ボリュームは【未来都市編】や【天狗山の激闘編】と大体同じくらいという結果になりました。
ちなみに紅魔郷まであとどれくらいの【編】があるか、予定段階では以下のような感じになりました。
1.【奇妙な二人旅編】←今ここ
2.【竹取物語編】
3【平安京・妖怪騒動編】
4【似た者同士編】
5【桜と友と死と編】
6【幻想郷創立編】
7【博麗神社の巫女編】
8【東方紅魔郷編】←目標
……遠いっ!
一編につき10~20話くらい掛かると計算すると、短くても60話で長くなれば120話……だと……!?
しかも紅魔郷以降も続くことを踏まえると(あげく10編くらい)、更に……。
ちゃんと完結できるのだろうか、コレ。
というか途中でネタ切れしちゃう感が否めない(´・ω・`)。いや、勿論そうならないように頑張りますが。
ともあれ、本編をどうぞ。
ルーミアとの戦いが終わってからの数か月。
俺と紫は妖怪を退けた英雄として、隣町の村から持て囃されるようになってしまい、そこでしばらく滞在することになった。
ちなみに当初は、俺はすぐに旅にでるつもりでいた。あまり過剰にヨイショされる事に慣れていないうえ、そういった事を求めてもいない俺は、村人たちの誘いを丁重にお断りしてこっそり立ち去ろうと思っていたのだ。
……が、俺たちが去ろうとしていることを勘で見抜いた村人たちは、俺たちを逃がすまいと全員で引き留めに掛かってきた。どうしても恩を返したいと言って聞かず、挙句の果てにはあまりに懇願しすぎて泣き出す者も現れた始末。
確かにこっちは犠牲者が多かったと聞いていたし、その気持ちは分からなくもないが……。
で、最終的には紫も『傷が完全に癒えていないんだし、お言葉に甘えてもいいんじゃないかしら?』と村人たちの意向に後押しをしたので、俺もそこで折れて村に暫く身を置かせてもらう事になった。
紫の言うとおり、今回の戦いはかなり消耗が激しかったので、今思うと正しい判断だったかなと思う。痛んだ体で旅をしたところで、紫に迷惑を掛けることになったかもしれなかったし。
ちなみに居座るからにはただ飯食らいをするつもりは毛頭なかったので、村人たちの遠慮を押し切って仕事の手伝いをさせてもらうことになった。そもそもこの時代、娯楽が少ないから仕事が無いとかなり暇だし……。
そして件におけるルーミアとの激闘が終わってからというもの、あの林で起きていた謎の失踪事件は聞く事もなくなった。やはりあれは、ルーミアが起こしていた事件だったと見て間違いないようだ。
もっとも、彼女が単に食欲を満たす為に行った行動なのか、俺をおびき寄せる為に目立つアクションを起こしたのか。その真意の程は、力を封印されてしまったルーミアから聞いても答えが返って来ることは無いため判明することは無いだろう。
何はともあれ、もうこの辺りの村に住む人たちを脅かす様な脅威は無い。
乱暴な妖怪が流れ着いてこない限りは、この辺りも平穏な暮らしを享受することができるであろう。
そしてそんなある日、紫から『話がある』と言われ、その夜に俺たちは村から離れた場所で話を行う事になった。
―――――――――――――――――――――――
場所は変わって、村から少し離れた山の峰。
紫のスキマによって連れてこられた俺は、丘のように広々とした場所で降ろしてもらった。
周囲を遠目で見回してみると、俺たちが居住まわせてもらっている村が見えた。時間で言うと現在は夜11時くらいなので、灯りは門前の松明以外には点いていないようだ。
後ろの方では、紫が降りたってスキマを閉じているところだ。
「それで紫。確か話があるって事だったよな」
「ええ。でも、ただお話しするっていうのも味気が無いでしょうからコレと一緒に、ね」
そう言って紫が手に持っている物を俺の前に見せつけて来たのが、縄付きのひょうたんであった。
突き出した拍子に中から、チャポンと水のような音が聞こえてきたことから考えると……どうやら酒みたいだな。
「ちょっと知り合いの妖怪から上等な酒を貰っちゃってね。これから一人で飲むのも気が引けちゃうから、どうせなら貴方と酌み交わそうかしら、って」
「いつの間に他の妖怪に会って……あぁ、スキマ使えば村の外に忍び出るのもワケは無いか」
「ふふ、そう言う事。それで……いかがかしら?」
酒か……旅の最中も時々だが飲んでいたし別段珍しくもないが、上等な策と聞かれたら
「そうだな……その誘い、有難く受けさせてもらうよ」
互いの手には、酒が汲まれた盃。
乾杯、と小さく声を揃えると、俺たちは同時に酒を口の中へと呷る。盃を傾け続ける時間が続いたが、やがて口元から酒を離すと、コクリと喉を鳴らしながら呑み届かせる。
非常に美味い味わいだ。
上等な酒と言うのは本当のようで、これほどのレベルの酒は久しぶりに飲んだような気がする。
俺が口を噤んで味に好評を付けていると、紫の方も小さく僅かに喉を唸らせて盃に盛られた酒を嬉しそうに覗き見ていた。その表情を見る限りでは、彼女も満足できたのだろう。
「ふぅ……もっとお酒を堪能してからが好ましい所なんだけど……今日は話をするほうが本命だから、早速言わせてもらうわね」
そう言うと紫は盃を顔から離し、こちらの眼を見ながら口を開く。
「満希、私ね―――1人で旅をしてみようと思うの」
ほう、と。
彼女の言葉を第一に聞いた時、俺は反応した。
彼女が1人旅を宣言。それはつまり、彼女が今日行う話というのは『別れの挨拶』という事になるのだ。
