俺、マギアになります。   作:ユウキ003

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楽しんで頂ければ幸いです。


第4話 3人目の戦士

~~~前回のあらすじ~~~

総二たちに自分の過去を話した空。そして翌日。彼は学校で慧理那から自分がヒーローである事を言う言葉をもらい、喜んだのも束の間。皆の前で礼を述べられた彼は、瞬く間に注目の的になってしまったのだった。その日の放課後、総二と空は宣戦布告と同時に襲撃してきたタトルギルティと戦い、これを退け、更にはテイルレッドとマギアと言う戦士たちの存在を世に知らしめる形となったのだった。

 

 

亀のエレメリアンとの戦いの翌日、今朝。ちなみに昨日の夜には、総二の家の地下に完成した基地のお披露目があった。この基地のおかげで、俺達は世界中に行けるようになった。そして俺は朝、早めに起きるとヒューマギアボディのメリットである『ネットへのアクセス能力』を使ってニュースサイトの動画などを見る。

 

そこでは既に、亀野郎との戦いの映像と、戦いの後女子達にもみくちゃにされるレッドの映像。そして俺がレッドを抱えて飛び立つ映像が流れていた。

 

昨日今日でもう流出してやがる。まだ2日も経ってないんだぞ?俺はその事実に驚き、俺達の存在が世界規模で広がる事を危惧しながらもベッドから起きて着替え、ゼリー飲料を飲み干すと早めに家を出た。

 

念のためこの事を伝えようと思い総二の家に向かうと……。

「あら?空」

ちょうど家の入り口の前で愛香と合流した。

「愛香。おはよう」

「おはよう空。空がそーじの家に来るなんて珍しいわね。いつもは通学路の途中で合流するのに」

「まぁ、ちょっとな」

そう言って俺は周囲を見回して人が居ない事を確認する。

 

「昨日の戦いの映像とか写真がもうニュースで流れてたから、その事が気になってな。一応総二にも伝えようと思ったのさ」

「そっか、それで」

 

その後、俺達は総二の家に上がって、総二が起きてくるのを待っていた。

 

そして、総二は降りてくるなりテレビを見て絶叫した。

 

テレビでは、テイルレッドがもみくちゃにされる動画が流れていたからだ。

 

更にネットではwikiのページやブログ、考察記事などのサイトまで出来上がっている。そしてトゥアールが持ってきたPCでそのサイトの中身を見れば、どれもこれもテイルレッドを好意的に受け止めるコメントなどでいっぱいだ。

 

動画でも、更にはネットでも、テイルレッドを賞賛する声や何かが見受けられる。

「うぅ、何で俺がこんな事に。って言うか空は?マギアはどうなんだよぉ」

「あ、えぇっとぉ、空さんはぁ」

若干テイルレッドの人気に絶望しながらもポツリと呟く総二に、俺の表情が僅かに動き、PCを開いていたトゥアールの視線が宙を彷徨う。

 

その時。

「さて、この強くて可愛い女の子、テイルレッドについての話題ですが、続いて彼女と共に現れた謎の存在、マギアについて町の人の意見を聞いてみたいと思います」

 

付けっぱなしだったテレビから流れる声に、俺達は皆視線をそちらに向けた。

 

そして早速、街中でマギアについてレポーターが聞いて回ってるが……。

 

「何か怖いし不気味ですよね。あれ」

「如何にも怪人みたい」

「って言うかそもそもマギアって何なの?テイルレッドの仲間?でも、何か不釣り合いですよね?」

「そうそう。何て言うか、美女と野獣みたいな」

「あれはきっと、裏切り者のエレメリアンって奴ですよ。自分たちの行いを悔いて敵である彼女の仲間になったとか」

 

世の人間達の反応は、そんな物だった。

 

『テイルレッドとは不釣り合い』。

『そもそもあれでヒーローなのか?』。

『裏切り者のエレメリアンではないか?』。

『如何にも怪人って感じで悪い奴みたい』。

殆どの奴らが、そう言って居た。

 

「そ、空」

そして、画面を見ていた総二が、俺の方を心配そうに見つめている。

 

