俺、マギアになります。   作:ユウキ003

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楽しんで頂ければ幸いです。


第5話 人の闇

~~~前回のあらすじ~~~

エレメリアンと戦う事になった総二と空の2人。敵の数が膨大なのに対し、たった2人だけと言う現状に戸惑いながらも、彼等はエレメリアンと戦う日々に追われていた。しかし、そんなある日2人の前に現れたフォクスギルティの存在もあって追い込まれるレッドとマギア。だが、トゥアールからギアを強奪した愛香がテイルブルーとして参戦。無事にフォクスギルティを撃破するのだった。

 

 

フォクスギルティを倒した翌日。朝。俺は日課になっていたネットなどのメディア情報の収集をし、『テイルブルーに対する世論の厳しい意見』を目にした後、総二の家に向かった。そしてたどり着けば……。

 

「おはようござっ」

「何なのよこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?!」

 

開いていた玄関から入り、リビングに向かう途中で聞こえてくる愛香の悲鳴とも怒号とも付かない叫び。ハァ、どうやら愛香も来ているようだが。まぁ良い。

 

俺は真っ直ぐリビングへと向かった。そこでは鬼のような形相の愛香がテレビの真ん前に陣取っていた。

「おはようさん、総二、愛香、トゥアール」

「あっ、お、おはよう空。お前も来たのか?」

「まぁな。ネットでブルーの反応を見てたから、気になってな」

 

そう言って俺もテレビの方に視線を向けながら、ブルーへの世論の反応を思い返していた。

 

それはまぁレッドとは真逆だった。幼女であるレッドが戦えば、やれ頑張れだの、必死に戦う姿がけなげで可愛いだのとネットやテレビで言われている。

 

しかしブルーの方は悲惨だ。やれ暴力的でレッドに悪影響が出ないか心配だ、とか。レッドの味方か分からないとか。しかもニュースならば幾分かオブラートに包まれているが、発言の自由という名で本音を暴露するネットやSNSなどもっと酷い。愛香が怒るのも分かるが……。

 

「やめろ愛香」

「ッ!止めないでよっ!こっちは朝から怒り心頭なのよっ!掲示板でブルーを絶賛したら、自演乙とか言われるしっ!動画じゃ私のIDを非表示推奨とか書かれてっ!」

 

「……そんなに民衆から愛される英雄になりたいのか?」

「ッ!」

 

どこか俺の冷たい言葉に愛香は息を呑んだ。

 

「俺に言わせれば、そんな動機は『不純』だ。もし愛香、お前が、今言ったように誰かに愛される英雄になりたいからテイルブルーを続けるって言うのなら、今すぐテイルギアをトゥアールに返せ。……そんな理由で戦うような奴は、危なっかしくて肩を並べてられない」

「あ、危ないってどういう意味よ」

 

「そのまんまの意味だ。……良いか、俺達が持つ力は、この世界の常識の外側にある。特に異世界の技術由来であるテイルギアを持つお前と総二は俺以上にだ。そしてもし、俺達がエレメリアンに勝てばどうなる?そうなればツインテイルズもマギアである俺もお役御免だ。……平和な世界に、武勇に優れた英雄は必要無い。……そして、次に待っているのは『魔女狩り』と同じだ。……人々はやがて恐れる。自分達の理解の及ばない力を持つ者。つまり俺達をな。……で、そんな事が起こったとして、それまで英雄として祭り上げられてた奴が、そんな不純な動機で戦ってた奴が、人間の酷い掌返しに耐えられるのか?」

「ッ、それ、は……」

 

「俺に言わせれば十中八九無理だろうな。だからそいつは怒る。人間にな」

俺の言葉に、愛香も総二も、真面目な様子で聞いていた。

 

「英雄として称賛を浴びる事は何よりも甘い快感であり、そして、それ故に人間が掌を返した時の怒りと憎しみは果てしない。『折角守ってやったのに』、『英雄として正しい行いをしたのに』。……喜びも満足感も、達成感も、全て反転する。喜びは怒りへ。満足感は敵意へ。達成感は復讐心へ。……そして最悪な事に、力を持った英雄には人間に対する復讐を可能にするだけの力がある。……そうなったら、今度は力を持った誰かの、人間に対する戦いが始まる。……お前はそうなりたいのか?愛香」

 

「……そんなのになるつもりは、無いわよ」

「なら良い。……それに、人間に過度な期待をする方がお門違いだ。英雄になってもてはやされ、後で手ひどい掌返しを食らうくらいなら、最初っから適度にハブられてる方が、後々心も痛まない。……総二も覚えておけ。『人間ってのはそこまで綺麗な生き物じゃない』って事だ」

 

「「…………」」

 

俺の言葉に、2人とも沈黙している。そして2人が俺を見る目は、どこか驚きと戸惑いに満ちているようだった。すると……。

 

「空さん。今の言葉は、あなたが人類に対して達観、いえ。諦観しているように思えたのですが、如何ですか?」

聞こえてきたトゥアールの声。その問いかけに俺は……。

 

「……諦観もするさ。俺のボディはネットに繋がるシステムがある。そんなシステムでネットを覗けば、やれ殺人だ強盗だなんだとろくでもないニュースが飛び交い、SNSは罵詈雑言に差別発言や怒号が飛び交う地獄。……人の誰もが悪意を持って他者と接している」

 

