俺、マギアになります。   作:ユウキ003

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遅くなりましたが最新話です。そしてライダーファンの方ならタイトルのⅠで察する事が出来たと思います。お楽しみ下さい。

※それと、私情なのですが5月より仕事関係の時間が増加したため、執筆活動に充てられる時間が半減してしまいました。これまで以上に投稿頻度が落ちる可能性があります。何卒ご容赦頂きたくお願いいたします。


第6話 始まりのⅠ

~~~前回のあらすじ~~~

愛香がテイルブルーとして活動を開始したものの、彼女に対する世間の言葉は冷たい物だった。それに怒る愛香だったが、彼女は空からの、人間を達観したような言葉を聞き落ち着きを取り戻した。しかしそんな中、連敗続きのアルティメギルは状況を打開するため、人間を守りながらも、人間に侮辱されているマギア、つまり空の離反を考えていた。そしてその説得のため、かつて全世界に宣戦布告を行ったエレメリアン、ドラグギルティがマギアの前に現れたのだった。

 

 

今、俺の前に立つドラグギルティが俺に向かって手を伸ばしている。その姿に俺が何かを言おうとしたその時。

 

「マギアァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」

聞き慣れた声が響いてきた。それはテイルレッド、つまり総二の物だった。

 

「ほう。あちらを片付けこちらの救援に来たか。だがっ!」

 

バッと手を掲げるドラグギルティ。すると数千に及ぶアルティロイドが現れ、レッドとそれに付いて来ていたブルーの2人と俺の間を分断した。

 

「このっ!どけよっ!邪魔するなぁっ!」

咆哮を上げながらアルティロイドをなぎ払っていくテイルレッド。しかし如何せん数が多く、時間が掛かるのは必至だった。ブルーもウェイブランスを振り回しアルティロイドを相手にしているが、数の差はそう簡単に覆る物では無かった。

 

「これでしばし邪魔物は来れまい。さぁ、改めて問おう。お主の答えを聞かせて欲しい」

「…………」

 

俺はドラグギルティの言葉に沈黙する。

 

そしてそれを、俺が揺れているとでも考えたのか。

「やめろマギアァッ!」

レッドの声が響く。

 

「お前は、お前はこれまで、大勢の人達を守ってきただろっ!?ネットの言葉なんて気にするなっ!お前の活躍は俺達が一番よく分かってるっ!だからそいつの言葉に耳を貸すなマギっ!ぐっ!?こいつらっ!」

 

俺の名を呼ぼうとするが、雑魚がそれを邪魔している。

 

「お主の仲間はあぁ言っているが、現実はどうだ?」

そう言うと、ドラグギルティは手を上げ、傍に控えていたアルティロイドが持っていたタブレットを手に取り、馴れた手つきでそれを操作すると、徐ろに俺の前へ差し出した。

 

「見るが良い。今この時、この戦いは我々エレメリアンによって、世界中に拡散されている。無論、世界各地の言語へ翻訳した字幕付きでな」

「…………」

 

「皆がお主の動向を見守っているが、見てみるが良い。この動画サイトのコメント欄を」

 

そこに映っていたのは、戸惑う人間達のコメントだった。

 

『これってどうなるの?まさかマギア、連中に寝返るの?』

『だ、大丈夫だってっ。彼奴テイルレッドたんより弱いから、寝返ったって大した事無いってっ!』

『バカかっ!それよりテイルレッドが精神的ダメージ喰らったらどうするんだよ。裏切られて戦意喪失とかっ!』

『ってか、それ言ったら、今まで散々お前等がマギアを馬鹿にしてたのが悪いんだろ?さっさと謝れよ』

