東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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少女「小説読むときは部屋明るくして、画面から目を離して観なさいよ!わかったわねっ?」
満希「名前が判明してからここに来いよ!?」




第5話 再開と少女

「ありがとうございまーす、またお越しくださいませ!」

「はーい、どうも~」

 

 店員の常套句に受け答えしつつ、会計を済ませた俺はレジに背中を向けて入り口へと進んでいく。

 そして店を出て、通りへ入ると軽く伸びをして少し凝っていた上半身をリラックスさせる。

 

「っはぁ~…買い物も終わったことだし、後は帰るだけか」

 

 先程から手に持っていた食材などが入ったレジ袋を一瞥すると、俺は家へと戻るために通りを歩きはじめる。

 

 と言う訳で、俺は今日は買い物に来ている。

 今日は少し前まで仕事をしていたのだが、予想以上に作業が早く進んだおかげで予定よりだいぶ早上がりとなった。

そして帰る途中のこと、突然アマテラスさんが俺のスマホにメールを送って来たのだ。

 

 ちなみに俺の今のスマホは、居候から2日経ったときにアマテラスさんが『連絡には必須だから』と俺に買ってくれた物だ。

最近は自分で収入も得られているためその分のお金はアマテラスさんに返すことが出来るのだが、『最初のプレゼントなんだから、お金の事は考えないでそのまま受け取って欲しい』と頼まれたため、通信費のみは自腹にしている。

 

 話を戻すが…俺の元に届いたアマテラスさんのメールには頼みごとが掛かれており、仕事が終わったら今夜の夕飯の食材を買ってきてほしいと言った内容だった。

 今日はアマテラスさんも仕事に出ており、俺よりも帰りが遅くなるというのを聞いていたため、俺は仕事が早く終わった事と了承したという旨をメールで送信し、近くのスーパーへ向かい、買い物を行った。

 

 

 

 …といった経緯だ。

 

 ちなみに、こういった何気ない事でも俺は能力の修業を行っている最中だったりする。買い物が修行か?と思うかもしれないが、正確に言うと、今食材を持っている状態が能力のコントロールの一環になっている。

 具体的には材料を保存温度が常温のものと冷蔵の物に仕分け、冷蔵の袋の周辺の熱を低下させる。こうする事で食材の鮮度維持と能力の制御を同時に行うことが出来るのだ。一見するとしょぼいかもしれないが、これも立派な能力の運用だから別に気にしていない。

 

 そういえば、今日の夕飯はオムライスと麻婆豆腐だったっけか。

 アマテラスさんの作るオムライスって卵の焼き加減とか抜群でメチャクチャ美味いんだよな~。麻婆も辛めの味付けだけど白飯との相性が絶品だし…となると今日は白飯も注文しとこうかな。

 

 いやー、今から夕飯が楽しみになって――。

 

 

 

「あぁーーー!!そこのアンタぁ!!」

 

 なんかどっかで聞いたことがあるような声がしたので、俺はその声の正体の方を嫌々振り返る。誰だったっけ?

 というか、折角俺が良い気分になってたのに喧嘩腰な声色のせいでテンションが下がってしまった。これは許されないな。

 

 で、俺が振り返ってみると、そこにはツインテールの朱色髪に桜のデザインの白シャツ、赤のスカートと言った格好の少女がいた。

 

 え~っと……。

 

「誰だっけ?」

「はぁ!?ふざけんじゃないわよ!あの時アタシにぶつかっておいて覚えてないですって!?」

 

 ええい、こいつ声がデカいな。

 えーっと、ぶつかったって言うと最近人とぶつかった記憶は……あっ。

 

「思い出した、あの時の生意気女!」

「誰が生意気よ誰が!アンタだってボーっと突っ立ってた鈍重男じゃない!」

「誰が鈍重だ!……ってか、なんでお前がこんな所にいるんだよ」

「はぁ?そんなのアタシの勝手じゃない。アンタこそ何でこんなトコにいんのよ」

「それこそ俺の勝手だろ」

「……ホンっト生意気」

 