「良いんだ」

そんなこいつを落ち着ける意味でも、俺はそう呟いた。

 

「俺は誰かにヒーローとして崇められたり認められたいから戦ってる訳じゃ無い。ただ、誰かが大切な物を奪われ、『失う痛み』を感じるのが、見過ごせないから戦ってるだけだ。……世論なんて、気にしても始まらないだろ?言わせときゃ良いんだよ。あんなの」

そう言って俺は笑みを浮かべる。

 

俺は失った。体をだ。その喪失感から来る幻肢痛。それは今までずっと、俺を蝕んできた。だが、だからこそ『喪失の痛み』を俺は知っている。

「空」

 

俺の方を心配そうに観ている総二。あ~も~。朝からこう言う雰囲気は良くない。

 

「まぁ俺の事は良い。ともかくこれで、テイルレッドの存在は公になった訳だが……。なぁトゥアール。一つ質問なんだが」

「はい?何でしょう?」

 

「お前はこの前、テイルギアの使用者の候補がもう1人居る。けどそいつは凶暴だから止めた方が良いって話をしてたと思うが、そいつ以外にギアの適性者は本当に居ないのか?」

「えぇ。残念ながら。今の私の調査で判明している、ギアを扱う事の出来る人は2人。1人は今言った凶暴な人。もう1人が総二様です」

「今後、その野蛮人以外に3人目の適性者が見つかる可能性は?」

 

「無い、とは言い切れませんが、可能性は限りなく低いと考えた方がよろしいかと。何せギアを使うには、相当のツインテール属性が必要ですから」

と、申し訳なさそうに語るトゥアール。

 

「そうか」

「けど空。何だってそんな事聞くの?」

ポツリと呟く俺に問いかけてくる愛香。

 

「彼奴ら、エレメリアンの規模がまだ不明だからだよ。トゥアール、一応聞くけど、エレメリアンの総数は分かるか?」

「いえ。正確な数は私も。ただ、100万は下らないと考えた方がよろしいかと」

「はぁっ!?そんな数をそーじと空だけで戦えって言うのっ!?」

トゥアールの言葉に愛香が食ってかかる。

 

「落ち着け」

俺が彼女と、散々物理的にやられてきたせいか怯えているトゥアールの間に割って入る。

「敵の数についてトゥアールにキレても仕方無いだろう」

「だからって敵が多すぎるでしょっ!?いくら何でもそーじ達だけじゃっ!」

「……分かってる。けど、だからって俺達がここで戦う事をやめたらどうなる?」

「うっ、それは……」

 

「敵は強大で数も多い。現時点でまともに戦えるのはマギア化した俺とテイルレッドに変身した総二の2人だけだ。その俺達が戦いを止めたら、エレメリアンによる侵略を止められる奴は居ない。……今戦える俺達で、どうにかするしかないって事だ」

「それは、分かってるわよ。でも2人だけじゃ……」

そう言って総二をチラ見する愛香。好きな男が心配なのは愛香も同じか。

 

「確かに戦うにしろ、俺と総二だけじゃ限界がある。まして、今の俺は奴らにダメージを与えるか、雑魚の撃破が関の山だ。実質的にエレメリアンと戦うのは総二1人になっちまう。それだけこいつに負担が集中しちまう事でもある。目下の問題は、戦力増強だな」

「そうよね。……あっ、そう言えば空のおじいさんが残した、えっと、ライダーシステムだっけ?あれは使えないの?空のプログライズキーやゼツメライズキーがあれば、エレメリアンと戦えるんでしょ?」

 

「……確かに、ライダーシステムのスペックはマギア化した時の俺より高いから、今以上には戦えるだろうが、実機がないんだ」

「え?それって」

首をかしげる愛香。

 

「実物が存在していない、と言う事ですね?」

トゥアールの言葉に、俺は無言で頷いた。

「その通りだ。より正確に言うのなら、プログライズキーは完成してるし、ある程度数もある。問題なのは、システムの根幹であるベルト。ゼツメライザーのようなベルトが完成してない事なんだ」

「な、ないって事は、作れないのか?」

「いや」

 

俺は総二の言葉に首を振った。

