東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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猪妖怪「小説を読む暇があるのなら俺たちに食われるがいい!」
鴉妖怪「…ところで俺らの出番って次はいつになんのよ?」
満希「いや、もう出番ないぞ」
2人「「えっ」」



第3話 日常と仕事

 

 俺が永琳さんとアマテラスさんの下でお世話になると決まったあの日から約10日が過ぎた。

 

 仕事の方は、今の所問題なくこなすことが出来ている。永琳さんが主に携わっている薬学・医学の専門的な知識はからっきしだが、あらかじめ永琳さんに教えてもらったジャンルの分け方を参考にして行っているため、多少の分別は理解できている。

 まぁ、まだ少し時間が掛かってたどたどしいとも言われてるが、違う資料の混流は一度もないから正確性については及第点を貰えている。あとはこれを保持しつつ作業スピードを上げて行けとの事。要は早く慣れろという事で。

 

 生活の方だが、こちらも今の所良い調子で過ごせている。

 アマテラスさんは神だが、本人がヒトと同じ暮らしをしていきたいという事らしいので、一般からは身分を隠して普通の一軒家で生活をしている。

 一人暮らしの経験が長かったというアマテラスさんの家事クラスはいざ行えばどれも一流で、独り暮らしの経験がまだ無かった俺はお世話になりっぱなしである。

 

 いつか必ず、俺も家事が出来るようにならないとな。

 

「満希く~ん、朝ご飯ができてるから一緒に食べましょ~」

 

 おっと、どうやら朝食が出来上がったみたいだな。アマテラスさんが台所の方から俺を呼んでいる。

 

 さて、今日も一日頑張るか。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

~某ビル内、研究室~

 

「おはようございます、永琳さん」

「あら満希、おはよう。今日もお仕事よろしくね」

「はい、こっちの方こそお願いします!」

 

 家で朝食を済ませた俺は荷物を持って俺の上司となった永琳さんの仕事場へと赴き、彼女と挨拶を交わす。

 毎日恒例の挨拶が済んだところで、俺の仕事はスタートするのだ。

 

「はい、それじゃあ今日の作業についてスケジュールに纏めておいたから良く目を通しておいてね」

 

 そう言って永琳さんは俺に個人のスケジュールを手渡してくる。

 まず最初は今日のスケジュール確認。と言っても毎日規則的な段取りを取っているためおおよその流れが分かる事から、左程重要と言うわけではなくなっている。まぁ偶に変わった仕事も混ざる事があるため、その辺りだけをチェックして置けば問題は無いらしい。

 

 …おっ、どうやら今日は備品の買い出しがあるらしいな。プリンター用の用紙とインク…どうやら コピー機関係の物の補充らしい。ちなみにこの世界では資料諸々はコンピュータチップにデータをすべて内蔵しているのだが、永琳さんは敢えて紙にデータを残すスタイルを取っている。最近のコンピュータウィルスの影響を受けない様にするためだとか。

 

 まぁ、買い出しは昼休憩の後にあるらしいし、今は午前の仕事をしないとな。

 先ずは永琳さんと一緒にAビルに行って研究成果のプレゼン発表だ。ちなみに俺は資料管理及びプレゼン用の資料を会議時に配布とかを行う。

 

「それじゃあ、そろそろ会議に向かうとしましょう。必要な書類を忘れずにね」

「はい、了解です」

 

 俺と永琳さんは荷物を持ってAビルへと向かうのであった。

 

「ところで…会議なのに俺のこの格好って大丈夫ですか?場違いじゃない?」

「大丈夫でしょう。私もいつもの研究服で行ってるし」

「確かに、永琳さんのその服で問題ないなら俺でも大丈夫ですね」

「そうね。あと満希、予定変更で貴方には新薬の実験体になってもらうから」

「ウェイ!?」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 危ない危ない…たった一つの失言で人生ロストするところだった。永琳さんの寛大な心に感謝だな、ホント。

 

 永琳さんの発表テーマである『永遠の命』のプレゼンは、何事もなく無事に終了することが出来た。

 

 しかし今日の会議に参加してた人たちって何と言うか…ふくよかな体型だったり性格悪そうな顔してたりしてる人が多かったな。いわゆる、漫画とかでよくある登場人物からも読者からも低評価を下されるお偉いさんって感じで。

 俺が資料とか渡しても「ふんっ」と鼻を鳴らしつつふんだくる様に奪い取るし、お茶を配る事になったので配ってみれば俺を不愉快そうに一瞥した後にこれまた強引に取っていく。しかも飲み方汚かったし。正直いい気分で終われなかった。

