俺が5限の体育で掻いた汗を敢えて体に塗りたくったことに気付いた?」
きたねーなコイツ。知ってるけど。
「よし、今日は別々で帰るか。そして来週まで俺に声掛けないでくれよ」
「いや今日って月曜じゃん?今週ずっと話し掛けんなとか友人としてその処遇はどうよ?」
「当然の処置だと思うが」
「そりゃないってばよジェーン!」
「誰がジェーンだ。名前も性別も見当違いじゃねーか」
メンドくせーなコイツ。知って(ry
「はぁ……まぁいいや。早く帰ろうぜ」
「イエス、マム!」
「鼻毛引き抜くぞコラ」
アホな発言ばかりする友人を引きつれ、俺は再びいつも通りの足取りで帰路につく。傍目から見ても馬鹿馬鹿しいコントで歩みが遅くなっていたみたいだ。コイツと絡むといつもこの調子なのだから、別に慣れているので問題ない。困るほどの事でもないしな。
それにこんなバカ発言とバカ思考丸出しのコイツではあるが、俺は少なくとも友人として思い、接してきている。
決してコイツに対する温情なんかじゃない。コイツはこんな言動振りまいてはいるけど、何だかんだで交友関係は広いからわざわざ温情を掛ける必要などないのだ。……その交友が女子に対しては一切張られていないというのが、なんとも寂しいところではあるけど。
「んー?どうした?俺の顔を見ちゃって」
いつの間にか俺は、山田の方をジッと見ていたらしい。向こうが指摘するまで気付かなかった辺り、相当考え事に没頭してたみたいだ。
流石にコイツを友人だと思っている、と面と向かって話す事は流石に恥ずかしいので、無難に『何でもない』とはぐらかそうとしたが、先に向こうがアクションを仕掛けてきた。
「……ポッ」
「頬赤らめんな、キモい」
「『キ』ィェアアアアア!!『モ』テそうな『い』い男~~ウホッ!って事だな、ヨッシャ!」
……こんなんだが、友人ではあるんだよ。うん。
――――――――――――――――――――
そうして取り留めのない会話をしながら帰り道を進んでいる頃であった。
帰路も後半に差しかかったところで、山田がふと歩く方向とは異なる方へ顔を向けた。そしてすぐさま――。
「おんやおやぁ~?」
と言った。その台詞、必要か?
「どうしたよ、また『100メートル先のエロ本が見える!』とか言うんじゃないよな」
「何故分かったし」
「マジかよ……って、どうせ嘘だろ」
「何故分かったし」
いつからの付き合いだと思ってるよ?……いや期間は短いっちゃ短いけど、理解するにはキャラが濃すぎたわコイツ。
とどうでもいい事はさて置き、俺は山田の口からまともな回答が出る前に同じ方向を見やる事にした。どうやら彼が見ていたのは公園だったらしい。帰り道に必ず見かけるから、見慣れたものではあったが。
いや。ヤツが見ていたのは公園ではなく、その中にいる俺と近い年齢の容貌をした少女であると理解するには、そう時間は掛からなかった。制服を着ている所を見ると、俺の知っている中学校の生徒であろう。
さて、コイツの眼は……うん、大丈夫。犯罪者の類の眼じゃない。眼をつけたのも只の好奇心みたいだ。
「今、さらっと馬鹿にされたような気がする」
「気のせいだろ」
「そっかぁ」
納得している山田を片隅に、俺は少女の姿をもう一度確認する。
先ず特徴的なのはその髪の色。一般的な髪色は黒や茶であるはずなのに、あの女の子は緑色の髪である。これは流石に目立つであろう。
「スゲーよな、あの髪の色。緑とかメチャクチャ目立ってるぜ」
「青色でベジ○タみたいな髪型したお前だけには言われたくないだろうな」
「まぁじでぇ」
そのねっとり感はうぜぇ。そしてこいつの髪は全体的にオカシイ。高一でこの後退具合はオカシイ。
と、それはさておき……緑髪の少女は公園内の設備であるベンチに腰を下ろしていて、周りには彼女の同年代と思わしき子は見当たらなかった。つまり一人なのである。
こんな時間帯に中学生が公園に一人でいるということ自体も珍しい話だ。あれだけ派手な髪色だというのに初めて見るという事は、彼女の住まいはこの辺りではない可能性がある。
そういう推測もある筈、なんだが……。
「(違う……ような気がする)」
直感的な感想であり、確信を持てない間のような者に過ぎない。杞憂と言われてしまっても仕方のない事だろう。
だけどどうしても、彼女の憂いたあの表情が……。
「ほら満希ー。そろそろ行こうぜー」
「……あぁ、そうだな」
どうしても、気になってしまっていた。
山田に声を掛けられ、再び帰路に戻り始めた俺であった。が、その少女の事が気になった俺は、何度か後ろ髪を引かれるような気持ちで彼女の姿を振り返り見てしまうのであった。
「一目惚れとかロマンチックだわー、ぷーくすくす」
「面白い奴だ、気に入った。殺すのは最後にしてやる」
