東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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【竹取物語編】、スタートです。

どのキャラが登場するかは……言わなくても分かりそうですね。



第68話 筍狩ーたけのこがりー

 紫と別れ、再び一人旅を始めてから一年。

 

 旅を続けていた俺であったが、その心中にはとある逡巡が生じていた。その内容とは……。

 

「そろそろ旅も中断して、都に行こうかな……」

 

 といったものである。

 

 風の噂で聞いたのだが、どうやら都の方では遷都が行われたらしく今までの都とは別の場所が中心都と定められたようだ。

 俺も記憶の糸を辿ってみるが、確かにこの時期ならかなり規模の大きい遷都があったと覚えがある。確か平城京……だった筈だ。

 

 そして遷都とくれば、環境や住む人の様子なども変化が現れるに違いない。

 なので今のうちに出来て新しい都に移り住んでしまって、そこで活動をしていこうかと思うのだ。俺のやっていた稼業を知っている人も、引っ越しのゴタゴタで記憶からスッポリ抜け落ちてくれているかもしれないというのもあるし。

 

 平城京と言えば奈良時代、奈良時代と言えば遷都が行われるまでの80年間くらいは続くはずで、途中で短期間の遷都はあれど、それまでは普通に暮らしていけると思う。まぁお上の方では色々と慌ただしい事も在ったような気がするが……細かいところまでは俺も覚えきれていないので、深くは思い浸らないようにした。

 

 と、言う事で。

 紫も連れから離れてしまい、一人身として自由になった俺はそう言う事を考えていたのだ。そろそろ都並に栄えてる場所に長く居を構えていたい気分になったし……。

 

 うん。

 思い至ったが吉日だ。都に行こう。

 

「さて、それじゃあ都の方に行くとするか。方角はここからなら南南西に行けば……おっ?」

 

 太陽の位置を測って方角を見定めていた俺であったが、ふとその眼に留まる光景が一つ。

 

 それはここからだと少し距離が開いてはいるが、無数に広がる竹の群れ。

 つまりは竹林があったのだ。

 

 その景色を見た俺は、今の季節を思い返しながら思考を巡らせ……そして結論を導き出した。

 

「そうだ。筍狩りをしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、言うわけで。

 

 やってまいりました、竹林へ。

 遠目から見て思った通りこの竹林は随分と生い茂っているみたいで、その広さは尋常ではない。目を凝らして遠くを見ようと試みてはみたものの、昼間だというのに暗くてよく見えないくらいに、竹が雑多と生えているらしい。

 

 しかし、今の俺にはそんな事は関係ない。

 なぜなら今の俺は筍もとい、筍料理を食べたいという衝動に駆られており、幾ら竹林が広かろうが何ら問題ないのだ。寧ろ今後の非常食としてある程度の確保もしておきたいので、広ければ広いほど収穫範囲も広まり収穫量も増加ということになるので、願ったり叶ったりの展開とも言えるのだ。

 何せ旅をしていた環境のせいか、もう何年も筍を食べていなかったため、この機会を見逃すわけにはいかないのだ。都なら市販であるかもしれないが、この場で収穫した方が鮮度も信用できる、

 

 周囲の竹の根元を観察してみると、大小さまざまな筍があちらこちらに生えている模様。やはり筍の成長速度は話に聞いていた通り早いんだな。

 

「よし、それじゃあ筍狩り……開始っ!」

 

 筍ご飯、煮物、吸い物、シンプルに焼くだけ……胸が熱くなるな。ジュルリ。

 

 

 

 「ひーふーみーよーいー……うん、大きさも中々もモノが揃っているし順調だな」

 

 収穫用の袋の中に入っている筍の数を今一度確認しながら、俺はそう呟いた。関係ないけど、ひふみの数え方って、ひふみよいむなやこともちろ……って具合にあるんだな。最近になって教えてもらったよ。

 ザッと見て、今の数なら都に着くまでの食料として十分に持ってくれる事だろう。ここで終らせても特に問題は無いが……折角だし都で筍を売って資金調達をしておくのもわるくない、と思いついた。

 

 なので俺はそのまま筍狩りを再開。売るに差支えない数量をキープするべく、更なる筍をめざして進むのであった。筍って生えてるのを沢山取っても生態系に影響ないらしいし、ちょっとくらい欲張っても大丈夫な筈。

 