 忌々しそうな目つきで俺の事をにらんでくる少女。

 取り敢えず言わせてもらうと、それは俺の台詞である。

 

「…あんた今、アタシの事生意気って思ったわね?」

「いや、まだ思ってなかった」

「顔に出てたっての!」

 

 マジか。

 ポーカーフェイスって難しいのな。いや、やろうともしてなかったけど。

 

「…で、ホントに何なんだよ今日は。声を掛けて来たって事は用があったんだろ?」

「そんなもん無いわよ。ただ見かけたからこないだの仕返しに来ただけ」

「性質わるっ!?」

「うっさいわね、アンタがぶつかりさえしなければもっと余裕をもって逃げられたってのに、アンタの所為で余計に体力使ったのよ!」

「俺が言えた事じゃないが、不注意のお前にも原因が……ところで何で追われてたんだ?」

 

 俺は初めて少女と出会った日の事を脳内から探り出して、思い出し始める。

 

 確かあの時はスーツの男女3人がこいつを追いかけてたっけ…。

 どっかの会社員で、仕事に嫌気がさしたこいつを追いかけてきたとか?いや、でもこいつ私服だし。

 なら借金取りから逃げてる?いや、身なりとか見てると髪の手入れもしっかりしてるし、貧しい生活を送ってる様子は無い。

 じゃあ他国のスパイとか?…さすがに無いな、これは。

 

 となると他に考えられるのは……あ、そう言えば…。

 

「なぁ、おまえもしかして――」

 

 頭の中で浮かび上がった、コイツが追いかけられている理由を問おうとした時…。

 

「「「お嬢様ぁ~~~~!」」」

 

 以前にも聞いた覚えのある、男女3人組の声と遠くから窺えるスーツ姿。

 間違いなく、こいつを捕まえに来た人たちだろう。

 

 その証拠にその3人を見た赤髪の少女は、うげっ、と変な声をあげつつ苦々しい表情を浮かべている。

 

「あ~もう、今日見つかるの早すぎでしょ……」

 

 とこいつは言うが…正直、赤い髪とか目立ちすぎるぞ。周りの人を見ても黒とか茶髪が殆どだし…。

 っていうか、なんか周りの人がこっちの方を見てるんだけど。まぁ、あんなデカい声で口ゲンカしてたら注目もされるか。まったく……。

 

「………」

 

 取り敢えず、俺が今やる事は決まった。

 

「ほら、行くぞ?」

「え?」

「逃げるんだろ。俺もこの辺詳しくなったから、いい抜け道とか知ってるぞ」

 

 何日も散歩をしていれば、嫌でも土地感が身についてくるものだ。最初の頃、道行く人にその人の目的地までの道を尋ねられた時に場所が分からず、一緒になって知っている人を探したのは苦い思い出だ。

 とまぁそんなこともあり、俺は道を尋ねられても案内が出来る様、地理の勉強を散歩中や家にある街の地図で行っている。

 この辺りのエリアは既に勉強済みだから、追ってから逃げるのに適したルートも知っている。

 

「い、行くに決まってるでしょ!」

「了解。ならしっかりついてきなよ」

「あっ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 俺と少し出遅れて後からついてくる少女は、逃走ルートを進むべく走り出したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

「……ふぃ~、ここまで来たら大丈夫だろ」

「ふぅ…ったく、狭い道ばっかで窮屈だったわよ。妙に入り組んでて走り辛かったし」

「けどお陰でしっかり撒けた、だろ?」

「…ふんっ」

 

 プイッ、と俺から顔を背けた赤髪の少女は近くのベンチに歩み寄り、腰を下ろした。

 俺も座ろうかと思ったが、ベンチの隣に自動販売機が置いてあるのを発見し、飲み物を買うべくそっちの方へ行く。

 

 …そういえば、この手持ちの買い物袋どうしようか。能力のお陰で傷んだりとかはしてないけど、あんまり持ち続けるのもアレだし早いとこ家に置いておきたい。

 まぁ何気に家に近い場所に来てるし、焦らなくてもいいだろ。

 俺はそう納得すると、財布を取り出して小銭を探りだす。さて、何を買うかな。

 

