東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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 本気で筆が進まない……文も全然サクサク進んでくれないし、スランプなのか展開が書き辛い内容なのか……。



第59話 『嫌な繋がりだよ』

 三日月状の月が浮かぶ夜の最中、森の湖にて戦いが始まった。

 

 大蛇の攻撃は、鈍重なれど畳み掛けるように次々と繰り出されている。

 攻撃の主軸にあるのは、その長い身体を駆使した薙ぎ払いで。身体を鞭のようにしならせて為されるその攻撃は、一つ一つが並々ならない一撃を誇っている。

 

《むんっ》

 

 現に敵の攻撃を躱し続けているのに、どうして威力が分かるのか?というのは単純な話だ。

 確かに俺は先ほどから敵の身体に触れていないため無傷だが、その代わりに近くの木や地面が大蛇の攻撃に直撃している。木は真ん中から強引にへし折られ、地面は抉られた傷跡を付けられている。

 普通の人間がこの一撃を喰らえば……ひき肉にされる事は明白だ。

 

 この大蛇は戦う前に、自分のことを大妖怪だと自称していたのを思い出す。

 確かに自然を易々と破壊する威力を目の当たりにすると、確かにその言葉が妄言だけではないと考えさせられる。この蛇がどれほどの年月を生きているかは知らないが、それなりに長い方であろう。

 

 だからといって、このままコイツの思い通りに事を運ばせるわけにはいかないが。

 

 敵の攻撃を躱し、宙に身を翻した俺は、能力を使って掌に炎を集束させる。

 そして腕を横に大きく振るった。

 

「疾っ!」

 

 すると炎は扇状に放散し、まっすぐ大蛇の方へと駆けていきだした。

 

 しかし、大蛇は身の丈に見合わないスピードでこれを回避。大蛇への照準を外れた炎は地面へとぶつかり、弾け散っていった。

 

 続けざまに俺は、扇状に炎を発射。今度は2連発でいってみた……が、これも躱されてしまう。

 やはり、距離が開いているとあの巨体でも当てることは難しいか。一応、もっとスピードのある技は持ってはいるが……如何せんあの質量に対して火力が足りるかどうか。

 

「流石にあの巨体での攻撃は食らいたくないんだが……もっと接近して挑まないと駄目か」

 

 あの大きさで動きも順当に鈍かったら攻撃が当てやすくて都合が良かったのだが、なかなかそうはいかせてくれないらしい。

 早々に区切りを着け、次の行動に移る事にする。

 

 跳躍飛行で宙に留まっていた俺だったが、それを解いて重力に身を任せる。身体が逆さまになったところで地面を再度蹴り、落下速度に加速を付けた俺は一気に大蛇目掛けて突っこんでいった。

 道中、大蛇による尻尾の攻撃が降りかかってきたが、ギリギリの所を見切って回避。

 そのまま俺は蛇の懐へと肉薄すると、足に炎を溜める。

 

 そしてここで、見様見真似ではあるが青娥から貰っていた仙道書の内容を試してみることにした。

 青娥が言うには、生物という存在には平等に『気』というものが備わっているらしい。詳細まで説明するとかなり専門的な話になってしまうのだが、要約するとその『気』が生物の精神面、肉体面両方に対して大きな恩恵を引き起こしてくれるらしい。氣功による健康法なども、この一種だ。

 

 『気』による身体能力の強化。

 それが、俺が今から行おうとしている試みだ。

 先ほども言ったが『気』は生き物の体と心に大きく作用を働かせる存在。それを上手く制御、調整することが出来れば肉体をさらにパワーアップさせ、変身していない今の状態でも、強力な攻撃を放つことが出来るということだ。以前の道中で仙道書片手に紫と話していたのは、この事だ。

 今日を迎えるまでに、本の内容は一通り確認させてもらっている。そして今、実行に移す時だ。

 

「……」

 

 集中してみると、確かに身体の中で何かが駆け回っていることが感覚で理解できる。血液とは違う、独特の感じが伝わってくる。

 これが『気』という奴なのだろう。

 後は、これを上手く操れれば御の字なんだが…………っ!