「俺の家の地下にじいちゃんの研究室があってな。データ自体は存在してるから、そこにある多次元プリンター、ザットの力でベルトを作る事自体は可能だ。ただし、リソースの問題もあって今すぐ作る事は無理だ。それに、いくら作れると言っても、同時に複数を作れる訳じゃないからな」

「今すぐに無理って、具体的にどれくらいかかるんだ?」

首をかしげる総二。

 

「仮にだが、今日から作り始めたとしても、早くて1ヶ月。遅くて2ヶ月って所だ。それに作るにしても、纏う奴を決めなきゃ不味いだろ?」

「え?それって空じゃないの?」

更に首をかしげる愛香。

「それもまぁ1つの手だ。だが、純粋に戦える奴の数を増やすとなれば、作るのは人間用のドライバーだ。だがその装着者を見つけるにしろ、身内以外からとなると、俺達の秘密を更に他人に漏らす事になる。総二だって、自分がテイルレッドだってこれ以上周囲に知られたくないだろ?」

「あぁっ!もちろんだっ!」

 

すんごい真剣な表情で叫ぶように頷く総二。

「となると、仮にドライバーが完成しても使う奴が居ないって訳だ」

「何を言うんですか空さん。それならここに貧乳ゴリラが居るじゃないですか。この貧乳ゴリラがライダーシステムを手にしたら貧乳に金棒ですよ」

「貧乳貧乳うるっさいわねっ!」

『ドゴォッ!』

「あべしっ!?」

トゥアールに怒って相変わらずのフィジカルツッコみをしてる愛香。

 

まぁ、それはともかく。

「まぁ確かに、愛香は格闘技の経験があるから、確かに一番有力っちゃ有力な候補だ。とは言え、現状じいちゃんのデータにある人間用のドライバーにはちょっと問題があってな」

「え?問題?」

 

愛香が、トゥアールの襟を掴んで今にも拳を振り下ろしそうになりながら俺の方に首をかしげている。

「1つはじいちゃんが産みだした人工知能『ゼア』の承認が必要だ。簡単に言うと、ゼアに認められた人間でなければ変身出来ない。そしてもう一つは、変身の為に外科手術をして、脳内に特殊なチップを埋め込む必要があるんだが……」

「え?何それ。ヤバくない?」

「あぁ、後者の方は特にな。しかも後者をやる場合、医者の手が必要だ。じいちゃんのツテを頼れば出来なくはないが、そしたら俺達の正体がばれる危険性がある。かといって、ゼアが認める相手というのも俺はよく知らない。となるとなぁ」

「八方塞がり、か」

ポツリと呟く総二。するとその時。

 

「ほらみんな。そろそろ学校行かないと遅刻するわよ?」

未春さんの声が聞こえ、時計を見ると確かにもう結構な時間だ。

 

「この話は後だな」

って事で、俺達は学校へと向かった。

 

学校では相変わらず、生徒達はテイルレッドの話題で盛り上がっていた。対して俺、マギアについては殆ど話題にもなっていない。なっても、あれで正義のヒーローなのか?って、嘲笑とも侮辱とも取れるような会話をしている。

 

……分かっていた。分かっていたが、やっぱりちょっと、な。

 

 

そして、それからと言う物、俺達は忙しかった。

 

あれから、アルティメギルは律儀に毎日1体ずつ、世界各地に出現するようになった。その度に俺はレッドと一緒にマギア化して共に戦った。

 

そんな中で……。

 

「はぁっ!」

「なんのっ!」

敵のエレメリアンが放った光弾による攻撃をレッドが難なく躱すが……。

 

「きゃぁぁっ!」

「ッ!?しまったっ!」

避けた先には、野次馬たちがいた。それに気づいたレッドだが、間に合いそうにない。

 

 

そして、その時俺は、考えるよりも先に駆け出した。

 

『マンモス』

 

「アップグレードッ!」

 

『ゼツメライズ!』

 

俺は即座に、ドードーからマンモスマギアへと形態変化し、その人達の前に立ち塞がった。

 

『ドゴォォォォンッ!』

「ぐっ!?うぅっ!?」

 

マンモスのロストモデルを纏ったマンモスマギアは防御力とパワーに秀でた形態だ。

『バチバチィッ!』

 

しかし、それでもエレメリアンの攻撃は強力で、何とか防いだものの俺の視界にはアラートディスプレイがポップアップし、体の各部で火花が散る。

 