『いやお前のID見た事あるぞっ!お前も散々マギアディスってただろっ!まずお前が謝れよっ!』

 

「ふっ。愚かな物よなぁ」

そう言うと、ドラグギルティはタブレットを戻し、画面を見つめている。

 

「今まで散々守られながらも侮辱した者達が、今になって慌てふためくか。実に滑稽だ。……そして、そんな奴らを守る事に、意味はあるのかっ!マギアよっ!」

「…………」

 

「もう一度言おうっ!我らエレメリアンの元に付けば、貴様と貴様の家族や親しい者からは属性力は奪わないっ!どうだマギアよっ!我々の仲間となる気は無いかっ!」

「…………」

 

ドラグギルティの言葉に俺は何も言わない。

「ちょっとっ!マギア、何とか言いなさいよっ!まさか、人のために戦うのが嫌になったなんて言うんじゃないでしょうねっ!」

叫ぶブルーの声が聞こえるが、俺は何も言わない。

 

「まさか、マギアッ。嘘だよなっ!?なぁマギアっ!何とか言えよっ!」

悲痛なレッドの叫びが木霊する。

 

 

そんな中で、俺は…………。

 

カタカタと体を震わせ。

 

「ふ、ふふっ!はは、あはははははははははははっ!!」

 

「ッ!?」

「えっ!?」

「何っ!?」

突然の俺の笑い声にドラグギルティも、レッドもブルーも驚いている。

 

「な、何が可笑しいのだマギアよっ!」

「ははははっ!いや、まさか勧誘までされるとは思ってなかったからさ~!侵略者が敵を勧誘とかっ!あ~~マジでアニメみたいな事あるんだな~って思ったら、可笑しくなってさっ!」

 

そう言って俺は笑みを浮かべる。もちろんマギアの俺じゃ、傍目には分からないだろうが。しかし声色からそれを周囲のレッド達やドラグギルティは察したようだ。

 

「教えてやるよドラグギルティ。答えは『NO』だ」

「何っ!?」

 

「俺はお前達の仲間になるつもりは無いって事さ。俺は今まで通り、お前達の『敵』だ」

「本気で、本気で言っているのか貴様はっ!!今までに受けた言葉の暴力、忘れた訳ではあるまいっ!」

 

『ブゥンっ!』と音がしてドラグギルティの投げたタブレットが俺の前に落ちる。その衝撃でモニターは罅が入ってしまう。

 

「……」

俺はそれを無言で拾い上げる。

 

「……忘れちゃ居ないさ。誰も彼も、これといった考え無しに言いたい放題。散々バカにされ侮辱され。……思い返すだけでも頭に血が上るさ」

「ならば何故だっ!貴様を侮辱する人間を、何故守るっ!!」

 

 

「……なぁアンタ。『清濁併せ呑む』って言葉知ってるか?」

「ぬっ!?」

 

「人間なんてのはな、確かに綺麗じゃねぇよ。毎日ニュースを目にすれば、やれ殺人だ強盗だ、喧嘩沙汰に暴言を吐き合う大人たち。民族紛争にテロ、国家間の軋轢。毎日毎日、聞くのも嫌になる悪いニュースばっかりが飛び交う。……見ていて嫌になることばっかりだ」

「ならば尚更『何故』だっ!!それが人間の本質でっ」

 

「それは違うっ!!!」

 

俺は声を張り上げドラグギルティの言葉を制する。

 

「確かに人間の持つ悪意や敵意、害意、攻撃性。それら全ては人間が克服出来ない、人間が持つ『負の側面』だっ!人間の『半分』だっ!だが決して人間の本質じゃないっ!」

 

人間が綺麗な存在じゃないことくらい、分かりきってる。でもそれが人間の本質って訳じゃないっ。

 

「あの日、怯えながらも一輪の花を俺に、マギアに渡してくれた少女がいたようにっ!先の無い俺に、生命維持装置無しでは生きていけない俺に、じいちゃんがこの体をくれたようにっ!じいちゃんが人々の未来を思って、色んな物を生み出したようにっ!守りたい何かのために、レッド達が戦っているようにっ!」

 