 

「ちっ」

 

 意識を戻した時、俺の眼前には迫り来る大蛇の身体があった。

 寸前で躱すことに成功したが、もう少し気付くのが遅れていたら喰らっていただろう。足に着けていた炎も、今は集中を欠いたせいで焼失している。

 

 構わず、俺は再度動き出す。牽制として炎の弾を何度も撃ちこみながら、大蛇の視界外へと走り抜けていく。

 

 自身の頭部、胴体へ不規則に襲い掛かってくる炎弾を前に、大蛇は舌打ちをしながら回避と防御を組み合わせている。

 

 その隙に俺は二度目の接近に成功し、再び炎を足に纏わせながら『気』を練り始める。

 

《鬱陶しい》

 

 ……が、今度も妖怪に気付かれてしまう。

 反撃を喰らいそうになったので回避して距離をとった。

 

 距離を取った俺を、まるで道端のゴミを見下ろす様な眼差しでこちらを見てくる大蛇。

 

《ふん。チョロチョロと動き回ったかと思えば急に動きを止めたりと、さっきから何を企んでいる?》

「(……攻撃に移るまでの時間が掛かりすぎる、か)」

 

 やはりまだまだ、『気』の練り方が下手くそということか。動きながら『気』を練ろうとしてみたが上手く出来なかったし、今のままでは実戦に使える域には到底達していないな。

 流石に今回の戦いで試し続けるのはかなりリスキーだと思われるので、問題点発掘ということで終わらせ、もっと訓練を重ねてから実戦で使う事にしよう。

 

 ……こうなるんなら、素直に普通に攻撃しておけばよかったかな。

 

《まぁいい。いくら動き回っていようとも最終的に貴様は俺様に食われるだけの存在。多少の戯れ程度、付き合ってやるのも面白かろう》

 

 縦方向に振り下ろされる、大蛇の胴体。

 叩き潰そうという気で満ちているその攻撃を横に跳んで避け、着地する。

 

「戯れ、ね。あんまり嘗め過ぎてると碌な事にならないんだが」

 

 

 

 

 

――変身。『モード・カグツチ』

 

 右手の指輪から光が溢れる。

 光に包まれた俺の姿は、瞬時に黒の鎧を纏った容姿――モード・カグツチへと変貌を遂げる。

 近接戦闘において非常に強大な力を有している、俺の変身形態の一つだ。

 

≪……!?貴様、その姿は一体……≫

 

 当然、この姿の存在を知らされていない大蛇は今の俺の姿を見てその表情を一変させる。仰々しい様子では無いが、人間が起こす芸当ではない光景を目の当たりにし、少なからず動揺しているみたいだ。

 ……仮にも大妖怪なら、もう少し落ち着いてても良いと思うんだが。まぁいいや。

 

 俺は一瞬のうちにして大蛇の傍まで肉薄すると、頭部まで一直線に跳び上がり、拳に力を込める。

 大蛇がこちらを認識する直前に、握られた拳を横っ面に目掛けて思いっきり叩き付けた。

 

≪ぶっ……!?≫

 

 大蛇の上体が、派手に仰け反る。

 

 殴り飛ばした勢いのまま、俺は落下に合わせて大蛇の胴体に向けて炎付きの蹴りをぶちかました。

 先ほどよりも高い威力の攻撃に、悶絶の悲鳴を上げながら倒れ行く大蛇の姿が目に見えた。

 

 更に、すかさず尻尾の傍まで駆け寄った俺はガッチリとホールドを行い、全身に力を込める。かなりの重量を感じながらも腕全体に膂力を掛け、俺は上方に力を向けた。

 

「……ぉぉおおおおっ!!」

 

 すると……数十メートルもある大蛇の肉体が、フワッと大地から離れて浮かび上がった。

 

「らぁっ!!」

 

 そして、湖に目掛けて思いっきり投げた。

 

 蛇の身体はそのまま湖の中へと飛び込んでいき、盛大な水しぶきを発生させた。軽い洪水レベルで湖から水が失ってしまったような気がする。

 水しぶきとなって上空から降りかかってくる水の塊を、俺の周辺の熱を操る事で鎧に掛かる前に蒸発させる。俺は大蛇が落ちて行った湖の方へと、歩きはじめる。ちなみに道中、濡れた地面があったが能力を使っている影響でジュウジュウと音を立てて蒸発してしまっている。

 

 歩いている最中、湖からは沈んでいた大蛇が身を現していた。

 

