東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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あらすじ:輝夜といっぱいお話した。


第70話 小人―てのりびと―

「ほら輝夜、飯ができたぞー」

「はーい」

 

 厨房で本日の昼食を完成させた俺は、料理が盛られた皿やご飯などをお盆に乗せて輝夜のいる居間へと足を運んだ。

 

 俺の言葉に返事をした輝夜は、出来上がった料理をちゃぶ台の前……ではなくその上に乗っかって待っていた。

 テーブルの上なんて行儀が悪い!と思うかもしれないが、今の彼女の背丈は10㎝強という人形サイズでしかなく、普通の人間と同様に台の手前に座ってしまうと、色々と届かなくなってしまうのだ。それでは料理を口に運ぶためにロッククライミングじみた運動をしなければならないという謎の仕様が出来上がってしまう。

 というわけで大きくなってもらうまでの間、彼女にはちゃぶ台の上で食事をとってもらうことになった。台座を用意するにしても、腕も身長に合わせて短いものだからどっちにしろ届かないのだ。

 

 そういった経緯があるという事で、俺はちゃぶ台の上にいる輝夜の手前に料理を置いた。ちなみに彼女の背丈に合わせて皿、茶碗、湯呑、箸なども自作で揃えさせてもらっている。さながら妹のためにおままごとの道具を手作りで用意するお兄ちゃん的感覚……いや、流石に全国を見てもそこまでするお兄ちゃんはいないか。

 

「それじゃあ、いただきまーす」

「おう、いただきなさい」

 

 俺に食事の挨拶を掛け、輝夜は用意された食事を口の中へと頬張り始める。

 

「はふ。都の料理とか味付けとか全然違うけど、こういうのも悪くないわね」

 

 おかず、白飯、味噌汁と続けざまに口へ投じていく彼女の忙しなさを対座から苦笑気味に見守っていた。

 いつもなら軽く注意しておくのだが……まぁ久しぶりにちゃんとした食事にありつけているので小言はこの際言わないでおくとしよう。

 いや、別にここ最近は食事をしていないと言ったわけではない。今の一言は少々誤解を招くような物言いだったが、別にここ数日は食事に困るような生活はしていない。あくまで充実した設備でゆっくり調理できるような環境ではなく、野宿で出来る簡易的な調理しか行わなかっただけなのだ。

 

 で、この数日間で何をしていたのかというと……家を造ってました。

 

「それにしても、随分本格的に造ったのね……造る前に建築素人だとか言ってたけど、本当に素人?」

「マジ話だ。昔ちょっとしたつてで建築の手伝いとかやる事になってな、その時の親方に見よう見まねである程度の建築スキルを習ったんだよ。いざという時に家の補修が必要になったら、自分で出来ると便利だろ?」

「それは確かにそうだけど……ちなみに今までどれくらい建築系の仕事に関わったの?」

「言っておくがそんなに多くないぞ。途中からの手伝い程度なら6~7回、一からのスタートは4回くらいで、その内の2回は今回含めて一人でやった」

「大兄様、もう大工名乗っちゃえば?」

 

 それは本職に失礼だと思うが。

 

 先ほど輝夜に話した通りなのだが、現在俺たち二人が住まいとしているこの家はつい先日に俺が完成させたものである。場所は彼女を見つけた竹の周辺を切り拓いて、余所から持ってきた木材や周辺の竹を用いて、必要最低限の設備が整った家を作ってみせたのだ。

 

 というのも、当初の俺は都に行く前に、旬の筍を味わうこととお金に替えることが出来ることという二つの目的を抱きながら偶然見かけた竹林に寄り道をしたのだ。無事に調理用と売買用の筍を十分に揃えることが出来たのは良かった……のだが、ここで問題となったのが輝夜の事だ。

 もしこのまま輝夜を都に連れて行こうものならば、彼女は瞬く間に都の有名人となってしまうに違いない。輝夜は物語でべた褒めされるのも納得な位の美少女であるし、加えて掌に乗っかってしまうようなサイズともなると、注目を集めるのも時間の問題というものだ。

 最終的に知られてしまうのは変わらないが、小人だからといって彼女を人外扱いするような目で見られるのも懸念すべき問題だと思ったので、彼女が普通の人と同じ慎重になるまではこの即席の家で隠れ住むことに決定したのである。

 

「仮住まいにしては凝り様とか広さとか十分すぎると思うんだけど」

「だって輝夜はモノホンのお姫様なんだろ?あんまり狭い家を造っても窮屈に感じてストレス溜め込んでしまうかもしれないからな、出来る限り広めのスペースを確保できるように造らせてもらったぞ」