ネットの海では真実かどうかも分からない情報が氾濫し、コメント欄など罵詈雑言の嵐。そんなのを見せられたのなら……。

 

「人類に対して諦観もするさ。……あんな悪意の塊を、見続けたのならな」

 

そう言って俺は、ただ苦笑を浮かべた。が……。

 

「でしたら何故、あなたは人を守る為に戦うのですか?人は綺麗な生き物ではないと、悪意を持った存在だと知っているのに」

「……それでも、俺は……」

 

「はいはいっ!皆そろそろ学校に行かないと遅刻するわよっ!」

 

答えようとしたが、未春さんにそう促され、俺は結局答える事が出来ないまま観束家を出た。

 

 

学校へと向かう道中、総二や愛香は俺に何か言いたそうだったが、気まずい空気を避けたいのか、言い出すこと無く、他愛も無い話で話題を強引に作りながら歩いていたが……。

 

「ん?」

ふと、総二が何かに気づいて足を止めた。

「そーじ?」

「ん?」

更にそれに気づいた俺と愛香が足を止める。俺達2人は総二の視線を追う。こいつが見つめていたのは、ツインテールの女の子達だった。しかし総二の目、と言うか表情に浮かんで居たのは興味というより、疑問だった。

 

「……あの子たちがどうかしたのか?」

「あ、いや。なんか最近、ツインテールにする女の子が増えてきてるな~って思って」

「言われてみれば……」

と俺は周囲を見回す。朝の登校、通勤風景はいつも通りだ。だが、道行く女性の大半がツインテールにしていた。

 

「やっぱツインテイルズの影響なのかな?」

「そりゃぁネットやテレビであれだけ注目を集めてるんだ。その通りだろ。それに、これまで現れたエレメリアンはこれと言った苦戦も無い戦闘ばかりだったろ?戦闘の巻き添えで死傷者が出たことも無いし、連中は俺達の妨害で属性力も満足に集められていない状況だ。もはやエレメリアンとツインテイルズの戦いが、戦いっつ~よりある種のイベントみたいになってるからな。流行ればそれだけ物の知名度とかは広がる。今のツインテールみたいにな。……まぁ、戦う俺達からしたら、正直頭の痛い話だがな」

 

俺は最後、周りに居る2人にしか聞こえないように小声で話す。

 

「え?どうしてだ?」

「ツインテールが増えるって事は、ツインテール属性が増えるって事だろ?年がら年中ツインテール云々言ってる連中にとって、ツインテール属性の増加はむしろ僥倖。願ったり叶ったりって事だ。となると、今後ツインテール属性欲しさにどんな行動に出るか、分かったもんじゃないからな」

「例えば?」

 

「そうだな。同時に無数の怪人を放っての同時作戦。特に3人以上で来られるとヤバいだろ?今の俺は、精々エレメリアンの足止めが関の山だからな」

「そうだな。……確かに複数で来られると、圧倒的に数で劣る俺達の方が不利、か」

「ねぇ、そう言えば空。空のおじいさんが作ったベルトっての、結局どうなってるの?まだ作ってないの?」

と、問いかけてくる愛香。

 

「作ってない、って言うか現在進行形で開発中だ。今は元から存在したデータを元に、1番目のドライバーを家にあるザットで鋭意製造中だよ」

「それってあとどれくらいかかるんだ?」

「もう60%以上は完成しているから、あと1週間とちょっとってところか」

「じゃあそれが完成したら、マギアもパワーアップって事か?!」

「まぁ、そうなるな」

 

ちょっと楽しみ、と言わんばかりの総二に俺は苦笑を浮かべる。

 

「あの~皆さん?立ち話も何ですが、そろそろ行かないと遅れちゃいますよ?」

「あぁ、そうだな。……ん?」

 

何か不自然な声が聞こえた。そしてバッと振り返る俺達。そこに居たのはトゥアールだった。

しかも何かウチの学校の制服を着てるぞっ!?

「お前何してるっ!?」

「ふふ~んっ!実は私、皆さんと同じ学校に転入することにしました~!あっ!空さんと愛香さんはぁ、この台本の通りにしてくださいね~!王道的なストーリーを用意してありますので、これで私と総二様の印象をクラスの皆さんに……」

 

「お前は家に帰れぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

何やらいつも通りに(物理的に)じゃれ合う2人。トゥアールは愛香に蹴っ飛ばされて遠くへ飛んでいった。これが野球だったらホームラン確定だなぁ~。

 

などと思いながら俺は吹っ飛んでいったトゥアールを見送る。

 

と、そうこうしていると、俺達と同じく通学途中の神堂会長とばったり遭遇した。会長はテイルブルーが現れたことを喜んでいるらしい。その話をされると、途端に嬉しそうな笑みを浮かべる愛香。

 

会長はどうやらヒーローって物に憧れがあるらしい。あの日、俺と総二が初変身して戦い助けた時も、あのモールでやってたヒーローショーを見るために、あの場に居たらしい。

 

ヒーロー、か。

 

俺は話をしている総二や愛香、神堂会長達を後目にふと、その単語の意味を考えていたのだった。

 

 

 

