~~~前回のあらすじ~~~
『表向きは』普通の高校生として暮す大鳥空。彼はツインテールバカの観束総二。幼馴染みの津辺愛香と共に高校へ進学した。そんな高校初日、彼等は謎の女、トゥアールに振り回されるまま、謎の怪人がツインテールを狙うと言う謎の事態に遭遇。そんな中で空は、自身に隠された力で敵と戦う。一方の総二も、トゥアールに促されるままブレスレットで変身。しかし彼は何故か、幼女化してしまうのだった。
今、俺の前で何やら幼女が喚いている。その時、ふと俺の耳に愛香とトゥアールの会話が聞こえてくる。何やら……。
「なんでそーじが女になってるの!?」とか
「幼女可愛いよ幼女」とか聞こえる。
……正直、トゥアールの話を聞いていると耳が腐りそうだ。生の耳なんて残ってないけど……。
しかし、愛香の言う事を考えるに……。
「え~っと……。おま、あ、いや、君、総二なのか?」
「やめて!君とか言わないで!」
肝心の総二(幼女?)は両手で顔を覆ってその場に座り込んでしまう。
「ぬぅ!何という美しきツインテールの幼子!者ども!あの面妖な怪物を排除し、あの幼子を我が前に連れて参れ!」
「「「「モケー!」」」」
そこに突進してくる戦闘員達。
「このっ!テメェ等に!怪物!呼ばわり!されてたまるかぁ!」
俺は咄嗟に総二(?)の前に立ち襲いかかってくる戦闘員を次々と殴り飛ばす。
だが、俺一人で捌ききれる数じゃなかった。何体かが俺を抜けて総二の方に向かう。
「クソっ!?そっち行ったぞ!」
「うぇぇっ!?」
総二は戸惑うだけで、まともに構えてもいない。クソッ!状況にアイツの頭が追いついてない!ましてや、総二は格闘技の経験だって無い!どうにかして助けないと……!
そう考え、手近な敵をぶっ飛ばして総二の元に走ろうとした時。
「く、来るなぁぁぁぁぁぁぁっ!」
総二のデタラメに振られた腕が戦闘員の腹に命中し、吹き飛ばしてしまった。
「なっ!?」
砲弾並みの速度で弾き飛ばされ、近くの建物の壁にぶつかってクレーターを作りながらめり込む戦闘員。そいつはそのまま動かなくなって、最後は粒子になって消滅した。
「マジかよ」
それを見ながら俺はポツリと呟く。見た目は完全にコスプレしてる幼女なんだが、そのパワーは、今のマギア化している俺以上だ。
しかし、肝心の総二は今の自分に戸惑っていて、混乱してる様子だ。クソッ!こうなったらっ!
俺は咄嗟に、総二の前に跳躍しこいつを守るように着地。
「そ、空?」
「混乱する気持ちは分かるが、集中しろ!目の前に敵が居るんだ!元に戻る方法は、後でトゥアールハッ倒してでも聞き出しゃ良いだろ!今は目の前のことに集中しろ!えっと、レッド!」
流石に大声で総二の名前は呼べないので、俺は咄嗟に、その赤いカラーから総二をレッドと呼ぶ。
「そ、空、でも、俺、俺ぇ……!」
涙目になって縋るような表情で俺を見上げる総二。
ったく、どうなってんだホントに!俺は頭をかぶり振った。
「考えるのも悩むのも、落ち込むのも後にしろ!まずは、目の前のこいつらをぶっ潰すぞ!お前は、『ツインテールを守りたい』んだろうがっ!」
「ッ!」
ツインテールを守りたい、と言う言葉に反応したのか、総二が息を呑む。そして……。
「クソォッ……!こうなったら、やってやる……!」
総二は瞳に浮かぶ涙を手の甲で拭うと、静かに拳を構えた。
その時、俺にも聞こえるようにトゥアールから通信が飛んできた。
『総二様、頭部にあるリボン型のパーツに触れて武器をイメージして下さい!それであなただけの武器が形成されるはずです!』
「武器!?これか!?」
総二は、そのツインテールの根元であるリボン型のパーツに両手を添え、静かに目を瞑った。
するとリボンが光ってそこから炎が溢れ出し、それが総二の右手の中で形を変え、紅い両刃の剣になった。
「スゲぇ……!」
総二は手にした剣を見つめながら驚いている。
ともかく、準備は出来た。
「レッド。俺の今のバトルスタイルは格闘中心だ。それに多分、今の俺よりお前の方がスペックは高いみたいだ」