「マギアッ!大丈夫かっ!」

レッドが叫びながらもエレメリアンを殴り飛ばす。

 

「ま、まだ、まだぁっ!」

俺は火花を散らす体に鞭打って立ち上がり、ベルトのスイッチを叩いた。

 

『ゼツメツノヴァ!』

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

俺は陸上選手のクラウチングスタートのように構え、同時に胸部の角にエネルギーが集まる。

 

足腰にもエネルギーが集中し、今の俺に、驚異的な突進力を与える。そして……。

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

俺は咆哮を上げながらエレメリアンに突進した。

「なにっ!?」

エレメリアンはレッドに殴られた反動で、起き上がった時には眼前に俺が迫っていた。

「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

『ドゴォォォォンッ!!!!!』

 

「むおぉぉぉぉぉぉぉっ!?!?!?!?」

 

俺の必殺技であるタックルを喰らって大きく吹き飛び、建物の壁に激突し、気絶したのかピクピクと体を震わせるエレメリアン。

 

くっ!ダメ、なのか。俺じゃやっぱりっ!クソッ!

 

「レッドッ!今だっ!」

「あぁっ!任せろ!オーラピラー!」

結局、エレメリアンはレッドがブレイクレリーズで倒し、エレメーラオーブも回収した。

 

そして戦いが終われば、いつも通りレッドに群がる野次馬たち。俺は1人、ただ1人でそれを見つめているだけだ。

『バチバチッ!』

 

「くっ」

今日は、ダメージがデカい。さっさと帰ってボディを修復しよう。そう、思って居た時。

 

「あの」

「え?」

その時、1人の女の子が、小さな花を手に俺の傍に立っていた。

 

その子の表情は、怯えているような、それでも勇気を振り絞っているような様子だった。

 

「あ、あのね!守ってくれて、ありがとう!ゾウさん!」

そう言って俺に花を差し出す女の子。

 

それだけで、俺の心は、どこか救われたような気がした。俺はその場に膝を突き、その花を受け取った。

 

「ありがとう。大事にするよ」

 

俺がそう呟くと、女の子は笑みを浮かべてから離れて行った。

 

……例え、注目なんかされなくても、俺には守るって決めた意思がある。

 

俺はそれを再確認していた。

 

「助けてくれマギア~~~!」

 

……だったけど、野次馬に飲まれるレッドを見て、あぁはなりたくねぇなぁ、とか思ってたりなんかして。

 

 

とまぁ、こんな事がありながら毎日俺達はエレメリアンと戦っていた。そして、ある日またしても現れたエレメリアンと戦う為に、どこかのお花畑にやってくる俺達。レッドに変身した総二と、ドードーマギアに変身した俺。

 

「敵は?どこだ?」

マギア化した俺とレッドは背中合わせで警戒を強める。

 

「お待ちしておりましたよ、テイルレッド。マギア」

「「っ!」」

 

その時聞こえた声に俺達は警戒心を強め、声のする方へと体を向け、レッドはブレイドを抜き俺も拳を構える。

 

そこに立っていたのは、狐を思わせるこれまでの筋骨隆々のエレメリアンとは異なる、シャープなエレメリアンと配下のアルティロイドだった。

 

「私はリボンに魅せられし者、フォクスギルティ。どうかお見知りおきよ、美しい女神よ」

「誰が覚えるかっ!お望みなら、死神としてお前を地獄に送ってやるっ!」

 

「ふふっ、可憐でありながら力強い。可憐なリボンだ。見ていて心が蕩けますよ」

「だったらそのまま、心臓麻痺でも起こして、あの世に逝っちまいなぁっ!」

 

俺はフォクスギルティ目がけて殴りかかる。

「無粋な者よ。私とレッドの邪魔をするなっ!」

だが、それを防ぐ壁となるアルティロイドの群れ。

 

「モケェッ!」

一匹を殴って潰したが、それだけだ。そして攻撃を行った隙に、俺は一瞬でアルティロイドの群れに包囲され、レッドと分断されてしまった。

 