 俺が財布を漁っていると、ふとベンチに座っていた少女が口を開く。

 

「…ねぇ、アンタ」

「ん?」

 

 俺は財布の中身に視線を向けつつ、少女の声に反応する。

 おっ、100円発見。

 

「アンタ……なんでアタシを助けたの?」

「必要なかったか?」

「そうじゃないわよ。ただ…たった2回会っただけの、見ず知らずのアタシを事情も知らずに助けたのはなんでって事よ」

「事情、ね……」

 

 俺は彼女の話に耳を傾けつつ、取り出した小銭を自販機の投入口に入れていく。100円玉がちょうどあって良かった。

 

「確かに、事情は分からんよ。お前が良い家柄のお嬢様で、家出してしてきたって事くらいしか」

「っ!?なんでそれを……」

「思い出したんだよ、この間の言葉を」

「この間って…」

 

 そう、こいつと初めてぶつかったあの時、スーツの3人組のうち2人がとあるキーワードを言っていたのだ。

 

『お嬢様』

『屋敷』

 

 ……とな。

 

「恐らくあのスーツの3人は使用人か何かで、お前を連れ戻す為に屋敷の主人…多分お前の父親あたりだろうな、その人に命令されたんだろ」

「…っ!」

 

 少女の表情が明らかに変化したのを確認すると、どうやら俺の推理は的を得ているみたいだ。

 ここまで来たら、あとは簡単な話である。俺はさらに言葉をつづけた。

 

「おまけに、捜索に3人で固まって行動するとは思えない。恐らく3人一組のチームを何個か作り、それぞれのエリアでお前を探し回っていた。……こんなところか?」

「……やるわね、鈍重男の癖に」

「鈍重男じゃない」

 

 まだそれを言うか。

 

 俺は500mlのお茶を買うべく自販機のボタンを押すと、ガコン、と取出し口にお茶が出たのを確認し屈んでそれを取り出す。

 

「暁宮 満希って名前がある。ちゃんと覚えとけ」

 

 俺は再び立ち上がり、お茶が入ったペットボトルを少女に向けて軽く投げ渡した。

 

「うわっとと…!危ないじゃないの!」

 

 放物線に描かれたお茶は少女の手元へと向かっていき、少女は慌てながらそれを受け取る。

 文句を言ってはいるが、それほど危なっかしい感じには見えなかったが……まぁいっか。俺も自分の分の飲み物を買わないと。

 

 一方で、文句を言っていた少女はしかめっ面を元に戻すと、手に収まっているペットボトルを眺めつつ、怪訝そうな表情を浮かべていた。

 

「……なおさらになるけど、アンタはどうしてそれを知ったうえで助けたのよ?確かにアタシは家出した。でも普通は家に帰そうとするんじゃないの?」

「まぁ確かにな。家出する側とされる側、迷惑がかかる人数でいうとされる側の方がよっぽど多いだろ。お前の父親、何人もの使用人…他にも沢山の人がな」

「じゃあ、どうして……」

 

 少女の視線がこちらに向けられている事をジュースを選ぶ中で感じつつ、俺は助けようと思った時の事を思い出す。

 

 どうして、か……。

 まぁ、実を言うとそんな難しい理由は無い。というかシンプルすぎると言ってもいいくらいのものだ。

 

「助けたくなった、だな」

「た、助けたく……なった?」

「そう、勘。あのままお前が家に戻っても何も解決しないだろうと思ったし、逃げたくなるような理由が家にあるんなら、今は逃げたままの方がマシだとも思った」

 

 そして何よりも、俺の心境が彼女を助けるという気持ちに変貌した事。これが少女を助けた理由だ。

 

「………」

 

 ポカンと控えめに口を開きながら、見開いた目で俺を見てくる少女。まぁ、そう言う反応をされるのも無理ない。俺自身もそんな顔されることは薄々覚悟していた。

 

「…ぷくく……あっはははははは!」

 

