俺、マギアになります。   作:ユウキ003

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第8話 変化の兆し

~~~前回のあらすじ~~

 変身した空こと仮面ライダーにテイルレッドとテイルブルーの3人。彼らはドラグギルティから知らされた内容にも怯む事なく戦い、最終的には仮面ライダーとテイルレッドの必殺技を持ってドラグギルティを撃破する事に成功するのだった。

 

 

 ドラグギルティの戦いの後、俺たちは総二の家に集まっていた。一応俺は事前に家に戻り、体の、つまりボディのメンテナンスと充電作業を行った後だ。これで、心置きなく話が出来る。

 

「さて、トゥアール。今の俺たち3人はお前に聞きたい事がある」

「はい」

 4人で円を描くように座り、俺の正面にトゥアール。左右に愛香と総二が座っている。

「ただ、これだけは言わせてほしい。少なくとも俺はお前を責めるつもりは無い。誰しも話したくない過去はあるだろうしな。出来る限りで良い。俺たちの疑問に答えてくれ」

「分かっています。もう、皆さんに嘘は申しません」

「その言葉を信じるよ。……二人も、それでいいな?」

「あぁ」

「ちゃんと話しなさいよね?アンタの世界の事とか」

「分かりました」

 

 2人の言葉にトゥアールが頷く。

「さて、となると。まず何を聞くかな?」

「はいっ!じゃあアタシからっ!」

 そう言って愛香が手を上げる。

「じゃあ愛香」

「OK。それじゃあトゥアール、改めて聞くけど、アンタの居た世界が、属性力を奪われたのってアンタがテイルブルーとして活動し始めた後、なのね?」

「はい。元々、属性力を変換するテクノロジー、言わばテイルギアの原型となる技術は、アルティメギルが意図的に流出させた物だったんです」

「ッ!?なんだってっ!?」

 

 予想外の事に総二が声を荒らげ、愛香も俺も一瞬絶句した。しかし、その理由もなんとなく分かった。

 

「もしかして、ドラグギルティが言ってた、ツインテール属性の繁栄のためか?」

「えぇ。空さんのおっしゃる通りです。奴らの本当の侵略のやり口は、自分たちの敵となる英雄を生み出し、英雄を活躍させることでツインテール属性を広め、機が熟したころ、これまでと異なり全力を持って属性力を刈り取りに来る。という物だったのです」

 そう言うと、トゥアールは視線を総二へと向けた。

 

「あの日、私たちが初めて会った日、エレメリアン達は究極のツインテール属性を持つ者を探していましたが、それは何も属性力を奪うためではありません。その人物に変換技術を与え、戦士になるよう誘導するのが目的だったのです」

「つまり、あの日総二が目を付けられていたら、トゥアールによるギアの譲渡に関わらず、戦士に仕立て上げられていた、と?」

「えぇ。恐らくは。それが奴らのやり方なのです」

「そう、だったのか」

 

 思いもしない現実を聞いた総二は驚き僅かに放心していた。まぁ、無理もない。今までの戦いがマッチポンプだったなんて、誰も思わないもんな。

 

「けど、待って?じゃあトゥアールはいつその連中の侵略方法に気づいたの?」

「私も、最初から気づいていた訳ではありませんでした。彼らが流出させた技術で戦士、つまり先代のテイルブルーとして戦い始めてしばらくした頃、エレメリアンの侵略があまり精力的ではない事、敵があまりに弱い事が次第に気になり始め、そしてツインテールが世界各地に広まっていくのを目にしたころ、疑問に思い始めたのです。……ですが私には、世界に芽吹いたツインテール属性を消す事が、出来なかった」

 

 そう言ってトゥアールは悲しそうな目をしながら話を続けた。