「マギアッ!」

「心配するなっ!雑魚程度に遅れはとならないっ!そっちこそ気をつけろっ!」

「あぁっ!分かったっ!」

 

やむを得ず、俺達はそれぞれの敵と戦う事になった。そして、フォクスギルティはどこからか取り出したリボンを投げた。アルティロイドと戦う俺にはその様子を見ている事しか出来なかった。投げられたリボンはレッドへと向かっていく。

 

まさかレッドに巻き付いて動きを止める気かっ!?そう思ったが、リボンはレッドの周囲を回っただけでフォクスギルティの元へと戻っていった。何だ?と思う俺。レッドも不思議そうな顔をしている。

 

「結晶せよっ!我が愛っ!」

レッドは戸惑い、俺はアルティロイドと戦っている間に、リボンは何と、形を変えてレッドの瓜二つの姿になったっ!?

 

レッドと奴の会話を聞いていると、どうやら、レッドの外見を模しただけの人形のようだ。だが何の為に?と俺が思っていると、なんとあの狐っ!ヘンテコな妄想に浸り始めたぞっ!?そしてその前で絶叫を上げるレッド。そりゃ女になった自分で変態が変態的行動をしてりゃ叫びたくもなるなっ!

 

何か言葉からして、アイツの妄想って幼女であるレッドと風呂に入ってる所かっ!?ったくエレメリアンってのは変態の集団かっ!?ってそんな事よりっ!

「おいレッドっ!とっととその偽物をぶっ壊せっ!これ以上その変態に自分の人形で好き勝手されるのはごめんだろっ!!」

 

俺はアルティロイドを殴り倒しながら叫ぶ。

「わ、分かったっ!」

 

レッドは叫び、先ほどの絶叫で落としていたブレイドを拾い上げ構えるが……。一向に踏み込もうとしない。妄想に浸っている奴は隙だらけだ。なのに、なんで行かないっ!?

「どうしたレッドっ!そいつは隙だらけだぞっ!」

 

「む、無理だっ!俺には出来ないっ!例え紛い物でも、ツインテールを傷付けるなんて、俺には出来ねぇよぉっ!」

「ッ!?ダメかっ!」

レッド、総二がツインテールバカなのは知ってたが、まさかこれ程とはっ!

 

「だったらぁっ!」

俺は相手にしていたアルティロイドを投げ飛ばし、その隙にゼツメライズキーを交換する。

 

『クエネオ』

 

「アップグレードッ!」

 

『ゼツメライズッ!』

 

俺はドードーマギアから、過去に存在した爬虫類、クエネオスクースをモデルにしたマギア、『クエネオマギア』に変身する。そして変身と同時に、剣にもブーメランにもなる武器、『ブーメザン』2本を両手に持ち、跳躍。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

レッドの紛い物目がけて斬りかかった。

 

「させはしないっ!」

『ビシッ!』

「ぐっ!?」

だが、腐ってもエレメリアンか。俺は奴の放った、リボンを使った鞭のような攻撃に弾かれてしまった。

 

「……何と非道なりマギア。あなたはこの可憐なツインテールを破壊しようと言うのですか。紛い物であろうとツインテールを愛するテイルレッドとはまるで真逆。あなたのようにツインテールについて何も知らない輩が彼女の相棒など。理解出来ませんねぇ」

「はっ。悪いが俺は、そこのツインテールバカとは違ってな。……お前達を生かしておけば、それだけ人々から属性力。つまり何かを好きで居る心を奪うって事だろ。だったら、俺の体が動き、戦える内はッ!!」

 

俺は叫び駆け出す。狙いはフォクスギルティだ。

 

「お前達アルティメギルに、人から何も奪わせはしないって事だぁぁぁぁっ!!」

投げられたブーメザンがフォクスギルティに襲いかかる。それを避けるフォクスギルティに、俺は殴りかかる。

 

「来いよ狐野郎っ!お前の人形ごと、テメェを地獄に送ってやるっ!」

「笑止っ!属性力も持たないその鋼の体で、何するものぞっ!」

「やってみなけりゃ分からねぇだろうがぁっ!!!」

 

そこから俺は、フォクスギルティとの格闘戦に突入していった。

 

 

 