《ぶはっ!……おのれぇ、人間如きがこの俺様をコケにしおって……》

 

 ザバァ、と音を当てて湖から陸に上がってきた大蛇。

 頭から水を被ると冷静になれるって話を聞いたけど、そういうわけでもないらしい。

 大蛇は怒気を込めた声で恨めしそうに俺を睨みつけてきている。表情からも殺意がアリアリと伝わってくるほどに、俺の攻勢が憎いらしい。

 

《たかが人間に使うまでもないとタカをくくっていたが……ここまで嘗められては仕方がない、俺様のとっておきの能力を拝ませてやろう》

「能力?」

 

 まさか、この妖怪も能力持ちだったのか?

 

 そう思っている俺であったが、突如俺の周辺の地面の様子がおかしくなりだした。

 地震が起こっているわけでも、モグラが潜んでいるわけでもないというのに……地面が揺れているのだ。

 

《俺様の能力は『土を操る程度の能力』!ここら一体の土はすべて俺様の手足のように自由自在に操ることが出来るのだ!……このようにな》

 

 大蛇がそう言い放った瞬間、俺の周辺の地面が隆起し俺の行動範囲を塞ぐかのように生物的な動きをしだした。複数の土塊が上下左右を行き来し、徐々に壁を作り出している。

 

「……これは」

 

 土塊の動きが止まった時、その結末が示された。

 瞬く間に土塊はドーム状に展開され、俺はその中へと閉じ込められてしまったのだ。完全な密閉空間となっているようで、真っ暗闇の中を見渡してみても隙間らしきものはどこにも存在していなかった。

 

 俺は手探りで土の壁までたどり着くと、コンコンと叩いて見せた。叩いた様子だと、土の強度にしては随分と頑丈である事が理解できた。多分、土の中の鉱物な何かも能力を使う際に巻き込んで、粉々にして練り込ませるなどの用法で硬度をあげているのかもしれない。

 窒息を狙っている、と言ったところか。

 

 という風に分析を行っていると、土越しに外から大蛇の声が聞こえだした。

 

《どうだ、脆弱な人間が生意気にもこの大妖怪である俺様を馬鹿にするからこうなるのだ!下等生物は下等生物らしく、素直に俺様たち妖怪に食われていればよいのだよ!》

 

 台詞が何とも三下臭い。

 

 しかし、この程度の強度だったら――

 

「……はぁっ!」

 

 

 

――破壊するのは、問題無い。

 

 俺は集中して足に力を溜めこむと、土の壁に目掛けて強烈な蹴りを放った。弧の軌道を描く蹴りは、そのまま土の壁へと激突する。

 

 土の壁は俺の脚が当たった直後、豪快な音を立てながら砕け散り、大きな穴をぶち開けた。また、その衝撃が伝わった影響で俺を囲っていた壁全体がヒビを立て崩れていった。

 

《なっ……》

 

 突然の事態に、呆気にとられる大蛇。

 

 俺は左腕に填めている腕輪の方へ手を添えながら、大蛇に向かって口を開く。

 

「あんまり派手に騒ぎ続けても、村の人たちが不安がるだろうからな……そろそろ終わりにさせてもらうぜ」

 

 

 

 

 

――変身、『モード・コノハナサクヤ』

 

 腕輪を弾く。その直後、腕輪から光が放たれて俺の身体を包み込んでいく。

 そして光が晴れた頃には、先ほどまで纏っていた黒い鎧は影も形も無く、その代わりに魔法使い風の真っ赤な外套と三角の帽子を装着した姿となっていた。

 

 これが、遠距離攻撃や炎の攻撃に長けた形態――『モード・コノハナサクヤ』である。

 

 変身を終えた俺は手に持っていた杖を構えると、杖の先端を地面に突き当てた。

 

 すると、大蛇の足元から多数の炎弾が噴出し始めた。他人事みたいに言っているけど、俺が仕掛けた事である。

 数々の炎弾は軌道こそは直進ながらも、その大半が巨体である大蛇の身体に直撃しており爆発を起こしている。

 当然、大蛇にはかなり効いている様子。

 