「何でもいい。ツインテール属性は危険だと叫べばよかった。皆がツインテール属性を嫌うよう、仕向ければ良かったっ。でも私には出来なかったんですっ!」

「そうだよ。そんな事、簡単にできる訳ないっ!」

 

 ……なんか、総二がトゥアールに共感してるが、とりあえず今は黙っておこう。

「そして、そんな苦悩を抱えたままの戦いで、私はドラグギルティに敗れてしまった。幸い、命と属性力は奪われる事無く撤退したのですが、基地に籠り対策を練っている間に侵略は瞬く間に進み、気が付けば私以外の人々が属性力を奪われた、灰色の世界が出来上がっていました。誰もツインテールなどしておらずっ、私が道行く幼女のスカートをめくってもまともに注意されないっ、冷たい世界でしたっ!」

「誰もツインテールじゃないなんてっ!酷いっ!酷すぎるっ!」

 

「ねぇ空。これ、殴った方が良い?」

 シリアスがぶっ飛ぶ発言をするトゥアール。そんな彼女を殴ろうと拳をスタンバイする愛香。そしてそれに同情している総二。……色々カオスである。

「やめとけ。これでも本人は本気なんだろうし」

 俺はそれを宥めつつ、しかし半分呆れながらもトゥアールの話を聞いていた。

 

「属性力を奪われ、覇気のなくなった世界を前にした私は、復讐を誓いました。そして

あらゆるデータを解析し、イマジンチャフや世界間の航行技術の開発に成功したのです。そして、共に戦ってくれる戦士とツインテールと元気な幼女を求めて、私はこの世界に……」

「色々求めてんなぁおい」

 トゥアールの覚悟とかをバカにするわけじゃないが、正直ツッコまずには居られなかった。しかしどうやら肝心のトゥアールは聞こえてないらしい。

 

「そして、自らの世界を守れなかった、弱い自分へのけじめとして、私は自分の中にあるツインテール属性を抜き取り、それをコアとして新たなテイルギアを、そう。総二様に与えたテイルレッドの装備を生み出したのです」

「ッ!?自分の、ツインテール属性をっ!?」

 

 これには、総二は案の定反応するが、俺と愛香も一瞬息を飲んだ。彼女自身の性癖とか色々問題はある。しかし、自らの属性力を手放してまで、という事に彼女の本気度を見た気がする。

 

「そうだったのか。でも、ありがとうトゥアール。俺はこれがあるから、アルティメギルと戦える。俺の大好きなツインテール属性を守れるんだっ!」

「そ、そうですかぁ?総二様にそう言ってもらえると、嬉しいですねぇ、うぇへへへ~♪」

 総二の感謝の微笑み。そしてそれに興奮してか明らかに乙女がしちゃいけないニヤケ顔のトゥアール。

「………」

 そして無言で不機嫌そうになる愛香。やれやれ、強敵を倒した直後だってのにこいつらも平常運転だなぁ。

 

 なんて、俺は考えつつも思った。『まぁ、何もない、そういった日常を守れたんだから良かったのか』、と。

 

 

 ともあれこれで、俺たちはドラグギルティを倒し、強敵の1人に勝つ事が出来た。けれど奴は言っていた。自分は将の1人に過ぎない、と。これからもまだまだ戦いは続く事に、俺は少しだけ不安になった。『この先も、勝ち続けられるのか?』と。

 

 

 

 結局、ドラグギルティとの戦闘で疲れも貯まっていた事もあり、聞きたい事を聞いた後、その日は早めに解散となった。俺も自宅に帰り、念のために今回の戦闘データをゼアへと保存した。何か、ゼアから戦略とか提案でもあればな。なんて思いつつも、俺は充電機能付きのベッドへと寝そべり、眠りについた。

 

 

 翌朝。

「ん。朝か」

 機械のボディになってからという物、体内のシステムが俺を自動的に覚醒を促す関係で寝坊する、という事は無くなっていた。さて、今日も学校だ。さっさと着替えていくか。

 