~~~~

場所は変わって、数日後のとある場所にあるエレメリアンの基地。

 

そこでは以前、世界へ宣戦布告を行った『ドラグギルティ』とその部下達が集まり、作戦会議を行っていた。

 

会議の内容は、これまでの戦いで死んだ者の報告と、今後についてだ。

 

テイルブルーが登場し、『ツインテイルズwithマギア』となった3人は、エレメリアンを相手に連戦連勝を飾っていた。

 

ブルー、つまり愛香が格闘技の経験者でもあり、慧理那の言葉でふっきれたために戦闘へ意欲的に参加している事。更にエレメリアンに対しレッドとブルーの2人組で戦える事。そしてアルティロイドはマギアでも十分に対処可能、と言う事で彼等は連勝を続けていた。

 

「クソッ!なんたる様だっ!全戦全敗とはっ!」

「ツインテイルズの力はこれ程と言う事か……っ!」

「し、しかしマギアの存在も侮れんぞっ。奴の格闘技能は戦う毎に上昇している。その上、形態変化に伴う高い適応能力も問題だっ」

「そうだ。能力はツインテイルズに劣るとは言え、奴は恐らくこの世界で生まれた存在。このまま時間を置けば、奴の同型が増える可能性もあるぞっ」

「対して、我々がこの世界より奪取した属性力は皆無っ。どうすれば……っ」

 

エレメリアン達は迷っていた。彼等にとって属性力は生存に必要な物。しかし今の所、ツインテイルズの活躍もあって奪えた属性力は皆無。属性力を奪うだけの電撃戦を提案する者もいたが、それではツインテイルズに対して負けを表明しているような物、と言って反対するエレメリアンもいた。

 

「……もはや生半可な戦士では奴らの相手にもならん、か」

 

その時静かに口を開いたドラグギルティ。口調こそ穏やかだが、彼の放つ雰囲気は鋭く、連敗の現状に怒りを覚えているようだった。そのため、多くのエレメリアンが彼の怒りによって萎縮してしまう。

 