「ッ、マギア……ッ!」

 

人間には清濁、陰と陽、正と負、色んな側面がある。それくらい、分かりきっている。

 

「人間には誰かを思う心だってあるっ!親が子供を心配するようにっ!困ってる誰かを見捨てておけないようにっ!」

 

「たわけっ!ならば何故人間共の世界で争いが絶えぬっ!闘争本能による攻撃性こそ、人間の本質っ!同類をも容易く手に掛ける事の出来る人類を、愚か以外に何と表せようかっ!」

 

「それでもっ!!言っただろっ!『清濁併せ呑む』ってっ!」

 

そう叫び、俺は手にしたタブレットに目を向ける。モニターは割れて、画面はノイズが走り文字を判別するのは難しい。

 

だが、コメント欄のとある文章を、俺は見逃さなかった。

 

 

『今まで、私はあなたの事、気持ち悪い化け物だって思って、たくさんネットに酷い事を書いてしまった。許されるなんて思ってない。でも、『ごめんなさい』』

 

その言葉に、俺はフッと内心笑みを浮かべる。

 

 

「あぁそうさ。人間が綺麗なだけじゃないってのは、俺だってよ~~く分かってるよ。けど、いや。だからこそ」

 

俺はあの日、俺に一輪の花を手渡してくれた少女の姿を思い出す。

 

「たまに誰かの見せる優しさが、とても眩しく見える。それだけだ。それが、俺の戦う理由だっ!!!」

 

そう言って俺はタブレットをドラグギルティに投げ返す。

 

それを無言でキャッチしたドラグギルティは、『バキャッ!』とタブレットを握りつぶす。

 

 

しばし、俺もドラグギルティも、レッドもブルーも、アルティロイド達ですら動きを止め、静寂が場を支配した。

 

が……。

 

「フハハハハハハッ!どうやら勧誘は失敗に終わったかっ!」

 

目論みは失敗したと言うのに、ドラグギルティは笑みを浮かべている。何故だ?

 

「……失敗に終わった割には、楽しそうじゃないか」

「その通りであるっ!そもそも、安易に仲間を裏切るような輩など信用出来ぬわっ!もし仲間になると言ったのであれば、隙を見て貴様を両断するつもりだったが、ふっ!良く咆えたと褒めるべきかな、マギアよっ!」

 

「そいつはど~も」

 

どうやらこいつは、最初から俺を仲間に引き入れる気なんて無かったみたいだな。むしろ俺がどうするのか試したって事か。……食えない野郎だ。

 

「だが、敵となるのであればまともに戦えぬ今のうちに倒すのが道理」

そう言ってドラグギルティは大剣を抜く。

 

「ッ!逃げろマギアっ!」

 

叫ぶレッド。……こりゃ確かにヤベぇな。今の俺じゃこいつと戦いにだってなりゃしない。一方的に破壊されて終わりだっ。どうするっ?

 

と、そう思った時だった。

 

「そこまでですっ!ドラグギルティッ!」

「ぬぅっ!?何やつっ!」

 

聞き覚えのある声に、近くの崖上に視線を向ける。するとそこに居たのは、仮面を被った、あの白衣は、トゥアールかっ!?

 

「何者だ貴様っ!名の名乗れっ!」

「私は、私はそうっ!仮面の復讐者っ!仮面ツインテールッ!」

え~~。何アレ。トゥアールだよなぁ。……何か仰々しい名乗り上げてるけど、仮面以外トゥアールだよなぁあれ。

 

と、俺やレッド達が驚いて放心していると……。

 

「マギアッ!頼まれていた物、持ってきましたよっ!受け取って下さいっ!!!」

 

そう言ってトゥアール、いや、仮面ツインテールが俺の方に向かって何かを投げた。太陽の光を反射して、こちらに向かってくる二つ。

 

「あれはっ!?まさか新しい変身アイテムかっ!させぬっ!」

次の瞬間、ドラグギルティが空中に飛び上がったっ!?不味いっ!壊されたら折角持ってきて貰った意味がっ!