 

「お疲れ様、満希。今日は嫌な役に買って出てくれてありがとうね。給仕のあの子も貴方にお礼を言ってたわよ、『もし出ていたらまたセクハラされるところでした』って」

「ああ…急にお茶を配って欲しいと頼まれたのってそう言う事か…」

 

 俺が資料を配り終え、一回外に出る機会があった時の事。

 本来給仕をするはずの女の子が、会議室から出て来た俺に『自分の代わりにお茶を配ってきて欲しい』と必死に頼み込んできたのだ。

 眼に涙を浮かべてまで頼まれてしまっては、俺も流石に断ることは出来ないので彼女の仕事を引き受けることにしたのだ。

 

 確かに、あんな連中にお茶を配るなんて酷だろうな。ていうかどいつも妙に俺を睨みつけたと思ったらセクハラ出来ない事に対する恨みかよ。偉い人としてどうなのよそれ。

 

「そう言う事なら、永琳さんの方こそ大変だったでしょう。あんなのに対して発表なんて気が滅入るとしか思えませんって」

「大丈夫よ。発表の方も判明した事実に対して現在調査中って事にした物もあるし、詳細を伝えずに大雑把に伝えてる点も何ヶ所か出して手を抜いていたから」

「あ、そうなんですか」

 

 流石の永琳さんもあの連中は受け付けなかったみたいだな。

 というか抜け目が無いな永琳さん。俺もお茶差し出す時に猛烈に指入れた嫌がらせとかしとけばよかった。

 

「ところで満希、能力の制御の方は上手くいってる?」

 

 気分の良くなるような話題ではなかったことを思ってか、いきなり話題を変更してきた永琳さん。

 まぁ、これ以上は会議の連中の悪口に発展しそうなのでちょうどいいと言えばちょうどいい。

 

 

 

 さて。

 俺の能力制御の進展具合についてだが……正直、まだまだ伸びが芳しくない。

決して教えてくれるアマテラスさんが悪いのではなく、慣れない環境に加えて特殊能力という馴染みの無い存在に適応できていない俺が原因なのだ。

 イメージってどういった感じに浮かべればいいの?とか火力に強弱をつけるにはどうすればいいの?とか、全体的にまだ俺の理解が追いついてない部分がある。

 

アマテラスさんは「ゆっくりやっていけばいいからね」と優しく言ってくれていたが、教えられてる身としては早く身に着けてアマテラスさんに余計な負担を掛けない様にしたいんだよな…。アマテラスさんも仕事が忙しそうだし。

 

「いえ…今までこんなことなかったからコツがイマイチ掴めないままで…」

「そう、まぁ話を聞く限りではどうやらあなたが今まで居た世界には能力者はいない感じだったものね。無理もないわ」

 

 そう言って永琳さんが慰めてくれるが、やはり現状を見てみると俺の気は晴れてくれない。

 わざわざ永琳さんが助けてくれて俺に居場所を作ってくれたというのに、このままでは恩に報いきれないからだ。

 

 そんな俺の心情を察してか、永琳は小さく微笑むと俺に言葉を掛けてくる。

 

「焦らなくてもいいわ。教える人も優秀だし、貴方も熱心に練習してると聞いてるから必ず身に着いていく筈よ。これからも頑張って、しっかりと成長するのよ」

 

 永琳さん……。

 

「私としてもちゃんとしたサンプルが欲しいし、護衛にあたって最初の時の様なザマで守られてちゃ守られてる側も恰好がつかないもの」

 

 ですよねー。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

~都の中央通り~

 

 午前の仕事も終わり、昼休憩を挟んだ俺は永琳さんと別行動をとっている。

 永琳さんは研究室で新しい新薬の調合を行っており、俺が手伝うようなシーンはやってこないのに態々一緒にいる必要もないからだ。

 

 と言う訳で、俺はビルを出て都の中央通りへとたどり着いた。

 どうやら今日は人通りがそこまで多くないらしい。歩くのに苦労しないのは嬉しい事だ。

 

 さて、早速コピー機関係の備品を取り扱ってる店に行くとするか。

 事前に永琳さんから売っている場所を教えてもらっているし、この辺りはアマテラスさんとよく散歩に出ているから道も慣れている。都に来て間もない俺でも迷うことなく真っ直ぐ目的地に行けるはずだ。

 

 目的の店へ向かうべく、俺が歩き出そうとした時。

 

