フレンドの皆様の急進っぷりに涙。自業自得とは言え差を思いっきりつけられた気分です。
高校一年の頃、帰り道の公園で、東風谷 早苗という少女と知り合うようになった。
その後も俺は2~3日に1度くらいのペースで彼女とその公園で会い、適当に駄弁ることが日常になっていた。後になってその事を知った山田は羨ましげな視線を送る様になってきた。
また、会う日は平日の学校帰りだけではなくなり、休日には偶に街に出て適当にぶらつく事も時々は行うようになった。これにも山田は(ry。
そして20○○年、6月。
俺こと暁宮 満希は、4月に晴れて○○高校の2年生に昇級することが出来た。1年生で留年とかねーから!山田じゃあるまいし!いや、山田もちゃんと昇級したけどさ。
それはともかく、2年生というのは1年生と3年生に負けず劣らず、色々と忙しい位置づけとなる学年だ。授業の難しさも当然上がるし、後期になれば進学に向けてせわしなく準備に追われていくようになる。
加えて、1年生の頃とは違って後輩という存在が現れるようになる。これまでのように先輩たちに頼るだけでなく、自分たちも後輩を引っ張っていく者としていく必要があるのだ。板挟み。
それらは部活動や委員会に所属してると、特に顕著に感じるようになる事である。俺は部活動には入っていないし、委員会にも努めていないので大して振り回されることも無いのだが。……こうして見ると俺って、組織絡みの事に結構消極的?
そして後輩というと……。
「満希先輩、一緒にお昼ご飯食べましょうっ!」
以前公園で宣言をした通り、彼女は俺が通っている学校に無事入学することが出来た。急な進路変更に不安を覚えていた俺であったが、その心配も杞憂に終わる事となった。
ちなみに入学式の際、俺の姿を見つけた早苗が『お兄さーん!』と言いながらこちらに向かって良い笑顔で手を振ってきた。勿論、彼女は注目の的になっていた。そして俺も、山田がその場であの子の知り合いだとバラしたせいで同じく注目される羽目になった。周囲から質問を受けた分、山田には制裁を与えておいた。当然だよね。
さてそんな彼女だが、入学以降は昼休みなどの空いた時間は俺のクラスへ足を運ぶようになっていた。基本的には一緒に昼食をとるためである。
現に今も、ニコニコと笑みを浮かべながら、弁当片手に俺の席へと駆け寄ってきた。これももはや日常の一部だ。
「ああ、いいよ」
「はいっ。それじゃあ遠慮なく」
もちろん、俺に断る理由もないし一緒に食べようというお誘いは素直に嬉しいものだ。俺は慣れた手つきで早苗が弁当を置けるスペースを確保してやる。
早苗も俺の作ったスペースに弁当を置き、近くの椅子を借りてそこに座った。
「いただきま~す♪」
「いただきます」
そして、二人で合わせて合掌。それぞれの食事に手を付け始める。俺の弁当は簡単な握り飯と、冷凍ものを詰め合わせたお手軽な内容となっている。一方の早苗は卵焼きやタコ型のウインナーなどのメジャーなおかずから、どう見ても自分で調理したようなものまで揃った、手作り感満載の凝った弁当。高校生でこのレベルとは……末恐ろしい子……!
ちなみに彼女の好意でおかずを食べさせてもらったが、やはり美味かった。高校生で(ry。
「ふふーん、実はさっきのおかずは昨日の夕飯に作ったんですけど、自分でもかなりの出来栄えだったって思ってるんですよ。お母さんたちからも評判が良かったんですから」
「確かに、今のおかずは俺もかなり美味いと思ったよ」
「そうでしょうそうでしょう?満希先輩にも高得点を頂けたのなら、ますます自信がついちゃいます!」
そう言って早苗は、高校生にしては大き目な胸を強調するかのように胸を張る。ドヤァ、と大げさな擬音が出て来そうな程にその表情は誇らしげである。褒められて喜んでいる彼女の姿は、実に微笑ましいものだ。
俺から見た早苗は、基本的に明るい子である。加えて言葉遣いも非常に丁寧で、同年代はおろか年下の相手に対しても敬語を使うほどである。そういった物腰の良い姿勢に、彼女を慕うクラスメイトは多くいる。
勉学にも手が通っており、入学して間もなく行われたテストでは高得点を叩きだし、その容貌と合わせて注目の色を伸ばしている。
だが、そんな彼女にも少し困ったところがある。
それは、少し盲目的な部分が生じてしまう事だ。
「なぁ。いつも思ってたんだけど、ここに来る前に誰かに誘われたりはしなかったのか?友達とか、同じ学年の生徒とか」
「いましたよ?けど今日は満希先輩と一緒にご飯食べるって決めていたので、全部断っちゃいました!」
「…………」
ご覧の通りだ。
これは知り合ってから少し経った後に聴いた話なんだが、どうやら早苗は中学校にいた頃は友達が殆どいなかったらしい。理由までは教えてくれなかったのだが、こんな良い子なのに友達がいないというのは非情に不思議な話だと思う。
