東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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アマテラス「小説を読むときは気分を明るくして、現実から離れて読んでくださいね」
満希「あかん、それ現実逃避!」




第4話 日常と能力

 俺がアマテラスさんの家で居候を始めてから約2か月が経過した。

 

 最初の頃はこの時代で覚えなければならない事が山ほどあり、自分のことで精いっぱいだった。

 しかし、最近は仕事の方にも慣れが出て少しずつではあるが余裕ができつつある。俺に見合った仕事を提供してくれた永琳さんには本当に感謝だ。下手に慣れない仕事に就いていたら、きっと慣れるのにまだ時間が掛かっていただろう。

 

「よし、掃除にゴミだし風呂場洗い…全部完了!」

 

 おかげで俺はこうして、アマテラスさんに変わって家事を行うことが出来ている。

 永琳さんの出来る大人っぷりにはつくづく感服させられてしまう。もう何もかも知っているのではないかと思うほどだ。

 

「ありがとうね満希くん、おかげで助かったわ。けど折角のお休みなのにお手伝いしてもらうなんてやっぱり…」

 

 そう言ってアマテラスさんは先ほどまで浮かべていた笑みから変わり、申し訳なさそうな表情を俺に見せる。

 

 アマテラスさんの言うとおり、今日は仕事の方は休みだ。

 俺の元いた時代は大体の仕事には週休二日制が低起用されているが、この時代はあくまで休みは週に一回だけ。ただしその分、一日の労働時間はやや短めに設定されている。前に早めに上がることが出来たため、その辺りも幅の変化があるのだろう。

 

 話を戻すが、俺は休日の時間を使ってアマテラスさんの家事の一部をやらせてもらっている。

 アマテラスさんとしては、俺には休みの日くらいはちゃんと休んで欲しいのだろう。2か月も過ごしていると分かるのだが、この人すごい優しいし。俺の記憶が正しければ怒っている所なんて見たことが無いくらいだ。

 

「気にしないでくださいよ、アマテラスさん。俺、いつもお世話になってばっかりだったからせめてこの位はやりたかったですし」

「そこまで気にしなくてもいいのに律儀なのね…でもこう言う事は言って聞くような子じゃないものね、あなたってば」

 

 そう言って、天照さんの表情に笑みが戻った。

 どうやらアマテラスさんも俺の性格が分かってきているようだ。なんだか嬉しいな、こういう自分を知ってくれてるって感じが。

 

「それじゃあ満希くん、少し休んだらいつも通り修行を始めましょうね」

「はい!」

 

 というわけで、修行の方も頑張っていくか。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 小休憩を挟み、家事による疲労もすっかり回復できた俺はアマテラスさんと共に庭に出る。

 青空の中で太陽が燦々と輝いている。今日は雲一つないほどの快晴っぷりだから外で修行を行う分には絶好と言えるだろう。

 洗濯物も早く乾いてくれるし、やっぱり晴れてると良い事多いなー。

 

「さぁ、それじゃあ今日は今までのおさらいをやっていきましょうか。まずはあなたの能力の詳細と、現時点でどれだけ制御が効くのかをしっかり頭に纏めるようにね」

「あ、了解」

 

 呑気に洗濯物の事を考えていると、アマテラスさんから声を掛けられた。

 俺はすぐに意識を直すと、彼女の話を聞く姿勢に入る。 

 

「まず満希くんの能力が何なのかについてね。最初に発覚したのは炎を放出や吸収すること…つまり炎を操る力ね」

「ですね。…最初はビックリしました」

 

 あの時の慌てようと言ったらもう……。敵に対しても何なのか聞こうとしてたし、現場を火の海にしかけたし、パ二くり過ぎだっただろ俺ェ…

 

 とまぁそれはさておき、まず俺が持っているのは『炎を操る力』だ。

 