「とはいっても、私の今の背丈じゃ小さい家も普通に広く感じちゃうんじゃ……」

「まぁこれから大きくなるんだし、多少はな」

 

 原作の竹取物語でのかぐや姫の成長ぶりは、時期に入った筍並に早いらしいからな。それに備えてあらかじめ家を大きめに設計しておいてみたのだ。彼女が大きくなって狭く感じ出したなら、増築する手もあるしな。

 

「……それにしても大兄様のご飯、胸焼けしちゃうくらいあるわよね」

「お前が小さいだけじゃい」

 

 本当におままごとセット並の量しか盛られてないからな、輝夜の分は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 そんなこんなで、暫くはミニサイズの輝夜と生活をする事になったのだが……通常の同棲とは色々と勝手が違う点がある。

 先ほどの料理もその一例だ。紫との二人旅のような感覚で二人前の料理を作ったとなれば、その9割方は自分で食べないと輝夜の分が残ってしまうのだ。あのミニサイズで人並みの料理を食べろと言うのは、少々酷だからな。

 

 それ以外にも……。

 

「ねぇ大兄様。あのご本をとってもらっていい?」

「ん?あぁ、あれか。……ほら」

「ありがと」

 

 そうお礼を言って、早速本を読み始める輝夜。

 先ずは表紙を両手で懸命に開き、目次のページを飛ばす為にすかさずめくろうとする。が、ページをめくり切るために横移動もする必要があるみたいだ。

 

「……」

「……」

 

 ペラリ、とページをめくる音。

 

「……」

「……」

 

 トタトタ、とページをめくる為に歩行する音。

 

「……」

「……」

 

 ふぅふぅ、と声を殺して息切れを起こしている音。

 

「……本、めくってやろうか?」

「……お願い」

 

 重労働をしている輝夜に代わって、俺が本を持つ事になったとさ。

 

 

 

「ねぇ大兄様、一緒にお散歩なんてどうかしら?」

「要するに暇なのね……まぁいいか」

 

 輝夜から散歩のお誘いが来たため、俺はそれを了承した。

 そして家を出ようとした俺たちであったが……。

 

「ハァ……ハァ……一緒に歩くのは無理みたいね」

「知ってた」

 

 家を出ようとした時点で、輝夜が俺と一緒に歩くと子が出来ない事を知って断念。

 

「仕方ないわね……私は飛んで行きましょうか」

「散『歩』じゃあなくなるけどな」

 

 そうして俺が歩く隣で、輝夜は飛ぶことによって移動することになった。

 俺と並行して進むことが出来る様で、これならば問題は無いだろう。

 

 ……………だが。

 

「……イマイチ散歩って感じがしないわ」

「知ってた」

 

 まぁ、空を飛ぶのが通常な妖怪だったらそれもれっきとした散歩だったろうが……やはり普通に歩ける人間にとっては、あまりピンと来ないんだろうな。

 

「なら、俺の肩にでも乗っておくか?」

「……いいの?」

「俺は別に問題ないさ」

 

 俺がそう言うと、かぐやは『それじゃあ……』と一言告げてから俺の肩へと飛び移った。落ちない様にしっかりと腰を据え、首元に手を添えてくるが、特に気にはならない。

 

「まぁ、輝夜にとってはこれも散歩とは言えないだろうけどな」

「確かに歩いてないものね。だけど、これはこれで良いものよ」

「そうか」

「ねぇ、大兄様。大兄様とちゃんと並んで歩けるようになるまで、散歩の時はこうさせてもらってもいい?」

 

 輝夜のその要望に対して、俺は『構わない』と言って了承した。

 

 大空ならともかく、俺と並べる程度の低空で飛行しても彼女は味気ないものだろうしな。彼女は軽いし、負担が掛かるわけでもないから俺としては何も問題は無い。

 

 輝夜は、俺の答えに対して満足そうに頷いた。

 

「それじゃあお兄様、早速どこか面白そうなところまでレッツゴー♪」

「こんな時代に娯楽を求められてもな……」

 

 肩の上で軽い無茶振りをしてくる輝夜に呆れながらも、俺はその要望に応えるべく適当な地に足を運ぶことにしたのであった。

 

 

 

―――終わり

 




 3000文字と短い仕様に……というのも一話の内に書こうとしていた内容を二つに分けようとした結果がコレなんですが。

 というわけで、次回もこれくらい短めに書く予定です。ホントは1日ずつ投稿する予定だったのですが、ISの小説を書きたくなったせいでそれは敵わない夢に。あ、こちらの投稿スピードに支障を来すようにはしないつもりですので。説得力皆無ですが。
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