 更に俺は杖を未だなお発射中の炎弾に対してピッと差し向け、そのままクルクルと杖を巧みに回し始める。

 炎の弾はピタリと動きを止めるや否や、俺の杖の動きに呼応する形で回転運動を開始し、それぞれの炎がその姿を徐々に細長く伸ばしていく。

 やがて炎は一つの大きな渦を形成させ、中にいた大蛇を巻き込む形で激しく天へと遡る勢いで巻き上がっていった。

 

《ぐ……おぉぉぉぉぉ!!》

 

 炎に苦しむ声を発しながら、炎の渦に巻かれている大蛇。

 

「決めるか……」

 

 俺はそう呟くと、杖を構えて詠唱を開始する。俺が詠唱を始めた途端、足元が線を描きつつ光始め、その光は次々動きを見せていく。

 やがて俺が詠唱を完成させると、その頃には、俺の足元にそれなりの規模の魔方陣が展開されていた。

 

 赤い光が溢れ出ている陣の中、俺は杖を再度構え直す。

 そして、槍を突き出す要領で持っている杖を一気に前へと向けた。

 

「これでも、くらいなっ!」

 

 突き出された杖の先から飛び出て来たのは、竜。

 正確には竜の形をした炎の塊だが、そのスケールはこれまで披露した炎の技のどれよりもド派手な使用となっている。

 当然、こんな手間の掛かった詠唱やら魔方陣やら準備しているだけあって、威力はこれまででも最上級。

 

《ギャオオオォォっ!!》

 

 炎の竜は生き物のように変則的な動きを見せながらも、標的である大蛇の方へと確実に向かっていく。

 そして呼び出しておいてなんだけど、ただの炎の塊でありながら、雄叫びを上げている。生き物のようにっていうか、これほんとは生きてんじゃね?

 

 とまぁさておき、生きている疑惑のある竜は空を駆け、炎の渦にあおられて空中に晒されている大蛇の元へと到達すると、そのまま激突。

 

《グオォォォォォッ!?》

 

 そして、大爆発。

 正確には正面から突っこんで炎である自分の肉体に大蛇の身体を埋め込んだ後、衝撃を自発的に起こすことで、拡散。その影響で自身の身となっている炎は弾け散ってしまうが、取り込んでいた敵の身体をボロボロにするほどの威力が大蛇に襲い掛かるのだ。

 

 別に、竜の形にする必要ないんじゃないかって?

 俺もそう思うけど、なんでかこんな形になってしまうんだから、仕方ないんだ。

 

「ふぅ……」

「終わったみたいね」

「みたいだな」

 

 俺が変身を解除すると、遠くから見守っていたであろう紫がスキマを使ってこちらの近くまで現れてきた。

 彼女が出て来たという事は、やはり向こうは完全にK.O.されてるってことでいいらしいな。

 

 紫を連れて大蛇が居た場所まで訪れてみると、足元に何かが落ちているのに気付いた。

 試しに俺は、その落ちている物を拾い上げて、確認してみた。

 

 それは、サイズこそ全く違うものの、先程戦っていた大蛇であった。さっきまでは十数メートルはあったというのに、今は手のひらサイズ程度に収まってしまっている。

 

「……なんか小さくなってるぞ」

「多分、自分の妖力を使って自分の肉体の巨大化に当てていたのでしょう。たまにだけど、年月経過で得た妖力をそういうことに使う妖怪もいるらしいからね。で、貴方の攻撃で肉体を手ひどく傷つけられたことによって身体から妖力が零れ落ちて、こんな小ささになってしまったのでしょう」

 

 妖力って、そんな事にまで使えたんだ……。

 だとすると、このナリであそこまで大きくなれたこの妖怪ってやっぱり大妖怪級の存在なのか?

 

「けどあのやられっぷりを見る限りでは、自分の体格を大きくするあまり、それ以外についてはあんまり構っていなかったみたいね。大妖怪を自称する割には実力の方がおざなりだったみたいだし。少なくとも、この妖怪は大妖怪と呼ぶほどの奴でもないわ」

 

 違うんかい。

 

《ぅ……わ、悪いか!こんなちっこい姿じゃ誰も俺様の事を怖がってくれないし、同族にだってバカにされてしまう……だからあのくらいデカくなって、人間どもに恐怖を与えながら肉を食うしかなかったんだよ!千年くらいかけて、ようやくあのデカさになったと言うのに!》

 

