一年で50話か……この調子だと、来年で漸く100話かな……?
という訳で、満希と早苗のデート回です。
前回、同学年と交流する機会が少なかった早苗の為を思い、俺は彼女に一週間ほどの交流期間を同学年内で設けることを提案した。彼女は色々と不満に思う所はありながらも、これを了承。彼女は元からいた友人を中心に、同学年で交流を深めていった。
この機会は見事功を成し、早苗の交友は一年生内でそれなりに広めることが出来た。つい先日、彼女の口から友達に関する話題が出て来たので、良い方向に向かっていると思えた。
勿論、これに過信してはいけない。設けた期間はたった一週間、これに甘んじていては折角作られた繫がりもあっという間に無くなってしまうに違いない。今後も俺との時間を調整して、上手く人間関係を築いていく必要があるだろう。
さて。そんな事が無事に終わり、今は日曜日。
俺が現在いる場所は、規模がそれなりに大きなショッピングモールの入り口付近。
俺の地元はそこまで栄えた場所ではなく、どちらかと言えば田舎寄りの町だ。だから遊びに行くという話になれば地元で済ませてしまうよりも、電車を使って隣町に来た方が選択肢も豊富で行き先に困る事はなくなるからだ。
俺がなぜ休日にこんな所に居るのかというと、それは冒頭での話を少し掘り返す必要がある。
早苗は、一週間ほど俺から離れてクラスメイト達と交流することを了解してくれたが、それに対して一つの条件を提示してきたのだ。
『今度の日曜日、私の買い物に付き合って下さいね!』
との事。
断る理由も無かった俺はこれを了承。そして今は待ち合わせ場所で早苗を待っている所だ。
腕時計で時刻を確認してみると、集合時間の10分前程度。どこか生真面目な彼女の事だから、そろそろやって来るかもしれないな。
「あっ、いた!せんぱ~~いっ!」
噂をすれば何とやら。
早苗は俺の姿を確認するやいなや、こちらに向かって元気に手を振りつつ駆け寄ってきた。
早苗の衣装は普段の制服姿とは一変、白いロゴTシャツの上には薄手のピンクカラーカーディガン、下は空色のショートパンツといった具合のコーディネート。普段は制服の影響かスカートの印象が強い彼女であったが、こういう格好も中々新鮮に見えるな。
「えっと、先輩……この格好、どうですか……?」
「ん?ああ。似合ってるよ」
「ほ、本当ですかっ?ありがとうございます!そういう先輩も、とってもカッコイイですね!」
「あ、あぁ……」
いかん。あんまり格好の事で褒められた事ないから……ちょっと照れてしまった。小恥ずかしかったが、早苗から特に何も言って来ないので、気にしないでくれたのだろうか。顔、赤くなってないよな?
いやいや待て待て。なにを動揺してらっしゃるのでしょうか俺は。大体、早苗と休日に出掛けるなんて前にも何回かあったジャン。ゆるーい雰囲気で、適当に駄弁りながらぶらついたりしてたジャン。なんで今日に限ってこういう反応してる訳?今は雰囲気ゆるくありませんってか?てか落ち着け俺。
「……えへへ、帰ったら諏訪子様たちにお礼を言わないと」
「ん?何か言ったか?」
「い、いえ。なんでもありませんっ」
確かに何か言ったような気がするんだが……まぁ本人が何でもないって言うなら、言及する必要もないか。
とりあえず、こうして早苗も来た事だから早速移動を始めるとするか。
「ところで早苗。何処に行くとか何を買うとか、その辺はどうなんだ?」
「ん~……取りあえず、適当にぶらついてみましょう!」
「……買いたい物があるから来たんじゃないのか?」
早苗の買うものがハッキリしていないことも相まって、俺たちは周辺を軽く見て回ることに決定した。何か面白い物でもあればいいんだがな。
……っていうか、これって傍目から見たらデートなのだろうか。
いや、自惚れ過ぎか。
「Oh!早速早苗サンと暁宮センパイが動きはじめましタヨ!」
「チョーヤバーい!もうまるっきしデートにしか見えないんですけど!むしろあれってデートなんですけど!」
「早苗ちゃんのフトモモはぁはぁ。満希のやつ、凝視しないとかあの良さをまるで分かっていない!」
「ちょっと山田・アントニキス・太郎・エロザエモンセンパイ、鼻息が荒いからもっと抑えないと変態みたいダヨ!捕まっちゃウヨ!」
「マジヤバいんですけど!警察に誤解される未来がヨユーで想像できるんですけど!」
「ちょっと君たち、こんな物陰で何してるのかな?」
「「「あ」」」
何か向こうの辺りが騒がしいような……気のせいか?