 と思ったのも束の間、視界の端に小さなポップアップディスプレイが立ち上がった。どこからかメールが送られてきたようだ。『なんだ?』と思いつつ送り主を確認してみると、何と『ゼア』からだった。なんでだ?と思いつつメールを開いてみると、そこにはゼアからの短いメッセージが書かれていた。

 

≪現在、多次元プリンター、ザットを用いた移動用ビークルを開発中。これらの操縦のため、原動機付自転車免許の取得を推奨≫

「移動用ビークル?それを動かせるように免許を取れってのか?」

 

 最初はゼアの指示に困惑したが、ゼアはじいちゃんが生み出した超高性能のコンピューターだ。きっとゼアなりに考えがあるのだろう。今度の休日にでも免許センターに行くか。

 

 何てことを考えながらも、俺は制服に着替え、ゼリー飲料を一つ飲み干すとカバンを手に家を出た。

 

いつものように総二らと合流し、いつものように学校へと向かう。案の定、以前のようにトゥアールが付いて来ていた。それと(物理的に)じゃれ合っている愛香。それを見守る俺と総二。が……。

『うわーははははっ!見ているかツインテイルズよっ!』

 どうやら連中、1日1回の侵略ルールを律儀に守るつもりのようだ。いつだかのドラグギルティの宣戦布告のような事をしている虎顔のエレメリアン。

 

「懲りないわねぇあいつらも」

「あぁ、全くだ」

 呆れた様子の愛香の言葉に答えながら、俺は周囲を見回す。都合よく、周囲に人影はない。

「行くぞ、愛香、空ッ!」

「えぇっ!」

「あいよっ!」

 

 2人はテイルブレスを掲げ、俺もサイクロンライザーとロッキングホッパーゼツメライズキーを取り出す。

 

『サイクロンライザー!』

 

『KAMEN RIDER!』

 

 サイクロンライザーを腹部に押し当てると同時に、ゼツメライズキーを起動し、素早くベルトに装填する。

「「テイルオンッ!」」

「変身ッ!」

 

 2人とは異なる掛け声を叫び、レバーを勢いよく引く。

 

『サイクロンライズッ!!! ロッキングホッパーッ!!!』

 

『TYPE ONE』

 

 2人がテイルレッドとテイルブルーへと変化するその傍で、俺も仮面ライダーへと変身する。

「では皆さん、頼みます」

 そしてトゥアールは俺たちの変身を確認すると、持っていた転移ペンで俺たちをどこかへと転送した。

 

 空間跳躍を行いたどり着いたのは、どこかの学校の近く。

「さてっ!連中はどこだっ!?」

「あいつ、確かスク水がどうとか言ってたから……」

 レッドが周囲を見回し、俺は少し離れた所にある学校へと目を向けた。と、その時。

「「「「「きゃぁぁぁぁぁっ!!!!」」」」」

「ッ!こっちかっ!」

「行くわよレッドッ!」

「あぁっ!」

 悲鳴が聞こえてきた方へと走る。しかし、今は時間が惜しいっ!

「先に行くぞっ!」

「えっ!?」

 レッドの疑問符が聞こえるが、半ば無視する形でベルトのトリガーを引く。

 

『ロッキングスパークッ!!』

 

 必殺技を発動させた俺は、襟元より赤いエネルギーを、まるでマフラーのようにたなびかせながら加速、2人を置き去りにしつつ、加速した。

 

 首元から迸る赤い光の残像を、マフラーのように残しながら走る。

 

 時間帯は朝の通勤通学のラッシュ時。歩道や道路は車や人の交通量が多いっ!仕方ないっ!俺は建物の屋根の上に飛び乗り、そのまま屋根の上を駆け抜けた。

 

 そして、見つけたっ!前方、学校の一角にあるプールッ!そしてその周囲を囲む金網越しに見える先ほどのエレメリアンと配下のアルティロイド。更にその傍にいる、恐らく朝練か何かをしていたのだろうスク水姿の女子生徒たちが何人もいるっ!