 

 

「ちょ、ちょっとそこのアンタぁ!」

「ん?」

 

 恐らく俺に向けて投げ掛けられてきたであろう声に反応した俺が、そっちを振り向いた時には。

 

 

 

 

 

「そ、そこをどきなさいよぉ~~!!」

 

 朱色のツインテールをバタバタと揺らしてこちらへ突っ込んでくる少女の姿が目前にあった。

 

 当然、突然の出来事で反応が遅くなった俺が避けられる事は無く…

 

「あだぁっ!?」

「きゃいん!!」

 

 ゴチンッ、と派手に鈍い音を出すほどの勢いで互いにおでこをぶつけ、奇妙な声を挙げながら俺たちは反対方向へと吹っ飛んだ。

 つか、いってぇ!どんだけ石頭なんだよ今の子!頭が割れるくらいにいてぇ!

 

「いったぁ……ちょっとアンタぁ!どこに目を付けて歩いてんのよ!危ないじゃない!」

 

 向こうもかなり痛かったようで、おでこを押さえながら俺を睨みつける赤色のその眼には涙が滲んでいた。

 

 少女は見たところ高校生くらいの外見で、中央に桜吹雪のデザインをプリントした白いロングTシャツに赤色の短いスカートといった格好をしている。

 というか高校生っぽいなら平日の昼間に何やってんだ、サボりか?

 

 いや、その前にこの目の前の少女の言い分に引っ掛かるものがあるぞ。ここはハッキリと物申しておかなければ

 

「何言ってんだ、俺が歩こうとした時にお前が思いっきり走ってきてぶつかったんだろ」

「はぁ?ボーっと突っ立ってる方が悪いに決まってんでしょ。アタシは急いでただけだし」

「なんだと?そもそも人通りの多いこんな街中を走るとか常識的に考えんか、馬鹿」

「馬鹿ぁ!?あんた馬鹿って言ったわね!馬鹿って言う方が馬鹿なのよこのバカ!」

 

 いや、それ無限ループの入り口だから止めとけよ。

 というかなんだこの我儘女…ぶつかったことを謝りもせずに文句言うとかどういうつもりだ!

 

「大体ねぇ、男ならあんなのしっかり避けてみなさいよ!鈍くさいわねぇ」

「気付いた時には1メートルも切ってただろうが、どうやって避けろと。というか叫ぶ暇があったならお前だって避けれた筈だろ」

「仕方ないじゃない!仕方ないんだから!」

「なんじゃその言い訳。ホント生意気な奴だな」

「アンタが言うな!」

「いやそれをお前が言うな!」

 

 ああもう、さっきから無茶苦茶過ぎるだろこいつ!

 最後に至っては俺、特に生意気な事言ってないのに罵倒されたんだけど!

 

 っていうか、こんなことやってる場合じゃないんだよ俺は!

 

「ったく、なら互いに非があるってことでこの場を収めようぜ。俺はこれから行くところがあるからこんな事してるヒマないんだよ」

「ふん、アタシだって今急いで………あっ」

 

 眉間に皺を寄せながら喋っていた少女だったが、急に途中で言葉を止めて呆けたような表情になる。

 そしてその少女はガバッと自分の後ろを振り返った。

 

 俺も目の前の少女の様子が変わったことが気になり、彼女に続いて背後(少女とは対面してたので、正確には前方の彼女の後ろ方向)を見てみると……。

 

 

 

 

 

「「「お嬢様ぁ~~~~!!」」」

 

 

 

 遠くの方からこちらへ走ってくる、黒いスーツをきた男女3人の姿が見えた。

 

「やっば、もうこんな近くまで……ちょっとアンタ、ここは大人しく引いておくけど今日の事忘れないからね。覚えてなさいよ!」

 

 そうまくしたてた後、赤髪の少女は俺とこちらに来ているスーツの人たちに背を向け、一目散に逃げて行った。というか足速いな。

 

「お嬢様~!」

「お待ちくだされぇぇ~!」

「屋敷へ、屋敷へお戻りをー!」

 

 そしてスーツの3人組は俺の横を通り過ぎ、逃げて行った少女を疲れた表情を浮かべつつ追いかけて行った。

 

「…………………」

 

 

 

 ……さて。

 

「買い出しに行くか」

 

 今のドタバタは…………忘れよう、うん。

 

 

 

――終

 




次々とオリキャラが登場する今日この頃…。
出来るだけ東方キャラを出したいんですけど、もう少し話数が必要になりそう…
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