柿崎隊A級化計画 作:札幌ポテト
気付いた時は小学生ではあったが人より早くちょうど厨二病を患っていた時だ、本当に自分には前世というものがあり、そこではある程度まで生きていたという記憶が蘇ってしまったのだ。
町外れの古本屋や海外のサイトで適当な怪しげな本とか読み漁ったせいか、蘇ってしまったのだ。厨二病を終えかけていたというのに、本当にやばくなってしまい『私特別かもしれん』と思ってしまうのも仕方ないと思う。
思えば時期が悪かった、前世の記憶の中の自分は真面目そうな一般人という感じであったが、今世の絶賛痛いやつの時に得た知識としては不味かっただろう。
ただこれだけなら面白くはない(奇想天外ではある)し、わざわざ話に持ち出すようなことではない。
なぜか、私はこの世界を知ってしまったからだ。
将来は頭良い高校行きたいし、どこにしようかなと調べていた時に目にしてしまったのだ。
そして、即座に行動に移した。そう、移してしまったのである。
☆
ボーダーという組織がある。それは異世界からやってくる存外、ネイバーと戦う組織だ。その本拠地は唯一異世界との扉が開く場所、三門市に存在する。人口20万人以上のこの都市では日々襲いくる外敵と戦い続けており、その兵士は殆どが学生によって構成されている。
しかし異世界からの攻撃が起きてからまだ3ヶ月、未だに戦地に大きな傷を残している。
だがそんな中で、意思を持って隊員となりに来た者達がいる。
「おっす嵐山、元気そうだな」
早くも正規隊員、つまりB級に至った少年がそこにいる。名を嵐山准、既に隊を結成し、ボーダー内外での知名度が比較的に高い人物だ。そんな彼に話しかけているのも、正規隊員である。
「お、入間か!最近は東さんとずっと一緒みたいだけど弟子として順調みたいだな」
癖毛が凄く、金に染められた後ろ髪を束ねる少年。切るのが面倒というのもあるが、トリオン体になれば髪の長さを自動で変えられるので切っていないのだろう。しかし顔はかなり美形に見えるのだが、どことなく残念な雰囲気をしている。
「ふっ、狙撃……というか銃使う才能が無いと言われたばかりだよ。まぁ使うけど」
入間武人、今のボーダーが設立したと同時に入隊した少年だ。その時は『私、何か不思議な力あるんですよね』と言ってボーダーに居座り、中々に痛いやつとして嵐山とは別の意味で有名である。
「そ、そうか……。じゃあやっぱり、俺たちの隊には入らないのか?」
「後2年は自己研鑽に忙しいと思うからな。でもそのうち決めるよ」
なお自己研鑽と言っているが、彼の姿は訓練場ではあまり見られていない。たまに先程は名をあげたスナイパーの伝道師にして既にΑ級の東春秋から至難を受けている程度である。
だが誰よりも早く目敏いようで、東と会った初日から弟子入りをしている。
胡散臭いと思う人間も多いが、嵐山が彼を好意的に見てるのはその熱意が本物であるからだ。どこかで日々、何かをしているに違いないと確信している。
「お、入間。久しぶり、元気そうだな」
そうこうしていると、もう1人の同期が現れる。
「おっすザキ、この前貸した本読んだ?割と昔の兵法も役に立ちそうだろ?」
「よくこんな本を見つけられると思うよ、東さんに勧められたたのか?」
「いや、趣味で割と。他だとそうだな……黒魔術とか競馬とか興味ある?」
「お前の趣味やっぱり偏ってると思う」
柿崎国治、同じく正規隊員であり現在は嵐山隊に属している。まだまだ隊としても出来上がったばかりで人が足りていないが、嵐山を支える良きムードメーカーでもある。なお目の前の男はムードブレイカーであるのは言うまでもないが、一応彼も好意的な仲である。
「あ、そうだ入間。どうしてボーダーに入ったんだ、この前の会見で教えてくれるって言ったが、結局聞けなかったし」
「確かに、どうなんだ?」
ふと、嵐山が聞く。正規隊員となってまだ日が浅い3人、同期として互いのことはまだ深くは知っていない。この表面上はやばい奴、実は上からその中身に探りを入れて欲しいと嵐山達は言われているのだ。
同期という近い関係だからこそだろう、しかし彼らもそれを知りたくはある。
そしてその問いに対して、髪をかきあげながら入間は用意していたのか、堂々と答えを言う。
「強いて言えば運命……だからだな。私の才能をここが必要としているし、私もここを欲していた。ボーダー最強となるこの私の伝説を、ちょっと歩み始めたかったんだよ」
ちゃんと中身もやばかった、15歳の少年が持つ志しには痛々しい、井戸の外を知らない蛙にしか見えない。だがあまりに堂々と当たり前
のように答える様子は、2人をしばらく絶句させるには十分であった。
「……なぁ嵐山、やっぱりダメだと思う」
「どう報告したら良いかな……?」
これから司令部にどうこの事を伝えに行くか相談をする2人、しかしその小言が届かないほどに、入間という男は自分に酔いしれていたのであった。