そう言って、更に近づいて小さな声で話す。
「あと、俺の体は内蔵バッテリーで動いてる。残量が15%を切ると、戦闘システムが強制停止して戦えなくなる」
「なっ!?マジかよ!?」
「エネルギーを解放しての必殺技みたいなのもあるが、奴に通じるか分からない。残量は、今70%になった。技を使うにしても、長期戦は無理だ。短期決戦で奴らを仕留めるぞ」
「お、おぉっ!分かったぜ空!」
「あぁ。……あと、一応言っておくが、本名は止めてくれ。今の俺はマギアだ。そう呼んでくれ」
「了解っ!分かったぜマギア!」
頷き、剣を構える総二。俺も拳を構える。
「ぬぅっ!?あの面妖な奴が何やつかは分からぬが、それよりもあの幼女だ!あの素晴らしきツインテールの持ち主を我が物にっ!行けぇっ!」
「「「「「モケーー!!!」」」」」
あの蜥蜴野郎の指示に従い、戦闘員達がこちらに向かってくる。
「俺が道を開くっ!続けっ!」
「OK!」
まず、俺が前に出て向かってくる戦闘員達を蹴散らながらも足止めする。
「今だっ!」
「あぁっ!」
そして次の瞬間、総二が前に出るが……。
「えっ!?あれっ!?う、うわぁぁぁぁっ!」
力加減を誤ったのか、総二はあの蜥蜴野郎をも飛び越えて、近くの建物の壁に突っ込んでしまった。
「お、おいレッド!?大丈夫か!?」
俺は戦闘員の相手をしながら叫ぶ。
「な、何とか。けど、スゲぇ力だな、これ」
『聞こえますか総二様!そのテイルギアは総二様の意思によって発現したのです!総二様に御せない道理はありません!』
そこに聞こえるトゥアールの通信。
「俺の、意思?よ、よしっ。やってや」
言いかけ、振り返った総二の前の前には、鼻息の荒いあの蜥蜴野郎が。
「うわっ!?顔が近い!」
「レッドッ!」
俺が雑魚の処理をしている間に、レッド、総二はあの蜥蜴野郎と戦っていた。
「これ、でぇっ!」
俺は最後の戦闘員を殴り飛ばす。周囲を見回せば、いつの間にか野次馬らしき者達が遠巻きにこちらを見ていた。つか、写真とかを撮ってる奴らまで居るが、今は構ってる暇が無い。建物の上では、剣を持つレッドとあの蜥蜴野郎が戦っている。
俺は駆け出し、助走を付けてから跳躍。レッドの傍に着地した。
「マギアッ!」
「悪い遅くなったっ!雑魚は片付けた!」
「ぬぅっ!あれだけの数のアルティロイドを倒すとは!貴様、何者だ!」
蜥蜴野郎は俺を睨み付けながら叫ぶ。
「答える義理があると思うか?俺は、お前達の敵なんだからな」
そう言って俺は、剣を構えるレッドの横で拳を構える。
「ぬぅっ!こうなれば!俺の必殺技で、お前達を倒すまでだ!」
そう言うと、奴はどこからか両手いっぱいのぬいぐるみを取り出した。
「秘技っ!少女の手の中に抱かれたドールが……」
と、何やらブツブツ言い始めるが……。
「遅いんだよっ!!」
その隙に、俺は奴の懐に飛び込んだ。
「何ぃっ!?」
そして、その隙を突いて、俺はベルト、ゼツメライザーのスイッチを叩き、必殺技を発動した。
『ゼツメツノヴァ!』
俺の右拳に、瞬時にエネルギーが流れ込み、赤黒いエネルギーが俺の拳を覆う。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そして俺は、その拳を奴の腹にたたき込んだ。
『ドゴォォォォォォォンッ!』
「ぐぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
奴は凄まじい勢いで弾き飛ばされ、壁に激突した。
「ぐ、ぐぅっ、ひ、卑怯な。技の発動の最中に、攻撃など」
「はぁ?生温い事言ってんじゃねよ。俺達は今、自分の命を賭けて戦ってるんだ。技の発動中に、相手が攻撃を待つとか、古いんだよ。いつのアニメの話しだ。……それに、現実とアニメは違うんだよ。リアルな戦場で、生言ってんじゃねよ!」
そう言って、俺は拳を前に突出す。
