東方光照譚―その手を差し伸べる―    作:たいお

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使用人A「ぜぇ…ぜぇ…しょ、小説を読むときは…」
使用人B「画面を明るく…げほげほっ!…して、画面から離れて、観てください、ませ…」
使用人C「ぜぇー…はぁー…そ、それでは…どうぞ…オエッ!」
満希「…うん、色々とすんませんでした」




第6話 喧嘩と実験

 コノハナサクヤと2度目の出会いを果たしてから数日後。

 俺はこの時代についてもう一度考え直す時間を設けることが多くなった。

 

 

 

 俺は最初の頃、トラックとの事故からなんやかんやあって、未来の世界へタイムスリップしたものだと考えていた。

 そう判断する材料としては、この時代の科学技術の進歩が挙げられる。自動車も日用品も、それ以外のものも俺が元いた時代のものよりグレードアップしている物が多数を占めていた。

 

 しかし、最近になってその推測が外れているんじゃないかと思い始めている俺。

 そう考える理由として二つ。

 

 一つ目は有名な神々の名前が続けて判明したという事。アマテラスさんやコノハナサクヤといった、色んなゲームでその名を用いられる日本神話のビッグネームが普通に日常の中で生活してる。

 聞いた話によると、アマテラスさんの親戚にはあのイザナギやイザナミといった国産みで知られる神様がいるのだとか。これには正直耳を疑ったが、アマテラスさんの話しぶりからすると冗談ではなさそうだった。

 第一、イザナギはともかくイザナミは炎の神を産んだ時に死んだと、俺は前の時代で聞いている。 ここが未来世界だとしたら、彼女は黄泉の国から蘇ったという事になってしまう。それは流石におかしい話だろう。

 

 そしてもう一つの理由は、この世界の地形だ。コノハナサクヤの名前を知った後、思う所があった俺はアマテラスさんに頼んで世界地図を見せてもらった。

 『あまり見てて面白い物じゃないと思うけれど』と、地図を見せる前にアマテラスさんはそう言っていたが、それがどういう意味なのかが地図を見て分かった。

 そう、俺が覚えている世界地図の形とまるで違っていたのだ。南北アメリカやオーストラリア、ヨーロッパなどの各大陸はまるで面影が無く、別の場所のような形状を地図は示していた。

 

 以上の二つの理由から、この世界は一体どういったものなのかを、二つほど推測づけることが出来た。

 

 

 

 俺がいた時代より過去の世界。

 

 若しくは。

 

 俺の居た世界とは違う、平行して存在する世界。

 

 

 

 この2種類である。

 

 前者は言うまでも無く言葉の通りだ。

 後者はアニメなんかでよく言う、自分の居た世界とは似て非なる世界って言うアレのこと。実際に存在しているかは置いておくとして、神様が普通に地上で生活をしている事を考えるとこの推測は良い線を行っている筈だ。というか、この推測が何でも当て嵌められるから便利すぎるんだよ。

 

 

 

 …まぁ、此処まで色々と情報を整理し、推測を色々と立ててみた結果、言える事といったらこれに限る。

 

「うん、結局なんにも分からん」

 

 だってどれもこれも俺の勝手な仮定の話であって、事実かどうかなんて確かめる術がないんだもの。

 もうそうなってくると、今後も気にせずに日常を過ごしていけという事か?でもそれはそれで個人的に納得いかない…まるで自分の現状から目を背けてるみたいで。

 

「満希くん、なんだか考え事してるみたいだけど…なにか悩み事でもあるの?」

「え?あぁいや、大したことじゃないんで大丈夫ですよ、アマテラスさん」

「大したことじゃないならさっさと解決しなさいよ、男の癖に軟弱ねー」

「うっさいわ。お前はもう少し悩むことを覚えろ」

「ふん、アタシだって悩み位持ってるっての」

 

 そう言って鼻を鳴らすと、コノハナサクヤは汁椀に入った味噌汁を啜る。

 こいつの悩み、ねぇ……

 

「将来の結婚相手を父親が選んだけど、タイプじゃないから嫌だってだけだろ?どうせ」

「だけって何よ、だけって!いい?女の子にとって結婚ってのは一生に一度の一大イベントなのよ!それをアタシの意志を勝手に無視するなんて最低じゃない!」

「そんなのちゃんと断れば良いだろ」

「簡単に行ってくれるわね、アンタ。それが出来たら今まで家出なんてしてないっての」

 