 竹林の奥地へと、足を進め続ける。

 どうやらかなり奥の方まで来ているようで、周囲から差し込む日の光は入り口にいた頃と比べグッと少なくっている。空から照らされる太陽光の光源も、高くそびえ立つ竹たちの葉が重なっているために期待する程の明るさを示してくれない。

 正道の外れ、という事もあってこの竹林には道らしきものはまるで無い。周囲を見渡してみても人の通った形跡が新旧問わず見当たらず、変わり映えしない景色だけが広がっていた。

 ここまで来る際に能力を使って足元を炎で帯びさせ、地面に焼印をつけて目印を作っておいたので迷う心配も無いが……万が一となったら、空へ飛んで脱出する手も使うとしようか。

 

「ん?あれは……?」

 

 いくらか歩いた時だった。

 

 竹の中を進み続けていた俺は、前方にて不自然な光が揺らめいていることに気が付いた。

 一瞬、竹林の恥にまでたどり着いた事によって外からの光が漏れ出ているのかと思ったが、あからさまにおかしい。

 

 俺はその光の正体を知るべく、その場へと向かう。

 

 そして、その光の元が目の前に……。

 

「……竹が光ってる」

 

 一本だけ、竹の一部分が光っていた。

 台詞とまんま同じことを説明しているけど、まさにそうとしか言えないのだから困る。というわけで、竹が光っているのだ。何か光り物がくっついているわけでもなければ、見間違いという事でもない。

 

「これはまた珍妙な……ん?これは……」

 

 光る竹に顔を近づけてその光り具合をよくよく観察してみると、どうやら竹そのものが光っていると表現するよりも、竹の中に何か光の根源が入っており、それが竹の外殻を突き破って光を齎しているのだという事が分かった。

 

 となると、これは突然変異によって出来た竹ではなく、人為的な手によって誰かが光る物体を竹の中に入れたという事になるのか。

 

 切り口が無いか確かめるが、それらしい形跡は一切見当たらない。切り口も無ければ、入れ込む穴も無いような具合だ。

 外側から直接入れたわけではないとなると、残る線は何かしらの能力によるものだと思うが……ぶっちゃけこんな事に能力を使う意図が読めん。チョウチンアンコウ紛いの事だとしても、周囲には殺気だった生物の気配は感じ取れないし。

 

 明らかに謎すぎる、光る竹。

 

 しかしこのまま眺めつづけていても何も分かる事はないのもまた明白。というわけで、何かアクションを起こしてみよう。

 

 とりあえず、ノック感覚で光る部分を叩いてみる。

 ……特に反応は無い。

 

「……斬るか」

 

 そう決めた俺は、手刀を作るとその全体に能力で炎を纏わせ始める。俺の手がメラメラと燃え盛り始めた。

 そして手に纏わる炎に念を込めると、炎は徐々に形成をし始めて行き、完成した姿を露わにさせる。そこには薄く、それでいて鋭利さを兼ね揃えた炎の塊が俺の手の周りに出来上がっていた。刃をイメージして作り上げてみたのだ。

 

 炎の刃を完成させた俺は、光る物がありそうな場所をうっかり切ってしまわない様、欲狙いを定める。

 そして……

 

「ふっ」

 

 竹を切り裂いた。

 

 竹は断面部に微弱な炎を纏わせながら真っ二つとなり、支えを失った上部はそのまま倒れこんでいった。

 竹を切ってみると、その切り口から先ほどよりもずっと強い光が溢れだした。覆うものの一部が欠落した事によって、その切り口から嫌というほど光を出している。

 ……が、やがて光は次第に弱まっていきその強さは初めて見た時よりも控えめになっていった。

 

 今なら中身を見れると思った俺は、竹の切り口に顔を近づけ、その中身を覗き込んだ。

 

 

 

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

 掌に収まるような大きさの女の子が、寝息を立てながら眠っていた。

 女の子は艶の掛かった綺麗な黒髪を長く蓄えており、顔立ちは間違いなく美人……それ持て囃されるほどの上位に位置するレベルである。着物は派手な色合いをした着物をこなしており、美貌と相まって現の世離れしたような存在感を醸し出している。

 

 そしてここまで展開が進んだ後に、俺の中で合点のいく結論が導き出された。

 光る竹、中には美少女……これらが示唆するのは、あの有名な昔話だ。

 

 

 

 竹取物語だこれー!?

 

 

 

―――終わり

 




今話は3000文字という通常の半分程度のボリューム。物足りなかったというのが本音だったり……。
そして新編にて早速の東方キャラ登場です。一体何山輝夜なんだ……。

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