 何が出来るのかと言うと、一つは炎を自分の身体から放つ事だ。

 放出する場所はどこでもいい。手のひらでも足でも背中でもどこからでも炎を出すことが出来る。 え、鼻?尻?絶対にそんなとこから出さんぞ。いやフリとかじゃないから。

 ちなみに能力を使う時にはイメージが必要になるが、イメージする強さが大きいほど炎の力(勢い、火力、大きさなど)が強くなる。手のひらはイメージしやすいから、今の所は手のひらで放つ炎が最も強力だ。

 

 二つ目は炎を自分の身体に吸収する事。

 吸収する場所はどこでもいい。手のひ(ry

 そして吸収した炎は俺が持つ能力の容量(キャパシティ)に加算されるようなシステムになっている。

 

 以上の二つが、俺の炎を操る力で出来る事だ。

 

 説明が一足遅くなったが、能力を使う時には『能力にだけ使用される力』が存在しているらしい。ゲーム的に言うと魔力ゲージとかSPが霊力や妖力、魔力だとすると、それとは別のゲージとがあると言った感じ。…分かり辛っ!

 まぁ、能力専用のゲージが俺の中にあると思ってくれればそれでいいか。

 

「炎の方は整理が出来たかな?それじゃあ次に、『もう一つ』の方を整理してみましょうか」

「了解」

 

 さっき俺が炎の説明をする時の冒頭で『まず』と言う言葉を使った事に気付いた人はもう感づいているかもしれない。

 そう、俺の能力は炎を操るだけの力じゃない。実はもう一つのものを操ることが出来るのだ。それは……。

 

 

 

「『熱』…これがあなたがもう一つ操れる力ね」

 

 

 

 今から一週間くらい前のことだ。

 

 その日の朝はかなり冷え込んでおり、いつも通り顔を洗おうとした俺はハンズフリータイプの蛇口から水を両手に汲んだらメチャ冷たかった。

 目は覚めると思うものの、そんな冷たい水で顔を洗うというのに多少の抵抗感を感じた俺は水を手に含めつつこんなことを考えた。

 

(はぁ~…こういうのも能力で温かくならんかなぁ、お湯になれーって感じで。ま、俺の能力じゃ蒸発がオチか)

 

 という願望と諦観を胸に抱きつつ顔を洗ってみると…なんと本当に水がお湯に変わっていた。

 その後、似たような事を何度かやってみたらイメージの有無でお湯への変化がある事に気付いた俺はアマテラスさんに報告した。

 

 

 

 といった経緯で俺に熱を操る力がある事を知った。

 

 よくよく思い出すと…しょうもなっ!

 

「どうかしたの?」

「いえ…ちょっと自己嫌悪と言うか何というか」

「?」

 

 ちょっと凹み気味の俺の言動に対して、小首を傾げてくるアマテラスさん。

 ホント、もうちょっとまともなシーンで発見しても良かっただろ俺…。炎の時といい今回といい、能力が絡むと妙に情けない事が何かしらあるよな。

 

「よく分からないけど…元気出して、ね?」

「…はい」

 

 お心遣い、痛み入ります。

 

「とりあえずおさらいを続けるけど…満希くんの熱を操る力は、基本的に自身とその周囲のあらゆるものが持つ熱を変化させることができるわね。熱を加えたり奪ったり…移し替えるなんて事も可能かしら」

 

 なるほど…炎を攻撃向けと考えると、こっちは生活向けって感じか。

 なんだか地味だな、熱を操るって。

 

「今は能力の覚醒から日が浅いからまだできないけど、使いこなせるようになれば操れる熱の範囲も広げられるはずよ」

「と言うと?」

「戦う相手の熱(体温)を奪って動きを鈍くしたりできるし、摩擦熱を奪えば相手は武器を握れないどころか歩くことや立つ事すらも出来なくなるわ」

 

 前言撤回。熱を操るってスゲー。想像以上にスゲー。

 

「まぁ何かしらの条件がつくと思うけどね。とりあえず結果としては『炎と熱を操る程度の能力』…これが満希くんの正式な能力かな」

 