 しかし、こいつが家出してた理由が『父親が選んだ結婚相手の性格やら顔やらが好みじゃないから、その手の話を自分に振られないようにするため』だとはな。

 何というか…あの時こいつを助けて良かったのだろうか、とちょっぴり後悔している。

 

「けど、コノハちゃんの言う事もよく分かるわ。恋って言うのは他人に見定めてもらうんじゃなくて自分で選んで掴みとるものだものね」

「さっすがアマテラスさんは言う事が違うわね~、満希とは大違い!」

「余計なお世話だっての。そういうのは疎いもんで」

「アンタ、モテないでしょ」

「さてな」

 

 アマテラスさんもどうやらこいつの味方らしい。まぁ、女性の気持ちを理解できるのは同じ女性って事だろうか。

 ちなみにコノハというのはコイツの愛称みたいなもので、親しいものにはこう呼んでもらっているとの事。かくいう俺は呼ばれることを認められていない。

 

 

 …ところで。

 

「なんでお前、普通に俺らの食卓に溶け込んでんの?」

 

 しかも普通に飯も用意されてるし、それで向こうも何事もないように食ってるし。

 普通に会話してたのにここまで気付かない俺もどうかとは思うが。

 

「なによ、こないだアマテラスさんがいつでも遊びに来ていいって言ってくれたから来たんじゃない」

 

 『今更何言ってんの?アンタ』とでも言いたげな、小馬鹿にした表情を俺に見せるコノハナサクヤ。

 おい、その顔止めろ。普通に腹立つから。

 

「だからって悪びれもなく飯をたかりに来るのは流石にどうかと思うがな」

「ちゃんと前の日に行くってこと伝えてるんだから別にいいじゃない」

「そうね~、事前に教えてくれれば朝食も3人分作っておけるから私は来てくれて全然大丈夫よ。ご飯は皆で食べた方が美味しいし」

 

 ニコニコとそう告げながら、アマテラスさんはおかずの焼き魚をパクリと一口。

 というかアマテラスさん、別にアポ取ってたら何でも許されるってわけじゃ…あ、そもそもこの人が許してるから問題ないって事か。

 

「いやだとしても色々と問題が………まぁいいや」

 

 何か、これ以上言っても変わる気がしない…どんなに注意してもお構いなく家に乗り込んでくるコイツの姿が容易に目に浮かぶ。

 

「居候ごときに口答えする権利があるわけないでしょ」

 

 ムカっ。

 

「たかり屋ごときがデカい口叩く権利も無いよな」

「…ちょっとアンタ、誰がたかり屋ですって?」

「お前以外に誰がいるってんだよ」

 

 おーおー、怖い顔で睨んで来てら。そもそも自分から言い出した結果だろ。

 俺も冷たい視線をコノハナサクヤに向けつつ、こいつの売り言葉に買って出てやる。

 

「神に向かって随分とナメた口利くわねぇ…?アンタ正真正銘のバカ?」

「お前が神って事実がバカバカしいと思うんだけどな、俺は。神らしいこと全然やってないのに神だって言っても痛々しいんだよ」

「痛々し…!?……ふ、ふふ、言う事欠いてホンっトに、生意気な事言ってくれるわねぇ…!」

「お前には負けるけどな」

 

 俺のその言葉を皮切りに、眉間に深い皺を寄せ怒りの形相を浮かべているコノハナサクヤがガタッと勢いよく椅子から立ち上がり、俺もこいつに続いて腰を上げた。

 

「上等よこのヘッポコっ!!表に出なさい!決着付けてやるわ!」

「誰がヘッポコだこの野郎!後で泣いて吠え面かいても知らんぞっ!」

「いってらっしゃ~い。ほどほどにね~」

 

 外に出ようとする俺たちに手を振ってくるアマテラスさんを背に、俺とコノハナサクヤは庭へと飛び出していった。

 

 出勤前の運動にはちょうどいい、調子に乗り気味のこいつに一喝喰らわせてやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 某ビルの研究室。

 

「…で、二人で一暴れしてから此処にやって来た、と。あなたたちってホント喧嘩が絶えないわね…」

「「こいつが悪い!…真似すんな!…だから真似すんな!」」

「息ピッタリすぎるわよあなたたち。3連続で台詞もタイミングもドンピシャなんて前代未聞よ。ホントは仲いいんじゃない?」

「「誰がこいつなんかと!」」

「はい、4回目」

 

 さっきまで静かだったのに急に騒がしくなったわね、この研究室も。

 まぁ、原因はどう考えてもこの二人が一緒に居る事なのだけれどね。

 