さて。
買い物が始まったのは良いものの、先ずはどこを見て回るか決めなければならない。早苗は摩訶不思議にも買い物に付き合って欲しいと言っておきながら買い物を一切決めていなかった。
だからこの場で、どの店を見るか決めてしまう必要があるのだ。ぶっちゃけこのモール内でどれだけ種類があるんだか……数えるのも億劫になりそうだ。
なんにせよ、面倒くさがったところで行き先が決まるわけでもなし。
早苗に希望でも聞いてみようか。
「なぁ早苗。お前はどこか見て見たい店とかってあるか?」
「あ、私この辺りに来たことが無いので。行き先は満希先輩にお任せします!」
「お、おう」
おい提案者、それでいいのか。
というか、俺もこの辺りは案内できるほど詳しくないんだけど……。
そんな感じでグダグダなスタートとなった、俺と早苗の買い物。
さっきも言った事だが、早苗も俺もこのショッピングモールに精通しておらず、余裕をもって案内など到底出来るものではない。何故ここを選んだ、早苗さんや。
加えて今日は日曜日という事もあって、モール内は人の姿で一杯となっている。気になる店の方に目を奪われていては、迷子になるなり人混みに流されるなり、厄介な事になるのは容易に想像できよう。
しかし、こうも人が多いとやはり歩き辛い。
先ほどから入り口に向かって奥の方向へと歩いているのだが、対向する人とぶつからない様に身を反らす回数が無駄に多い。
早苗も俺にはぐれないようにしようと、懸命に俺の後を追ってきている。来て早々に迷子になるなんて、学校の連中が聞いたら暫く笑い話のネタにされてしまいそうだからな……。
俺も彼女と離れない様に、気を付けておかないとな。
「そ、それにしても……今日は随分と人が多いんですねっ」
「だな、取り敢えず適当な店に潜り込んで、流れが落ち着くまで時間潰ししておくかっ」
周りの人の数が多いだけあって話し声の量もボリュームも目を見張る。こうして少しばかり声を張っておかないと、相手に全部伝わり切らないくらいだ。
もしかすると、今日は何かしらイベントがあるのかもしれないな。事前に調べてないから知らないけど。
まずはどこか店に入って、この人の流れを掻い潜る事にする。
そう決めた俺たちは、とにかく近くにあった、という理由の元で傍の店に駆けこんだ。
店に入り『漸く一息つけます』と安息する早苗の呟きに共感しつつ、俺は店の内部を一瞥する。
抜きんでた高級感は無く、親近感の湧く小洒落た雰囲気を醸し出しており、店内に置かれているのは衣類のものが多数を占めていた。しかし、その全てが女性が着る様なデザイン。
詰まる話、レディースファッション向けの店である。
いきなり居づらい場所に来たなー。しかもザッと見て他の男性客がいないなー。場違い感が半端ないなー。
「うわぁ、オシャレな服がいっぱいありますね~。先輩、折角なのでここでお洋服を見ていきましょう!」
「ああ、いってらっしゃ……え、俺も行くの?」
「当然です、先輩には審査員としてどの服が似合うかちゃんとジャッジしてもらわなければいけませんから。さぁさ、早速行きましょうっ!」
逃げられないんだZE☆
「あれ!?早苗と暁宮先輩、どこに行っちゃったんですけど!?」
「ヘイ、その用法は明らかにおかしいデス!けど本当にどこに行ってしまったんでしょウカー!?」
「やべぇよあのデニムショート穿いたギャル……あの尻とふとももは反則だろ……アカン、俺の股間のトランセルが――」
結局あの後、早苗によるファッションショーに付き合う事となった。
早苗は目についた興味深い服を次々と手に取っては、試着室に持って行って着せ替え人形のように着替えまくった。一人でパリコレをやっているかのような勢いとバリエーションで、それを見ていた店員が苦笑せざるを得ない程であった。
俺はそんな彼女の審査員という事で、色々と感想を求められることとなったが、正直なところ周囲の視線が気になって複雑な思いを抱えていた。特に早苗が服を探したり試着している最中は目立って仕方が無かった。めっちゃ逃げたかった。
しかし本人は凄く楽しそうにしていたので、これはこれで良かったのかもしれない。
「えへへ……いっぱい買っちゃいましたっ」