「現状我々の問題は、如何にしてツインテイルズを倒すかだが。誰か、良い作戦は思いつかぬか?」

 

そう言って周囲を見回すドラグギルティ。皆、妙案は浮かばないのか俯いている。が……。

 

「はっ!恐れながらドラグギルティ様っ!私より進言したい事がっ!」

一人のエレメリアンが立ち上がった。

 

「ほう?何だ?言ってみろ」

「はっ!私が目を付けたのはマギアでありますっ!卑怯な手とお怒りになるかもしれませんが、彼奴のツインテイルズからの造反を狙う手は如何でしょうかっ!?」

 

『ザワザワ』

そのエレメリアンの言葉に他の者達が戸惑っている。

「造反っ?つまり我らの側に引き入れると言うのか……っ!?」

「しかしどうやってっ?」

 

彼等が騒いでいるが、ドラグギルティが片手を上げればそれもピタリと止った。

 

「お主、造反させるとは言うが、奴がツインテイルズを離れるに足る理由は。我々と奴が事を構えない理由は何だ?」

「はっ!その理由として、こちらをご覧下さいっ!おいっ、頼むっ」

『モケッ』

 

エレメリアンの言葉に応じて、アルティロイドが端末を操作する。すると会議室上の大きなモニターにネットのページが映し出された。

 

「ふむ。これは?」

「これなるは、地球のネットにおける掲示板サイトの一つです。この掲示板では当初、テイルレッドの事を扱っていましたが、コメント欄を下っていくにつれて話題はマギアの事になって行きます」

 

彼の声に会わせてアルティロイドが画面をスクロールする。そしてページの下の方になってくると、マギアの話題に変わっていくのだが、正直言って酷い物だった。

 

『レッドよりも弱く、いつも雑魚の相手しかしていない』と侮辱する者。

『弱いしいなくても良くね?』とその存在を嘲笑するように疑問視する者。

 

『ぶっちゃけ役立たずだろ?』、『レッドと違い弱いし怖いから、仲間として相応しくないだろ』などなど、目を覆いたくなるような侮辱的な文章ばかりだ。

 

「……愚かな」

コメント欄を見ていたドラグギルティが怒りを滲ませながら呟いた。

 

「自分達の事を、命がけで守っているマギアに対してこのような言葉しか言えぬとは。あまりにも愚かよ」

人間達に対する軽蔑から、フンッと鼻を鳴らすドラグギルティ。

 

「ですが、それこそが奴の造反を狙える理由ですっ!奴は人間から受け入れられていないっ!むしろ不要とまで言われている始末っ!ですから、奴の周囲の親しい人間からは属性力を奪わない、と言って奴をこちら側に寝返らせるのですっ!そうすれば連中の戦力が減少すると共に、マギアよりツインテイルズの情報を引き出し利用する事も可能かとっ!」

 

「成程、な」

 

エレメリアンの言葉に、しばし考え込んだドラグギルティは……。

 

「良かろうっ!ならばその話っ、我が付けてくるとするっ!」

「えっ!?ドラグギルティ様自らですかっ!?」

 

「どうせ生半可な者を使者として送った所で、話し合いをする前にツインテイルズに倒されるのがオチよ。ならば我が自ら赴き、話をするっ。それだけだっ」

 

そう言ってドラグギルティは会議室を去って行く。誰もが彼の出陣に驚いていた。が、だからこそ、聞こえなかった。

 

「……彼奴の心、試させて貰うとするか」

 

そう呟く、ドラグギルティの呟きが。

 