「ぬへへ」
一発殴っておいた。
―――――――――――――――――――――――
翌日。
今日の学校の授業も終わり、今は真っ直ぐ帰る最中である。
ちなみに今日は山田はいない。今日の朝に提出するはずだった課題を忘れていたために、放課後は教室に残ってその課題をやらされているのである。ちなみにあいつは今朝は寝坊も同時に遂行してしまっており、その理由は……。
『女の子のパンチラが拝めるように、夜通し祈祷を行ってました。諸葛亮先生、万歳!』
との事。あいつのぶっ飛びっぷりはもはや尊敬に値するものとなりそうだ。……いや、よくよく考えるとしょうも無いから尊敬するのは、ちょっと、うん止めよう。
余談だが、昼休みに鼻血を出しながら『ありがとう、諸葛亮先生!』と言うアイツの姿が見えたので、努力は実ったのであろう。その努力が誠実さに変換してくれる日は来るのだろうか。
ともあれ。今日は他の友人も部活やら用事やらで学校に残っていたり、俺より先に帰っていたり。偶には一人でゆっくり帰るのも悪くないかなと思って、そう実行に移した。わざわざ一緒に帰れる人を探すというのも、手間ではあるし。ちょっとした気分転換になるかと思っての判断だ。
で、やはり帰りに連れが居ないというのは……中々静かなもんだなー。と思う。昨日が山田と帰った事もあり、尚更そう感じてしまう。
昨日。
その言葉が挙がった時、俺の頭の中で昨日の出来事が思い浮かび上がっていた。
帰り道の公園で見えた、あの緑の髪の女の子の事である。
「……」
やはり、あの悲しげな表情が気になってしまう。
ただの思い違いだという可能性だってある。むしろそっちの可能性の方が早いだろう。
けど、それでも……。
「……ちょっと見に行ってみるか」
心を決めた俺は、その足を先日の公園へと向ける。普段の帰り道の途中にある場所なので、ただいつも通り進めばいいのだが、明確な目的地として示す分には間違っていない。
もちろん、昨日と同じようにあの少女が公園にいるとは限らない。あの子だって毎日公園に来るわけではないだろうし、その日はたまたま来ていただけかもしれない。何せ普段の帰り道の途中であるというのに、あの子を目にしたのは昨日で初めてだったのだから。
そして数分と経たないうちに、公園の傍まで訪れた。寄る事を決めた時には既に、近くまでやってきていたのだろう。
居なかったら来て損だったと嘆いていたころだろうが、どうやらその必要は無くなったようだ。
公園の中のベンチ。つまり昨日と同じ場所にその少女は座っていたのだ。
「……いたな」
嫌でも目に付くような、鮮やかな緑色の髪。そして服装は昨日と同じ学生服である。
俺は昨日と同じように、彼女の周りを見回してみる。が……やはり同年代の友人らしき姿は見当たらない。
加えて、彼女の表情はこれまた以前と同じく憂い顔。やはりそう言う事なのだろうか。
……状況はどうあれ、今からでも助けられるのであれば、俺は必ず助けたいからな。こうして考えているだけじゃ何も進展は起きないという事だけはハッキリとわかっている。何か行動を起こさなければ、俺の心に反してしまうからな。
そうなると、やはり俺がすべきことは決まってる……か。
「……隣、座っていいかな?」
決意し公園の中へ足を踏みだした俺は、未だベンチに座っている緑髪の女の子に対してそのように声を掛けてみた。
「え、えっと……その」
突然声を掛けられた……要するに動揺を隠しきれなかった彼女は、しどろもどろと言った具合に言葉に詰まりつつ、こちらを不思議そうに見やって来る。
無理も無い。面識のない年上の男から急に声を掛けられてしまえばそのようなリアクションになるのも当然だ。
うん、知ってた。そして漂う謎の不審者感。念のために言うけど俺は怪しい者じゃないんだってヴァ。
「あ……い、いいですよっ。全然座ってくださいっ」
俺が誰にともなく心の中で弁明をしているのも束の間、女の子は若干慌ただしそうにしながらも俺が隣に座る事を認めてくれた。これで『いや』とか言われたらどうすればよかったんだろうか、怖い。
何はともあれ、これで彼女と話をすることが出来る。
ありがとう、と一言告げながら俺はベンチの空いてる部分――彼女の隣に腰を下ろした。
とりあえず、適当に会話でもしてみようか。
「この辺の子?」
「ふぇ?あっ、いえ……ここから少し離れたところです」
「そうなんだ。ところでその制服、ひょっとして○○中学校かな」
「そ、そうです」
「あぁ、やっぱり。俺も一年前はそこに通ってたからね、先生も優しい人が多いんじゃない?」
「えっと……はい、そうですね」