~~~~~

戦うマギアとフォクスギルティ。それを見つめながらも、立ち上がれず膝を地面についたままのレッド。

そして、その様子を基地から見ているトゥアールと愛香。

 

「ったくあのツインテールバカはっ!ちょっとトゥアールっ!こっからミサイルでも撃てないのっ!?空1人じゃあの狐の相手は無理よっ!」

「無理ですっ!そんな攻撃的な施設までは作ってませんっ!かといって空さん1人では足止めが関の山。総二様も、あの様子ではまだ動けないっ!くっ!こうなったら、究極の決断をするしかっ!」

 

「な、何よ、その究極の決断ってっ!?」

「これは、愛香さんだけが出来る事なんですっ!」

「何?そーじを助けられるんなら、何だって良いわっ!言ってみなさいよっ!」

「愛香さん、変身して下さいっ!」

「分かったわっ!変身すれば、って、えぇっ!?出来るのっ!?」

 

「はいっ、実は愛香さんは、この世界において総二様と並んで、テイルギアの性能を引き出せる程の適性がある、適格者なのですっ!」

「そうなのっ!?…………って、ちょっと待ちなさいよ。あんたこの前、適格者は暴力的だとか何とか言ってなかった?」

「はいっ!事実じゃないですかっ!」

 

『ドゴッ!』

次の瞬間、げんこつがトゥアールを襲う。

 

その後も、まぁ色々とケンカを繰り広げる2人。

 

表面上は、この世界で出来た友達を戦いに巻き込みたくないと言うトゥアール。

 

実際には色々整備とか何とかかこつけて、ギアを持ってる総二とエロい事をしたいのだが、ギアを愛香が持つと、愛香ともエロい事をしなければならないとか。

 

 

しかしそれでも、トゥアールがこれ以上他人を、友人である愛香を巻き込みたくないのは、本当だった。そもそも、直接関係の無い総二を巻き込み、世界を救うためとは言え、彼女の戦いはエレメリアンへの『復讐』。そして愛香がギアを手にすれば、総二と同じようにトゥアールの復讐に愛香を巻き込む事になる。

 

しかし愛香とて、ツインテールである以上エレメリアンからは格好の標的。そして何より、今は総二が危ない、とあってはギアを欲するのも必定だった。自分自身を守るために。自分の思いを寄せる相手を助けるために。

 

そして、2人は……。

「愛香さん、これだけは約束してください」

ポケットから青いブレスレットを取り出したトゥアール。彼女は真剣な面持ちだ。

 

「何があっても、総二様の最初の女は私に任せて貰えると」

「この状況で何言ってるのよアンタはぁぁぁぁっ!!!!!」

 

とまぁ、結局のトゥアールクオリティに怒った愛香は、最終的にトゥアールからブレスレットを強奪。

 

「待っててねそーじっ!『テイルオン』ッ!」

 

そして、愛香は青い戦士へと変身し、空間跳躍カタパルトで飛び出して行った。

 

基地に殴られてのびているトゥアールを残して。

 