 

~~~~~

愛香がテイルブルーになって数日が経過した。その後も続くアルティメギルの侵攻に俺達は日々対処していた。

 

そんなある日。俺はトゥアールと総二、愛香を連れて俺の家の、秘密の研究室へとやってきた。理由はまぁ、総二がそれを見たがったからだ。元々ある事は話していたので、ちょっと見てみたいってこいつが言うから、まぁこいつらなら良いか、って事で連れてきた訳だ。

 

「おぉぉぉぉぉっ!ここが空の家の研究室なのかっ!」

「あっ、もしかしてこれが前に空の言ってたヒューマギアッ?」

「あぁ。そうだぞ」

 

興奮気味の総二に、直立しているヒューマギアを前にして首をかしげる愛香に俺は答える。

 

「あっ。空さん。もしかしてこれが……」

「ん?あぁそうだ」

トゥアールは稼働中のザットに興味津々、と言ったところだ。

 

「多次元プリンターザット。じいちゃんが開発した人工知能、ゼアが管理する装備開発のための設備だ。今も絶賛、中でドライバーを作成中だ」

俺がザットの小窓を指さすと、総二達がそこから中をのぞき込んだ。

 

「なぁ空、このドライバーって後どれくらいで出来るんだ?」

「それならあと2時間も掛からない。もうすぐ完成だ。早ければ明日から実戦で使えるようになると思うが……」

 

と話していると……。

『ビーッ!ビーッ!』

 

トゥアールの持っていた端末からアラームが鳴り響いた。まさかエレメリアンかっ!?

「ッ!皆さんっ!エレメリアンが現れましたっ!今すぐ基地に戻りますっ!」

「分かったっ!」

 

俺達はトゥアールの持っていたあの転移が可能なペンですぐさま秘密基地へと戻ったのだが……。

 

「ッ!?これは……っ!」

「どうしたトゥアールっ!」

驚いた様子の彼女に総二が声を掛ける。

 

「不味いですねっ、エレメリアンの反応が二箇所ありますっ」

「2箇所っ!?それってエレメリアンが2体出てきたって事かっ!?」

「いえっ、データによるとエレメリアンクラスの反応はありませんっ。どちらもアルティロイドのみの部隊のようです」

驚いている総二に、トゥアールが冷静に報告するが、アルティロイドだけ?

 

「それってどういうこと?」

「……そうですね。我々をおびき出すための囮か、戦力の分散が目的なのか」

愛香の言葉にトゥアールは顎に手を当てて考えている。

 

「トゥアールの言うとおりだが、更にもう一つの可能性がある。どっちも囮だ」

「え?どういう事だよ空?」

「この二つの部隊に対応するために俺達が出撃したとして、戦ってる間に本命の3つ目の部隊が現れて属性力を奪いに行くって事さ。その可能性も考えられるって話だ。……とは言え、だからってこの2つの部隊を見過ごすわけには行かない。雑魚のアルティロイドったってそれは俺達の話だ。一般人からすれば十分脅威の対象だろ?だからこそ、俺達は動くしかない」

 

「そうですね。空さんの言うとおり、放置すれば属性力を奪われる事になります。ここは、皆さん個別に動いて戦って貰うしかありませんね」

「それで?どうするの?」

「まずは出現している二つの部隊をどうにかしましょう。部隊が展開しているのは日本国内です。片方は地方都市の近郊。もう片方は、市街地から離れている場所ですね。……どうしてこんな人気の無いところに?」

「……確かに疑問だが、今は考えても仕方ない。トゥアール。俺をこっちの市街地から離れてる方に転送してくれ」

 

疑問はあるが対処が遅れればそれだけ被害が拡大する。考えている時間は無い。

「よろしいのですか?」

「市街地から離れてれば、俺だって思いっきり暴れられる。それに雑魚相手ならどうにかなるさ。……それより、地方都市に近い連中の方が厄介だ。すぐに倒さないと被害が出る可能性がある。となれば、俺より強い総二か愛香に行って貰うしかないだろ?」

そう言って俺は苦笑を浮かべる。

 

「……分かりました。総二様たちも、その作戦でよろしいですね?」

「分かった。なら愛香、愛香は残ってくれ。俺は街の近くに出た奴らをやる。愛香はもし新しい部隊が出てきたときに、そいつらを叩いてくれ」