「まったく、気に入ったものが多いからって店に買い置きするくらい買っていくなんてな」
「むぅ……だってどれも可愛くて、捨てがたい服ばっかりでしたもん」
俺の態度に不満を感じた早苗が、小さく頬を膨らませながら俺を睨んでくる……が、上目遣いでそんな事されても怖くも何ともないわけで。寧ろ可愛らしいくらいであった。
そんな彼女のリアクションに、俺は苦笑を深めざるを得なかった。
さて、そんなところで一つ困ったことが起きてしまった。
実は先ほどの買い物で、早苗の所持金がごっそり持って行かれてしまったのである。すっからかんと例える程酷くはなっていないのだが、これ以上浪費してしまうと来月にお小遣いを貰えるまで心配になるのだとか。そしてそれに気づいたのが、服を買って店を出た後だというのだから、早苗ェ……。
そういう訳で、まずは今日の昼食は俺が奢ってやることになった。
もともとどこかで奢ろうかと考えていたので、ちょうどいいと言えばちょうどいいのだが。
「ということで早苗、昼飯のリクエストがあったら言ってみ?」
「そうですねぇー……あっ、私あの店で食べてみたいです!」
「どれどれ……?」
どう見てもセレブっぽい人が通うようなお高いお店です、本当にありが(ry。
では早速入って飯を――。
「って、あんなとこ行くわけないだろうが」
「てへへ……冗談です冗談。私は満希さんが食べたいもので良いですよ」
「結局俺が決めるのね……」
もし恋人が出来てデートとかするようになったら、俺って苦労しそうだな。
という想像を密かにしつつ、俺は『近くにあったから』という理由でパスタなどの麺類を主流とした飲食店に彼女を連れていくことにした。
「むっ、あの二人が何かの店に入っタヨ!お店からしてどうやらお昼ご飯みたいダネ!」
「あぁ、確かにもうお昼頃なんですけど。山田先輩、ここは先輩としてうち等に奢るべきだと思うんですけど」
「そうだなー、今日の下着の色教えてくれちゃったら奢ってあげようじゃないの。デザートが欲しいなら直接パンツを見せて……あ、ちょ、そのストレートの構えはマジでヤバ――」
店に入る直前、何か後ろで男の悲鳴が聞こえた。街中で何してんだか……。
昼食は何事もなく終わり、それぞれの料理に称賛しながら俺たちは店から外に出た。こういうところにある料理店も、中々捨てたものじゃないな……何という上から目線だ。
モール内のメインストリートも時間が経った影響で、最初に訪れた時よりも人の流れが緩やかで幾分か歩きやすくなっていた。やはり適当な店で時間を潰しておいたのは正解だったな。
「先輩、次はどこに行きますか?」
「そうだな……」
俺は早苗の質問に答えるべく、次の店を考えようとする。
……が、1つだけ思い出したことがあったので、すぐにその考えを打ち消した。
「早苗、ちょっと向こうのベンチで待っておいてくれないか?」
そう言って俺は、少し先の方にある開けた場所……噴水やベンチ、自動販売機などがあることから、休憩所の役割とした広場のようなところに指を指した。そして、彼女にそこへ向かうようにと告げた。
「良いですけど……先輩は?」
「ちょっとな。すぐに行くから、待っといてくれ」
気になる、と言った様子でありながらも俺の言葉に従って広場のベンチに向かって行く早苗。
彼女が向かって行った事を確認した俺は、先程通りがかった道を少しだけ遡る。
そしてお目当ての場所に着くと、店の受け口で商売をしている年上の女性に向けて声を掛けた。
「すいませーん。このソフトクリーム2つくださーい。味は両方バニラで」
「ソフトクリームのバニラ味をお2つですね。600円でございます」
俺は600円ちょうどを手渡し、女性からソフトクリームを2つ受け取った。お礼を言ってその場を去り、そのまま早苗の待つ広場へと向かうのであった。
早苗は俺の言うとおり公園のベンチで座って待っており、こちらの姿を見つけたや否や、俺の両手に持っているソフトクリーム2つを見て、軽くビックリしていた。
「お帰りなさい。……もしかして、それを買うために?」
「そ。昼飯の後なのに若干物足りなさそうな感じがしてたのと、通りがかるスイーツの店を名残惜しそうに見てたから」