 

 

「ブルーッ!俺を思いっきり押し出してくれっ!ドラグギルティ目がけてなぁっ!」

「ッ!オッケー!!」

 

次の瞬間、ブルーが手を組み合わせ、それに足を乗せたレッドを、天高く放り上げた。

 

「ッ!」

 

剣を構えているドラグギルティ。あと少しで奴のリーチにアイテムが入ろうとしたその時。

 

「させるかぁっ!」

「ぬっ!!?」

 

下方向から突進してきたレッドの攻撃を、咄嗟に大剣で防ぐドラグギルティ。そして両者が数秒、空中で鍔迫り合いをしている間に、二つのアイテムは俺の手の中へと落ちてくる。

 

『ガキィンッ!』

 

と、その時、空中でお互いを弾き合った2人。そしてテイルレッドが俺の傍へと着地する。

 

そんな中で、俺は手元にあるそれに目を向けた。

 

それは、じいちゃんが作ろうとした、『ライダーシステム』の1号機。

 

始まりのシステム。人々を守る力の原点。

 

その力の根源たるドライバーを、俺は腹部に押し当てる。

 

 

『サイクロンライザーッ!!』

 

 

電子音声と共にドライバーが起動し、ベルトが巻かれる。

 

そして、俺は手の中にあるそれへと、『ロッキングホッパーゼツメライズキー』へと視線を向けた。

 

これは、いつも俺が使っているゼツメライズキーとは違う。ライダーシステム用に調整され、じいちゃんが残してくれた物だ。

 

「ドラグギルティ、お前に、見せてやる」

「むっ!?」

 

「じいちゃんが残してくれた力をっ!じいちゃんが、この世界に生きる人々を守るために作り上げた力をっ!この世界を、お前達から守る力をっ!」

 

俺は叫び、掲げたゼツメライズキーのスターターを押し込む。

 

 

『KAMEN RIDER!!』

 

 

「俺は、約束したんだ。じいちゃんとっ!俺は、この力を、誰かを守るために使うってっ!」

 

叫びながらゼツメライズキーをサイクロンライザーへと押し込む。

 

すると、待機音声と共にベルトから飛蝗のロストモデルが飛び出し周囲を跳ね回る。更に俺の周囲に紫電が纏わり付き、風が吹く。風はやがて暴風となり、俺の周囲を覆う竜巻となる。

 

「俺達が、この世界を守ってみせるっ!……『変身』ッ!!!」

 

俺は力を解放するために、ドライバーの引き金を引く。

 

 

『サイクロンライズッ!!!』

 

 

周囲を飛び回っていたロストモデルが分割され、鎧となり、俺の体へと装着される。と、同時に俺を覆っていた竜巻が霧散していく。

 

 

『ロッキングホッパーッ!!!』

 

 

黒いアンダースーツの上から装着された、深い藍色と銀色の装甲。ピンク色に輝く複眼。それは、これまでの俺の変身していたマギアとは、一線を画する物だった。

 

 

『TYPE ONE』

 

 

「むぅっ!新たな力を手に入れるとはなっ!マギアよっ!」

「……違うな。今の俺はマギアじゃない」

「何っ!?」

 

「今の俺は、この地球に生きる人々の、自由と平和を守る存在。『仮面ライダー』だっ!!」

 

俺は叫び、前に飛び出した。

 

「はぁっ!」

『ドゴォォォッ!!!』

 

「ぐぉぉっ!?」

奴が防御のために掲げた大剣の腹を殴りつける。だがそれだけでも十分な威力となり、ドラグギルティが後退る。

 

「くっ!このパワーッ、マギアの時の比では無いかっ!」

「当たり前だっ!じいちゃんが誰かを守ろうとして残してくれたこのっ、仮面ライダーの力がっ!軽いわけ無いんだよぉっ!!!おぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

俺は更に前に出てラッシュを繰り出す。振るう拳を防ぐドラグギルティ。だが……。

 

「むぅんっ!」

「くっ!」

振り抜いた大剣が俺の拳を弾く。

 

「ハァっ!」

返す刀で、俺を切り裂こうと迫る大剣。

 

「マギアッ!」

レッドの声が聞こえるが、問題無いっ!