とは言え、俺の技でも奴にダメージを与える事は出来ても、完全に倒す事は出来なかった。どうする。もう一発行くか?とか考えていた時。
「マギア、後は任せてくれ!」
後ろから総二の声が聞こえ、振り返ると、総二は不敵な笑みを浮かべ、その胸にあるオーブから右手のブレスレットに光が流れ込んでいた。
どうやら、技があるのはお前も一緒のようだ。
「分かった。最後は任せる」
そう言って、俺は総二の後ろに下がる。
直後。
「オーラピラー!」
総二が叫びながら上空目がけて右手のブレスレットから光を発射した。
「くくっ、どこを狙っている……!」
すると、狙いを大きく外したとでも思ったのか、あの蜥蜴野郎が笑う。
が、直後。打ち上げられたと思われた光が、急速に蜥蜴野郎に降り注ぎ、その動きを阻害した。
「な、何だこれは!?う、動けぬ!?」
狼狽する蜥蜴野郎。
「ブレイクレリーズ!」
その隙に、高らかに叫ぶ総二。すると剣の刀身が左右に割れて、中から炎が吹き出し剣を覆った。そして総二は、腰元のパーツ、スラスターから白い炎を吐き出しながら蜥蜴野郎に突進する。
「グランドブレイザー!!!!」
そして、烈火の剣による、上段からの振り下ろし。それが、蜥蜴野郎の体を切り裂いた。
だったが、最後の最後まで、怪物はツインテールの事ばかり考えて、今の総二のツインテールを触ろうとして、肝心の幼女化してる総二に拒否られながらも、『可愛いなぁ』とか言いながら爆散してしまった。
「ハァ。何だったんだ。あいつは」
俺はため息をつきながらレッド、総二の方に歩み寄った。どうやらアイツも疲れているのか、今はその場にへたり込んでいる。その時。
「ん?何だこれ?」
俺は地面に転がる、菱形の物体を手に取った。
何だろう、と思いつつそれを手にしながらレッドの元に歩み寄る。
「大丈夫か?レッド」
そう言って俺は手を差し出す。
「あ、あぁ。大丈夫だ」
レッドは俺の手を取って立ち上がる。
「でも……」
しかし総二は、マジマジと幼女化している自分の体を見つめている。と、その時。
『総二様、聞こえますか?』
「トゥアール?」
俺にも聞こえるようにトゥアールから通信が届いた。
『敵となるエレメリアンは倒しましたが、それで奪われたツインテールが戻る訳ではありません。駐車場にあるリング状の物体を破壊して下さい。そうすれば彼女達のツインテールが元に戻ります』
「そうかっ!なら、善は急げだ!」
そう言うと、レッドは大きく跳躍し、手にしていた剣であのリングを切り裂いた。直後にリングの中から光の粒子が溢れ出す。
すると、ツインテールを奪われた子達に粒子が降り注ぎ、彼女達の髪型がツインテールに戻った。それを、安堵した表情で見守っていたレッド。
「どうやら、これで大丈夫みたいだな」
俺はドードーマギアの姿のまま、レッドの傍に歩み寄る。
「マギア。ありがとう。お前のフォローのおかげで彼奴らに勝てたよ」
「どうって事無いさ。……それに、俺一人じゃ多分彼奴らを倒せなかったしな」
俺は若干声のトーンを下げながら答える。
一体、奴らは何者なんだ?変態的な言動はともかくとしても、そのスペックはまんま特撮の怪人だ。……どうやら、あいつから聞くしかないようだな。
と、俺は脳裏にトゥアールを思い浮かべていた。その時。
「あ、あのっ!」
俺達に声を掛ける人物がいた。俺達が振り返ると、そこには生徒会長が立っていた。俺は避難するように言っていたが、どうやら敵が倒されたので出てきたようだ。
「助けて頂いて、ありがとうございました」
「え!?あ、俺、いや私は!えっと……!」
どうやら言い訳を考えているレッド。まぁ良い。俺がフォローするか。
「礼には及ばない。俺達は俺達の意思で、あの化け物と戦っただけだ」
「そうなのですか?それにしても、お二人とも、強いのですね?それに、そちらの貴方様も、凄いのですね!」
「え!?お、俺、あぁじゃない、私!?」
そう言ってレッドに視線を向ける会長。
「えぇ。まだ小さいのに、勇敢に戦って。その姿に私、とても感動しましたわ!」