「えっ……も、もしかして……見ちゃってました?」
偶然だけどね。
「そう言うわけだから、ほい。せっかく買って来たのに溶けたら勿体ないだろ」
「わっ……あ、ありがとうございます!」
ズイ、と差し出されたことで少し驚いた早苗だったが、直ぐに調子を戻すとにこやかな笑顔を見せながらそれを受け取った。
美味しい、と言いながら笑顔で喜ぶ彼女の横に並び、俺も一口。美味い。
「…………」
「…………」
「こうして先輩と一緒に座ってると、先輩と初めて会った時のことが思い出しちゃうんです」
ほんの数分、俺と早苗が何も喋らない時間が生まれたあと。
沈黙を終わらせる一言を、早苗が言い放ってきた。
初めて、俺と早苗が会った日。
高校一年の頃、帰宅途中に公園で彼女が独りで座っている姿を俺が見つけたあの日だ。
「先輩には、まだ話したことがありませんでしたっけ?どうして私がいつも独りであの公園にいたのか」
「……あぁ」
俺は今日に至るまで、その辺りの事を彼女から聞こうとしたことは無かった。
興味が無い訳じゃない。むしろ、どうしてこんな明るくて良い子があんな寂しそうにしているのか不思議なくらいだった。
だけど、俺から聞き出すのは間違っていると、そう思えた。彼女の口から直接話してくれるのが、一番いいんだろうと。
俺は今、口数を控えて早苗の話を聞くことに専念しようと心に決める。そして彼女が話してくれることを待つようにする。
そして、早苗の口が重々しく開かれた。
「私、子供の頃から普通の人には見えないものが見えちゃうんです。ほら、テレビとかで霊能力者の特番とかタマにしてるじゃないですか。ああいう人たちと似たようなもので、私もそう言う存在が見えてしまうんです。小さい頃はまだぼんやりとしか見えてなかったんですけど、大きくなるにつれてぼやけてたものがどんどん鮮明に見えてきて……」
「……」
「私の家、神社があるんです。それでそこの神様の姿もハッキリと見えるようになって……お二人が私の事をずっと見守ってくれてたってことを知らされて、すごく嬉しくて。だから私、クラスのみんなに話したんです。だけど……私の話を聞いた途端、接し方を変えるようになってきたんです」
……なるほど。そう言う事か。
「話を聞いた人たちは、まるで私を得体の知れない宇宙人かなにかを見ているかのような反応をするようになってきました。噂で聞きつけた他の学年の人たちも同じような目で見てきて、今まで友だちだった子も……」
「……そうか」
早苗の元クラスメイトは、彼女を恐れてしまった。
大多数の人には見えないものを認識できる、特別という名の『異端』。周囲の人間は彼女をそう捉え、腫れ物のように邪険に扱いだす。
きっと、当時の早苗は相当ショックだったに違いない。
自身はただ、己の目に見える物を言っただけなのに。その存在に触れて、その優しさに気付いて、嬉しかっただけなのに。
だから彼女は、こんなにも辛い表情をしているんだろう。
「……正直に言うと、この事を先輩に話すのが怖かったんです。私の普通じゃない部分が先輩に知られて、それで気味悪がられて……先輩が私の元から離れちゃったらどうしようって。でも、先輩にいつまでも隠し事をしてるのも、嫌だったから……」
早苗……。
「先輩、正直に答えてください」
「こんな私は、やっぱり気持ち悪いんでしょ――」
「デコピン」
「あいたっ!?」
俺は失礼な事を言おうとした早苗を黙らせるべく、彼女の額にデコピンをお見舞いしたやった。
……けど強すぎた。思いっきり涙目になってるし。
「はう……痛いですぅ」
「アホな事言おうとしたからだ。おバカ」
まったく……この後輩は本当に世話が焼けるな。
「俺がそんな事でお前を気味悪がったり、嫌ったりすると思ったのか?早苗にとって俺がそんな薄情者だと思われていたのなら、それはちょっとショックだな」
「そ、そう言うわけでは……」
「もし俺の正体が宇宙人だったと知ったら、お前は俺を気味悪がるのか?」
「一緒に記念写真を撮ります!」
その返しは予想外だったぞ。
「ま、まぁ。そう言う事だ。お前が幽霊の類を見れようが俺の正体が火星人だろうが、早苗は早苗、俺は俺。そこに余計な鑑定をする必要は別にないだろ?」