 と、思いきや。

 少女は先ほどまでのリアクションから一転、お茶を片手にお腹に手をあてつつ急に笑い時始めたのだ。

 というかいきなり笑われるとビックリするんだが。俺、何か変な事…言ったな。

 

 暫く笑い続けると、少女は目頭に小さな涙を浮かべた笑みのまま言葉を放ち始める。

 

「はぁ~、笑った笑った。アンタって周りから変な奴って言われない?」

「いや、生きてて初めて言われた言葉だな」

「へぇ意外。アンタ生後何か月?」

「数えるのが面倒になる位」

「ちぇっ、挑発には乗ってくれないか。まっ、別にいいわ」

 

 少女はそう言うと、自販機の前にいた俺の隣に立つと、自販機のボタンを突然押した。

 

「あ、おいお前!俺が折角よさそうなの見つけたトコ――」

「コノハナサクヤ」

「…はっ?」

 

 え、今なんて?コノハナサクヤ?急に何言い出すんだこいつ。

 

「アタシの名前よ。アンタ面白いから、特別に教えといてあげる」

 

 …マジか。

 

 アマテラスさんに続いて二人目の神話上のビッグネームが…。

 ホントこの世界って未来世界なのか?なんかだんだん疑わしくなってきたぞ…。

 

 少女――コノハナサクヤは屈んで取出し口からジュースのボトルを取り出すと、俺にズイっと差し出してきた。

 

「よろしくしてあげるから、感謝しなさいよ?」

 

 ニカッと無邪気に笑みを浮かべる彼女は、今までの印象を確かに変化させた。

 ついさっきまでは我が儘ばかりで自分勝手、お転婆過ぎると一般的な少女に持つ感想ではなかった。

 しかし、俺の目前に見せている彼女の笑顔は年相応の輝かしいものであったと俺はそう感じている。

 

「…そうだな。こちらこそ」

 

 よろしくしてやるから、感謝しろよ?

 

 俺は彼女が差し出してきたコーラ入りのペットボトルを受け取ると、彼女に小さく笑みを浮かべ返した。

 

 

 

 これが、俺とコノハナサクヤが初めて互いを知った瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ところでアタシ、今はスポーツドリンクの気分だったんだけど」

「…偶然だな。俺も今はそう言うのが飲みたい気分だった」

「「…………」」

 

 

 

「っざけんじゃないわよ!ちゃんとアタシの飲みたい物ズバリと当ててからくれなさいよ!」

「お前こそ走りたての身体に炭酸って何だよ!せめて水を選ぶだろうが!」

「能力で出せるから勿体ないじゃないの!男なら炭酸くらいガッといきなさいよ!っていうかアンタのお茶ってチョイスも微妙なのよ!」

「あっ、お前お茶に謝れ!誠心誠意をもって謝れ!」

「アンタこそ炭酸に謝りなさいよ!土下座して謝りなさい!」

「なんだと!」

「なによ!」

 

 台無しだよっ!

 

 

 

――終

 




というわけで、2話前に出てたオリキャラはコノハナサクヤでした。
最近まで年上ばかりでナレーション以外は敬語連発の満希だったけど、ようやく本来の口調が出せる…


○キャラ設定紹介○

【名前】コノハナサクヤ
【種族】神
【外見】長く赤い髪のツインテールで腰くらいまで伸ばしている。普段の服装は桜が散っているデザインがプリントされたロングTシャツに赤のスカートを着用している。黒のニーソを穿いているが、本編では描写されていなかった。
【能力】火と水を操る程度の能力
【特徴】性格は我が儘で勝気。箱入り娘として育ってきたため教養はあるのだが、家族以外とのコミュニケーションの取り方が分からず、初対面や面識の薄い相手についキツくあたってしまう。一応教養の内にそれも入っていたが、経験が圧倒的に足りないためそのジャンルだけ全く活かせていない。家族構成は父親が一人と姉が一人で、母親は既に他界している。

名前が長いから名前部分のサクヤを今後使おうと思いましたが、十六夜のメイド長と名前が被ってしまうので、どうしたものやら…
とにかく、次回もお楽しみに。
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