「それは構わないが、どうしてまた急に?」
「理由と言われてもね…………気まぐれ?」
「意外と適当だった!」
いや、まぁ紫らしいと言われれば肯定せざるを得ないんだけどさ。大体の妖怪って役職や地位の概念が無い分、結構自由人が多いみたいだし。
「け、けどそれだけが理由じゃないのよ?他にもちゃんと思う所があったうえでの決断であって……」
激しく目が泳いでいる。
……が、なんとなく本当に理由があるような感じがしたので大人しく聞いてみることにした。
「その、貴方と何年も旅をし続けてきたのは正直に言って楽しかったわ。私も自分の子とはそれなりに知識が広い方だと自負していたけれど、そんな中でも貴方は私の知らない事をたくさん知っていて、ちゃんと教えてくれた。その事に関しては、本当に感謝しているの」
「まぁ、俺もそれなりに生きてる方だしな。知識も経験も自然と身に付くさ」
「私の知っているそれなりはそんな使い方しない。まぁそれはいいとして、折角の旅だったっていうのに私は貴方から貰ってばかりで、私の方からは大したものをあげられなかったのがちょっと気になってたのよ」
彼女はそう言って表情を気難しく崩した。
別に気にするような事でもないと思うけどな、と俺は話を聞いてそう思った。
そもそも俺の方こそ紫からは妖怪ならではの視点から知識を教えてもらう機会も少なくなかったので、彼女ばかりが貰っているというわけでもないと俺個人は思っている。
野宿の仕方などのサバイバル知識も元は俺からの情報だったが、教えて以降では彼女も知識に倣って実戦を行い俺の代わりに作業を行う事もしていたというのも、その例の一つとして挙げられる。
……意外と紫って、義理堅い?数年連れ添ってから疑問に思う事じゃないけど。
「それで1人旅をしよう、って思ったのか」
「ええ。貴方と同じ道なりで歩いていても、得られるものは全て一緒に過ぎないわ。だけど違う道を歩いて行ったなら、きっと貴方の知らないような物事に出くわせるかもしれないじゃない」
なるほど。理に敵っているな。
「そしてまた貴方に出会えたのなら、私の旅で得られたことを教えてあげるの。今回の旅で貴方が教えてくれたくらい、たくさんに……ね」
「紫……」
「ちなみにこれ、旅の理由の1割よ」
少ねェ!
「あと、気まぐれは6割ね」
多いェ!いや、Oh Year!じゃなくてね。
……はぁ、なんだか感動できそうな空気だったのに一瞬で台無しになったよ。そもそもあの紫に期待するのが間違いなんだろうけど。
「あら、なんだか残念そうね」
「そうだな。誰かさんのお陰でね」
「まぁ大変。あ、それと6割じゃなくて7割だったかもしれないわ」
「そこで更に空気を緩める発言をする紫さんは凄いなぁ」
完全に遊んでいらっしゃる……。流石はフリーダムの権化、義理堅いかと思ったけど別にそんなことは無かったぜ。
「まぁ他にも理由はあるけれど、一々取り上げるのもアレだからこの辺りにするわ。急な話で申し訳ないけど……」
「別にいいさ、元々紫は興味本位で旅に同行してたんだし、俺もそれは認めてたんだ。離れるタイミングも紫の自由でいいんだよ」
「満希…………ありがとう」
どういたしまして。
言葉にはせずに心の内にその言葉を仕舞い込みながら、俺は盃の中に残っている酒を一気に呷った。
「それじゃあ、私は行くわね」
「あぁ」
酒は既に二人で飲み干し、語る事も全て語った。
用を済ませた紫は、傍にスキマを展開させるとそちらへと身体を寄せ始める。
「それじゃあ満希、またいつか会うとしましょう」
「あぁ。またな、紫」
紫は控えめな笑みを浮かべた後、スキマの方へと顔を向けてその中へと身を投じて行った。
彼女の身体はスキマの中へと入っていき、やがてスキマが閉じたその時には、彼女の姿はどこにも無かった。
「行っちまったか……」
思えば、一人っきりになるのは随分と久しぶりになる。
これまでの旅では彼女が殆ど近くにいたため、かつて自分が行っていた1人旅とは大きく異なる感覚に新鮮味を覚えていた。だが今となっては、誰かが一緒にいる旅の方が慣れを感じてしまっているのだから、時の流れも慣れというのも面白い物だ。
さて、紫は一人で世界を見て回る道を選んだ。
俺はこれから、どうしていくとしようかな。
「……まぁ、根本的な所は変わらないか」
気まぐれに歩いて行って、人と出会う。そして俺の目の前で助けを求める人がいるのならば、俺はそれに応え続ける。助け続けて行く。
手を差し伸べる。
それが、二つ目の人生を進むことになった俺が選んだ、終わりのない永遠の道だ。
これからも進み続けよう。
いずれ現れる、俺のやるべき事を迎える為に。
まぁ、取り敢えずこれからやるべきことは……。
「荷物……取りに帰らないとな」
あいつも、行くんだったら俺を家に返してから行って欲しかったよ……。
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「ふふ……満希は知らないでしょうけど、女は照れ隠しをする時についつい事実をはぐらかしちゃうのよ?6、7割は気まぐれとは言ったけど……私、そんなに無関心な女じゃなかったりするのよね」
「次に会った時を楽しみにしていてちょうだいね。それじゃあ……いつの日か『また会いましょう』、満希」
―――終わり
【奇妙な一人旅編】もこれにて終了です。
そして次回からは新編の開幕です!ヒロインの紫は次が来るまでしばらくお休みです。