そう言って目を輝かせる会長に、レッド、総二は引きつった笑みを浮かべる。
だが、周囲を見回せば、俺を警戒するような目で、こちらを見ている者達が居る。
それもそうだろう。今の総二は幼女だが、俺はマギア。ドードー鳥の化け物だ。それにさっきまで戦ってたのは、蜥蜴の化け物。危険視、されているのかもしれないな。
「行くぞレッド。ここでの俺達の役目は終わった」
「あ、あぁ、そうだな」
俺が歩き出すと、慌てて総二も続いた。
「あっ!待って下さい!貴方達は一体!?せめて、お名前だけでも!貴方達は、正義の味方なのですか!?」
その言葉に、俺は足を止める。
「……俺達は、いや、少なくとも俺は、『
「あなたは、一体」
「今言ったとおりですよ。ただのロボット。『マギア』、とでも名乗っておきましょうか」
「マギ、ア?」
会長はポツリと呟くと、しばし俺の背中を見つめていた。が……。
「で、では、そちらの貴方は?」
今度はレッドに目を向けた。
「お、いや、私は、えっと、て、『テイルレッド』です!」
と、総二は咄嗟に思いついた名前を叫ぶ。
「テイルレッド……!それがお名前なのですね!」
すると会長は、キラキラした目でテイルレッドを見つめている。俺は、それを一瞥すると歩き出す。
「あっ!待てよマギア!」
それを咄嗟に追ってくるテイルレッド。
「あっ!お待ち下さい!また、またお二人とお逢いすることは出来ますか!?」
そう叫ぶ会長に俺は何も言わない。一方でレッドは……。
「あなたが、ツインテールを愛する限り」
それだけ言って、俺の傍に駆け寄ってくる。……何だ今の台詞。と、内心俺は思いながらも、レッドが合流すると、強化された脚力で俺達はその場を離れたのだった。
その後、俺達は建物の影に隠れていた愛香とトゥアールに合流した。
そして俺は、ゼツメライザーからドードーゼツメライズキーを抜いて変身を解除した。
と言っても、ドードーマギアの装甲が消滅し、俺はヒューマギアのボディを晒しただけだが。
「ッ、お前、本当に、空、なのか?」
テイルレッドから元の男の姿に戻った総二が、マジマジと俺を見つめながら呟く。こいつの後ろの愛香とトゥアールも、同じような感じだ。
「あぁ。……と言っても、信じては貰えないかもしれないがな」
「お前は、一、体」
と、言いかけた時、総二の体がフラついた。
「ッ!?そーじ!」
咄嗟に愛香が受け止めようとするが、それより先に俺が総二の体を正面から受け止めた。
「うっ、俺……」
「疲れたんだろ。後は俺達が何とかする。お前は気にせず寝てろ」
「悪、い」
そう言い残して、総二は気を失った。俺は気絶した総二を背中に背負う。
「さてと、ここじゃ何だ。別の場所で話そうじゃないか。……なぁ、トゥアール」
そう言って俺はトゥアールに目を向け、愛香も同じように彼女を見ている。
「聞かせて貰うぞ。……お前が何者か。総二が何故あんな風に変身出来たのか。奴らが、何者なのか。お前の知る限りの事を、全て」
と、俺は問いかけるが。俯いていたトゥアールが、キッと俺を睨み付けると……。
「何で、何で貴方の背中に総二様がいるんですか!ここはヒロインが膝枕をする所でしょうがっ!」
「「……。はぁ?」」
突然のトゥアールの言い分に、俺と愛香は首をかしげた。
「戦い疲れた主人公を、メインヒロインの女性が膝枕しながら介抱する!王道中の王道シュチュエーションでしょうが!それが、野郎ロボットの背中なんて!世界はBLじゃないですよぉぉぉっ!」
……何か、変な事を喚いていた。
「ハァ。すまん愛香。俺、今手が離せない」
「任せて。2秒で沈めるわ」
その言葉を聞いた時、俺は鎮める、と言う単語を連想した。しかし……。
「いい加減真面目になりなさいってのぉぉっ!」
繰り出されたのはボディーブロー。それを脇腹に食らったトゥアールはしばし呻きながら悶絶していた。
「ハァ。ったく」
俺はため息をつきながらも、トゥアールが回復するのを待った。