 

~~~~~~

『バキッ!』

「ぐっ!?」

 

一方、あれから戦い続けているクエネオマギアの空とフォクスギルティ。しかしスペック的に劣るマギアは、防戦一方だった。今も鞭のように振るわれるリボンに弾かれ、後ろへと下げる。

 

「レッドっ!」

「お、おぉっ!」

だがある程度、奴をドールから引き離す事が出来たっ!その隙に、まだ精神的ダメージから回復しきっていないが、レッドが前に出る。が……。

 

「おっとっ!」

「っ!?」

だが、引き離したと覆った紛い物の後ろに、瞬時に回り込むフォクスギルティ。

 

「うっ、くっ!?」

それだけでレッドは何も出来なくなるっ。またかっ!さっきからずっとこの繰り返しだっ!しかも、大きく引き離そうとしても、仕掛ければ防戦一方の俺じゃそこまでの距離は稼げない。……完全に手詰まりだっ!かといって、こっちはアンドロイドで動力も有限。レッドも体力や精神的な事を鑑みて、長期戦は不利だ。

 

何か、何かあと一つ、あと一手。何かがあればっ!!

 

そう思った時。

 

「そこまでよっ!」

 

「え?」

「何っ!?」

「なんだっ!?」

レッド、フォックスギルティ、俺は戸惑いながらも周囲を見回す。

 

その時、青い光が俺達の傍に降り立った。光が晴れた時、そこに立っていたのは1人の少女だった。

 

テイルギアには、特殊な装置が搭載されている。認識攪乱装置、イマジンチャフだ。テイルギアを纏う時、顔を覆うメットのようなものは無い。性別さえ変わっている総二ならば素顔がバレる心配は無いが、もし姿形が変わらないのなら、ギアの装着者は素顔を晒す事になる。

 

だが、イマジンチャフのおかげで第3者は装着者と別の人間を同一人物として認識出来ないらしい。おかげで素顔で戦っても問題は無いのだが……。この機能は、装着者と顔見知りであった場合、効果を失う。

 

だからこそ、俺と総二には、その人影の正体が分かってしまう。

「あ、あい、か?」

「マジかよ」

現れたそれは、レッドとなった総二と似たボディスーツを纏った愛香だった。髪色が黒から青に変わっている所以外は、これといった変化は無い。

 

「何者です、あなたは?」

「あたしは……」

 

と、愛香が名乗りを上げようとした時。

「いたっ!あそこだっ!」

突如として現れたのは、無数のカメラっ!メディアの連中かっ!ってか、仮にも戦場だろうここはっ!あれじゃまるで有名人の追っかけだなっ!

 

だが、それを前にしても愛香は動じた様子は無い。

「あたしは、『テイルブルー』よっ!」

 

それは宣言だった。テイルギアの戦士がレッドだけではないと、世界中に宣言したも同然だ。

 

「レッドっ!マギアっ!一緒に戦うわよっ!」

「お、おぉっ!」

「分かったっ!」

突然の、変身した愛香。ブルーの登場に戸惑うレッドと、臨戦態勢の俺がブルーの左右に並び立つ。

 

「フォクスギルティッ!あたしが来て、この3人が揃った今、アンタなんかには負けないわっ!仕留めるわよっ!2人ともっ!」

「よしっ!俺がフォローするっ。行くぞっ!」

「えぇっ!」

 

ブルーも加わってこちらは戦力増加だっ!まずまっさきに俺が前に出るっ!レッドは、まだ精神的なダメージから抜けきってないようで動けそうにないなっ!

「くっ!数が増えようとっ!我がリボンの力でっ!」

奴は無数のリボンを触手のように伸ばしてくる。あれでこちらを縛り上げるつもりか。だがっ!!

 

「そんなもの、切り裂いてやるっ!」

 

俺はゼツメライザーのスイッチを押し込む。

 

『ゼツメツノヴァ!』

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

腕を振り、ブーメザンを投げつける。すると赤黒いエネルギーに包まれたブーメザンがエネルギー体となって分裂。迫り来るリボンを悉く迎撃し切り裂いていく。

「ブルーッ!今だっ!」

「任せなさいっ!」

そして、俺を飛び越えてブルーがフォクギルティに迫る。

 

「ば、バカなっ!?こうなればっ!」

狼狽するフォクスギルティは傍にあった紛い物を自分の前に置く。

 

「あなたは倒しますかっ!この可憐なツインテールの持ち主をっ!あなたの仲間の人形をっ!」

 

「そんなのっ、簡単でしょうがっ!!」

 

ブルーはそう言って、拳を放った。ガラガラと音を立ててレッドそっくりの人形が砕け散る。

「なぁぁぁっ!?何と言う事をっ!紛い物とは言え、仲間と瓜二つの存在を破壊するなどっ!」

「ふんっ!笑わせないでよねっ!どれだけ精巧に作ったって、所詮動きもしない偽物。あたしの大切な仲間、テイルレッドはこの世界にただ1人だけよっ!」

「ブルー……!」

 

毅然とした態度で言い放つブルーに、レッドは少し戸惑いながらも嬉しそうだ。

「ぐ、ぬぬぅっ!ま、まだだっ!まだ私は負けてはっ!」

「いいやっ!」

「はっ!?」

「もう終わりだっ!こんだけ隙だらけならなぁっ!」

『ズバッ!!!』

 

「ぐあぁぁぁっ!?」

ブルーにレッドの人形を壊され、狼狽している隙に俺はフォクスギルティの背後に回り込んだ。そして振り返るも対応出来ない奴の体をブーメザンで、連続で切り裂く。

 

「うっ!?ぐぐぅっ!?」