 

『シュンッ!』

「何っ!?」

 

赤い光と、藍色の光を尾のように引きながら高速で移動する力。俺は一瞬でドラグギルティの大剣のリーチの外へと逃れる。

 

「早いっ、それも今まで以上にっ!」

驚くドラグギルティ。それに対し俺は拳を構える。と。

「マギアッ!……いや、ライダーっ!」

俺の隣にレッドが並び立つ。

 

「一緒にアイツをぶっ潰すぞっ!」

「あぁっ!」

 

短いやり取り。たったそれだけでやる事は決まった。

「「はぁっ!!!」」

俺達は同時に駆け出した。

 

「来るかっ!」

それを迎え撃とうと構えるドラグギルティ。だが、俺は再び加速能力を使い、レッドよりも更に一歩、前へと踏み出す。

 

「むっ!?」

「おぉっ!!」

俺の渾身のパンチ。しかし奴はそれを剣の腹で受け止める。

「笑止っ!」

「いいやっ!本命はっ」

「俺だよっ!」

「むっ!?」

 

次の瞬間、一拍遅れて飛び込んできたレッドの斬撃がドラグギルティに襲いかかる。奴は咄嗟に後ろに下がって致命傷を免れたが、微かにブレイザーの切っ先が奴の体を掠める。

 

「くっ!?やりおるっ!」

「レッドッ!マギっ、じゃないっ!ライダーッ」

距離を取るドラグギルティ。と、その時。アルティロイドの壁を跳躍で越えてきたブルーが俺達の傍に着地する。

 

これで3人そろい踏み、ってか?が、ふと俺は気づいた。ドラグギルティが何故かブルーを注視している事を。そしてそれは、レッドと肝心のブルーも気づいた様子だ。2人とも警戒心を強めている。

「な、何よ。アタシに何か付いてるっての?」

「ふむ。こうして直に目にして、ようやく合点がいったぞ。かつて、我々を追い詰めた戦士がいたが、テイルブルーッ、貴様の纏うその装衣こそかの戦士のそれよっ!よもや貴様っ、あの戦士の差し金かっ!」

 

「ッ!?テイルブルーと同じ格好の戦士が、過去に居たって言うのかっ!?」

俺は驚いて声を上げてしまうが、待て待てっ!ブルーのギアも元々はトゥアールが持っていた物だ。って事はまさかっ。

 

「左様だ。ライダーよ」

すると俺の声に反応してドラグギルティが言葉を続ける。

「あの戦士はツインテールにそぐわぬ下品な乳を携えていたが、今のブルーとは雲泥の差。それ故に気づかなんだ」

「……そいつが、前のブルー。言わば先代テイルブルーって事か」

「左様」

 

「そして、そいつが過去、お前達と戦っていたと?」

「その通りだ。……そして恐らく、お主達はもう、それが誰か気づいているのではないか?貴様はどう思うっ!仮面ツインテールとやらっ!」

「ッ!!」

 

強化された聴覚が、仮面ツインテール、トゥアールの息を呑む音を拾う。

 

「その仮面から覗く銀色の髪にその下品な乳ッ、見覚えがあるぞっ!恐らくは貴様が、かつて我々と戦った戦士なのであろうっ!」

「…………」

 

トゥアールはドラグギルティの言葉に何も言わない。

 

「ふっ。……不可解よな。あれほど煌びやかだった貴様のツインテール属性を、今はもう感じられないとはな。おかしな話よ。終ぞ我々は、貴様から属性力を奪う事が出来なかったと言うのに」

「ッ。何?」

 

どういうことだ?トゥアールは、ギアを扱えるだけのツインテール属性があったと言う事か?しかし、今はそれが無い、と?しかもこいつらが奪った訳でもないと言う。

 

「しかしかつての戦士が属性力を捨ててまで、この世界へ何をしに来たのだ?我々への復讐か?」

「復讐?どう言う意味だっ!」

穏やかじゃない単語にレッドが声を荒らげる。

 

「ほう?どうやら貴様等は知らされていないようだな。ならば教えてやろうっ!あの仮面ツインテールとやらは、確かに先代テイルブルーとして我々と戦ったっ!しかし世界を守る事は出来なかったと言う事をっ!」