 なるほど、コンプレックスだったわけね。

 だからと言って、他が残念使用になる位に身長育成に夢中になってどうするんだか……それじゃ本末転倒になりかねないだろう。

 

 ともあれだ。こいつの正体とその経緯については知ることが出来た。

 だが、人間を食おうとした事実は何も変わっていないので、俺のやる事も変わることは無い。

 

「よし、じゃあ投げるぞ。歯ぁ食いしばれ」

《え、投げ……え?何が?》

「方向は……こっちで良いか。このナリなら人を襲う心配がないとはいえ、都とは反対方向の方が問題も起きなさそうだし」

《いや待て、本気で投げるつもりか!下等な人間如きがそんな真似をしてタダで済むとでも――》

「そぉい!」

《おもぉぉいいぃぃぃぃっ…………!?》

 

 こうして、手乗りサイズとなった自称大妖怪を空の彼方へと思いっきりブン投げ、星に変えた。

 奴も言っていたことだが、奴が元に戻るためには千年程度の期間を要する必要があるらしい。それまではあの蛇も大人しくしているだろうし、そもそもそれまでにこの過酷な世界を生き延びていかねばならないので、彼の行方は誰にも分からない。俺も知らない。

 

「さて、そろそろ戻るか。結構派手にやってしまったから、村の人たちも起きてるかもしれないが」

「あんまり不安がらせるとどうなるか分からないものね……早々に説明を付けて安心させてしまおうって事ね?」

「そういうこと」

 

 そうして俺たちは、事件解決の一報を届けるために村へと戻る事にした。

 

 

 

 

 

 ……それにしても。

 人間と妖怪、かぁ……。

 

「なぁ、紫」

「なにかしら?」

「やっぱり紫もあの蛇みたいに、人間は妖怪に食われるエサっていう認識なのか?」

「そうねぇ……」

 

 少し考えるそぶりを見せた後、紫はこう答えてきた。

 

「分からないわ」

「分からない?はい、いいえとかじゃなくてか?」

「確かに。あの妖怪が言っていた話は妖怪の世界では常識的な事よ。妖怪というのは大抵が人間の恐怖から生まれた存在、そして人間の恐怖もしくは肉体を生きていく糧として生き続ける存在よ。もっとも、全ての妖怪がそれらを必要としているわけではないけどね。それ以外で生命を維持する手段もちゃんとあるわ」

「……そう言えば、紫がこれまでの旅で人間を食べてる姿は見たことが無いな」

 

 紫がこれまでとっていた食事は、俺と同じで魚や動物の肉、山菜など人間が普通に食すものばかりであった。

 今迄特に気にしていなかったのだが、ふとそんなことを思い出した。

 

「私は、人間を食すことが何か受け付けられない感じなのよ。他の妖怪が人間を食べている光景を見ても、美味しそうだとか私も食べたいだとか、そういう風に思った事も無かったし」

「そうなのか」

「えぇ……だから、分からないの。大半の妖怪は、人間の感情や肉体を喰らう事で生き続ける者。だけど私は妖怪の筈なのに、人間を喰らう事を受け付けることが出来ていない妖怪だっている。そう考えると、色々とね」

「……そうか」

 

 妖怪は、そのほとんどが人間の恐怖の感情から生まれる存在。その食事となるのも、自身を生んだ存在である人間の感情と、肉体。

 

 一方で人間は、妖怪という存在に恐怖し、中には食料として食われてしまう運命の者もいる。俺のような力を持っていない人間は、優れた身体能力を有している妖怪に成す術も無く食われてしまう。

 

 人間にとっては、忌避を望み出来る限り縁を切りたい存在である妖怪。

 妖怪にとっては、己の食糧であり決して離れることが出来ない繋がりを持つ人間。

 

 

 

――嫌な繫がりだよ。

 

 

 

 決して綺麗に合わさらない二つの存在。

 

 どうしようもない問題を目の当たりにし、俺はただため息を吐くのみであった。

 

 

 

――――――終わり

 




苦戦するかと思いきや、そんなことは無かったでござるの巻。

ちなみに最後の炎の竜を放つ技、名前はまだありません。
技に名前を付けるのは、多分スペルカードルールが実装されてからになると思います。どっかのお坊さん見たく、作品内で馬鹿にされちゃうから……。

玄僧「解せぬ」
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