体中から火花を散らすフォクスギルティ。俺の攻撃で仕留めきる事は出来ないが、ダメージは十分に与えた。

 

「トドメは任せてっ!下がってマギアっ!」

「オーライッ!!」

 

俺はブルーの声に答え、その場から飛び退く。何とか立ち上がったフォクスギルティだが、ヨロヨロと動くだけだ。

 

「これがあたしの武器よっ!≪ウェイブランス≫っ!」

ブルーがリボンに触れると現れた武器。それは槍の名の通りの、先端が三つ叉の槍。ブルーは召喚したそれを頭上で回転させる。すると、フォクスギルティの足元から渦が発生し、水柱となってその動きを阻害する。

 

「戦いでは新参でもねぇっ!ツインテールは、あたしの方が大先輩なんだからぁっ!」

 

叫びと共に投擲されたランス。それは内蔵されていたスラスターで加速し、砲弾となってフォクスギルティの体を貫いた。

 

「ぐぅ、おぉぉぉぉぉっ!せ、せめて、最後に、夢、をぉっ!」

 

何やら奴は更に妄想をしようとしていたのだが……。

 

「さっさとくたばれ変態がぁっ!!!」

 

これ以上仲間で変な妄想されるのもごめんだっ!俺の投げたブーメザンが、更に奴の体を引き裂く。

 

「そ、そんなっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

そして、奴は絶叫を上げた直後に爆散した。

 

俺はフォクスギルティが爆散した跡に残っていたエレメーラオーブを回収し、ブルーに投げ渡す。

 

さて、これで戦いは終わりだ。

 

「よしっ!取材だっ!」

すると、遠目にこちらを見守っていたメディアの連中が駆け寄ってくる。全く、仕事に熱意があると言うか、自分が連中に襲われるとは思って居ないアホなのか。まぁ良い。

 

「レッド、ブルー。面倒に巻き込まれる前に退散……」

するぞ、と言いかけた時。なぜかブルーが前に出る。

 

「あっ、おいブルー」

俺が声を掛けるが、ブルーは止らない。

「どうもっ。今日から参戦しました、テイルブルーで~す。私とレッドで『ツインテイルズwithマギア』って事で、よろしくねっ」

 

と、メディアの連中にアピールをするブルー。

 

「おいっ」

俺はそんなブルーに駆け寄り、耳打ちをする。

 

「ギアのステルスがあるとは言え、お前は素顔をモロ出しなんだぞっ」

「大丈夫よ。ちょっとした絵を提供しただけだから」

俺の忠告に愛香はそう言って笑みを浮かべるだけだ。

 

「さっ、帰るわよ、レッド。マギア、お願い」

「……ったく。仕方無い」

 

『オニコ』

 

『ゼツメライズッ!』

 

俺はオニコマギアに変身し、2人を片手それぞれにぶら下げてその場を離脱した。

 

その道中。

 

「まさか愛香が適格者だったとはな」

「そりゃあたしも驚いたわよ。まぁでも、おかげで私も戦えるようになったし、これで3人チームね」

そう言って笑みを浮かべている愛香、もといブルーだが……。

 

「……お前は良いのか?」

「え?」

俺の問いかけに彼女が首をかしげた。

 

「戦う事が、だ。俺には俺で、戦うだけの理由がある。レッドもレッドで、ツインテールを守るって言う理由がある。……危険と隣り合わせの戦場で戦う事になるんだぞ?」

 

正直に言って、愛香はツインテール属性の持ち主であり、しかもそれはテイルギアを使えるだけの物だ。連中にとっては脅威であると同時に、倒せばかなりの属性力を回収出来る相手という事になる。当然、狙われる恐れがある。いや、それ以前に戦場で戦うことは、傷を負うことや死に繋がる可能性だってある。

 

俺の方は、体は替えが効く。頭さえ無事ならなんとでもなる。だが、愛香はそうはいかない。そしてそれは総二も同じ。

 

「いざとなれば、俺がお前達の盾になるつもりだが。……良いのか?戦場に立つんだぞ?」

「……分かってるわよ、それくらい危険だって事は」

若干脅しじみた俺の言葉にも、愛香は動じない。

 

「ギアがあれば自衛も出来るし2人の力になれるでしょ?」

「……それはそうだが」

「だから気にしなくて良いのよっ」

 

そう言って笑みを浮かべるブルーに、俺は口を閉じた。これ以上は野暮か、と思ったからだ。

 

「愛香、俺がふがいないせいで」

「だから言ってるでしょ?気にしないでよ。あたしだって戦えるって所、見せてやるから覚悟してなさいよっ」

そう言って笑みを浮かべるブルー。

 

「あ、あぁ。そうだな。これからは俺とブルーでツインテイルズ。そして、マギアも一緒で、3人で一つのチームなんだっ!」

その笑みによって、総二も元気を取り戻したようだ。

 

 

こうして、レッド、ブルー、そしてマギアである俺の3人のチームが生まれた。名前が『ツインテイルズ』で完全に俺がハブられてる感じがするが、まぁ良いか。と考えながら俺は2人をぶら下げたまま飛び続けた。

 

 

そしてその時ふと、俺は思った。

 

俺とは違う、テイルレッドと似た姿のブルーが現れた事について、世論はどう思うのだろう、と。

 

そしてその答え合わせは、翌日の朝にされることになったのだった。

 

     第4話 END




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