「はい……」
「というわけでこの話はここで打ち止め。俺が気にしなくていいからって無理に周りにカミングアウトしなくていいし、言いたくないんだったらずっと言わなくてもだれも文句は言わない。だけど、自分を卑屈な目で見る様なら俺も少し口を挟ませてもらうからな」
「…………」
少し説教染みた〆になってしまったけど……早苗の為を思っての事だし、この子がそれをしっかりと受け止めてくれるなら、問題ないか。
そして宣言通り、これでこの話はおしまいとする。折角の休みなのに、早苗のテンションだだ下がりとか可哀想だからな。
そう言うわけだから……ここからはあいつらにも協力してもらうとするか。
「よし、それじゃああそこでストーキングしてる3人のとこに行くとするか」
「えっ、ストーキングって……あれ、どうしてあの二人と山田先輩が?」
「おおかた、俺たちの買い物風景でも覗き見て楽しんでたんだろうよ。なにが楽しくてやってんだか……」
ちなみに俺が気付いたのは、昼飯に寄った店に入る前。うすうす誰かの視線を感じてはいたけど、山田が派手に騒いだお陰であっさり判明してしまった。
「よし、それじゃあ合流するとしようか」
「はい!あ、向こうもこっちに気付きましたよ!」
とりあえず山田、お前はボコる。
その後、ストーキング3人組と合流した俺と早苗は成り行きで彼女たちと共に店を見て回る事となった。
隠れてきた3人は俺たちを追跡することで余裕が無かったらしく、これまでのんびりと店を見て回る事ができなかったらしい。そのためか、いつもより割増はしゃいで楽しんでいた。山田は小学生に返ったようなはしゃぎっぷりで、皆で思わず距離を取った。
早苗も級友二人と一緒に女の子向けな店を見ていくなどして、楽しそうにしてくれた。
ちなみにその時の俺は山田に軽食を奢らせていた。たいやき美味しかったです。
そして時刻は夕刻となり、俺たちはそれぞれ家に帰るべく帰路についていた。
山田と早苗の友人二人が俺たちの前の方でお喋りをしている最中、俺と早苗は数歩後ろのところで並んで歩く。
俺は、隣にいる早苗に向けて声を掛けた。
「早苗」
「はい?」
彼女はこちらの方に顔を向けて、じっと俺の方を見つめてきた。
「さっきも言ったけど、どうあってもお前はお前だ。もしあの事を周りに話して、それで周囲の対応が変わってもあんまり気にするなよ?それに俺はどうあっても、お前の『味方』でいるからな」
「『味方』、ですか?」
そう、『味方』だ。
早苗には何か特別なものが見えるということだが、本人がそう言っているのだから俺はそれを信じている。疑うつもりは微塵も無い。
だから俺は、そんな彼女の助けとなる。
高校に入ってからは、まだ早苗は誰にもその事を話していないらしい。もしかすると、いつか話す時がやって来るのかもしれない。ずっと秘密のままでいるのかもしれない。
しかしどんな結果になったとしても、俺は彼女を信じ続ける。彼女を悪く言うような奴がいるのであれば、何人でも言い負かしてみせるし鉄拳制裁も辞さないつもりだ。
「えへへ……先輩が『味方』なんて、すっごく嬉しいです!」
そう言って早苗は、明るく健気に笑って見せてくれた。
彼女がこうして笑ってくれるというのであれば、『味方』であるなんてお安い御用だと思えるほどに、彼女の笑顔は眩しかった。
「あ、……それじゃあ先輩、指切りしましょう!」
「指切り?」
「はい、先輩が必ず私を守ってくれるっていう約束です。やっぱり指切りしておいた方が分かりやすいですから♪」
なるほど。しかし指きりなんて何年ぶりだろうか。
俺は苦笑気味ながらも小指を伸ばし、先に伸ばしていた彼女の指に絡ませた。
懐かしい感覚を蘇らせながら、俺は彼女と指切りを交わした。
――必ず守る――
そんな『約束』を、胸に抱き。
――終わり
結構難産でした!
やった事も無いのにデートの描写とかドエリャー大変ですわ!そして何気の9000弱の文字数……デート回なのになぜこんな伸びたのか……。
そして過去編も次回で一旦ラスト。
主人公をとことんドン底に突き落とさなくちゃ(使命感)。