 

「くふふっ!さぁお前たちの属性力を寄越すのだっ!」

 強化された聴力が、鼻息も荒い虎のエレメリアン、確かタイガギルティとか名乗ってたやつの声を拾うッ!だが、させるかよっ!!

 

「はぁっ!!」

 俺は駆け抜けていた家屋の屋根を蹴り、大きく跳躍した。プールの周りに集まる野次馬と、プールを囲う金網を飛び越え。

 

 そして今まさに女生徒の1人に向けて手を伸ばすタイガギルティッ!だがっ!

「だぁぁっ!」

「なっ!?ぐぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 奴と女生徒達の間に割って入るように降り立った俺の、キックによる一撃がタイガギルティの腹部に命中。大きく吹き飛ばし、更にアルティロイドの群れに突っ込んだ。

「きゃっ!?何っ!?」

 突然の乱入者に、驚いたのか俺の背後にいる女生徒達の困惑する声が聞こえる。

 

「ッ!」

「あっ」

 ついで、息を飲む声が聞こえる。

「仮面、ライダー?」

 誰かが俺の名を呼んでいる。昨日の戦いで、マギアとも異なる俺の名前は広まっているからな。無理もない。だが、今はそんな事どうでも良い。

 

「下がっててくれ。あいつらは危険だ」

「は、はいっ。皆っ」

 肩越しに振り返る俺の言葉に、部長なのか女生徒の1人が他の生徒たちを下がらせる。

それを確認していると……。 

 

「ぐぅっ!?お、おのれぇッ!」

 アルティロイドの群れに突っ込んだタイガギルティと、倒れていたアルティロイド達が起き上がった。

「現れたなっ!忌々しき仮面ライダーめっ!ドラグギルティ様の仇、ここで討ち取ってくれるわぁっ!」

「……だったら来いよ。こっちも、あんまり時間が無くてな。……一気に片を付ける」

 

 俺たちもこの後学校があるんだ。のんびりはしてられない。速攻でかたを付ける。

 

 俺は静かに、サイクロンライザーのレバーを操作した。

『ロッキングスパークッ!』

 

 必殺技の発動に合わせて、桃色の複眼がより一層光を放つ。更に一時的なブーストのための強化粒子が、首元の『サイクレッドマフラー』から噴き出し、さながら赤いマフラーのように広がる。

 

「死ねぇぃッ!仮面ライダーァァァァァッ!!」

 俺目がけて駆け出し、腕を振り被り突進してくるタイガギルティ。だが、遅いっ!!

「はぁっ!!」

 

 振り下ろされる拳を紙一重で避けてからの、赤いエネルギーを纏った高速の拳が、奴の腹部に深々と突き刺さる。

 

「ぐごえぇぇぇぇっ!?!?!?」

 盛大に口から胃液を吐き出し、痛みで体を震わせている。だが、これで終わりじゃ、ないッ!