ううむ……やっぱりまだ警戒されてるんだろうか。受け答えはしてくれるものの、ぎこちなさが感じられてしまう。というか、こっちを見てくれていない事がさり気にショック。
予想はしてたけど、やっぱり高校生と中学生の差ってデカいんだろうかね。まぁ流石におじさんレベルだとアウトゾーンまっしぐらだろうけどさ、俺くらいの歳だったら……希望はあるよね、まだ。だって多分一歳差くらいだもの。そして俺は何の心配してんだよ。
そう言った具合に内心ではごちゃごちゃと考え事をしていると……。
女の子の方から、話を切りだして来た。
「あの……どうしてなんですか?」
「ほい?」
「あ、えっと……ごめんなさい。私も、急に声を掛けられてビックリしてて……その、どうしてお兄さんは声を掛けてくれたんですか?」
そう言って、彼女はおずおずと俺の表情を窺ってきている。
ここで漸く、彼女はチラチラとではあるが俺の方へ顔を向けてくれた。やはり無理をさせてしまったのだろうか、その顔から戸惑いの色が隠しきれていなかった。
しかし、『声を掛けてくれた』という事は……俺と話をする事が嫌ではないと受け取っても良いだろうかな。まぁ気遣ってくれたって線も残ってはいるけども。
そして、俺の方も彼女に答えを返してあげなければならないだろう。
着飾った言葉ではなく、正直な気持ちで。
「4年くらい前だったかな……俺ってさ、周りからお人好しだとかお節介焼きだとか良く言われるようになったんだよ」
もともと俺は、正義感の強い心を持ち合わせてはいなかった。困っている人を助けるのも見知った間柄が基本だったし、面識のない人を積極的に手を貸すのも絶対というわけではなかった。いわゆる人並みの正義感と言ったものであった。
当時の俺は、その事に対してなんら疑問に思う所は無かった。それが普通であると、そう思っていた。
だけど、4年前。
その時に起こった
『知り合いだろうが他人だろうが、助けられるのであれば助けたい』
それから俺は、その価値観の元で思い動くようにしてきた。
友だちや家族の手伝いなども積極的に取り組むようになったし、頼みごとをされた時はほとんど断ることがない。冒頭のエロ本云々は例外の枠内だが。更に今まで面識の無かった学園内の生徒や町の人が困っている姿を見かけたら、協力を申し出るようになった。
そんな俺の突然変わった身の振り方に対して、以前までの俺を知っている人たちは心配こそしていたが、今ではすっかり慣れてしまっている。もしかすると、山田も俺が今日此処に来ることを予想していたかもしれない。山田に限らず、もしも別の友達があの光景に立ち会ったのならば、同様に予測していたのだろう。
どうして声を掛けて来たのか?
「昨日もちょっと見かけたんだけど……寂しそうな顔してたからかな」
「……それだけ、ですか?」
おかしな話だと思われよう。何せそれだけのために、こうして声を掛けてきているのだから。
だけど、それが今の俺の在り方。もうこの性分を変えることは無いだろう。むしろ、帰る気など一切無い。
それが、4年前に定めた俺の『決意』。
「……ふふっ。変わった人ですね」
「そう思う?」
「そう、ですね。けど……私はそういうの、好きです」
そう言って彼女は、ニコリと笑って見せた。
ようやく見ることが出来たこの子の笑顔は、満面とはいかないものの確かに心から笑ってくれている、ような風に感じられた。そうであるなら嬉しいな、という俺の願望が籠った見方だから、絶対とは言えないけど。
ともあれ、悲しい顔してるよりも笑ってた方が絶対いいだろう。
「そういえばお兄さん、○○高校の生徒さんですよね?」
「ん?まぁそうだけど」
「やっぱり……でしたら私、来年はそこに入学させていただきますね!」
「そうなんだ。……ん?『でしたら』って――」
「はい、今決めました!」
……取りあえず、その謎のドヤ顔を止めなさい。『ふんすっ』って鼻息が聞こえそうなくらい堂々としてらっしゃいますがな。
因みに今は5月半ば……今から進路が変わっても大丈夫、なのか?
「……あの、進路ってそんな思いつきで決めるもんじゃないと思うんだけど?」
「いえいえ、お構いなく!」
「……まぁいいか。受験勉強、頑張ってな」
「はい!」
こうして俺は、ちょっと変わった子と知り合う事になった。まぁ、向こうが良ければ彼女の高校入学までまた会ってみようかな。
来年の学園生活は、また騒がしい事になりそうな予感がするな。
「ところで、お兄さんの名前は?」
「あぁ、まだ自己紹介してなかったっけ。俺は暁宮 満希。君の名前は?」
「はい、東風谷 早苗と言います!よろしくお願いしますねっ!」
――終
主人公の過去が明らかになる話で、更に謎の過去が見え隠れするようになるとは……。
さらっと2個もトラウマ用意するとか、鬼畜ですよね。(自虐)