「なっ!?」

ドラグギルティの言葉に、レッドが絶句する。

 

「ギアがあったってのに、世界を守れなかったって、言うのか」

レッドの動揺は俺にも理解出来る。

 

ギアがあって、戦う力を持つ戦士が居たのにトゥアールの世界は属性力を刈り尽くされた。開発が間に合わず、せめて被害を食い止めようと、彼女がこの世界を守る為にギアを持ってきたのなら話はまだ分かる。なのに、ギアがあっても倒しきれないほど、アルティメギルは強大だという事実はレッドの背中にプレッシャーとして押し掛かっても可笑しくはない。

 

更に言えば……。

「なんで、あいつは先代ブルーとして戦ってた事を、俺達に隠してたんだ……?」

レッドの疑問も最もだ。別に隠す必要なんて無かったはずだ。先代ブルーだからどうした?だったら総二や愛香から見れば先輩ってくらいだ。ギアを持ってしてもアルティロイドを倒せる確証が無かったからか?

 

と俺が考えをめぐらせていた時。

「逆に、合点がいくじゃ無い」

 

か細いブルーの声が響く。

 

「テイルギアがあったって、アルティメギルには勝てないって事よ。最初から、勝機なんて、無かったのよ」

 

彼女のか細い声が響く。と、その時俺は嫌な予感がして、再びニュースサイトへ密かにアクセスを行った。見ると、俺達の戦いは今も中継されていたままだっ!不味いっ!

 

俺達の会話が、全世界に発信されているっ!これじゃあ、テイルギアを持つレッドやブルーが居ても、アルティメギルには勝てないってイメージが、拡散されちまうっ!

 

現にコメント欄は、皆の不安に満ちた声で溢れていた。

『え?どゆこと?テイルレッドたんみたいなのが、他の世界にも居たけど、世界を守れなかったって事?』

『いやいや。何か話によればそれ先代ブルーって事でしょ?今はテイルレッドたんも居るし大丈夫っしょ』

『大丈夫なのか、これ?』

 

そして、トドメとばかりにドラグギルティは高らかに自分達の作戦を宣言した。

 

結果はどうあれ、多くのエレメリアン達はテイルレッドの『無敵の英雄像』を作る為の土台になっていた事。レッドが活躍すればするほど、その活躍に触発され、奴らの最大の好物であるツインテール属性が育つ事。……それ故に、ツインテール属性は増加し、世界は奴らにとっての理想の狩り場となる事を。

 

その言葉に愛香は、諦観にも似た声を漏らしている。更には、トゥアールの事を疑っているようだ。彼女がこの世界に来たのも、自暴自棄になって自分達の世界と同じ結末にするために、敢えて自分の世界の事を話さずに彼等にテイルギアを与えたのではないか?と。

 

更に言えば、ネットのコメント欄も今のブルーと似たような状況だった。人々はこれまでの連戦連勝が、マッチポンプ、つまり自作自演に近い物だったと知って絶望にも似たようなコメントをし続けている。

 

そして、何故こんな事を話す、と問いかけるブルーに、ドラグギルティは答える。

 

『世界を破壊した後、全てを知り絶望に暮れないために。小細工無しに戦いたかったがために、せめてもの手向けだ』と。

 

だが……。

 

「そう言う事か」

 

俺は小さく呟くと、次の瞬間には走り出した。

 

「むっ!?」

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

そして、俺は再び加速能力で加速し、赤い尾を引きながらドラグギルティを殴りつける。奴は咄嗟に剣を抜いて、その腹で拳を受け止めた。

 

「ほう、まだ向かってくるとはな。しかし分からぬかっ!自分達がどれほど絶望的な戦いを挑んでいるかっ!」

「……ざけんなよ」

「何?」

 

『グッ、ググググッ!』

「むっ!?な、何だとっ!?」

 