 『炎と熱を操る程度の能力』、か……。

 炎だけじゃ使い道が限定されてたが、これなら色々と応用が利きそうだな。まだまだ使いこなせてないけど。

 

「…さて、満希くんの能力をおさらいしたところで、次はどれくらい制御できるか確認してみましょう。まずは私の手を握ってみてもらえる?」

 

 言われた通り、俺に向かって差し出されたアマテラスさんの手を握る俺。

 やはり大人だからか、蓮子の手と比べて大きかった。まぁ男の俺よりは小さめだが。

 俺の手の方が大きい筈なのだが、絹のように滑らかで柔らかな感覚を受け、まるで俺の手の方が包み込まれているような錯覚を覚える。

 

 おっといかん、集中せねば。

 

「それじゃあ次に、満希くん自身の熱…体温を上げてみてね」

「分かりまし……あ、でもやりすぎて火傷とかさせちゃうんじゃ…」

「ふふ、心配ご無用。太陽の力を操れる私が火傷に後れをとる筈がないわ。ちゃんと火傷になる前に防いでおくから」

 

 ホント太陽の力ってチート級な能力……聞く限りじゃ俺の能力の完全上位互換っぽいし。

 

 俺はアマテラスさんの言葉に納得し、俺は自分の身体の熱を上昇させる。

実を言うと、自分の体温が上昇しているというのに俺は自分の身体の変化が分からなかった。それに加えて体温が常人の数値より高いにもかかわらず、永琳の検査で何も体に異常が発生していなかった。

 恐らく能力による影響…加護的なものが発動しているのかもしれない。

 

「うん、熱の上昇自体はちゃんとコントロールできるみたいね」

 

 俺の手を伝って熱が上がっているのを感じ取ったアマテラスさんが微笑を浮かべて俺にそう言った。

 俺も自分の熱が上昇した影響で、アマテラスさんの手が先ほどより冷たく感じるので熱の上がり具合が分かる。

 

「それなら次は、上昇させた温度を元に戻してみてね」

「はい。……」

「…うんうん、ちゃんと下げられてるわね。熱を操れるって知ったのは最近だったはずだけど、練習したの?」

「はい。炎と違って場所を選ばないので、割とどこでも練習できますから」

 

 以前街を歩いていた時、路地裏で能力を見せびらかしていた不良が警察に補導されているのを見かけた。

 話を聞いてみると、他人に害を与えるような能力は公の場で使用されることを禁止されているらしく、それを破ったら補導&罰金の処置がお出迎えしているとの事。

 

 そんなん嫌や!という事で俺は炎の練習は永琳さんの研究室や家の中など、能力の使用を認められた場所でしか行っていない。その二つは防火機能が充実しているらしく、覚醒したての俺の炎じゃ火が付くことはまずないらしい。安心できる反面、なんか悔しい。

 

「うふふ、偉いわね。それじゃあ今度はどこまで熱を操れるか確認したら、炎の練習もやっていきましょうね」

「はい!」

 

 よし、もっと練習して制御を完璧にしていくか。

 そんでいつか、防火性の部屋にも火がつけられるように!

 

「ダメです」

「ウェイ!?」

 

 なぜ心が読まれたし。

 

 

 

――終

 




ここで満希の能力の名前と詳細が判明。『炎と熱を操る程度の能力』でした。

実を言うとこの能力にした理由は「炎を操るオリ主って中々少なくて被り辛そうだし、主人公っぽいし良いよね!」です。なんじゃこりゃ。
熱も操れる理由は、本編でも書きましたが能力の応用の幅を利かせるためです。炎と近縁のもので選ぶとしたらこれだろう、と。

さて、少しずつではありますが私の小説を読んでくださる方が増えていて大変うれしく思っています。読んで下さる方々、本当にありがとうございます!
これからも細々と書いていきますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。
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