だからあの時、俺に声を掛けられたことが嬉しかったらしく、高校入学してすぐに俺に挨拶をしに来るほどに慕ってくれているわけだ。
もちろん、慕ってくれている事に何ら不満は無いし寧ろ嬉しいくらいだ。誰だって当然の考え方だと思う。
だが、彼女の先輩として思う所もある。
俺にばかり構わず、ちゃんと友だちやクラスメイトの人たちと積極的に交流を深めて欲しい、と。
「そう言えば、昨日も一緒に飯食ったな。その時は?」
「ほぇ?今日みたいにクラスの男の子から誘われましたけど、同じように断りましたよ?」
男子ェ……。
「……もしかして、一昨日も?」
「はい。一昨日どころか、入学してからかなりの頻度で断ってますよ?」
「……というかここ最近、毎日のように食べてるよな」
「確かにそうですね」
「…………はぁ」
嘆息。
俺の呆れている姿を目の当たりにした早苗は『え、えっ?何で溜め息なんて吐くんですかっ!?』と慌てているが、そりゃそうリアクションを取りたくもなる。どう見ても俺との昼食率が高いです、本当にありがとうございました。そして俺は何故もっと早く気付かなかったんだ。
さらに、一緒にいる時間はなにも昼休みの時だけではない。彼女も俺と同様で部活動に所属していないので、放課後には一緒に下校することが良くあるのだ。
そしてこれはマズイ。
このまま俺と一緒にいる時間が長引いてしまえば、早苗はクラスメイトと交流を深める機会を一層失くしてしまうだろう。そうなってしまえば彼女はいずれクラス……最悪、学年で浮いた存在になりかねない。それは俺としても御免被りたい結末である。
しかし、まだ手遅れでないはず。
既に孤立しているというのなら、今日みたいに飯に誘ってくる人がいるとは思えない。完全に孤立しているのなら、誘われることもないだろうからだ。それが6月である今まで保ってくれているというのはありがたい話。だがいつまで続くかも不鮮明であるという事も確かだ。
そうなると、俺としても対策を講じなければならない。早苗がクラスで一人にならないようにするために。
「早苗。来週くらいはクラスの皆と飯食ったり、放課後は友達と一緒に帰る様にしなさい」
「……?それなら、いつも週に一日くらいはそうしてますよ?」
「一日だけじゃなくて、来週は全部そうしなさいって事」
「……もしかして私、先輩に迷惑を掛けて……?」
「ちゃうめん。……じゃない、ちゃうねん」
「なんで関西弁に拘ったんです?」
なんか、響きが良いやん?オレ関西圏の人間じゃないけど。
それはどうでもいいとして、俺が提案した内容は、流石に早苗にとってショックに感じるものだったようだ。彼女の表情を見ればすぐに分かる。俺だってこんなに慕ってくれる後輩を突き放すような事は実行したくない。
だが、こうでもしないと早苗の今後の学園生活に不安が生じてしまう。ここは心を鬼にしてでも、彼女に周囲との交流を図ってもらわなければならないのだ。
許せサス……じゃなくて早苗、また今度だ。一緒に飯を食うのはな。
「う~……でもでも、私は先輩と一緒に居たいですし……」
「そんな上目遣いで、子犬みたいな雰囲気を出したってそうはいけません。やっぱ無しって言ってしまいそうじゃないか」
「……私が言う台詞じゃないんですけど、意思弱すぎませんか?」
「馬鹿を言うんじゃない。さぁ早く認めてしまうんだ、俺の気が変わらない内に!」
「どれだけブレブレな意思なんですか!?」
え、心を鬼にしたんじゃないかって?やかましい、こんな良い後輩を突き放すのだって楽じゃないんだよホント。
結局この後、取り消してしまいたい衝動に負けてしまわない様にしつつ早苗を説得し、何とか彼女の了承を得ることが出来た。せめて来週だけでも、クラスの人たちと空いた時間は過ごすようにしてくれるといった具合だ。
その代わり、明けの日曜日に彼女の買い物に付き合って欲しいという条件を出されたため、それを承認してこの件は丸く収まる事となった。
余談ではあるが、実は最近早苗が積極的に来るようになっていたのは別の理由があり、早苗のクラスの友達が――。
『早苗サンって、2年の暁宮先輩の事絶対好きだと思いまセン?』
『思う想う~!あんなにデレデレ寄り添ってるのに好きじゃない、なんてありえないんですけど!』
『それじゃあ、私たちは彼女を応援すべきですヨネ?』
『おお、それってチョー賛成なんですけど!』
といった勘違いをしていたらしいが、俺と早苗がその会話を知る事は無かった……。
――終
久々に現代に戻りましたが、やはり書きやすいですね。外来語とか和製英語とかバンバン使えますし(そこまで頻繁に使わなかったけど)
次回はラストで書いたデートの日をさらっと書こうと思います。
???「おい、トラウマ書けよ」
もう少し満希と早苗の絆を明ら蟹しておかないと、トラウマの重みが無くなっちゃうじゃないですかー!