 

「おらぁっ!!」

 続けざまのアッパーが奴の顎を捉え、数メートル頭上へ打ち上げる。

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 そして奴が空中で動けないその隙に、両手に力を籠める。赤いエネルギーが両手に収束していく。

 

「お、が、あぁ」

 痛みで動けず悶えながら落下し始めるタイガギルティ。そして奴が俺の拳のリーチの中まで落ちて来たその瞬間。

 

「るあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 全力のラッシュを奴の体に叩き込むっ!ロッキングスパークの効果で、瞬発力や反応速度まで強化された今の俺が放つ拳は、まるでいくつもの拳が同時に存在しているような、そんな残像を周囲に見せながら、タイガギルティの肉体を殴りつける。

 

 『ズドドドドドッ!!』という擬音が聞こえてきそうな程のラッシュ。タイガギルティは空中で身動きが取れず、ただそれを受ける事しか出来ていない。

 

「だぁぁっ!!!」

 そして、最後の一撃がタイガギルティの腹部を捉え、大きく頭上に打ち上げた。

「あ、が、あ、あぁ、す、スク水、属性、バンザァァァァァァイッ!」

 

 大きく空に打ち上げられたタイガギルティは最後の最後でエレメリアンらしい断末魔と共に爆発四散した。爆発によって発生した煙を見上げていると、俺の前に落ちて来たタイガギルティのエレメーラオーブ。俺はそれをキャッチすると、残っているアルティロイド達に目を向けた。

 

「さぁ、後はお前たちだけだ。どうする?」

 俺が声を掛ければ、アルティロイド達は右往左往するばかり。リーダーを失い、おめおめと逃げかえる事も出来ないし、かといって戦っても俺とは勝てない。そのせいで判断が付かない、と言った所か。しかし……。

 

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 そこに、遅れて合流してきたレッドとブルーが襲い掛かった。ブレイザーとランスを手に、2人は瞬く間にアルティロイドを蹴散らしていく。

 

「わっ!わっ!見て見てっ!テイルレッドよッ!」

「ホントだっ!頑張れ~~!」

 すると、後ろから声が聞こえる。どうやら先ほど下がれと俺が言った水泳部の子たちが、タイガギルティがやられた為か、或いはレッドが現れた為か。警戒心も薄いまま戻ってきてしまった。

 

 そのことを注意しようとした矢先。

「おりゃぁっ!」

『『『『モケェェェッ!!』』』』

 

 レッドの大振りの1撃が、複数のアルティロイドを巻き込んで吹き飛ばした。が、その内の一体が女子たちの方へ飛んでいったっ!?

「えっ?」

 女の子の1人が呆けた声を上げ、他も理解が追い付かないのか固まってしまう。

「っ!?しまっ!!」

 

 レッドが気づいて慌てるが、間に合いそうにない。だが……。

「くっ!!」

 近くにいた事が幸いし、咄嗟に俺が彼女達の前に立ち、背中で飛んできたアルティロイドを受ける形となった。

 

 肩越しに振り返り、吹っ飛んできたアルティロイドを見るが消えたようだ。

「悪いライダーッ!大丈夫かっ!」

「あぁ、大丈夫だがもう少し力を加減しろ。周囲に一般人だっているんだぞ」

「分かったっ!」

 

 俺の言葉を聞くと、レッドはアルティロイド殲滅に戻った。それを確認すると、俺は後ろに振り返った。

「大丈夫か?怪我は?」

「あ、だ、大丈夫、です」

 俺が庇った彼女は少し戸惑いながらも答えた。……しかし、俺は元々マギアだったのだ。少し怯えているように見える彼女の反応は、無理もない。

 

「そうか」

 俺はただ静かに頷くと、そのまま彼女達に背を向け、万が一にもアルティロイドが彼女達を襲わないよう、傍で守り続けた。

 

 とはいえ、既にタイガギルティを倒された奴らは烏合の衆。レッドとブルーにあっという間に蹴散らされてしまった。

 

「これで、ラストッ!」

 そして最後の1体も、ブルーのランスで胴体を貫かれて消えた。

「終わったな」

「えぇっ!あっ、ところであの虎のエレメリアンのオーブはっ?」

「もう既に回収してある」

 そう言って俺は手にしていたオーブを二人に見せた。

 