その後、俺達はトゥアールの力で観束家の、総二の部屋にジャンプした。俺は総二をベッドに寝かせた。
「そーじ、大丈夫かしら?」
眠っている総二を気にする愛香。
「疲れただけだろうから、直に目を覚ますだろう」
そう言って、俺は愛香を落ち着けた。
と、その時、俺の網膜ディスプレイの隅に、バッテリー残量が30%を切った事を伝えるメッセージが流れた。
「っと、悪いトゥアール。お前、俺をテレポートさせられるか?」
「はい?それは可能ですが、また何故ですか?」
「流石にこの姿のままじゃ目立つしな。それに、バッテリーの残量が減ってきた。チャージしないといけないからな。一旦家に戻って、体を整えたりしてくる」
「……分かりました」
と言う事で、俺はトゥアールに俺の家の住所を伝えると、そこに飛ばして貰った。
場所は家の裏庭。俺は周囲を警戒しながら家に入ると、リビングに向かった。この家にいるのは、俺だけだ。家族である両親は今、海外で仕事をしている。
俺はリビングの一角にあるスライド式のドアを動かす。ドアの向こうは小さな収納スペースになっていた。使わない荷物が整えられた形で重ねられている。
俺は、無言で収納スペースの壁の一部に触れた。すると、壁に偽装されていた端末が起動し、俺は接触通信を通して解除コードを打ち込んだ。
直後、スペースの壁の一部が動いて、秘密の研究室に続く階段が現れた。俺はそこを降りて、じいちゃんの秘密の研究室へ行く。
そしてそこには、『俺と同じ姿をしたロボット』が無数に並び、立ったまま眠っていた。
彼等の眠る強化ガラスのケースの前に立てば、彼等と同じ姿の『俺』がガラスに映る。
「……さっさと、やるか」
俺は静かにガラスケースから離れ、部屋の中央にあるサークルの上に立った。すると、直後に周囲からロボットアームが伸びてきて、俺の体の上に、人工皮膚が吹き付けられ、体が出来上がる。
更に、その傍にあったベッドのような物に体を横たえ、消耗したバッテリーの充電を開始する。数分もすれば、30%を下回っていた残量が60%まで回復する。……ここまで回復すれば良いだろう。
そう思ってベッドから降りた俺は、部屋の一角にある姿見の前で異常が無い事を確認すると、研究室を出て自分の部屋に行き、タンスから服を引っ張り出してきて羽織る。
そして、鍵付きの引き出しを開け、中に収められていた『ゼツメライズキー』をいくつか手にしてポケットに押し込むと、部屋を後にしようとした。が……。
「ぐっ!?」
直後、視界が揺らぐほどの激痛が俺の体を突き抜けた。俺は倒れそうになる中、タンスにしがみついて何とか耐えた。
クソッ、今日のは、やけに『大きい』な。
俺は、心の中でそう悪態を付いた後、気を取り直して部屋を出て、家を出て、総二達の所へと戻るのだった。
ちなみに、戻ったら戻ったで……。
「あぁっ!戻ってきたのか空!」
「空っ!手を貸しなさい!この痴女を今すぐ『殺る』から!」
総二が、トゥアールをしばこうとしていた愛香を必死に止めていた。
「落ち着け愛香。そいつを殺したら、さっきの事、何にも分からないだろ?」
「そうです。私は重要な情報源ですよぉ?」
と、俺のフォローに対してしたり顔のトゥアール。しかし……。
「やるにしろ、何にしろ。そう言うのは話を聞いてからにしろ。物事には順番ってもんがあるだろうが」
「そうだそうだ~。……って、あれ?それじゃ私助からないんじゃ?」
そう言って首をかしげるトゥアール。
「まぁ、とにかくだ」
俺は愛香を宥め、4人で十字を描くように座った。
俺の前に総二。左右には愛香とトゥアール。二人がケンカを始めれば、俺が止める。
「さて、こっからは真面目な話しをしよう。まずはトゥアール。お前が総二に渡したブレスレット。あれは何だ?何で総二が女になったんだ?」
「えぇ。では、順番に説明しましょう」
そう言って、トゥアールは色々な事を、時にバカ言って愛香にしばかれそうになりながらも、教えてくれた。