「分かったわ。任せなさいっ」

 

どうやら作戦は決まったな。俺はポケットからゼツメライザーとゼツメライズキーを取り出す。

 

「テイルオンッ!!」

 

その横で、総二がテイルレッドへと変身する。

 

俺はライザーを装着し、手にしていたゼツメライズキー、ドードーゼツメライズキーを起動する。

 

『ドードー!』

 

「アップグレードッ」

 

『ゼツメライズッ!』

 

俺もまた、ドードーマギアに変身するが……。

 

「あれっ?マギア、なんか新しく剣装備してないかっ?」

レッドは俺の背中に、これまでなかった装備、剣がある事に気づいた。

「あぁ。戦闘データを蓄積した結果、ゼアの判断で追加された新しい装備だ」

俺は背中の剣、『ヴァルクサーベル』を親指で指さす。

 

と、話してたのは良いが……。

「空っ!そーじっ!街に近い奴らの方が動き出したわよっ!」

「っと、話してる場合じゃないなっ!それじゃあ行ってくるっ!」

「あぁっ!もう片方は任せろっ!」

 

 

まずはレッドが量子カタパルトで転送され、次に俺が転送されていった。

 

 

俺がたどり着いたのはどことも知れぬ山岳地帯の一部。その草原にアルティロイドが屯していた。何故ここでこうしているかは知らないが……。

 

「モケッ?」

「モケケッ?」

奴らもこっちに気づいたかっ!?俺は背中のサーベルを手にかけ出す。

 

「なんでこんなところに居るか知らないが、速攻で片を付けてっ!」

 

『ビーッ!』

 

走り出した俺。だが直後、視界にアラートが鳴り響く。それはレーダーからの警告。

 

『警告ッ!上方より急速接近する物体ありっ!』

「っ!?」

 

警告文をコンマ数秒で知覚した俺は、すぐさまバックステップで後ろに跳躍した。

『ドゴォォォォォォォンッ!!!!』

 

直後、先ほどまで俺が立っていた場所に何かが音を立てて落ちてきた。

「何だ……っ?」

 

俺は警戒心を強める。レーダーは、そこに『何かある』事を俺に訴えている。やがて砂煙が晴れてくると……。

 

「はじめまして、と名乗っておくべきかな?マギアよ」

「ッ!」

 

一瞬で分かる。これまでのエレメリアンとは別格な存在。オーラとか、気迫がこれまでの連中とは異なるエレメリアンがそこに立っていた。そしてそいつを俺は知っていた。あの日、全世界に宣戦布告した奴だっ。

 

「……お前、あの日全世界に宣戦布告した奴だな?」

「然り。我が名はドラグギルティであるっ!今日は、マギアよ。そなたに話があって足を運んだのだ」

 

「話だって?生憎こっちには………っ!!!」

 

足に力を込め、突進する。

 

「お前等みたいな侵略者と話す事なんて何一つねぇよっ!!!」

 

ヴァルクサーベルを手に斬りかかる。

 

「ふんっ!」

「ぐあぁっ!?」

 

しかし返り討ちにあったのは俺の方だった。奴の手にした大剣が振るわれ、俺ごと攻撃を弾き飛ばした。

 

「ふぅむ。マギアとはこの程度か?これでは拍子抜けだな」

「そりゃぁ、悪かったなぁっ!」

転がった体を起こし、もう一度斬りかかる。

 

「はぁっ!るぁっ!」

しかしどれだけ斬り付けようと、奴は片手に持った大剣で事も無げに攻撃の全てを弾く。

 

「どうした?やはりこの程度か?」

「ッ!」

 

ギリッと無い奥歯を噛みしめる。奴は普通のエレメリアンよりも確実に格上。普通の奴の相手が関の山の俺では有効打は与えられない。けれどっ!不利だからって『こいつから逃げて良い理由』にはならねぇっ!

 

こいつは確かに強いっ!ならばせめて、総二達が合流した時のために、少しでもこいつの体力を消費させるっ!それに、こいつを放っておいたら、こいつに都市部へ行かれたら危険だっ!万が一そんなところで戦闘になったら、周囲に被害だって出かねないっ!

 

「だとしても、やってやるよ畜生がぁぁぁっ!!!」

 

俺は自分を鼓舞するように叫びながらドラグギルティに斬りかかった。

 

例えこれが、無謀な戦いだとしても。

 

 

 