「それより、終わったのなら急ぐぞ。俺たちにはこの後、大事な用事もあるしな」

「あぁっ!そうだったっ!」

 学校の事を思い出したのか、レッドはすぐさま駆け出そうとする。俺とブルーもそれに続こうとした時。

 

「あっ!ま、待ってっ!」

「「え?」」

「ん?」

 不意に、後ろにいた水泳部の子に呼び止められた。俺たち3人とも、足を止めて振り返る。

その子は、何かに言い淀んでいるようにモジモジとしていた。なんだ?と思っていると。

 

「あ、あの、あのっ、私、あなたに、謝りたくて」

「……え?」

 その子は、俺を見つめながら謝りたいと、そういった。

「ま、前のあなたを見た時、ただ、気持ち悪いって思って。それを、ネットのコメント欄に書いちゃって。……でも、ホントは皆を守るために、戦ってくれてたのに。私、そのことも知らずに……」

「……」

 そうか。この子もまた、俺を恐れていた一人だったって訳か。

「昨日の事、テレビで見て。ボロボロになっても、でも、人のために戦ってるあなたを見て、私は、自分が間違ってたって思って、だからっ、ネットで酷い事言った事、謝りたくてっ!ごめんなさいっ!」

 そう言って彼女は頭を下げた。

 

「許してもらえないかもしれないけど、でもっ!」

「それ以上の言葉は、必要ないよ」

「えっ?」

 

 俺は言葉を続ける彼女に声を掛けた。彼女は呆けた様子で顔を上げる。

「ネットの誹謗中傷とか。気にしてない、って言えば嘘になるけど。でも、もう謝ってもらったから。俺は、それだけで十分だから」

「い、良いの?私、あなたに酷い事を」

「あぁ、もう。良いんだ。その言葉だけで、十分だから」

 

 この子の怯えた様子を見てると分かる。怒った俺に何かされるのではないかと怯えていたのだろう。それを覚悟しての謝罪だったんだ。でも俺には彼女をどうこうする気はない。もう、謝罪の言葉は貰ったから。だから俺にとっては、それで十分だ。

 

「ライダーッ!良い所なの悪いんだけどっ!遅れるわよっ!」

 そこに飛んでくるブルーからの言葉。っと、そうだっ。学校に急がないと。

「あぁっ!すぐ行くっ!」

 俺はすぐに頷き、返事を還す。

 

「それじゃあ。……こんな事言うのはあれだけど。嬉しかったよ。素直に謝ってくれて」

「えっ?」

「じゃあねっ!」

 俺の言葉で顔を赤くする彼女に、最後にそれだけ言うと俺は駆け出し、高い跳躍力を活かしてブルー、レッドと共に俺はその場から去った。

 

 その後、無事に学校に遅刻せずに到着した俺たち。幸い朝礼まで少し時間があったのだが……。

「なぁなぁ見たかよ昨日の戦いっ!凄かったよなぁっ!」

 傍でたむろしていたクラスメイトの男子たちの会話が聞こえて来た。

「おぉっ!やっぱりテイルレッドちゃんは凄いよなぁ!あんな風にポジティブで、大柄な敵にも怯まないっ!正しく小さな英雄だなっ!」

 相変わらず男子たちはテイルレッドの話題で持ち切り。そして俺の傍で密かに頭を抱えている総二。その姿に俺が苦笑していると。

 

「いや、でも俺はやっぱ最後の合体必殺技がカッコよかったなぁ」

「お前また言ってるよそれぇ」

「もしかしなくてもお前、ライダーのファンになったのか?」

 ふと、会話の内容に俺が浮かんできたようだ。少し気になり、思わず聞き耳を立ててしまう。

「悪いかよぉ。だってあの時のライダーめちゃくちゃカッコよかったじゃん。レッドを裏切るように言われても裏切らなくて、あれだけ酷い事言われてきたのに、それでも俺たちのために戦ってくれるんだぜ?かっこいいじゃん」

 

 その言葉を聞いた時、俺は思わず笑ってしまった。

 

 あぁ、人は決して綺麗な存在ではないのかもしれない。けれどそれでも俺は人のために戦う。この力を人のために使う。これはじいちゃんとの約束でもある。

 

 けれど今はそれ以外にも、人のために戦う事の、誰かを守る事の誇らしさを少しだけ噛みしめしていた。

 

 

 こうして俺たちはドラグギルティを退けた。しかしまだ戦いは終わらない。いや、まだまだ、戦いは始まったばかりだった。

 

     第8話 END

 

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