まず、総二が渡されたリング。あれはトゥアールが開発した『テイルギア』と呼ばれる物で、総二が幼女化するのはこの変態痴女の趣味だそうだ。
しかし……。
「なぁトゥアール。説明の部分にあったエレメーラとか、属性力って何だ?それに、対エレメリアンとかあったが、そのエレメリアンって、あの蜥蜴野郎の事か?」
理解出来ない単語がいくつかあったので、俺はそれを聞いてみた。
「えぇ。先ほど皆さんが目にした怪物。あれこそが『エレメリアン』です」
「成程。……じゃあ、次はその辺りを聞かせて貰うか」
そうして、説明は続いた。
まず、トゥアールが異世界人である事。次にエレメーラ、『属性力』についてだ。
これは俺達と近くにありながら、決して見る事の出来ない、ごく希に存在する、突出した科学力を持った並行世界が生み出した、心の力、だそうだ。トゥアール曰く、属性力とは心の拠り所であり、活力の根底、だそうだ。
例えばツインテールの属性なら、それをしている人物やそれを好きな人や執着している人が、ツインテール属性を持っているらしい。……もろ総二用の属性だな、とか俺は思ってた。
そして、更には奴らの事も教えて貰った。奴らの名は『エレメリアン』。エレメーラから生まれた未知の生物だそうだ。
トゥアールによれば、エレメーラそのもの、とも呼べるらしい。奴らは実体化したエネルギー体であり、言わば幽霊のような物だそうだ。そして、エレメーラから生まれたエレメリアンのエネルギー源は、当然エレメーラだ。
例えば、ツインテール属性の人がその属性をエレメリアンに奪われたとする。すると、その人は二度とツインテールを結べないらしい。
そうやって、エレメリアンは様々な世界から属性力を奪い、それが枯渇すると別の世界へとやってくる。そうやって、トゥアールの世界も侵略を受けたらしい。
エレメーラを奪われた世界は、傍目には普通に見えるかもしれないが、それでも活力の根底を奪われたその世界は、どこか寂しい世界になってしまうそうだ。
そう思うと、エレメリアンってのは生産性のない生物だな、と俺は思った。
生命は種の存続の為に生きる。それは人間だろうが犬猫だろうが同じ事だ。生まれ、育ち、やがてつがいを見つけて、子をなし、老いて、次代に種の存続を託して、死ぬ。
それが命のサイクルだ。だが奴らはその外側に居る。ただ生きる為に人々から奪う。しかし生きていても、何かを生産する、つまり生み出すわけでもない。
全くもって、生産性のない奴らだ。……まぁ、かく言う俺も、その生命のサイクルの外側に居るんだが。と、俺は内心思っていた。
と、その時ふと俺は思い出した。
「そういや、さっきの戦いでこんなの拾ったんだが……」
そう言って俺は、あの戦いで回収した菱形の結晶体をポケットから取り出した。
「これは、エレメーラオーブですね」
「「エレメーラオーブ?」」
トゥアールの言葉に総二と愛香が首をかしげる。
「はい。それはエレメーラ、属性力が結晶化した物です」
「成程。つまり、あの蜥蜴野郎のコアみたいな物か」
頷きながらも、俺はそれをトゥアールに渡した。
「しかし、驚きです」
「ん?何がだ?」
「……空さんの、そのボディの事です」
トゥアールは、俺を見つめながら呟いた。そして同時に総二と愛香がハッとなった。
「この世界に、ここまで完全な『義体』を開発する技術があったなんて」
「ぎ、擬態?どういうことよトゥアール」
「愛香」
多分、愛香の言ってる擬態とトゥアールの言った義体は、違う。
「トゥアールの言う義体ってのは、義手の義に体って書く。つまり、生の肉体じゃないって事だ」
「ど、どういう事だよ空。じゃあ、お前って一体……」
戸惑う総二。……さぁて、こっからだ。
「そうだな。んじゃ、今度は俺の番だ。俺の体の事とか、あの姿の事とか。色々話すよ」
そうして俺は、親友2人とトゥアールに、自らの事を打ち明ける決心をしたのだった。
第2話 END
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