 満希が私の元で働き始めてから約3ヶ月が経過した。最初の頃は私に仕事に関して色々質問をしてきた彼だけど、最近は慣れてきたためその頻度もかなり少なくなっている。質問をした内容についてはしっかりメモに残し、それを確認しながら確実に実行に移してきた成果と言える。やはり仕事を覚 えるにはいかに理解をしていくかというのが、彼の仕事の姿勢を見て認識させられるわね。

 

 そんな満希も、最近になって友人が出来たみたい。仕事仲間は順調に増やしていたけど、プライベートだけの付き合いでの友人が居ない事を私もちょっと気にかけていたので、喜ばしい事ね。

 しかもその相手はあのイザナギ様、イザナミ様方の近縁にあたる名家のお嬢様である。友達を選んだのやら選んでないやら…凄いチョイスね。

 そしてそのお嬢様が目の前で満希と睨みあいをしているコノハナサクヤ。まさにお転婆って感じの雰囲気を出してるわね。

 

 そしてそのコノハナサクヤなのだが、最近は満希と一緒にこの研究室に訪れるようになっている。彼女曰く『満希が行くトコって大抵面白い物があるから』との事。まぁ調合中に邪魔をするような神経を持っていないようだし、ジャンルは限られるものの教養が高いから、私の話に着いて来れる話し相手になれてるしで差し支えは無いけれど。

 

「あっそうだえーりん。満希から聞いたんだけど今日は新薬の実験するんでしょ?アタシにも見せて見せて!」

「はぁ……すいません永琳さん。教えないと騒ぎまくってやるってこいつが聞かなくて…」

「別に気にしなくてもいいわよ。私は知られようが知られまいがどちらでも構わないもの。それじゃあコノハ、ちょっとこっちに来てちょうだい」

「はいはーい」

 

 申し訳なさそうに頭を掻く満希にフォローの言葉をかけつつ、私はこれから行う新薬の実験に興味

深々といった彼女を手招き、部屋内の机へ案内する。

 余談だが、永琳もあいつの事を愛称で呼ぶことを許されている。何で俺はダメなんだよ…いや、良く考えたら喧嘩ばっかりだし普通にダメか。

 

 ちなみにコノハナサクヤとの話の中で、人付き合いが下手だという彼女の一面が容易に見てとれたので、話の中でコミュニケーションに関するアドバイスを行った。そのおかげで最初の頃より表情や言葉遣いが柔らかくなったのが、アマテラス様からの話や今こうして話をしている中で窺える。

 …けど満希に対しては全然変化が無いのよね。口を開けば大抵が喧嘩に発展するくらいに。

 

 その辺りの調査については頭の隅へと置いて起き、私は机に着くとその上に置いてある赤色の液体が入ったビーカーを手に持ち、それを彼女に見せる。

 

 勿論、その薬の効果を知らない彼女は小首を傾げながらジッとビーカーの中身を凝視する。

 

「なにこれ?」

「飲んだ人間の分身を作る薬よ。体内に入った薬が取り込んだもののデータを内部から収集して、皮膚の孔から霧状になって外へ出た後、集めたデータをもとに形を作る…といったものね」

「へぇ~、なんか面白そうじゃない!ねぇ満希!」

「いや、飲まんぞ俺は」

「何を言ってるの?今日のあなたの仕事はそれの実験体よ」

「ウェイ!?」

 

 満希ってば何を驚いているのかしら?以前は結局やらなかったけど新薬の実験をやらそうとしてたんだし、何も驚くことはないじゃない。それに別の人に実験体になってもらうんだったら今頃別の仕事に行かせてるわよ。

 

「いや、あの、他の仕事はやらなくてもいいんですか?」

「別に良いわよ。最近あなたも動きが良くなって仕事にも余裕が生まれてきてるから、今日は薬を飲んだ後に結果を資料を纏めたら今日は帰っていいわ」

「ちくしょう…俺が仕事に慣れたばっかりに…!」

「ちなみに、仕事に余裕が出来て無かったら薬を飲んだ後でも働いてもらってたわよ」

「慣れって大事ですね」

「そうね。というわけで飲んでちょうだい」

「はは…逃げ道が、ナイ」

 

 あら、眼の光が消えた。

 

「ほらほら、いつまでもくっちゃべってないで飲みなさいっての!」

「おいコラ止め、んぐぅっ!?」

 