~~~~

総二達が戦っている間、トゥアールは司令室で総二と空、2人の状況をモニターしていた。

「まさか、ドラグギルティが現れるなんてっ!」

彼女の予想よりも早く現れた親玉に彼女は歯がみしていた。そしてここに愛香は居ない。

 

ドラグギルティが現れた段階で愛香にはブルーに変身した上でレッド、総二の増援に向かって貰ったからだ。

 

ドラグギルティの強さは彼女が4人の中で一番分かっていた。だからこそ、中途半端に愛香だけ空の、マギアの援護に行かせても意味が無いと言う事で、彼女をレッドの方に派遣したのだ。

 

と、その時。

 

「大変よトゥアールちゃんっ!」

「ッ!?未春お義母様っ!?何故こちらにっ!」

基地内部に未春が現れた。彼女にも基地の事は知らせてあるが、何故今ここに?とトゥアールは内心驚いていた。

 

「良いからテレビ付けてテレビッ!ここのモニターで見られないのっ!?」

「しょ、少々お待ちを」

何故そんなことを?と考えながらトゥアールは新しいモニターを付け、テレビに繋げた。

 

「ッ!?これは……っ」

そこに映っていた物を目にして、彼女は驚くほか無かった。

 

 

 

~~~~

「ぜやぁぁぁぁぁぁっ!」

「「「「「モケェェェェェェッ!!!」」」」」

一方、場所は変わって地方都市の近郊。そこでレッドがアルティロイドの集団と戦っていた。しかしレッドの力を持ってすれば、その掃討も容易い。現にものの数分でアルティロイドの討伐を終えてしまった。

 

「ふぅ」

小さく息をつくレッド。が、直後遠巻きに戦いを見守っていた人々がレッドの方にカメラを向け写真を撮りまくっている。

 

「うっ」

相変わらずの野次馬にうっとうしさを覚えて居たレッド。

『とっとと離れるか』

そう彼が考えていた時。

 

『『『『ザワザワッ』』』』

「ん?」

 

唐突にフラッシュの音が消え、人々がスマホなどを見つめだした。何故?とその様子を訝しむレッド。すると……。

 

「レッドッ!」

「えっ!?ブルーッ!」

丁度転送されてきたテイルブルーが合流してきた。

 

「大変よレッドッ!マギアの方に何か強い奴が現れたんだってっ!」

「えっ!?」

「それで、こっちを早く片付けて私達2人でマギアの援護にいけってトゥアールがっ!」

「わ、分かった。なら急いでっ」

 

とその時。

 

「総二様っ、愛香さんっ!緊急事態ですっ!」

「ッ!?トゥアールッ!?」

2人の元にトゥアールから通信が届いた。

 

「あぁ今ブルーから聞いたっ!強い奴が現れたんだろっ!?それなら今っ」

「違うんですっ!近くにテレビか、スマホはありませんかっ!?それでニュースサイトを見て下さいっ!」

「えっ!?」

 

そう言われ、レッドは周囲を見回した。そして近くにいた、野次馬の1人に駆け寄った。

 

「ちょっとっ!」

「えっ!?て、テイルレッドっ!?」

「ごめんっ、さっきから何見てるんだっ!?俺達にも見せてくれっ!」

「あ、あぁはいっ、な、なんか、エレメリアンって奴らがネットとかテレビをジャックして放送してるみたいでっ」

 

「えっ!?み、見せてっ!」

レッドと駆け寄ってきたブルーは、野次馬のスマホを借り、画面に目を向けた。

 

 

そこに映っていたのは、ドラグギルティ相手に劣勢を強いられるマギアの姿だった。

 

 

~~~~

「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

数十回に渡る剣戟。しかしそのどれもが軽くいなされ、今みたいに吹き飛ばされる。

『バチバチッ!!』

既にドードーマギアの装甲はボロボロだ。マギアの本体にダメージは無いが……。

 

『ビーッ!ビーッ!』

『ダメージが許容限界を突破しましたっ!マギアシステム、強制解除しますっ!』

 

視界の隅にディスプレイがポップアップし、次の瞬間、火花を散らしながらゼツメライザーとドードーゼツメライズキーが外れてしまった。

 

それによってドードーマギアの装甲が消滅し、俺はヒューマギアボディをさらけ出した。

「ぐ、うぅっ」

 

何とか立ち上がろうと、地面に手を突き、立ち上がる。が、エネルギーの消耗が激しい。既にパーセンテージは60パーセントを切っていた。だが、まだ総二たちは来ていない。ここで倒れる訳には……っ!少しでも、時間を稼ぐんだっ!