俺の拳が、奴を押し込んでいく。

 

「うっ、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

『バキィィンッ!』

 

「ぐぅっ!?」

 

そして、俺の一撃が奴を大きく後ろへと後退させる。

 

「黙って聞いてりゃ、何勝手に勝った気で居やがるッ!」

「ら、ライダー」

俺の叫びに、後ろのブルーが反応する。

 

「勝ち目が無いから諦める?はっ!笑わせるなっ!お前達はこれまで、この世界から何も奪えては居ないっ!そして、これからも、何も奪わせるものかっ!」

 

俺はビシッとドラグギルティを指さす。

 

「お前等が強かろうが、数が多かろうが、俺達は、いいやっ。俺1人になったって戦うっ!なぜなら、ここで俺達が戦いを止める事は、俺達がこれまで戦ってきた意味の否定になるからだっ!」

「ッ」

俺の言葉にブルーが息を呑む。

 

「自分達で戦ってきた意味を、過去を否定する事なんか出来るかっ!先代ブルーが世界を守れなかったとか、仮面ツインテールが俺達に嘘を付いてるかどうかなんて、どうでも良いっ!重要なのは、お前達が侵略者である事っ!そしてそれを迎え撃つのが、この世界を守るのが、俺達だって事だっ!!」

 

俺はドライバーのレバーに手を掛け、それを稼働させる。一度閉じたゼツメライズキーが再び展開される。

 

 

『ロッキングスパークッ!』

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

発動したのは、超加速の技。これまで以上の速度で俺はドラグギルティに突貫する。

「ふぅんっ!」

 

繰り出される大剣の一撃。それをギリギリの所で回避し……。

「だぁっ!!」

『ドゴォォォッ!!』

「くぉぉっ!?」

 

がら空きの脇腹に拳を突き立てる。苦悶の声を漏らすドラグギルティ。だが、まだ終わりじゃないっ!

 

「だりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

そこから更にラッシュを繰り出し、ドラグギルティを殴って殴って、殴り続ける。奴は何とか大剣を盾にしているが、完全に防ぎ切れては居ないっ!

 

そしてっ!!

 

「うぉぉぉぉぉっ!!」

 

拳にエネルギーを収束させるっ!それを、叩き付けるっ!!

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『ドゴォンッ!!!!!』

「むぉぉぉっ!?」

 

踏ん張りながらも大きく後ろへと吹き飛ばされるドラグギルティ。いや、倒れなかったのは流石、って言うべきなのかっ。

 

「くふっ、まさか、貴様にこれ程の力があるとはなっ。誤算であったかっ。だが、こちらも負けられぬ理由があるっ!」

 

「来いよ変態野郎っ!!テメェ等の好きにはさせねぇっ!仮面ツインテールの過去とか、お前等がどれだけ強大かなんて知ったこっちゃねぇっ!俺は戦うっ!」

 

ギュッと拳を握りしめ、叫ぶ。

 

「俺は、エレメリアンをぶっ潰すっ!!」

 

 

そうして、駆け出そうとした時。

 

「待ってくれ、マギア」

「ッ!?」

 

後ろから聞こえたレッドの声に俺は足を止め、振り返った。見ると、レッドが肩をふるわせながら俯いていた。……まさかっ?

 

俺は嫌な予感を覚えながら、レッドの方を見つめた。

 

 

果たして、レッドが肩をふるわせている理由とは?

 

     第6話 END

 




楽しんで頂ければ幸いです。感想や評価などして頂けるとやる気に繋がるので、よろしくお願いします。
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