 どうやら薬の効果がどうなるのか気になって仕方が無かったらしい、コノハナサクヤは満希の頭を掴むと口に目がけてビーカーを突っ込んだ。あら強引。

 一方の満希も突然の事に順応できず、不可抗力でビーカーの中の薬をゴクゴクと音をたてながら喉へと通していっている。

 

 やがてビーカーの中身が空になると、コノハナサクヤは満希の口からビーカーを離す。

 

「ぶはっ!げほっ…お、お前なぁ…!」

 

 恨めしそうにコノハナサクヤを睨みつける満希であったが、当人の彼女は視線を受けても飄々とした様子である。

 

「別に死ぬような薬じゃないんだし、えーりんの薬ならそんな副作用もないから別にいいじゃない」

「だからってなぁ、せめて心準備とかそういうのを…ってうおっ!?」

「?どうしたのよ?そんな体を震わせて」

「いやコレ気持ちわるっ!?何か身体の中で変なものが動き回ってるような這いまわってるような…とにかく感触が最悪だっ!」

「マジで!?キモッ!満希キモッ!」

「おい俺がキモいみたいな言い方やめろっ、てああもう!気持ち悪い!」

 

 ふむふむ、液体が分析をしていると身体にはこういう反応が出る、と…。もう少し緩和できるように調整しておく必要があるかしら。

 

「うわー…アタシだったら絶対飲みたくないわ、それ」

「俺も金輪際飲みたくないわ…っておいっ!?今度は身体から赤い霧が!?」

「あら、データの分析が終わったみたいね。もうすぐ出来上がるわよ、あなたの分身が」

「マジですか!?」

 

 だってそう言う薬だもの。当然じゃない。

 

 そうこうしていると、満希の身体から放出された霧は徐々に人型と為していく。更にそこから指、髪型、鼻、口など次々と満希の姿を模っていき、やがて色彩や艶の具合も変化させて満希の分身体を完成させていった。

 

「「うわ、凄いなコレ……あれ?」」

「ちょっと、何で二人で喋ってんのよ?しかも動きまで完全に一致しちゃってるし」

「「いや、俺にもさっぱり…ってまたかよ!?」」

「動きの無い分身と言うのも面白くないし、そもそもそれじゃ分身とは言い難いと思ってね。近くに分身のオリジナルがいれば脳波をキャッチして全く同じ言動を起こすことが出来るのよ」

「…えーりんの作る薬って、大抵が規格外よね」

「「言えてる」」

 

 だって、平凡な結果を残したって面白みがないじゃない。

 実験として結果を残すならそれなりに有意義なものにしないと勿体ないと思わない?

 

「取り敢えず、データを残すからこっちに来て手伝ってちょうだい、満希」

「「はい。…ところでこれ、いつになったら戻るんです?」」

「具体的な時間はまだ計測してないけど…明日の内には元に戻ってる筈よ」

「「えっ」」

「大まかな時間で申し訳ないけど、被験者はあなたで初めてだったから。今度やる時は時間は正確にしておくつもりだから許してくれる?」

「「いや、まぁ時間とかはいいんですけど…俺、こんな状態でどうしたらいいんですか?」」

「だから今日は新薬を飲んだら帰っていいって言ったのよ。そんな状態で作業されてもあなたもやり辛いだろうし、私も何かと困るし」

 

 一々誰かと会う度に新薬の説明をするのが億劫だもの。

 どうせ近いうちに報告のための議会があるんだし、説明ならそこで纏めてやっておきたいわ。

 

「それにしても全然見分け付かないわね~…こっちが本物かし、らっ!」

「「うおっ!?おいコノハナサクヤ、急に蹴るとかどういうつもりだ!」」

「あれ?こっちは分身だったのね」

「「もっと平和的に判別できただろうが!」」

「ああもう!さっきから声がステレオで聞こえてきて気持ち悪いのよ!その辺調節しなさいよ!」

「「無茶苦茶言いやがって…おい分身、今すぐ喋るのを止めて…って俺は本物だ!いやお前は分身だろうが!いや、だから」」

「一人コントしてないで、さっさと一人だけで喋りなさいってば!」

 

 さて、そろそろレポートに結果内容書くとしましょうか。

 

 少し騒々しいけど、偶にはこんなBGMを聞きながら纏めるのもあり、かしらね?

 

 

 

――終

 




永琳の薬って基本的に何でもできるからとんでもないですよね。

さて、次回のまえがきのキャラがもう尽きた…どうしようかな。
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