 

「トゥアール、聞こえるか?」

『はいっ、聞こえますよ空さんっ!』

「すまないが、俺の屋敷に行って、ドライバーを、取ってきてくれ。もう、完成してるはずだっ」

「分かりましたっ!すぐに取ってきますから、無茶はしないで下さいねっ!」

「あぁ、分かってるさ」

立ち上がり、俺はドラグギルティを睨み付ける。

 

「ぐっ!」

俺はとにかく、奴に向かって一歩を踏み出す。負ける訳に行かないっ!退くわけには行かないっ!

 

と、その時だった。

 

「ふむ。どれだけ傷を負おうとも、逃げずに向かってくる姿勢はあっぱれ。であればこそ、お主に話がある」

「何を。そんなの、さっき断っただろうがっ!俺にお前達と話す事なんて、何もっ!」

 

「お主の家族、そしてある程度の人間の安全を約束する、と言ってもか?」

「ッ?何?」

 

「空しいとは思わないか、マギアよ。貴様はこれまで、ツインテイルズと共に幾度となく我々の攻撃から人々を守ってきた。時に自らの体の、その鋼鉄の体の損傷さえ顧みず、自らを盾として民衆を守ってきた。……だが、世間の貴様に対する反応はどうだ?」

「…………」

 

俺は奴の言葉に何も言わず、ただ話を聞くばかりだった。

 

「どれだけ貴様が人のために戦おうとも、誰もその努力を理解しようとしない。その懸命さを理解しようとしない。貴様を化け物と恐れ、嘲笑う。……彼奴らの平和を守っているのは、他でも無い貴様だと言うのに。だからこそ、もう一度問う。空しいとは思わぬか?貴様は感謝をされても良いはずだ。命がけでこれまで戦ってきたのだろう?……だが人間どもは、感謝をするどころか、貴様を侮辱してばかり。……このようなグズ共のために戦う事に、何の意味がある?」

 

「……何が言いたい?」

 

俺は小さく口を開いた。

 

「簡単な事だ。我々エレメリアンの同士となれ、マギアよ」

「ッ」

「今後は我らの仲間としてツインテイルズと戦うのだ。もちろん、先ほど言ったように貴様の周囲の、親しい存在には手を出さない事を約束しよう。我らの目的は属性力だが、ツインテイルズを倒しこの世界の人間数十億から属性力を奪えるとなれば、高々数十人程度、手を出さずとも問題は無い」

「……俺の家族や友人には手を出さないから、ツインテイルズを裏切れって言うのか?」

 

「さよう。……貴様とて、自らを侮辱する愚かな人間どもがどれだけ見苦しいか、分かっているはずだ。戦場に立つ戦士の勇気も、覚悟も、痛みも知ろうとはしないグズ共を守ってやる理由など無いはずだ。他者に悪意でしか接する事の出来ないロクデナシを、守ってやる理由は無いはずだ。……『愚かな人間共を守る価値など無い』。これまで嘲笑されてきた貴様なら、分かるはずだ。マギアよ」

 

そう言って、ドラグギルティは俺に向かって右手を差し出した。

 

「さぁどうするマギアよ。……お前の応えを聞かせて欲しい」

「……………………俺、は」

 

 

~~~~

「クソッ!!!」

 

放送を見ていたレッドは、スマホを主の野次馬に返すと駆け出した。

「あっ!ちょっとレッドッ!」

慌ててレッドの後を追うブルー。

 

『クソッ!間に合ってくれっ!』

レッドは空の、マギアの元に向かおうとしていた。

 

彼等には、かつてトゥアールが持っていたペン型の転送デバイスと同型の物が支給されていた。レッドはこれで、急ぎマギアの元へと向かうつもりだった。

 

そんな彼の脳裏によぎるのは、少し前に空が彼等に語った、『人間ってのはそこまで綺麗な生き物じゃない』と言ったあの時の、諦観した空の表情だった。

 

裏切りを勧めるドラグギルティ。それを止めようと急ぐレッドとブルー。

 

そして、人の悪意を知るマギアの選択とは?

 

     第5話 END




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